Collins Cup 2022

8/20(土)昨年に続き、2回目のコリンズカップが開催された。

コリンズカップは、PTOの主催するメインイベントで、ショートからロングまでのトッププロが一堂に会し、「ミドル」で対決するという異色の設定となっている。ショートのスピードか、ロングのスタミナか、まさにトライアスロンの「異種格闘技」だ。

開催国は昨年と同じスロバキアとなる。スイムはドナウ川を泳ぎ、バイク、ランはフラットの高速コース。距離は、スイム2km、バイク80km、ラン18km、合計100kmに合わせたミドルタイプでアイアンマン70.3より13km程短い。昨年は雨が降り、落車も出ていたが、今回は天候に恵まれている。

また、地域別のチーム設定となっていて、ヨーロッパ、US、インターナショナルの3チーム各12名(男子6名女子6名)の対抗戦となっている。ヨーロッパは、ドイツを筆頭に、ノルウェー、スイス、イギリスなどで構成、USはもちろんアメリカ勢、そして、インターナショナルは、オーストラリア、カナダを筆頭に、ニュージーランド、バミューダなどのチーム編成となっている。

レースは、各チームから1名づつがスタートし、3名で12レースが行われる。3名ではあるが、「一対一」の感覚で、各レースの中で順位を決定する。トライアスロンは「個人戦」の感覚が強い中でのこの設定は、ショートのMixリレーのように新たなカタチとして、チームの選手同士の一体感などが伝わってくる面白さがある。

 

≪Collins Cup≫

ヨーロッパ、US、インターナショナルの各地域の PTO 世界ランキングの上位 4名の男女は、自動的にコリンズ カップのクウォリファイを得ることができる。 また、各チームに男女2名ずつのキャプテンズピックとしてワイルドカードがあり、PTO世界ランキングに関係なく選出され各チーム12名が決定する。今回チームヨーロッパのワイルドカード4名の内、3名が優勝となるヨーロッパの層の厚さを感じる結果が出ていた。

≪PTO≫

Professional Triathletes Organisationの略となる。ロング、ショートでのカテゴリー分けではなく、プロトライアスリートのための組織で、非営利団体となる。その運営は、ゴルフのPGA/LGPA やテニスのPGA/LGPA をモデルにしている。各レースに設定されたポイントによるランキングがタイムリーに決定するシステムで、現在、今回のコリンズカップでそれぞれ最速タイムのブルンメンフェルトとリフが1位となっている。

 

©︎Collins Cup

■Race Recap ( Pickup Match 1,4,5,6,7,8,10,11)

©︎Collins Cup
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≪ Match 1≫

今回のコリンズカップにおいて最大のトピックスは、「Match 1」だったのだが。。。それは「リフ vs ダフィ」となったからだ。ロングとショートの女王の直接対決だけに、注目は集まった。リフは5月のセントジョージで5回目のアイアンマン世界選手権覇者で、圧倒的な強さを持っている。一方、WTS横浜大会でもお馴染みのダフィは昨年のオリンピックTOKYO2020のゴールドメダリストだ。ランのパワフルなスピードはやはり圧倒的な速さで安定している。

スイム序盤動きはなかったが、中盤からダフィは単独で先行となった。やはりショートの女王を感じさせる泳ぎだった。全体1位のタイムでスイムフィニッシュ、2位のリフに25秒の差をつけ、バイクに移った。

ところが、バイクの先行は20分程度、明かな速度差でリフにパスされた。バイク終了時で5’45″差となった。ラン18kmでの逆転は厳しくなったが、どこまで攻めの走りが観れるのか、期待は最後までかかっていたが、結果は更に引き離され、勝負はロングの女王に軍配が上がった。

それぞれ、主戦場における戦い方の違いがあるため、単純な勝負とは行かなかったが、今後、再びの対決を見て見たいものだ。

リフのコメント(PTOサイトより)「It feels really amazing to be coming back after last year I could perform well in all three and feel like I’m a complete athlete again. When I got to the last km I heard it was 5s over 5 min so I pushed as hard as I could to try to get the max 6 points.」

「Last year I raced while I was sick. I had blisters all over my legs, I had shingles and you obviously can’t race like that. This morning I went for a jog and my heart rate was about 30 beats lower than last year.」

 

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≪ Match 4≫

最後の国際レースとなったスピリグが勝った。2012年ロンドン五輪では金メダル、2016年リオ五輪では銀メダルを獲ったショートのレジェンド。スイムバイクランのバランスの高さは最高レベルで、全体でも4位のタイムを叩き出している。最後のビッグレースを飾る優勝は、内容とともに流石の走りを披露してくれた。

オリンピック後、WTSにも出場していたが、近年ではミドル系をメインに活動していた。バイクの強化も徹底され、バイクラップを獲っているリフとの差は2’30″が驚きのタイムとなるスイスの40歳。まだまだ十分戦えるパフォーマンスだ。

スピリグのコメント(PTOサイトより)「I was pretty nervous. I felt pretty good but didn’t know what to expect. I had the extra pressure from the team. I was nervous but came out of the water and was 25 seconds behind Lopes and knew I could make that.」

「I was really keen to show I was the right pick and I deserved the spot and I’m really happy I’ve helped the team to have a good performance.」

「I’m just happy to have a good performance in my last international race and it’s nice to go out like that.」

 

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≪ Match 5≫

昨年より大きくジャンプアップで優勝したローレンス。アイアンマン70.3での実績は極めて高く、スイムを武器に、バイクとランは安定した走りをしている。マッチ5では昨年同様、オーストラリアのソルトハウス同組となり、昨年の悔しさを晴らす結果となった。

使用するバイクはNo.1シェアとなるトレックのSpeedconceptで、ウィナーズバイク唯一の使用選手となっている。同じくトレックサポートのライバル、ソルトハウスとはバイクでの抜きつ抜かれつを展開、ランで勝負を決めている。

 

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≪ Match 6≫

ベテランハウグも優勝している。ショート出身で近年はロング、ミドルで活躍している。2019年のKONAで優勝するなど、アイアンマンの顔の一人でもある。5月のセントジョージではランの追い上げで3位入賞となった。

今回もバイクからのペースアップで、得意のランで勝負を決めるパターンとなっている。ランはリフより3’25″速い堂々のラップ1位には脱帽となる。来年40歳を迎えるが、驚異的なランは、一切衰えを感じさせないベストランナー。

ハウグのコメント(PTOサイトより)「My main goal was to stick with the girls on the swim because I’m with them in T1 then everything is in my hands and it was. Jackie did a great job on the bike until the turning point and then I took control and then just wanted to run fast.」

 

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≪ Match 7≫

男子の最初のレースは、ブルンメンフェルトのグループとなったが、やはり、ブルンメンフェルトのダントツの優勝となり、全体でも1位のタイムでパーフェクトな走りを見せた。このマッチで注目となっていたのは、キャプテンズピックで参戦となったヘイデンワイルドだった。WTS横浜でもお馴染みの選手だが、ブルンメンフェルトもショートでの走りを知っているだけに警戒していたようだったが、今のブルンメンフェルトに死角はなかった。

全体からのタイムは、スイム9位、バイク3位、そして、ラン1位となるいつものペース配分でコントロールしている。スイム9位と言ってもトップから1’18″差のため、ミドルの時間の中では十分に吸収できるタイムと言えるだろう。ショートは、タイムよりメンバーと順位と重要となるが。

前代未聞の「二刀流」を成し遂げたブルンメンフェルトは、ショートのスピードとロングのスタミナを併せ持ち、盤石な安定感のあるレース運びとなり、大会レコードで、また一つ大きな足跡を残したのだった。

ブルンメンフェルトのコメント(PTOサイトより)「It’s tough to come from sprint distance to 100km but I knew that Hayden was one of the ones who could do it. That’s why I stayed behind until 50km or so on the bike because that’s when it starts to get hard and was super stoked with my run legs.」

「The support out on the course was giving me a little bit more energy and it’s such a great place.」

 

©︎Collins Cup
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≪ Match 8≫

サンダースとロング。この二人はいつも「イベント」を盛り上げてくれる。この2選手は年齢差はあるものの、各種目の展開が似ている。セントジョージでも終始近い位置で走っていたが、今回は、最初から最後まで、ずっと一緒に走っていた。

最後数百メートルを残し、サンダースがペース上げ仕掛けたが、ロングはついて行けず、スパートに成功した。ただ、サンダースは何度も後を振り返るなど、余裕は全くなかったようだ。4月アイアンマン70.3オーシャンサイドの花道での競り合い、5月セントジョージラスト500mでの逆転など、ドラマチックな展開はサンダースの専売特許か。

サンダースのコメント(PTOサイトより)「Not bad for a couple of duathletes! It was deeply personal for me too. I told Sam, let’s put this guy in his place. I like Sam Laidlow but I think it got too personal, so I think we were on the same team on this one.」

「This is totally next level. We were both here last year and it’s going in the right direction and we’re showing the world and people are excited about it.」

ロングのコメント(PTOサイトより)「I had absolutely no option but to back this up. The song in my head was Aretha Franklin R. E. S. P. E. C. T. When Lionel and I are working together the strategy is to inflict as much pain on each other as possible.」

「Better just to do what you got to do and get the job done.」

「I think he learnt his lesson here and think some respect is due but the race is done, we’ll have a beer and we’ll become friends and Sam will have to buy all of the rounds!」

レイドローのコメント(PTOサイトより)「I knew I’d come out with a lead on the swim but I got onto the bike and my stomach wasn’t taking on any nutrition. I don’t want to make excuses but it just wasn’t my day. Once I stopped for the toilet four or five times, towards the end I started to feel OK again so there’s still hope I guess!」

「They beat me and were better today. There will be other races. I can’t predict how I would have done if it wasn’t for that, they were just better guys today. II’m definitely hungry to have another shot, it’s just fuel to the fire. I’ll be back.」

On embrace at end with Sam Long

「I appreciated that [the embrace] and their respect. They’ve got more experience than me and achieved a lot more, so it was nice to share some kind words even after my failure.」

 

©︎Collins Cup
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≪ Match 10≫

キャプテンズピックのアーロンロイルが勝った。スイムはダントツの22分台は全体でもラップとなる。その後も安定した走りでまとめ、全体順位を9位としている。ロイルは、TOKYO2020も出場しているショート系だが、今年からはミドルを中心に活躍していた。今後の活躍が大いに期待される選手だ。

そして、このマッチではあのパトリックランゲがいた。2017、2018年KONAを連覇してるメジャーだが、昨年に続き、今年も不発に終わってしまった。3種目全てに精彩を欠いてしまっているが、「次」はランゲらしい走りを見せて欲しい。

ロイルのコメント(PTOサイトより)「I think especially for me I prefer a bit of a dynamic course where there are some hills so it made for a really hard day. I knew I had to swim hard which I did and when I put myself in that position I knew there’s no looking back now. At times it’s just playing with your mind that you’re starting to slow down or they’ll start catching you. And thinking they are catching you when you turn around on those long straights and seem closer than they are.」

 

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≪ Match 11≫

第2のブルンメンフェルトとも言えるグスタフ・イデン。マッチ11では余裕の圧勝だった。もはや各マッチではなく、全体順位が気になる選手だが、昨年と同じ2位となった。ブルンメンフェルトと同じノルウェー選手で、ほぼ互角の力を持っている。5月のセントジョージでは体調不良により、DNSとなっているため、ブルンメンフェルトに先を越されている感はあるが、極めて期待の大きな選手だ。

今回のレース展開もブルンメンフェルトとほぼ同じで、やはりランのパフォーマンスが光っている。同じチームヨーロッパのため、直接対決はないが、見てみたいという期待は大きいだろう。

 

©︎Collins Cup
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■Race Result

Team EUROPE 53points

Team INTERNATINAL 38points

Team US 22.5points

昨年に続き、チームヨーロッパの圧勝となった。12レース中の8勝となったヨーロッパ勢は強過ぎる結果だった。インターナショナルは4勝、そして、USは無勝だった。しばらくはこの傾向が続くのだろう。ブルンメンフェルト、リフの存在は大きく、「トライアスロンのヨーロッパ」のイメージは更に強くなっている。

一方で、WTSで活躍していたジェントルは、ショートからミドルへシフトし、安定した成績で、今回も優勝となっている。タイムもリフに次ぐ好タイムだ。ロイルもショート選手ながらミドルで結果を出して、今回キャプテンズピックで参戦、優勝となっている。ともに元トライアスロン大国オーストラリア選手だけにオージー復活を期待したい。

実力は選手個人によるが、ミドルとなるコリンズカップはロング系の選手が強い。やはりバイクパートの走り方を考えるとロング系の優位性が出ている。ショート系選手のトライアスロンバイクによるDHポジションもやや不安定感を感じる選手も見受ける。このあたりにショート系選手がどの程度取り組めるかによって今後の勢力図に変化が出てくるかもしれない。

≪Highlights Video≫

 

 

■GERONIMO COUNT

バイクはたったの36台。セントジョージの3000台とは比較にならないが、その少ない数から何が見えてくるのだろうか。やはり、トッププロがどんなバイクを使用しているのか、エイジではないため、「メーカーの動き」も見えてくるバイクの使用率だ。WTS横浜大会も同様だが、KONAのようにエイジの「人気ランキング」とは少し異なってくる。

結果は以下の通りだった。PTOのプロフィールとは異なるバイクを使用する選手もいるが、今回のコリンズカップで使用されたバイクとなる。

Team Athlete Bike
EUR Daniela Ryf FELT IA
Laura Philipp CANYON SPEEDMAX
Kat Matthews BMC TIMEMACHINE
Nicola Spirig SPECIALIZED SHIV
Holly Lawrence TREK SPEEDCONCEPT
Anne Haug CERVELO P5
Kristian Blummenfelt CADEX TRI
Sam Laidlow TREK SPEEDCONCEPT
Magnus Ditlev SCOTT P6
Patrick Lange CANYON SPEEDMAX
Gustav Iden GIANT TRINITY
Daniel Baekkegard CANYON SPEEDMAX
US Sarah True SPECIALIZED SHIV
Chelsea Sodaro BMC TIMEMACHINE
Skye Moench TREK SPEEDCONCEPT
Sophie Watts SPECIALIZED SHIV
Jocelyn McCauley VENTUM ONE
Jackie Hering BMC TIMEMACHINE
Ben Kanute TREK SPEEDCONCEPT
Sam Long TREK SPEEDCONCEPT
Rudy von Berg TREK SPEEDCONCEPT
Jason West VENTUM ONE
Matt Hanson QR V-PR
Chris Leiferman BMC TIMEMACHINE
INT Flora Duffy SPECIALIZED SHIV
Ashleigh Gentle SCOTT P6
Paula Findlay SPECIALIZED SHIV
Vittoria Lopes SPECIALIZED SHIV TT
Ellie Salthouse TREK SPEEDCONCEPT
Tamara Jewett TREK SPEEDCONCEPT
Hayden Wilde SPECIALIZED SHIV
Lionel Sanders CANYON SPEEDMAX
Max Neumann BMC TIMEMACHINE
Aaron Royle GIANT TRINITY
Jackson Laundry VENTUM ONE
Braden Currie FELT IA

※ Counted by Triathlon GERONIMO

シェアNo.1はトレックの8台だった。次いでスペシャライズドの7台となる。KONAで不動の地位を誇るサーヴェロは3台だった。やはり、トライアスロンのみならずロードレースも含め、トレック、スペシャライズドの注力度が表れている。

トレックは昨年のコリンズカップでまだ新型投入されていなかったが、昨年11月にローンチされた「TTベース」の新型SPEEDCONCEPTで、存在感を大きくしていた。台数は8台だが、コリンズカップでシェアを獲っていることは、KONAのSUB10選手に影響を与えるのではないだろうか。

また、レース結果から見た場合、ウィナーズバイクNo.1は、ブルンメンフェルトが使用するカデックスを含めたジャイアント勢の3台だった。勝った10選手は7ブランドに渡っているため、目立った結果ではないが、常に話題となるブルンメンフェルトとカデックスだけに、しっかりと結果を残したと言えるのだろう。その他2選手が勝ったのは、スペシャライズド、キャニオン、スコットとなった。

 

©︎Collins Cup

■PTO Official Bike ” CANYON “

キャニオンは、3年契約の公式バイクパートナーとなった。現在、キャニオンはトライアスロンのみならず、自転車レース最高峰のツールドフランスでも不動のブランドとなっている。5月のセントジョージでは、フェルト、スペシャライズドとともに高いシェアを持つ、トライアスロンのトップブランドとなっている。

今回は、サンダーズとベックガードにより、2勝を挙げている。一昨年11月リリースの現行SPEEDMAXは、キャニオン史上においてトライアスロンへのターニングポイントなったモデルで、その設計は、随所において、「トライアスロン専用」としてのこだわりの仕上がりとなっている。

 

 

 

 

「昨年優勝の「ヨーロッパ」は強く、今年も勝った。やはり、メンバーを見ると見えて来てしまうものがあるのも現実で、このあたりのバランスを考えた「チーム分け」も必要なのではないだろうか。今回、チームヨーロッパ8勝、USは1勝も出来なかった。ヨーロッパ勢が強いのは今に始まったことではないが、アメリカやオーストラリアの巻き返しを期待したい。」

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka