9/1(日)2024佐渡国際トライアスロン大会が開催された。(主催:佐渡国際トライアスロン実行委員会・公益社団法人日本トライアスロン連合)
夏のメインイベント、佐渡大会が開催された。国内のロング5レースの一つであり、国内最長距離、厳しい制限時間、そして、猛暑の中で開催されるまさに「鉄人レース」は夏を締めくくる人気大会となっている。バイク190kmを含め、制限時間15時間30分は険しく、ミドル完走者でも計画的なトレーニングが必要となる。簡単には完走させてくれない佐渡はスタートラインに立つまでが重要となる。
まず、やきもきさせられたのは「台風10号」だった。昨年は猛暑のために距離短縮などが危惧されたが、無事予定通り開催できた。そして、今回は台風だった。時期的には常に可能性はあるのだが、勢力が強く、ゆっくりと動く「迷走台風」に現地入りすることも余儀なくされた選手も少なくなかった。結果的には無事開催されたが、帰路の交通手段の変更などレース以外に気を使うことになった。
当日の天候は良かった。朝方強い雨が降ったが、すぐ止み、スタート時は曇りだったが、徐々に青空がのぞき始め、いつもような佐渡になっていった。Aタイプの完走率は例年概ね70~80%だが、今回は73.8%だった。海はベタナギ、暑さも昨年ほどではなかった。ランでは暑かったとの声も聞いたが、例年よりは楽だったと聞いている。
レース結果は、Aタイプ男子優勝は星大樹選手、女子優勝は齋藤恭子選手、Bタイプ男子優勝は山岸穂高選手、女子は平柳美月選手だった。
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以下、リキャップとなる。主に「Aタイプ」についてのレポートとなる。
■Distance
距離は、国内最長トライアスロンとなるスイム4km、バイク190km、ラン42.2kmで開催される。この距離は世界シリーズのアイアンマンより、スイム200m、バイク10km長い。更に制限時間が厳しく、アイアンマンの17時間制よりも1.5時間短い15時間30分となる。また、灼熱の中のランと途中の関門など、完走するだけでステイタスの高いロングトライアスロンだ。
■Course
スイムコースは、佐和田海岸を沖に向かって一斉スタートし、縦長の三角コースを2周回する。
一度上陸する設定は、経験の少ない選手にとっては安心感となるが、慣れた選手はリズムを崩してしまう。そのような変則的な泳ぎに慣れる必要があるだろう。
当日は、透明度は高く、この上ないベタナギとなり、極めて泳ぎやすいコンディションだった。水温は昨年と同じ29℃のため、その点だけで言えばロングジョンが推奨となる。
昨年気になった太陽光の眩しさはなく、その点でも良い環境でのスイムとなった。クラゲの発生は報告されたが、昨年ほどの大量発生ではなかったようだ。
バイクコースは、まさに「アイランドバイク」で、佐渡島の海岸線をトレースする190kmとなっている。国内でも最も美しいコースの一つと言えるだろう。
55km地点のZ坂、161km地点の小木の坂が所謂難所となるが、72km地点の鷲崎から161km地点の小木までの90kmは、DHポジションが極めて重要となる。佐渡はDHポジションが制すると言っても良いだろう。もちろん、「DHポジション=フラット」ではない。3%程度の上りや向い風もDHポジションで乗りこなせるトレーニングを積んだことが大前提となる。
当日は天候に恵まれ絶好のコンディションとなっている。暑いことは変わりないが、雲が出ている時間も多く、東側コースでの向い風もさほど気にならなかったと聞いている。
完走のカギはバイクとランのペース配分となる。バイクで脚を使い果たし、ランスタート時のダメージが残る選手が多い。つまりバイクの走りが重要となり、佐渡のコースに対し、どのようにトレーニングをして来たのかということになる。
アップダウンのイメージしかしてこなかったのか、オールDHに近い、鷲崎から小木までの東側コースに対しどのような対策を立てたのか、また、向い風のイメージは出来ていたのかなど「プランB」までの想定が必要となるだろう。
ランコースは、佐和田をスタートし、真野湾サイドを周回するコースで、太陽を遮るものはない。
昨年と同じ4周回で開催され、海岸線とメイン会場近くの応援の盛り上がる「商店街」を周回するコースとなる。完全なフラットでスピードコースでもあるが、日陰は全くなく単調なコースでもある。
当日は、想定された灼熱ではなかったが、選手は口々に「ランは暑かった」と言っていた。バイクでは雲も出ていたが、ランはいつもの佐渡に戻り、選手を苦しめた。
4周回は精神的に辛く、我慢の耐久ランとなる。昨年は2周回予定からボランティア不足のため4周回に変更された経緯があるが、今年も難しかったようだ。佐渡に限らずの課題であり、あらためて開催の難しさと多くの人々に支えられていたことを実感することになった。
■Weather
今回は「迷走台風」に翻弄された。
当初は大会前に終息すると思われていたが、勢力が強く、速度が遅く、予想の難しい台風に開催がどうなるのか、また、佐渡まで辿り着けるのか、やきもきさせられた。
開催週の8/28(水)には結論が出ず、翌日まで持ち越されたが、条件付き開催の決定が告げられた。選手は一安心となったが、その時点でも台風が読めいない状況は変わらないままだった。結果的には無事開催されたが、台風と同じ方向に向かう選手たちは交通手段を奪われ、佐渡に入ることが出来なかった。
そのための特別措置として、出場辞退の選手は2025年の大会に優先出場権を申告制にて付与を決定した。措置は有難いことだが、今大会に出られなかった選手にかける言葉がなかった。
当日の天気は、早朝雨が降ったもののすぐ止み、曇り空でのスタートとなった。その後、徐々に晴れ始め、ランの頃にいつものように暑い佐渡となった。公式発表では、気温28.5.℃、水温29℃、湿度81%となっている。佐渡の羽茂で15:00過ぎに僅かに31℃を超えているが、猛暑とはなっていない。
※気象情報:新潟地方気象台発表 2024年9月1日11時(スイム6時)
■Race Operation
基本的に良い運営で、特に約1000名のボランティアの対応が良く、選手の満足度は十分高かったようだ。それでも今後より良いレースにするため、選手に聞いてみた。
『昨年要望した ①エイドでの氷の提供 ②夜間ライトが眩しい、が反映されていてビックリ。今年は、開催して頂けただけでもありがたいのですが、ランASでの固形物がスポーツ羊羹とバナナだけで、おにぎりやパンが全く無かったのが残念でした。本部ASの一か所でも提供して頂けると助かります!』
『今年は、道路にやたらとバイクボトルが散乱していました。ボトルの外径がやや小径なのか分かりませんが一箇所に3〜4本転がってました。それと、ボトルのパッキンの座りが悪く水漏れが酷かった事と、しっかりと閉まりきらない不良品が多かったと思います。』
『スイムの折り返し後、ライフセーバーさんのいる場所がやたら内側で狭い所を人が泳いでコンタクトが凄かったです。一周目は人がバラけない事もあるのでコンタクトも仕方ないと思っていたら二周目の往路はバラけてたのに折り返したら急にゴチャゴチャ。なんでだろー?』
『ボランティアも案内など分かりやすかったし、キラキラした目で応援もしてくれ、佐渡名物終日MCも盛り上げてくれたし、花火もクラッカーも。今年初参加の島パーティーなんて最高でした。』
『チェックインと試泳くっつけたのも良かったと思うが、チェックイン時間過ぎないとAタイプの応援に行けなかったのと、トランジションエリアで写真撮れなかったのが残念。バイクボトルも一本を使い回したので、蓋の不具合気づかず、ランでは支給されたマイボトルに助けられました。エイドに果物欲しかったけれど、贅沢言いません。開催ありがとうございました。』
『走れるランナーはエイドの給水で足りたようですが、倍の時間かかる私は、エイド間も手持ちボトルで繋ぐことができて、エイドでも注ぎ足してもらいボトル活躍。吸わなくても出るし柔らかいから握るのも楽で使いやすかったです。事前送付でボトルの練習しておけたのが良かったです。』
『見てた感じ支給されたボトル自体は少なかったですが、マイボトル持参で走る人は例年より多かったです。私はサロモン持参でしたが、持って走り続けるの苦じゃなかったし、ちまちま飲み続けられるのはいいなと、ボトル持参派にこの大会でなりました!』
『チェックインは今年の方式がスムースで動線もよく、よかったと思います。あと同伴ゴールやりたかったです。』
『どこのASか忘れましたが、ノーマルサイズのおにぎりと半分サイズのおにぎりが2種類あって、半分サイズはラップに包まれていてテイクアウトできたのが嬉しかったです!』
『バイクのWSはボトルに詰替えのみ、ASはボトル提供、とハッキリ分けた事で、ASにボトルありません、ということは無かったかと思います。去年までのASでいきなりありません、は困っている人も多かったので、それが起きるくらいなら、今年の方針の方が良かったと思います。』
『WSの詰め替えのみ、初めは時間ロスになりそうなので敬遠しようかと思いましたが、どう考えても足りずほぼ立ち寄り。でもみんな止まってるので公平感あってよかった気がします!』
『ランのエイドに、氷が袋に小分けして置いてあったのですが、利用させて頂き重宝しました。ランの前半脇の下に入れて走り、パフォーマンスが落ちずに済ました。』
『車の交通量が多いコースに、注意喚起するスタッフをもう少し配置してくれると、より安全かと思う場面がありました。坂でのライドで疲労があり、バイクがふらついているところに車がスピードを上げて追い越しをする際、危ない!と感じる場面ありでした。』
■主な変更点
ボディナンバーチェックのテント
主な変更点としては。
Raタイプ追加:Aタイプのリレー版 検車制度導入:事前のバイク点検が必要 バイクのWS:携帯ボトルに補充のみ 熱中症対策:エイド間で事前支給のソフトボトル使用を提唱 ランの夜間照明:増設 ボディナンバー・スイムチェック:体育館から海側テントに その他
安全性の向上及び効率化が図られている。
■熱中症対策
今後、佐渡を含め灼熱ランとなるレースでの水分補給は、「マイボトル」の携行によりエイドステーション間でも小まめにできるよう検討すべきかもしれない。
7月から9月に開催され、30~35℃が予想される大会では熱中症予防のため、選手自身でも対策を立てておきたい。今回、大会からソフトタイプのボトルが支給されているが、バイクボトルでも良いと思うし、使いやすいものを試しておきたい。
今に始まったことではなく、すでに実施している選手もいるが、大会からの支給があったことであらためて考えるきっかけとなった。
■島祭りParty
レースの前々日に「島祭りParty」が開催された。
選手は無料で参加ができるパーティーで約850名が参加、佐渡の食、伝統芸能、地酒などでもてなしてくれる。このようなパーティーは他の大会でも開催されているが、特筆すべくはそのクウォリティの高さにあるだろう。
2016年から開催しているこのパーティーは、まずは、「おもてなし」として入口から地元のしまびと元気応援団、健康推進員、農協女性部のみなさんが拍手で迎えてくれる。演目では太鼓芸能集団「鼓童」によるスペシャルライブで盛り上げてくれる。鼓童は1981年創設、佐渡を拠点とし、国際的な活動を展開するプロの和太鼓集団。また、煮しめ、いごねり、イカ飯などの地元食と多くの地酒のほかスイーツまで充実し、選手たちも大満足、満腹となる手作りのパーティーだ。
唯一無二のあたたかい雰囲気を持つこのパーティーに参加しないのはもったいない。
■国内屈指
佐渡名物の花火でこの大会を締め括る
トライアスリート松田丈志、開催してくれたことに感謝
恒例となった巨大クラッカー
佐渡大会は、距離、コースなど競技性も高い最高峰の一つと言える。また、長年開催され、歴史ある国内を代表する大会であることも間違いない。ただそれだけではない。
佐渡は最後までいないとダメだ。ラストプログラムの花火は必見だからだ。21時30分全競技が終了した直後、照明が落とされ、花火が上がるのだ。朝6時スタートし、一日走りまくったトライアスロンの終わりを告げる。音楽が流れ、花火がシンクロし、最高のラストを演出してくれる。
ゲスト選手の松田丈志さんは、今年ついにオンヨネカップをコンプリートした。4月の佐渡トキマラソン、5月の佐渡ロングライド210、7月の佐渡オープンウォータースイミング、そして、9月の佐渡国際トライアスロン大会を全て完走している。
これは昨年のフィナーレで宣言してしまったことなのだが、見事に「有言実行」となった。一昨年、佐渡Aタイプを完走している松田さんだが、今回は200番以内、13時間以内を目標に掲げ、本格的に取り組んでの参加だった。目標達成はできなかったものの総合218位は申し分ない結果だ。
「開催してくれてありがとうございます。」と松田さんが言った。前述の通りだが、台風により開催が危ぶまれたが、無事に終えることができた。松田さんの一言は、選手全員の総意でもあったことだろう。
過去にも著名な人が挑戦している佐渡大会だが、松田さんは今や「佐渡の顔」と言っても良いだろう。
■Race Result
完走者全員が勝者
Aタイプ男子優勝の 星大樹選手、昨年同様圧勝の連覇
Aタイプ女子優勝の齋藤恭子選手
Bタイプ男子優勝の山岸穂高選手
Bタイプ女子優勝の平柳美月選手
夏のメインレース、佐渡が終わった。
このレースに向けて一年頑張って来たはず。ロングであり、更に制限時間も厳しいため、相当なトレーニングを積んで臨んだことだろう。個人差はあると思うが、時間、費用、日々の生活などもバランスを取りながら「スタートライン」を目指す。
目標は順位なのか、時間なのか、完走なのか。そして、参加選手の年齢が高くなる中では「年齢」にも抗わなければならない。特に60歳を超えての完走は特別と言っても良いだろう。
振り返れば早かったかもしれないが、寒かった日も暑かった日も頑張ったトレーニングが思い出される。トレーニングもレースもハードな佐渡は本当に大変なことだが、それだけに挑戦する価値が大きいのだろう。
全ての選手に拍手を送りたい。
【2024 佐渡国際トライアスロン大会】
《日時》 2024年9月1日(日)6:00~21:30
《参加選手(Aタイプ)》
総エントリー数 / 最終出走者数 / 率 954名 / 787名 / 82.5%
完走者数 / 率 581名 / 73.8%
《総参加選手》
総エントリー数 / 最終出走者数 / 率 1808名 / 1465名 / 81.0%
完走者数 / 率 1207名 / 82.4%
《台風による辞退申請者》
総数333名
《Aタイプ 男子》
1位 星 大樹 No.1001 9:37:11 (S1:03:33/B5:05:47/R3:25:04) 2位 渡邉 優介 No.1112 9:54:38 (S1:09:35/B5:30:00/R3:11:52) 3位 丸尾 公貞 No.1118 10:05:52(S1:02:03/B5:30:35/R3:29:33)
《Aタイプ 女子》
1位 齋藤 恭子 No.2002 12:24:43(S1:23:09/B6:42:02/R4:13:35) 2位 竹内 香織 No.2004 12:28:10(S1:17:02/B7:04:46/R3:56:23) 3位 宮崎 美菜子 No.2034 12:39:37(S1:15:32/B6:44:46/R4:33:22)
《Bタイプ ・ナショナルチャンピオンシップ男子》
1位 山岸 穂高 No.3006 4:51:43(S0:30:23/B2:53:37/R1:25:25) 2位 古謝 孝明 No.3040 4:55:10(S0:27:07/B2:52:09/R1:33:43) 3位 梅田 航平 No.3011 4:57:54(S0:30:13/B2:54:33/R1:30:49)
《Bタイプ・ナショナルチャンピオンシップ 女子》
1位 平柳 美月 No.4001 5:19:15(S0:31:27/B3:06:08/R1:38:24) 2位 油井 あまね No.4006 5:28:55(S0:31:26/B3:12:50/R1:41:43) 3位 前田 乙乃 No.4008 5:31:18(S0:30:00/B3:15:08/R1:43:35)
《RAタイプ》
1位 the S No.7001 11:33:05(S1:21:38/B5:32:29/R4:36:15) 2位 アクシー・シュースイ・潟鉄 No.7004 11:36:13(S1:14:17/B6:20:07/R3:59:00) 3位 Team HT No.7007 11:44:27(S1:11:27/B7:37:18/R2:53:19)
《RBタイプ》
1位 small flat stone No.8008 5:09:07(S0:30:26/B3:13:23/R1:23:10) 2位 佐渡ガス&静岡ガス No.8007 5:40:21(S0:32:18/B3:37:42/R1:27:30) 3位 葬送のアラフォー No.8026 5:41:13(S0:35:16/B3:42:43/R1:20:02)
全ての記録:http://www.scsf.jp/triathlon/2024result.html
■猛暑の中のレース
今回は何とかなったが。。。
今後、7~9月開催のレースは猛暑により中止や短縮などが想定される。
昨年の佐渡は、8月下旬に新潟地方も含め、猛暑に見舞われ当日まで気温、水温が下がることを待った。実行委員会への「開催してほしい」旨の連絡が殺到していたようだが、安全第一の中で慎重に進めていた。
今年の4月から環境省が運用を開始した「熱中症特別警戒アラート」も大きく影響してくるだろう。前日14時の発表となるため、遠征となるレースでは現地入りしてから告げられることになってしまう。
レースの開催が前日まで分からない。佐渡A完走のためには9~12ヶ月の期間は必要、距離で言えば5000~7000km程度だろうか。そんな積み上げが前日に一気に水の泡となってしまう。出場権の当落で運を使ったのに、最後の最後にまた運試しとなるのだ。
ただ、嘆いていても仕方ない。選手は選手としてできることをやろう。開催になったとしても相当な暑さになることは間違いない。その中でも耐えていける、余裕を持って走れる、そんな身体作りが必要となる。
いろいろ険しい道のりだが、その先のゴールは格別なはずだ。来年も花火を多くの選手と共に見たい。
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Club GERONIMO Challenge 2024 佐渡組
「今年も夏が終わった。」
Triathlon “ MONO ” Journalist Nobutaka Otsuka