7/14(日)開催された全日本トライアスロン皆生大会を参加選手にTriathlon GERONIMOレポーターとして振り返って頂きました。
<<憧れの皆生大会で完走を目指して>>
6年前、私は皆生に応援に来た。大会側が用意してくれた応援バスに乗ったのだが、応援者にとっても厳しい暑さのなか、複雑なバイクコースを効率的に回り、少しでも涼しい場所で観戦できるよう配慮していただいたほか、お弁当や冷たい飲み物もたくさんいただいた。ゴール後に選手の疲れ果てた姿、でも溢れ出る達成感。他の大会では感じたことのない雰囲気を目の当たりにしてから、皆生は私の憧れとなった。
本大会では出場するにあたって、一人一人の過去の実績と皆生に対する熱意が厳しく審査される。出場人数も他の国内ロング大会より少なく、出場するまでのハードルが既に高い。大会のホームページにも「トライアスリートは灼熱のなかで厳しいコースを競技することを前提に練習を積んでいるはずである。」という旨の記載があり、コースと環境に対する主催者の自負を感じる硬派な大会である。
[昨年も挑戦したが。。。]
【昨年は熱中症でリタイア、今年は一転涼しい天候に】
猛烈な蒸し暑さとバイクコースの厳しいアップダウンが有名なコースで、昨年の本大会で私は熱中症になり、ランの序盤でリタイアした。今年は再チャレンジのための申し込みをするときから勇気が必要だったが、人気大会の貴重な出場枠を一ついただき、リベンジさせていただけることになった。身の引き締まる思いで皆生のバイクコースを想定した練習を積んできた。
灼熱地獄を恐れていたものの、今年は一転、梅雨前線が停滞し涼しい天候となった。「水温が低いのではないか。」「バイクコースの路面が濡れて落車のリスクが増える。」「夜のランでは体が冷えるかもしれない。」といった、皆生らしくないことを心配してのレースとなったが、このような絶好の好機を逃す訳にはいかない。今年完走できなければ、一生、皆生を完走できることはできない。
【スイム】
スイムのスタート会場は佐渡や宮古島に比べるとこぢんまりとしているが、大会当日は応援者でにぎわっており、否が応でも高揚感、緊張感が高まる。レース後に仲間から聞けば、不安感から私は早口になり、仲間を置いて試泳会場に行ってしまうなど、相当テンパっていたそうである。
速い選手は前方でフローティングスタートを選択するが、あくまで完走目的の私は後方の浜辺から安全にスタートすることを選択。事前情報では「沖に出る最初の数百メートルの波がやや高い」とのことだったが、個人的にはさほど波が高いとは思わなかった。スイムコースは浜辺に沿ってほぼ直線に1.5km泳ぎ、中間地点で一度浜辺に上がってから再び帰ってくる単純なコース。往路は向い潮のなか、後方からスタートしたためドラフティング効果が得られず、去年より時間がかかった。しかしながら、今日一日は長い!!焦らず、慌てないことを肝に銘じた。復路は追い潮に転じるなかで少しずつだが追い付いて、落ち着いてスイムアップ。
【T1】
本大会に参戦している友人数人と会話することができ、ホッとした。バイクスタート直前のエイドではボランティアの方が私の名前を呼んでくれ、「おにぎり、温かいお茶がありますよ」と勧めてくれる。「ここで一分、一秒を争ってもしょうがないし、胃腸が元気なうちに少しでも食べなければ」といただいた。それにしても温かいお茶がありがたいなんて、例年の皆生では考えられないことだ。
【バイク】
最初の40kmくらいは平坦であるが、その後名物のヒルクライム、厳しいアップダウンを経て、最後の30kmくらいがまた平坦となるコース。選手全体ではTTやロードバイクにDHバーを装着した自転車が多かったように思うが、長い坂を少しでも軽く登りたいとの考えから、私はDHバーを着けないロードバイクを選択。昨年は灼熱地獄のなか、ヒルクライムの中盤の50km地点で熱中症のために嘔吐してしまった。今年は涼しく、順調に登れることが嬉しい。雨が降る山中では合羽を着たたくさんのボランティアさんが支えてくださる。エイドをお手伝いする子供たちは元気いっぱいで、こちらが元気をもらう。頑張らせてもらえる環境に感謝した。やはりこの恵まれた天候を完走につなげなければ!
補給は猛暑を懸念してボトルを3本携行できる準備を整えていたものの、今年は2本で充分であった。コース上では自分がかなり後方にいることは分かっていた。しかし自分が目指すのはタイムや順位ではなく、あくまで完走。「バイクの制限時間に間に合えば、ランには6時間もらえる。今日の涼しい天候ならば、6時間あればランも走りきれる。」と考え、登り坂でも平坦でもやはり慌てず、軽いギアを回すことに専念した。そして天候が見方した今年は、去年から30分ほど短縮してバイクアップ。
【T2】
去年も感じたことだが、T2で見守ってくださる女性マーシャルがとても温かい。去年はあまりの暑さに、思わず「走れない、つらい。」ともらしたところ、女性のマーシャルが「取り敢えず、少し行ってらっしゃい。そうすれば案外、楽になるかもしれないし。」と優しく言葉をかけてくださった。今年の私は弱音を吐くことはなかったものの、その場にいた女性マーシャルの選手を見守る温かいまなざしはしっかりと感じ取ることができた。
【ラン】
去年はランの序盤でリタイアした。今年、私にとってはここからが本当のレースである。ランは皆生温泉から大きな街道沿いの商業地区を抜け、米子空港を経て境港まで行って帰ってくる平坦なコース。交通規制を守るため信号で止まることや、歩道橋を渡ることは有名である。
ランで自分で決めたことは、「笑顔で走ること」、「仲間とすれちがったらエールを送ること」の2点。確かにこれまで8時間近く動き続いているのだから、疲れていないはずはない。でも去年リタイアを申し出たエイドを過ぎ、去年は渡れなかった横断歩道、渡れなかった歩道橋、見られなかった米子空港や境港、全てが嬉しくて笑顔しか出てこなかった。頑張っている仲間を見られれば、こちらが元気をもらえる。エイドステーションではたくさんのボランティアさんが自分の名前を呼んで応援してくれ、中高生がスペシャルニーズを首尾よく用意してくれる。さすがにランも後半を過ぎると体のダメージが大きくなったが、真っ暗になっても全ての交差点でボランティアさんが安全を守ってくれ、沿道のお店のお客さん達もコースに出てきて「あと少し頑張って。」「お帰りなさい。」と声を掛けてくれる。やはり笑顔しか出てこない。最後の歩道橋を渡り、高架下をくぐり、ゴールとなる競技場に入ったときは「あぁ、一年間この景色が見たかったんだ。」と感無量になった。
冒頭に記したとおり、皆生大会は灼熱のイメージとタフなコース設定から硬派な大会と思われているが、私にとっては大会関係者のみなさんと4,200人のボランティアさん(参加選手数に対するその人数は日本屈指なものとのこと)、沿道で途切れることのない応援のみなさんが支えてくださるとてもアットホームな大会だった。
Reported By Tomomi Handa
KAIKE2019:http://triathlon-geronimo.com/?p=31049
「おめでとうございます。笑顔で走れましたね。」