【取材予定】第37回全日本トライアスロン宮古島大会

待ちに待った。4年ぶりに宮古島大会が開催される。

今年で37回目となる全日本トライアスロン宮古島大会。国内に4レースしかない「ロング」で最も大きな大会だ。ロングとしては国内最多の定員1200名(例年は1700名)であり、憧れの南の島というロケーションが最大の魅力となっている。また、一週前に石垣島大会もあるが、国内ではシーズンの皮切りとして、最も話題になる大会でもある。ちなみに、今回、「第37回」となっているが、実際は、36回目の開催となる。コロナ禍の3回は、延期や中止の扱いとなり、第36回は中止となっている。

今回のコースだが、それまでと比較するといくつか変更となっている。スイムは前浜ビーチで2018年からの3kmを1周ではなく、1.5kmを一度上陸し2周するコースで、スタートは、300名づつの4ウェーブとなる。制限時間は1周55分の合計1時間50分で、根本的な潮流の強さは別として、変則関門はない。尚、スイムは1周でスキップが可能となっている。バイク123kmとなり30km程度短縮されている。基本的な島のトレースは変わらないが、伊良部島や来間島には渡らない。ランは完全に変更となっている。ゴールとなる宮古島市陸上競技場の周辺市街地を15km2周回となり、観戦、応援のしやすいコースだ。距離は短くなったが、十分、宮古島を楽しめるコースになっているだろう。

今大会では、距離の短縮や定員の減員など、完全にコロナ禍前には戻ってはいないことをあらためて考えさせられる。昨年の佐渡などは、ランコース以外、ほぼコロナ禍前に戻っていたが、規模や地域の事情もあり、安全第一の判断なのだろう。それでも、国内屈指の象徴的な大会の再開は、否応なしに盛り上がる。

帰ってきた「宮古島」。やはりなくてはならない大会なのだ。

完走率にも注目している。トライアスロンの元祖「IRONMAN」から国内では「鉄人レース」などと呼ばれているほど、ハードな競技となることは周知の通りだろう。概ねのイメージだが、ミドルの完走経験を持ち、直近の9~12ヶ月は相当な練習が必要になる。ロングは長丁場のため、実力の他に運もあるが、基本的には練習量が結果に繋がっている。2012年以降の8回の完走率は90%を切っているため、今大会では、多くの選手に完走してほしい。ちなみに1988年の第4回大会では、驚異の「98.3%」となっていた。(出場数:605名)

この完走率は「安全性」とも大きく関わっているだろう。レースまでの練習は当然だが、それでもその時に合わせることは簡単ではない。体調不良に見舞われる場合もある。安全第一を考えた時に、勇気ある決断をすることも必要となる。

【GERONIMO COUNT】

Triathlon GERONIMO のメインメニューだ。2015年から各大会(1000人以上が基本)を通して年間1万台のバイクをチェックし、9年目に入る。昨年は、KONAの5000台もあり、約12000台となっていた。

宮古島は、16年からカウントを始めて、今年で5回目となる。宮古島の特徴的なトライアスロンバイク使用率は、前回2019年は51.8%、2018年は52.0%だった。2018年当時の選手は、40前半、後半、50前半の3エイジカテゴリーで58.4%を占めていた。宮古島でのトライアスロンバイク使用率は、2016年のカウント以降、国内では最も高いトライアスロンバイク使用率となっているが、2017年の53.1%を最高に僅かながらからポイントが落ちていた。

あれから5年。エイジグループはそのまま上がっているのだろうか。他のレースからも40後半から50後半までの3カテゴリーが多くなり、宮古島でも同様の状況が想定される。トライアスロンバイク使用率への変化はあるのだろうか。

そして、ディスクブレーキ使用率はどうなっているのか?昨年の国内ロングでは、皆生17.1%、佐渡A23.2%、そして、海外だが、KONAではGERONIMO COUNT過去最高の36.74%となっている。宮古島は更に時間経過、そして、最高の舞台の一つでもあるため、30%台が予想される。

このカウントでは、単にバイクの新型などのチェックではなく、そこから見えてくる「選手像」こそが、その後のバイクトレンドとなってくることに着目している。特に「高齢化」が進む国内トライアスロンにおいて、バイク機材に対する動向、傾向は興味深いものがあるのだ。

 

 

■開催日 2023/4/16(日)

■競技

スイム3km / バイク123km / ラン30km

※詳しくは、http://tri-miyako.com/

■前回(2019年)レポート http://triathlon-geronimo.com/?p=29669

 

 

「距離は短くなったが、やはり日本を代表する大会だ。選手には大いに楽しみ、積み上げたものをしっかりと出し切ってほしい。」

BOSS-N1-S
Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

2022佐渡国際トライアスロン大会 A type GERONIMO COUNT

3年ぶり3回目のバイクカウントとなった佐渡大会。国内では久しぶりのロング(通常距離)を見てみた。

コロナ禍ではあったが、取り巻く環境は以前よりは改善傾向にあったと思う。選手も二極化しているが、以前通りの練習をする選手も多くなって来ていた。全ては「気持ち」から始まる。それがあれば練習にも力が入る。また機材投入なども違ってくるだろう。

まず、前提としてどのような大会なのか。距離は国内最長のロングとなり、スイム4km、バイク190km、ラン42.2kmとなっている。バイクコースは概ね80%前後はDHポジションで走れるコースで上級者は更に長くDHで走るコースだ。アップダウンは、この長い距離の中にあるため、初めてこのコースを走る選手にとっては、ランに脚を残すのは容易ではない。ちなみに今回のランコースはほぼフラットなコースとなる。トライアスロンのバイクはランへの繋ぎ、コースによりバイクの走りも変わってくる。

ちなみにバイク車種の適性はコースだけで決まるものでない。それぞれのポテンシャル、メリットとデメリットなど基本性能はあるが、フィッティングがベターで乗りこなせていることが前提であることは言うまでもないだろう。例えば、普段トライアスロンバイクをメインに使用している選手が、ほとんど使用していないロードバイクで出場するということはナンセンスであるということだ。極論かもしれないが、より「人車一体」であることが望ましい。

そして、選手のモチベーションについては、概ね問題なかったと思われる。選考に関しては、20年からのスライドもあったため確実であり、新規も追加募集があったくらいの状況であり、その上で参加となった選手は3年ぶりのロングを待ち望んだ状況でのスタートだった。ただ、「レース勘」は完全に戻っていない選手も少なくなかったのではないだろうか。そんな状況での大会出場が前提の一つとなっている。

3年ぶりに開催された完全なロングで使用されたバイクはどんなバイクだったのか。機材は何を語ってくれるのだろうか。

 

2022 SADO  Bike “ GERONIMO ” Count

GERONIMO COUNTは2015年からスタートし8年目に入った。バイクカウントは、元々コナで30年以上行われ、その使用率が話題となっていた。同様のカウントではあるが、「その先」が知りたかった。例えば、コナという最高の舞台でも実際の「選手層」は幅広い。エイジでのハンデはあるが、やはり「SUB10」で使用されるバイク、本当に速い選手が乗るバイクは何か?サーヴェロのシェアはダントツトップだが、人気のあるモデルは何か?など、もっと突っ込んだ「本当のこと」が知りたい。また、ワンバイやハイハンズなどトレンド以前の「兆し」も発見したかった。そんなカウントだ。

Traiathlon GERONIMO「Journal – Race Report」

順位 ブランド 使用台数 使用率
1 cervelo 145 14.7%
2 SPECIALIZED 138 14.0%
3 TREK 126 12.8%
4 ceepo 92 9.3%
5 GIANT/Liv 43 4.4%
6 FELT 42 4.3%
7 cannondale 41 4.2%
8 CANYON 30 3.0%
9 BMC 26 2.6%
9 BS/ANCHOR 26 2.6%
その他合計 262 26.5%
不明 3 0.3%
未確認 13 1.3%
68 合計 987 100.0%

Counted by Triathlon GERONIMO

 

≪概況≫

今年の佐渡はサーヴェロが1位だった。国内の場合、KONAほどのダントツ感はなく、スペシャライズド、トレック、シーぽなどと三つ巴戦となることがほとんどだ。サーヴェロは2005年から今年5月のセントジョージのIRONMAN WORLD CHAMPIONSHIPまで16回連続トップシェアという脅威的な記録を更新中のスーパーブランド。

2018年と比較するとキャニオンやBMCがランクインしているが、特にキャニオンは世界的にも伸びていることはすでに周知の事実となる。トライアスロンばかりではなく、ツールドフランスなど世界最高峰のサイクルレースにも参戦し、セントジョージではフェルト、スペシャライズドと並ぶ「アイアンマン御用達」となっている。

そして、後述となるが、 TOP10への集中化とともに全体のブランド数の減少傾向が出ている。2018年の73ブランドから5ブランド減っている。「淘汰」されていると言うことなのか。

◆◆◆

今年の国内の最終戦となる佐渡大会のバイクカウントとなった。トライアスロンだけではないが、景気や昨今の事情に左右されながらの今シーズンだった。更に「高齢化」が顕著となるトライアスロンは特有の動きが見られる。

仕事ではない、遊びか。そうも言い切れないハードなトレーニングを週5日はこなしながら、仕事、家庭と言う「3つ皿」をバランス良く回し続けるトライアスリートは、理想的なライフスタイルの人々と言えるだろう。各方面の情勢が影響する生活そのものであり、バイク機材にも表れてくる。そこから見えてくる動向、傾向は大きく外れてはいないと考えている。

≪サーヴェロNo.1≫

今年の1位は、サーヴェロだった。やはり1位を予想する人は多いが、国内ではスペシャライズド、トレックの三つ巴の中で、国内を代表する佐渡大会で1位だった意味は大きい。今回は、115台がトライアスロンバイク、30台がロードバイクとなっているが、やはり、トライアスロン色の強さが出ている。サーヴェロ内の比率が高く、絶対的な使用台数となっている。サーヴェロはグレード設定の幅が広く、リーズナブルな価格設定も人気の理由だろう。

2位のスペシャライズドは、2022年のGERONIMO COUNTにおいて、石垣島、横浜(エリート)、彩の国、そして、皆生の4大会で使用率1位を獲っている。今回は、91台がトライアスロンバイク、47台がロードバイクとなり、更にトライアスロンバイクは現行のディスクSHIVが半数以上となる51台を占める人気となっている。SHIVは、エアロダイナミクス、軽量性、フューエルシステム、ユーザビリティなど、完成度の高いバイクとして人気だ。

3位のトレックは、アメリカのみならず、グルーバルなビッグメーカーとなり、その開発力は世界トップクラスとなる。素材を含め、ゼロから全てを作り出す完成度は極めて高い。そのためロングセラーとなるモデルも多い。今回は、42台がトライアスロンバイク、84台がロードバイクとなっている。これもトレックの特徴で、トライアスロンにおいては「ロードのトレック」となっている。一方で、トライアスロンバイクのSpeedconceptは人気があり、前世代モデルも色褪せない。

 

≪TOP10シェア≫

年度 総台数 TOP10台数 使用率
2022 974 709 72.8%
2018 970 652 67.2%

※未確認除く

Counted by Triathlon GERONIMO

Top10ブランドへの集中傾向が顕著となる。2018年との比較のため、その差が大きく見えるが、72%を超えていることは、大きなトレンドとして捉えることができる。国内では概ね70%前後、KONAでは78%程度となっている。後述のトライアスロンバイクをリリースするメーカーに偏るとともに、同ブランドでロードバイクも揃えるなども聞こえてくる。また、トライアスロンバイクは「究極」のバイクであるだけにその開発力を持つメーカーが強いという裏付けともなっている。

 

【トライアスロンとロードの比率】

トライアスロンバイクとロードバイクの比率は大きくはコースに左右されるイメージがある。佐渡は、平均すれば80%以上はDHポジションで走れるコースだ。特に72km地点の鷲崎から161km地点の小木までの約90kmは「DHポジション」がその走りを左右する。特に水津からの向かい風の中でのDHポジションは重要な「スキル」となるだろう。必ずしも選択理由は一つではないだろうが、複数回出場している選手は「コース攻略」からのバイク選択をしているだろう。

年度 使用台数 Triathlon 比率 Road 比率
2022 974 513 52.7% 461 47.3%
2018 970 447 46.1% 523 53.9%

※未確認除く

Counted by Triathlon GERONIMO

いずれにしても、このデータは2018年との比較ではあるが、6%以上高くなり、過去最高で、トライアスロンバイク傾向の強い宮古島の2019年51.8%を更新したことになる。僅かではあるが、そのトレンドが出ている。とは言っても国内でのトライアスロンバイク比率は低い。最高でも半数強ということなのだ。もちろん良い悪いではないが、より難しいトライアスロンバイクに挑戦することは、トライアスロン活性化であり、盛り上がりを示す一つの数値として捉えているだけに今後も注目したい。

 

≪TOP10ブランドのトライアスロンバイク比率≫

順位 ブランド 総台数 Triathlon 比率
1 cervelo 145 115 79.3%
2 SPECIALIZED 138 91 65.9%
3 TREK 126 42 33.3%
4 ceepo 92 76 82.6%
5 GIANT/Liv 43 8 18.6%
6 FELT 42 31 73.8%
7 cannondale 41 22 53.7%
8 CANYON 30 28 93.3%
9 BMC 26 22 84.6%
9 BS/ANCHOR 26 2 7.7%
709 437 61.6%

※未確認除く

Counted by Triathlon GERONIMO

TOP10ブランドだけを見ると、トライアスロンバイクは60%を超えている。トライアスロンバイクへのイメージはこのあたりが現実的かもしれない。全体の7割を占めるTOP10の内、6割がトライアスロンバイクであるということだ。

トライアスロンバイクで見れば、サーヴェロのダントツは周知のことだろう。スペシャライズド、そして、3位となるジャパンブランドのシーポの3社が大きく貢献している。その他、キャニオン、BMC、フェルトなどは、ブランド内での比率が高く「トライアスロン」のイメージが強いことを物語っている。

 

【新型率】

昨年から特に注目しているのが「新型率」だった。コロナ禍があり、その数値の比較は単純には出来ないが、推移を確認している。その手段として「ディスクブレーキ仕様」のバイクをチェックしている。

ディスクブレーキは概ね早いメーカーで2016年モデルから始まり、2018年から2020年でそのフェーズに入った。2020年以降では「遅い」と言えるのだが、昨今の事情も相まって、遅れたメーカーも少なくない。大会の中止とともに、生産の優先順位、材料、パーツ調達の困難など、向かい風が厳しくなってしまった。

そんな状況はまだ完全に打破できてはいないが、以前よりは戻りつつある。「2023年モデル」と言われるこの時期では、カウントデータの信憑性も高まってくるだろう。トライアスロンバイクでは、単なるディスク化ではなく、全体からの見直しが必要なため、ディスク化というよりは新しいコンセプトのもとに新型がリリースされているため、時間はかかったが、ほぼ出揃った感となっている。

大会   Disc   比率   Rim   比率
  Tri Road   Tri Road
佐渡 974 142 84 226 23.2% 371 377 748 76.8%
皆生 986 71 98 169 17.1% 311 506 817 82.9%
彩国 345 60 52 112 32.5% 87 146 233 67.5%
石垣 1010 240 23.8% 770 76.2%

※未確認除く

Counted by Triathlon GERONIMO

結果は上表の通りの結果となった。TOP10ブランドへの集中化、トライアスロンバイクへの傾向などが高かったため、30%超えを期待していたが、意外と低い数値となった。他の大会との比較は参考となるが、彩の国で30%を超えたため、今後の最低ラインはこのあたりに落ち着くかと思っていたが、皆生では軒並み低かった。

佐渡も開催は絶対ではなかった。直前まで慎重な判断が求められる状況ではあったためか、機材の新規導入には影響があったと思われる。確実に開催となれば、やはり、最大のモチベーションアップとも言える「ニューバイク」は誰でも考えたいことだ。

話を戻すが、「ディスクブレーキ」は必要なのか、数年までに議論されたことだ。全ては安全性と考えている。ブレーキだけでなく、その前に行なわれていたのが「ホイールの強化」だった。路面と接しているのはホイールであり、制動力はブレーキだけではなし得ない。その意味では、より安全性の高まったバイクが増える傾向にもあるということはとても大切なことなのだ。

 

【人気のバロメーター】

新型率について述べたが、まさに「今」選ばれている人気モデルの一つの指標と言えるのが、ディスクブレーキ仕様のバイクとなる。ここでは、全体ではなく、ブランド別で、具体的にはどのメーカーが強いのか、と言うことを示している。ただ、ディスクブレーキ比率が23%程度に留まっているため、絶対的なものではないが、ブランド間の競争は大きく変わらない見込みだ。

順位 ブランド 使用台数   Disc   比率
Triathlon Road 合計
1 SPECIALIZED 138 51 22 73 52.9%
2 cervelo 145 44 12 56 38.6%
3 TREK 126 11 22 33 26.2%
4 ceepo 92 11 3 14 15.2%
5 FELT 42 8 2 10 23.8%

※未確認除く

Counted by Triathlon GERONIMO

結果は、スペシャライズドの1位で、特筆すべくは、全体シェアでは2位だったが、新型(ディスクブレーキ仕様)トライアスロンバイクという観点で見れば、サーヴェロを抜き、51台でトップとなっている。言い方を変えれば、「今年の佐渡で一番人気のあったトライアスロンバイク」と言うことができる。

SHIVは2018年のKONAでローンチされ、2019年モデルとしてスタート、今年で4シーズン目となるため、新型と言う言い方は似つかわしくないかも知れないが、実数とともにその存在感の大きなバイクだ。

 

【最後に】

三つ巴となったサーヴェロ、スペシャライズド、トレックだが、3社ともビッグメーカーだけに小回りは効かないが、KONAの結果は重要視していることだろう。トレックのSpeedconceptはまだ1年も経っていないが、サーヴェロP5は、スペシャライズド SHIV同様に2019年リリースとなるため、S5のようなブラッシュアップも期待される。

2016年KONAで発表された「P5X」は、リサーチから製法まで最高レベルの「ドリームマシン」として、歴史的なデビューとなったことは記憶に新しいが、世界では支持されなかった。2019年KONAで選ばれたのはP5だった。そして、現在、PX系はほぼ入手ができなかくなっている。国内では今も人気が高いが、やはりマーケットには限界があり終息方向となっているのだ。ただ間違いなくトライアスロンに適した良いバイクであり、ここでは語り尽くせない。残して欲しいバイクだ。。

一方で、PX系を無くすのであれば代わりの「ライン」の登場を期待したい。トライアスロンに注力するサーヴェロにはその期待がかかっている。サーヴェロにはトライアスロンを盛り上げる使命がある。

来月開催のIRONMAN WORLD CHAMPIONSHIPにおいて、そのトレンドや小さなサインにも注目したい。

 

 

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=42444

 

BOSS-N1-S
Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

2022佐渡国際トライアスロン大会 Race “Photo” Report

9/4(日)2022佐渡国際トライアスロン大会が開催された。(主催:佐渡国際トライアスロン実行委員会・公益社団法人日本トライアスロン連合)

★Recap 大会トピックス http://triathlon-geronimo.com/?p=42536

ついに国内ロングが通常の距離で3年ぶりに開催となった。

コロナ禍により、2020年、2021年が中止になった。ただの中止ではない。ロングは簡単には出場できない。それまでの準備こそがロングに出るということだ。暑い日も、寒い日も、風の強い日も、時には雨に降られた時も、目標に向けて、積み上げて行くのがロングに出るということ。ロングが無くなれば、トレーニング習慣も変わってしまう。そして、大きくモチベーションも落ち、トライアスロンを見失ってしまった人も少なくないだろう。

それだけ、影響力の大きなロング佐渡の再開は、間違いなく、新たなスタートを切るためのきっかけとなっている。今シーズンも終盤に入ったが、来シーズンに向けて、弾みがつくことだろう。来シーズンは、宮古島、長崎、皆生、そして、佐渡の4ロング完全復活を祈念したい。

やはり、ロングの大会は良い。選手それぞれのドラマがある。ベテラン選手でも思ったように走れなかった選手もいただろう。勘が戻っていないのかもしれない。そして、初ロングだった選手もいただろう。きっとモチベーション高く、コツコツと積み上げてきたはず。それぞれのレースがあったと思うが、最後、花道での気持ちは一つだろう。

 

■SADO Triathlon

3年ぶりの晴れの舞台。祝福するかのような朝陽はいつもの佐渡だった。

≪希少なロング、国内最長、そして、再開≫

佐渡大会は国内ロングトライアスロンで、アイアンマンよりもバイクが10km長い国内最長レースとなっている。国内4ロング大会の最終戦となる佐渡は、ロングの他にミドルとそのリレー、ジュニアも併催、ロングのナショナルチャンピオンシップ(日本選手権から名称変更)も開催され、Aタイプのエリートが追加となった。

佐渡は今年で34年目の老舗大会で、参加者数も各カテゴリーを合わせると2000名を超える国内最大のトライアスロンとなる。Aタイプの最高齢は78歳、Bタイプの最高齢は82歳の選手が参加、幅広い選手から、「夏の最終戦」として、目標となっている大会だ。それだけに待望の再開に選手も湧いた。

≪ダイナミックなバイクコース≫

国内トライアスロンにおいて、その地理を活かした、最も美しいバイクコースの大会と言えるだろう。まさに「Trip」とも言える醍醐味が、エリートから完走レベルまで幅広く、飽きさせないコースとなっている。

 

■Course

【Swim】A4.0km / B2.0km

会場は、年穏やかな真野湾の佐和田沖で、前回2019年は荒れたが、今回は「ベタナギ」となり選手を安心させた。コースは、1周2kmの三角コースを時計回りに、Aタイプは2周、Bタイプは1周をする。Aタイプは、一度上陸し、再度泳ぐ設定となる。スタートは、トライアスロンの醍醐味であり、壮観なシーンとなるビーチからの一斉スタートだ。

【Bike】A190km / B108km

大会を象徴するダイナミックなコースで、ほぼ佐渡島をトレースするように終始海岸線を走る。Aタイプは前述の通り、Bタイプは佐渡島南側の「小佐渡」を走る。局面は大きく3つに分かれる。Aの場合だが、序盤鷲崎までのアップダウン約70km、中盤小木までのフラット約90km、そして、終盤佐和田までのアップダウン30kmだろう。

【Run】A42.2km / B21.1km

ランは新コースとなった。メイン会場と沢根漁港を結ぶ1周7kmの海岸線を走るフラットコースで、Aタイプは6周、Bタイプは3周となる。従来コースも日陰は少ないが、新コースはほぼ日陰のない灼熱ランとなる。コースは基本的にフラットで車ではわからない程度だが、緩やかなアップダウンはあり、Aタイプの選手には徐々にダメージが出て来る。マップ上には出ていないが、中間地点にエイドステーションが追加されている。

そして、従来の厳しい関門が変更になっている。16:30までにランスタートし、次の関門は、6周目を20:40までに通過すれば良いのだ。

 

■Good Morning

4:30 開催が決定した。長い一日が始まる。

いよいよ決戦の時となった。

久しぶりのロングとなる選手たちは、笑顔の中にも緊張感を感じる。

暑いレースになりそうだが、大丈夫だろうか。ここまで積み上げたものを出し切れるだろうか。

やって来たからこそ、緊張がある。

 

■Race

【Swim】

絶好のスイムコンディションだった。

≪鏡面のフラットコース≫

コースのコンディションはこの上ない状況だった。特に2019年を経験している選手にとっては、その安堵感は大きかった。また、海もきれいだ。透明度も高く、気持ち良く泳げたことだろう。

今回も海上からの撮影となったが、元々水深が浅く、水面も安定している。沖300mでも水深約6m。今回大型船のため、接近は叶わなかったが、「一斉スタート」は以前と何も変わらない迫力、そして、いつもの光景に「戻った」と感じた。

レースは、もちろん「松田丈志選手」が最初から最後までダントツの一人旅でトップだった。1周目を25分でカバーし、最終53分で笑顔のフィニッシュはさすがの一言。例年1時間前後のイメージがあったが、2017年以降、スイム距離が4kmとなってからは新記録となる。

スイムは2位に2分以上の差をつけ、トップフィニッシュの松田選手。

 

 

【Bike】

長かったバイクも小木を越えれば。但し14:30までに通過したい。

≪国内最長バイクコース、攻略方法はさまざま≫

久保埜一輝選手がクイックトランジットでバイクをトップスタートしている。

佐渡の難易度が象徴されるバイクレグ。長い上にアップダウンや向かい風が立ちはだかるハードなコース。ランに脚を残したいが、そんな余裕がある選手は多くはないだろう。更に、7:00過ぎ、バイクスタート時には、陽射しも強くなり、気温は上がるばかりだ。

冒頭のコース紹介で述べたが、一つの考え方として、コースを三分割で見ることができる。序盤は、鷲崎までの約70km、中盤は、小木までの約90km、そして、ラスト30kmとなるだろう。佐渡バイクコースのイメージは、まずは長いこと、そして、アップダウンが先行すると思うが、中盤となる鷲崎から小木までの最長区間90kmを安定して走ることが出来るかが重要。一部を除き、ほぼフラットコースとなる。つまり「DHポジション」をいかに徹底できるかにかかっている。特に水津から小木まではフラットながら、向かい風が吹くエリアだ。身体を起こせば、大きくペースダウンとなってしまう。DHポジションで低回転、高出力が求められる重要な区間となる。

バイクでトップスタートの久保埜一輝選手

バイクラップは5時間21分のダントツ、”TK”こと竹谷賢二選手。

 

【Run】

単調となった新コース。自身と向き合い、集中力が問われる。

≪オールフラットとなった新コースは6周回≫

1周7kmとなるランコースは、メイン会場周辺の距離調整のループコースもあるが、ほぼ対面のフラットで、真っ直ぐなコースとなる。まさに「単調」とはこのようなコースなのだろう。

バイクを完走、ランにトランジットした選手は900余名。タイム差やBタイプの選手もいるが、最大900名前後の選手が片道3.5kmに犇き合う。フルマラソン大会かと思わせるような多くの選手が道幅いっぱいに走っている。沿道の応援があるところでは、賑やかなのだが、そうでないところでは、選手が多く走っているにも関わらず、異様に静寂な世界の中、黙々と走る選手たち。

カメラを向ければ、笑顔も見られるが、ロングのランはハード。3周終わったところで、やっとレースの「半分」という感じかもしれない。それほど残りの3周は、キツく、サバイバルとなる。

やはり、最後に「フルマラソン」があることが、ロングの証明でもあるだろう。トライアスロンは、スプリント、OD、ミドル、そして、ロングの大きく4つの距離に分けられるが、ロングは、ミドルまでの延長線上とは思えない。全くの別の競技であり、「アドベンチャー」ではないだろうか。つまり、ベテランですら、完走は絶対ではない。長い一日の中ではいろいろなことがある。調子良かった序盤も最後まで続くとは限らない。己の力の把握と、それが思ったように行かなくなった時、気力だけが、脚を前に進めてくれる。

いつも思うがロングで「笑顔」の選手は眩し過ぎる。

しっかりとした足取りの松田丈志選手

苦しいレースも楽しむ河原隼人選手

暗くなってからが佐渡。

 

■Finale

今年の佐渡も終わりを迎えた。

2022年国内のメインイベントとも言える佐渡の終わりは、夏の終わりだ。まだ大会は10月まで続くが、成績はともかく、「大きな仕事」を終えたのだ。

そんな終わりを感じさせてくれるのは、大会ラストを飾る花火だ。レースが21時30分終了すると、会場の照明が落とされる。選手は皆、海側へ目をやる。そして、長かった一日の走りを花火が祝福しながら彩る。

やはり、Aタイプの特権だろうか。特にゴールして間もない選手には、大きく心が揺さぶられる。6時にスタートしたレースが15時間以上かけて走った、いつ終わるか分からないようなレース。でも終わった。

この花火には、毎回BGMが付いている。事務局の担当者が毎年こだわりの選曲をしてくれている。今年のBGMは、[ re: ]プロジェクトの「もう一度」だった。

〜 当たり前にあった世界が壊れそうな今、誰のせいにしようか、僕は考えていた。悲しいニュースに目眩さえして、でも明日を見失っちゃダメだ。〜

そして、「開催してくれてありがとう」、選手から口々に聞こえてきた。

 

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

■Data

《参加選手》※ジュニア除く

総エントリー数 / 最終出走者数 2186/1787名

完走者数 / 率 1468名 / 82.1%

《Aタイプ男子》

1位 荒瀬 壮兵     No.1071    10:04:31(R1:11:01/B5:29:02/R3:21:55)
2位 久保埜 一輝    No.1002    10:12:40(R0:55:52/B5:29:11/R3:45:40)
3位 梅田 航平     No.1023    10:21:21(R1:04:54/B6:01:55/R3:11:54)

《Aタイプ女子》

1位 平柳 美月        No.3008    11:39:26(R1:12:32/B6:34:52/R3:48:45)
2位 山下 千春        No.3011    12:02:22(R1:07:00/B6:38:55/R4:11:33)
3位 鈴木 まさみ    No.3033    12:04:05(R1:18:12/B6:44:47/R3:57:27)

《Bタイプ男子》

1位 星 大樹      No.4001     4:48:44(R0:32:14/B2:47:22/R1:27:44)
2位    伊藤 駿            No.4048     5:16:58(R0:39:06/B2:56:28/R1:39:01)
3位 雨宮 大地        No.4068     5:21:07(R0:36:21/B3:02:21/R1:39:45)

《Bタイプ女子》

1位 久保埜 南        No.5006     5:34:10(R0:28:02/B3:19:24/R1:44:53)
2位 林本 花枝        No.5002     5:48:10(R0:30:51/B3:18:46/R1:56:21)
3位 安田 明日香    No.5012     5:57:11(R0:32:11/B3:36:10/R1:47:27)

《Championship男子》

1位 小田倉 真        No.2      4:32:12(R0:26:07/B2:45:24/R1:19:47)
2位 寺澤 光介        No.8      4:45:45(R0:26:08/B2:52:11/R1:26:09)
3位 榊原 佑基        No.5      4:51:37(R0:29:20/B2:52:45/R1:28:24)

《Championship女子》

1位 山内 麻代         No.23    5:25:56(R0:29:20/B3:21:32/R1:34:00)
2位 太田 麻衣子     No.22    5:32:30(R0:31:32/B3:16:53/R1:42:38)
3位 石田 凪帆         No.21    5:37:49(R0:29:19/B3:23:30/R1:44:04)

《AタイプElite》

1位 中西 篤志  No.53    10:52:14(R1:04:59/B5:51:12/R3:53:43)
2位 石橋 健志  No.54    11:27:18(R58:58/B6:41:52/R3:45:08)
3位 宮村 和宏  No.55    11:56:05(R1:07:14/B6:24:56/R4:21:47)

全ての記録:http://www.scsf.jp/triathlon/2022result.html

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=42444

 

 

 

「この3年間の集大成であり、締め括りだったように思う。夏休みの宿題も終わった。」

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

2022佐渡国際トライアスロン大会 Race Recap

ゼッケンNo.1111 松田丈志選手

9/4(日)2022佐渡国際トライアスロン大会が開催された。(主催:佐渡国際トライアスロン実行委員会・公益社団法人日本トライアスロン連合)

国内最長トライアスロンの佐渡大会が3年ぶりに開催となった。国内で開催されるロング4大会の最終戦となる。また今年に限っては、4月宮古島、6月長崎はコロナ禍の影響により、開催されていないため、7月皆生に続く開催となった。ただ、皆生は距離短縮開催のため、完全なロングというカタチでは唯一の大会が無事に開催された。

佐渡は、更に国内最長となる大会であり、その完走は簡単ではない厳しいレースだ。選手は、一年に近い準備を経て、臨むチャレンジングなレースとなる。今年で34回目を迎え、国内トライアスリート待望のロング復活となった。

///////////////////////////////////////////////////

以下、リキャップとなる。今年も忘れられない大会となった。Photoレポートは後日あらためて。

■34回目の夏

夏のメインイベントとも言える国内最長のトライアスロンは34回目の開催となった。実際の開催は、一昨年、昨年、コロナ禍で中止となっているため、今回で32回となる。

前回開催は2019年となり、3年ぶりの開催となるわけだが、それは佐渡に限ったことではなく、他の大会も同様だろう。ただ、佐渡はロングであり、その調整は困難を極める。特にボランティア、医療班の確保など、難しい運営となる。そして、参加する選手も1ヶ月前に決めるわけにはいかない。もちろんエントリー期限があるため、半年前には「心の準備」もする必要があり、初ロングや初Aタイプとなれば、9~12ヶ月は準備が必要だろう。

つまり、一年前から「やるのか、やらないのか」という状況の中で、トレーニングという準備を進め続けることは簡単ではなかったと思う。直近の8月上旬では、コロナ禍最高となる第7波もピークとなり、ギリギリまでヤキモキしたことだろう。そんな揺れる気持ちの中で、出場に漕ぎ着けた34回目の夏だった。

 

スイムは一斉スタート

■Race Operation

まず、開催は例年通りの距離が確保された。やはりコース短縮なども想定されたが、「ロング」であり、国内最長のトライアスロンとして開催された。

スイム距離は、変更なしの4kmだったが、少し場所が移動となった。19年までは沖を見た場合、桟橋の左側で開催していたが、今年は右側に変更された。気づいた選手もいたかもしれないが、ビーチが侵食され、なくなってしまっていたのだ。それは、徐々に進んでいたようだが、ついに今回は移動を余儀なくされた。同様のことが以前宮古島でも起き、大量の砂が運び込まれていたが、今後の会場確保も心配であり、気になるところだ。

そして、1000名の一斉スタートだった。トライアスロンの本来のカタチであり、象徴的な壮観なシーンが広がる。コロナ禍も終息したわけではないが、以前に戻りつつあることを嬉しく思った選手も多かったはずだ。

バイクの佐渡島一周のダイナミックなコースは守られた。過酷ながらも佐渡大会を象徴し、島をトレースするような外周コースは、やはり、醍醐味であり、選手の期待に応えてくれたものだった。ただ、この3年でトンネルが増え、テールランプなどの保安部品の装備が徹底された。

 

Aタイプは6周

■Course

コースは、前述の通り、スイムとバイクの変更はなかったが、ランは「新コース」となった。やはり、ボランティアや救護などが必要となる最も暑い時間帯に行われる「灼熱ラン」は変更となった。7kmを6周回する設定で、一部メイン会場付近を除き、写真のように選手がコースを埋め尽くすように行き来し走っている。

これも「今」できるカタチではあるが、感じ方は様々であり、必ずしも否定的ではなかった。つまり、このコースも「アリ」ではないかと感じている。

周回走のためペースが掴みやすく、フラットで走りやすい。以前のコースはイメージ以上にきつく感じるアップダウンがあっため、そのメリットを感じていたようだ。また、絶えずすれ違う仲間に対し、エールを送り合う光景も多く見られ、本当の意味で励まし合っている姿を見ることができた。そして、沿道の応援は、片道約3.5km程度に集中するため、圧倒的に多く、盛り上がる。

ショートではもう長く、このような周回コースで、「観戦者」とコミュニーケーションが取れる設定も多くなっているが、ロングこそ必要かもしれない。コロナ禍で生まれたものは必ずしも悪いとは限らない。

今回の変更点として、「関門」が少なくなっていた。選手にはそれぞれのペースや体調もあり、以前のような細かい関門は厳しい選手も少なくなかったからだ。今回助けられた選手もいただろう。

 

晴れた!嬉しさ半分か?

■Weater

台風が近づき、心配されたが、始まって見ればいつもの佐渡だった。朝3時僅かに雨が降っていたが、間もなく止み、その後、朝陽が徐々に眩しくなり、青空が広がって行った。当初の雨や風などの心配をすっかり忘れ、「暑さ」と対峙する覚悟を決めていた。

過去には、雨や低温だったり、スイム中止のこともあったが、概ね、晴れる佐渡だ。午前中降られても、ランの頃には「ピーカン」となる。過酷な距離に加えて、暑さが襲いかかるまさに「サバイバル」の様相となるレースでもあり、より一層完走を阻む厳しい天候なのだ。

当日11時の気象データは、気温27.5℃、南南東の風2.9m/s、湿度80%と大会発表があった。スイムスタートの6時では、気温22.3℃で、水温は25℃予報が28℃となっていた。波は1m予報だったが、ほぼ鏡面の「超ベタナギ」となった。2019年の荒れたコンディションでは、多くの選手がタイムロスをし、体力消耗など、危険性も感じるほどだったため、選手は安堵感を感じたことだろう。その後、バイクスタート時の7時頃にはかなりな暑さを感じた。気温は上昇し続け、いつもの暑い佐渡となったのだった。

 

スイムアップも爽やかな松田選手

■トライアスリート「松田丈志」

今回の話題の一つとなっていたのは松田丈志さんの参戦だった。

ご存知オリンピアンスイマーの松田選手。2008年北京から2016年リオまでの3大会で4個のメダルを獲るなど輝かしい実績を持つスイマーだ。この佐渡大会も2018年、2019年の2回Bタイプに出場している。

2018年時6時間45分だったが、2019年では30分短縮し、6時間14分で走っている。感覚論とはなるが、佐渡Bは6~7時間を目標とする選手が多いのではないだろうか。やはりAタイプ完走にはBタイプ7時間以内が条件と言っても良いだろう。すでに2019年大きく力を付けていた松田選手は、レース後「Aタイプ参戦」を宣言していたが、2020年は大会が開催されなかった。

この時のことを「夏休みの宿題」と例えていた松田選手。やはり、多忙な中でのトレーニングとモチベーションキープは他の選手と同じだったようだ。やらなければいけない宿題をしっかりとこなしていた。

スイムは流石の1位だ。スタート直後にトップに出てそのまま最後までキープした。2周回だが、1周目を25分という驚異的なタイムで、最終53分で終えている。バイクは7時間11分、そして、ランは5時間46分、合計13時間56分1秒でゴールしている。佐渡の制限時間は15時間30分で、アイアンマンの17時間制より遥かに厳しい。完走自体険しいが、1時間30分以上残してのゴールは、松田選手の身体能力の高さとも言えるだろう。指導はご存知河原隼人コーチが付いていた。

佐渡の景色が好きだと言っていた松田選手。楽しむことはできたのだろうか。

 

Aタイプ男子1位 荒瀬 壮兵選手

■Race Result

《参加選手》※ジュニア除く

総エントリー数 / 最終出走者数 2186/1787名

完走者数 / 率 1468名 / 82.1%

《Aタイプ男子》

1位 荒瀬 壮兵     No.1071    10:04:31(R1:11:01/B5:29:02/R3:21:55)
2位 久保埜 一輝    No.1002    10:12:40(R0:55:52/B5:29:11/R3:45:40)
3位 梅田 航平     No.1023    10:21:21(R1:04:54/B6:01:55/R3:11:54)

《Aタイプ女子》

1位 平柳 美月        No.3008    11:39:26(R1:12:32/B6:34:52/R3:48:45)
2位 山下 千春        No.3011    12:02:22(R1:07:00/B6:38:55/R4:11:33)
3位 鈴木 まさみ    No.3033    12:04:05(R1:18:12/B6:44:47/R3:57:27)

《Bタイプ男子》

1位 星 大樹      No.4001     4:48:44(R0:32:14/B2:47:22/R1:27:44)
2位    伊藤 駿            No.4048     5:16:58(R0:39:06/B2:56:28/R1:39:01)
3位 雨宮 大地        No.4068     5:21:07(R0:36:21/B3:02:21/R1:39:45)

《Bタイプ女子》

1位 久保埜 南        No.5006     5:34:10(R0:28:02/B3:19:24/R1:44:53)
2位 林本 花枝        No.5002     5:48:10(R0:30:51/B3:18:46/R1:56:21)
3位 安田 明日香    No.5012     5:57:11(R0:32:11/B3:36:10/R1:47:27)

《Championship男子》

1位 小田倉 真        No.2      4:32:12(R0:26:07/B2:45:24/R1:19:47)
2位 寺澤 光介        No.8      4:45:45(R0:26:08/B2:52:11/R1:26:09)
3位 榊原 佑基        No.5      4:51:37(R0:29:20/B2:52:45/R1:28:24)

《Championship女子》

1位 山内 麻代         No.23    5:25:56(R0:29:20/B3:21:32/R1:34:00)
2位 太田 麻衣子     No.22    5:32:30(R0:31:32/B3:16:53/R1:42:38)
3位 石田 凪帆         No.21    5:37:49(R0:29:19/B3:23:30/R1:44:04)

《AタイプElite》

1位 中西 篤志  No.53    10:52:14(R1:04:59/B5:51:12/R3:53:43)
2位 石橋 健志  No.54    11:27:18(R58:58/B6:41:52/R3:45:08)
3位 宮村 和宏  No.55    11:56:05(R1:07:14/B6:24:56/R4:21:47)

全ての記録:http://www.scsf.jp/triathlon/2022result.html

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=42444

 

 

 

「夏が終わった。」
BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

【取材予定】2022佐渡国際トライアスロン大会

待ちに待った佐渡国際トライアスロン大会が3年ぶりに開催される。

佐渡だけではないが、ロングは少ないため、その開催は待望だった。代替のきかない国内最長トライアスロンであり、アイアンマンよりも長いチャレンジングなレースだ。やはり、島ということもあり、その開催は簡単ではなかったが、ついに再開されることとなった。

先月の皆生大会に続き、今年2つ目のロングが開催される。皆生は短縮開催だったため、通常開催としては、コロナ禍の中では最初の再開と言えるかもしれない。国内ロングでは今シーズン最後の大会であり、ここに合わせて来た選手も多い。最長のレースであり、暑さとの戦いとなる「夏の陣」だ。アイアンマンの17時間制に対し、15時間30分は更に険しい戦いとなる。佐渡を完走できれば大きな自信となるばかりでなく、そのステイタスは極めて高い。つまり、トライアスロンを極めた一人と言っても過言ではないだろう。そんな大きな目標が間もなく開催となる。

コロナ禍ではあるが、ロングだけにトレーニングは十分だろう。再び、元気ある走りを見せ、この開催の意義に返したいところだ。

 

前回(2019年)レポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=31886

 

■開催日 2022/9/4(日)

■競技

Aタイプ:スイム4km / バイク190km / ラン42.2km

Bタイプ:スイム2km / バイク108km / ラン21.1km

※詳しくは、http://www.scsf.jp/triathlon/

.

.

.

「無事なゴールを!」
BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

Collins Cup 2022

8/20(土)昨年に続き、2回目のコリンズカップが開催された。

コリンズカップは、PTOの主催するメインイベントで、ショートからロングまでのトッププロが一堂に会し、「ミドル」で対決するという異色の設定となっている。ショートのスピードか、ロングのスタミナか、まさにトライアスロンの「異種格闘技」だ。

開催国は昨年と同じスロバキアとなる。スイムはドナウ川を泳ぎ、バイク、ランはフラットの高速コース。距離は、スイム2km、バイク80km、ラン18km、合計100kmに合わせたミドルタイプでアイアンマン70.3より13km程短い。昨年は雨が降り、落車も出ていたが、今回は天候に恵まれている。

また、地域別のチーム設定となっていて、ヨーロッパ、US、インターナショナルの3チーム各12名(男子6名女子6名)の対抗戦となっている。ヨーロッパは、ドイツを筆頭に、ノルウェー、スイス、イギリスなどで構成、USはもちろんアメリカ勢、そして、インターナショナルは、オーストラリア、カナダを筆頭に、ニュージーランド、バミューダなどのチーム編成となっている。

レースは、各チームから1名づつがスタートし、3名で12レースが行われる。3名ではあるが、「一対一」の感覚で、各レースの中で順位を決定する。トライアスロンは「個人戦」の感覚が強い中でのこの設定は、ショートのMixリレーのように新たなカタチとして、チームの選手同士の一体感などが伝わってくる面白さがある。

 

≪Collins Cup≫

ヨーロッパ、US、インターナショナルの各地域の PTO 世界ランキングの上位 4名の男女は、自動的にコリンズ カップのクウォリファイを得ることができる。 また、各チームに男女2名ずつのキャプテンズピックとしてワイルドカードがあり、PTO世界ランキングに関係なく選出され各チーム12名が決定する。今回チームヨーロッパのワイルドカード4名の内、3名が優勝となるヨーロッパの層の厚さを感じる結果が出ていた。

≪PTO≫

Professional Triathletes Organisationの略となる。ロング、ショートでのカテゴリー分けではなく、プロトライアスリートのための組織で、非営利団体となる。その運営は、ゴルフのPGA/LGPA やテニスのPGA/LGPA をモデルにしている。各レースに設定されたポイントによるランキングがタイムリーに決定するシステムで、現在、今回のコリンズカップでそれぞれ最速タイムのブルンメンフェルトとリフが1位となっている。

 

©︎Collins Cup

■Race Recap ( Pickup Match 1,4,5,6,7,8,10,11)

©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup

≪ Match 1≫

今回のコリンズカップにおいて最大のトピックスは、「Match 1」だったのだが。。。それは「リフ vs ダフィ」となったからだ。ロングとショートの女王の直接対決だけに、注目は集まった。リフは5月のセントジョージで5回目のアイアンマン世界選手権覇者で、圧倒的な強さを持っている。一方、WTS横浜大会でもお馴染みのダフィは昨年のオリンピックTOKYO2020のゴールドメダリストだ。ランのパワフルなスピードはやはり圧倒的な速さで安定している。

スイム序盤動きはなかったが、中盤からダフィは単独で先行となった。やはりショートの女王を感じさせる泳ぎだった。全体1位のタイムでスイムフィニッシュ、2位のリフに25秒の差をつけ、バイクに移った。

ところが、バイクの先行は20分程度、明かな速度差でリフにパスされた。バイク終了時で5’45″差となった。ラン18kmでの逆転は厳しくなったが、どこまで攻めの走りが観れるのか、期待は最後までかかっていたが、結果は更に引き離され、勝負はロングの女王に軍配が上がった。

それぞれ、主戦場における戦い方の違いがあるため、単純な勝負とは行かなかったが、今後、再びの対決を見て見たいものだ。

リフのコメント(PTOサイトより)「It feels really amazing to be coming back after last year I could perform well in all three and feel like I’m a complete athlete again. When I got to the last km I heard it was 5s over 5 min so I pushed as hard as I could to try to get the max 6 points.」

「Last year I raced while I was sick. I had blisters all over my legs, I had shingles and you obviously can’t race like that. This morning I went for a jog and my heart rate was about 30 beats lower than last year.」

 

©︎Collins Cup

≪ Match 4≫

最後の国際レースとなったスピリグが勝った。2012年ロンドン五輪では金メダル、2016年リオ五輪では銀メダルを獲ったショートのレジェンド。スイムバイクランのバランスの高さは最高レベルで、全体でも4位のタイムを叩き出している。最後のビッグレースを飾る優勝は、内容とともに流石の走りを披露してくれた。

オリンピック後、WTSにも出場していたが、近年ではミドル系をメインに活動していた。バイクの強化も徹底され、バイクラップを獲っているリフとの差は2’30″が驚きのタイムとなるスイスの40歳。まだまだ十分戦えるパフォーマンスだ。

スピリグのコメント(PTOサイトより)「I was pretty nervous. I felt pretty good but didn’t know what to expect. I had the extra pressure from the team. I was nervous but came out of the water and was 25 seconds behind Lopes and knew I could make that.」

「I was really keen to show I was the right pick and I deserved the spot and I’m really happy I’ve helped the team to have a good performance.」

「I’m just happy to have a good performance in my last international race and it’s nice to go out like that.」

 

©︎Collins Cup

≪ Match 5≫

昨年より大きくジャンプアップで優勝したローレンス。アイアンマン70.3での実績は極めて高く、スイムを武器に、バイクとランは安定した走りをしている。マッチ5では昨年同様、オーストラリアのソルトハウス同組となり、昨年の悔しさを晴らす結果となった。

使用するバイクはNo.1シェアとなるトレックのSpeedconceptで、ウィナーズバイク唯一の使用選手となっている。同じくトレックサポートのライバル、ソルトハウスとはバイクでの抜きつ抜かれつを展開、ランで勝負を決めている。

 

©︎Collins Cup

≪ Match 6≫

ベテランハウグも優勝している。ショート出身で近年はロング、ミドルで活躍している。2019年のKONAで優勝するなど、アイアンマンの顔の一人でもある。5月のセントジョージではランの追い上げで3位入賞となった。

今回もバイクからのペースアップで、得意のランで勝負を決めるパターンとなっている。ランはリフより3’25″速い堂々のラップ1位には脱帽となる。来年40歳を迎えるが、驚異的なランは、一切衰えを感じさせないベストランナー。

ハウグのコメント(PTOサイトより)「My main goal was to stick with the girls on the swim because I’m with them in T1 then everything is in my hands and it was. Jackie did a great job on the bike until the turning point and then I took control and then just wanted to run fast.」

 

©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup

≪ Match 7≫

男子の最初のレースは、ブルンメンフェルトのグループとなったが、やはり、ブルンメンフェルトのダントツの優勝となり、全体でも1位のタイムでパーフェクトな走りを見せた。このマッチで注目となっていたのは、キャプテンズピックで参戦となったヘイデンワイルドだった。WTS横浜でもお馴染みの選手だが、ブルンメンフェルトもショートでの走りを知っているだけに警戒していたようだったが、今のブルンメンフェルトに死角はなかった。

全体からのタイムは、スイム9位、バイク3位、そして、ラン1位となるいつものペース配分でコントロールしている。スイム9位と言ってもトップから1’18″差のため、ミドルの時間の中では十分に吸収できるタイムと言えるだろう。ショートは、タイムよりメンバーと順位と重要となるが。

前代未聞の「二刀流」を成し遂げたブルンメンフェルトは、ショートのスピードとロングのスタミナを併せ持ち、盤石な安定感のあるレース運びとなり、大会レコードで、また一つ大きな足跡を残したのだった。

ブルンメンフェルトのコメント(PTOサイトより)「It’s tough to come from sprint distance to 100km but I knew that Hayden was one of the ones who could do it. That’s why I stayed behind until 50km or so on the bike because that’s when it starts to get hard and was super stoked with my run legs.」

「The support out on the course was giving me a little bit more energy and it’s such a great place.」

 

©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup
©︎Collins Cup

≪ Match 8≫

サンダースとロング。この二人はいつも「イベント」を盛り上げてくれる。この2選手は年齢差はあるものの、各種目の展開が似ている。セントジョージでも終始近い位置で走っていたが、今回は、最初から最後まで、ずっと一緒に走っていた。

最後数百メートルを残し、サンダースがペース上げ仕掛けたが、ロングはついて行けず、スパートに成功した。ただ、サンダースは何度も後を振り返るなど、余裕は全くなかったようだ。4月アイアンマン70.3オーシャンサイドの花道での競り合い、5月セントジョージラスト500mでの逆転など、ドラマチックな展開はサンダースの専売特許か。

サンダースのコメント(PTOサイトより)「Not bad for a couple of duathletes! It was deeply personal for me too. I told Sam, let’s put this guy in his place. I like Sam Laidlow but I think it got too personal, so I think we were on the same team on this one.」

「This is totally next level. We were both here last year and it’s going in the right direction and we’re showing the world and people are excited about it.」

ロングのコメント(PTOサイトより)「I had absolutely no option but to back this up. The song in my head was Aretha Franklin R. E. S. P. E. C. T. When Lionel and I are working together the strategy is to inflict as much pain on each other as possible.」

「Better just to do what you got to do and get the job done.」

「I think he learnt his lesson here and think some respect is due but the race is done, we’ll have a beer and we’ll become friends and Sam will have to buy all of the rounds!」

レイドローのコメント(PTOサイトより)「I knew I’d come out with a lead on the swim but I got onto the bike and my stomach wasn’t taking on any nutrition. I don’t want to make excuses but it just wasn’t my day. Once I stopped for the toilet four or five times, towards the end I started to feel OK again so there’s still hope I guess!」

「They beat me and were better today. There will be other races. I can’t predict how I would have done if it wasn’t for that, they were just better guys today. II’m definitely hungry to have another shot, it’s just fuel to the fire. I’ll be back.」

On embrace at end with Sam Long

「I appreciated that [the embrace] and their respect. They’ve got more experience than me and achieved a lot more, so it was nice to share some kind words even after my failure.」

 

©︎Collins Cup
©︎Collins Cup

≪ Match 10≫

キャプテンズピックのアーロンロイルが勝った。スイムはダントツの22分台は全体でもラップとなる。その後も安定した走りでまとめ、全体順位を9位としている。ロイルは、TOKYO2020も出場しているショート系だが、今年からはミドルを中心に活躍していた。今後の活躍が大いに期待される選手だ。

そして、このマッチではあのパトリックランゲがいた。2017、2018年KONAを連覇してるメジャーだが、昨年に続き、今年も不発に終わってしまった。3種目全てに精彩を欠いてしまっているが、「次」はランゲらしい走りを見せて欲しい。

ロイルのコメント(PTOサイトより)「I think especially for me I prefer a bit of a dynamic course where there are some hills so it made for a really hard day. I knew I had to swim hard which I did and when I put myself in that position I knew there’s no looking back now. At times it’s just playing with your mind that you’re starting to slow down or they’ll start catching you. And thinking they are catching you when you turn around on those long straights and seem closer than they are.」

 

©︎Collins Cup
©︎Collins Cup

≪ Match 11≫

第2のブルンメンフェルトとも言えるグスタフ・イデン。マッチ11では余裕の圧勝だった。もはや各マッチではなく、全体順位が気になる選手だが、昨年と同じ2位となった。ブルンメンフェルトと同じノルウェー選手で、ほぼ互角の力を持っている。5月のセントジョージでは体調不良により、DNSとなっているため、ブルンメンフェルトに先を越されている感はあるが、極めて期待の大きな選手だ。

今回のレース展開もブルンメンフェルトとほぼ同じで、やはりランのパフォーマンスが光っている。同じチームヨーロッパのため、直接対決はないが、見てみたいという期待は大きいだろう。

 

©︎Collins Cup
©︎Collins Cup

■Race Result

Team EUROPE 53points

Team INTERNATINAL 38points

Team US 22.5points

昨年に続き、チームヨーロッパの圧勝となった。12レース中の8勝となったヨーロッパ勢は強過ぎる結果だった。インターナショナルは4勝、そして、USは無勝だった。しばらくはこの傾向が続くのだろう。ブルンメンフェルト、リフの存在は大きく、「トライアスロンのヨーロッパ」のイメージは更に強くなっている。

一方で、WTSで活躍していたジェントルは、ショートからミドルへシフトし、安定した成績で、今回も優勝となっている。タイムもリフに次ぐ好タイムだ。ロイルもショート選手ながらミドルで結果を出して、今回キャプテンズピックで参戦、優勝となっている。ともに元トライアスロン大国オーストラリア選手だけにオージー復活を期待したい。

実力は選手個人によるが、ミドルとなるコリンズカップはロング系の選手が強い。やはりバイクパートの走り方を考えるとロング系の優位性が出ている。ショート系選手のトライアスロンバイクによるDHポジションもやや不安定感を感じる選手も見受ける。このあたりにショート系選手がどの程度取り組めるかによって今後の勢力図に変化が出てくるかもしれない。

≪Highlights Video≫

 

 

■GERONIMO COUNT

バイクはたったの36台。セントジョージの3000台とは比較にならないが、その少ない数から何が見えてくるのだろうか。やはり、トッププロがどんなバイクを使用しているのか、エイジではないため、「メーカーの動き」も見えてくるバイクの使用率だ。WTS横浜大会も同様だが、KONAのようにエイジの「人気ランキング」とは少し異なってくる。

結果は以下の通りだった。PTOのプロフィールとは異なるバイクを使用する選手もいるが、今回のコリンズカップで使用されたバイクとなる。

Team Athlete Bike
EUR Daniela Ryf FELT IA
Laura Philipp CANYON SPEEDMAX
Kat Matthews BMC TIMEMACHINE
Nicola Spirig SPECIALIZED SHIV
Holly Lawrence TREK SPEEDCONCEPT
Anne Haug CERVELO P5
Kristian Blummenfelt CADEX TRI
Sam Laidlow TREK SPEEDCONCEPT
Magnus Ditlev SCOTT P6
Patrick Lange CANYON SPEEDMAX
Gustav Iden GIANT TRINITY
Daniel Baekkegard CANYON SPEEDMAX
US Sarah True SPECIALIZED SHIV
Chelsea Sodaro BMC TIMEMACHINE
Skye Moench TREK SPEEDCONCEPT
Sophie Watts SPECIALIZED SHIV
Jocelyn McCauley VENTUM ONE
Jackie Hering BMC TIMEMACHINE
Ben Kanute TREK SPEEDCONCEPT
Sam Long TREK SPEEDCONCEPT
Rudy von Berg TREK SPEEDCONCEPT
Jason West VENTUM ONE
Matt Hanson QR V-PR
Chris Leiferman BMC TIMEMACHINE
INT Flora Duffy SPECIALIZED SHIV
Ashleigh Gentle SCOTT P6
Paula Findlay SPECIALIZED SHIV
Vittoria Lopes SPECIALIZED SHIV TT
Ellie Salthouse TREK SPEEDCONCEPT
Tamara Jewett TREK SPEEDCONCEPT
Hayden Wilde SPECIALIZED SHIV
Lionel Sanders CANYON SPEEDMAX
Max Neumann BMC TIMEMACHINE
Aaron Royle GIANT TRINITY
Jackson Laundry VENTUM ONE
Braden Currie FELT IA

※ Counted by Triathlon GERONIMO

シェアNo.1はトレックの8台だった。次いでスペシャライズドの7台となる。KONAで不動の地位を誇るサーヴェロは3台だった。やはり、トライアスロンのみならずロードレースも含め、トレック、スペシャライズドの注力度が表れている。

トレックは昨年のコリンズカップでまだ新型投入されていなかったが、昨年11月にローンチされた「TTベース」の新型SPEEDCONCEPTで、存在感を大きくしていた。台数は8台だが、コリンズカップでシェアを獲っていることは、KONAのSUB10選手に影響を与えるのではないだろうか。

また、レース結果から見た場合、ウィナーズバイクNo.1は、ブルンメンフェルトが使用するカデックスを含めたジャイアント勢の3台だった。勝った10選手は7ブランドに渡っているため、目立った結果ではないが、常に話題となるブルンメンフェルトとカデックスだけに、しっかりと結果を残したと言えるのだろう。その他2選手が勝ったのは、スペシャライズド、キャニオン、スコットとなった。

 

©︎Collins Cup

■PTO Official Bike ” CANYON “

キャニオンは、3年契約の公式バイクパートナーとなった。現在、キャニオンはトライアスロンのみならず、自転車レース最高峰のツールドフランスでも不動のブランドとなっている。5月のセントジョージでは、フェルト、スペシャライズドとともに高いシェアを持つ、トライアスロンのトップブランドとなっている。

今回は、サンダーズとベックガードにより、2勝を挙げている。一昨年11月リリースの現行SPEEDMAXは、キャニオン史上においてトライアスロンへのターニングポイントなったモデルで、その設計は、随所において、「トライアスロン専用」としてのこだわりの仕上がりとなっている。

 

 

 

 

「昨年優勝の「ヨーロッパ」は強く、今年も勝った。やはり、メンバーを見ると見えて来てしまうものがあるのも現実で、このあたりのバランスを考えた「チーム分け」も必要なのではないだろうか。今回、チームヨーロッパ8勝、USは1勝も出来なかった。ヨーロッパ勢が強いのは今に始まったことではないが、アメリカやオーストラリアの巻き返しを期待したい。」

BOSS-N1-S
Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

第40回全日本トライアスロン皆生大会 GERONIMO COUNT

皆生大会は、3年ぶり4回目のバイクカウントとなった。

この3年間では、コロナ禍の影響により、新型リリースの減少とリリースの場合もデリバリーの遅れなど「MONO」としては活性化している状況とな言えない。そして、大会中止、順延などで選手自身のモチベーションアップの追い風は弱かった。

まず前提となる大会はどのような大会なのか。距離はロングだが、今回は短縮開催となっているため、バイクは25km短い115km、ランは10km短い32kmとなっている。「この距離だから出場した」という声を何人か聞いている。ロングを得意とする選手よりはミドルを得意とする選手に有利な距離設定で、最後のランも10km短縮されたことでバイクの走りも変わったはずだ。また、バイクコースは全てではないが、終わってみればアップダウンの事しか頭に残らないハードなコースだ。トライアスロンバイクにするのか、ロードバイクにするのかなど良く聞こえてくる大会でもある。

ちなみにバイク車種の適性はコースだけで決まるものでない。それぞれのポテンシャル、メリットとデメリットなど基本性能はあるが、フィッティングがベターで乗りこなせていることが前提であることは言うまでもないだろう。例えば、普段トライアスロンバイクをメインに使用している選手が、ほとんど使用していないロードバイクで出場するということはナンセンスであるということだ。極論かもしれないが、より「人車一体」であることが望ましい。

そして、出場においては厳しい書類選考がある。そのため、ベテラン選手も多く、宮古島のように初ロングという選手は少ないイメージだ。実際は計り知れないが、走り込みは十分出来ている選手が多いように感じる。また、時期としては、7月開催のため、それまでの練習量も稼げているだろう。そして、鳥取県ということもあり、「関西色」が強い選手層でもある。

そんな皆生大会で使用されたバイクはどんなバイクなのだろうか。またそこか見えてくるものはあるのだろうか。

2022 KAIKE  Bike “ GERONIMO ” Count

GERONIMO COUNTは2015年からスタートし8年目に入った。バイクカウントは、元々コナで30年以上行われ、その使用率が話題となっていた。同様のカウントではあるが、「その先」が知りたかった。例えば、コナという最高の舞台でも実際の「選手層」は幅広い。エイジでのハンデはあるが、やはり「SUB10」で使用されるバイク、本当に速い選手が乗るバイクは何か?サーヴェロのシェアはダントツトップだが、人気のあるモデルは何か?など、もっと突っ込んだ「本当のこと」が知りたい。また、ワンバイやハイハンズなどトレンド以前の「兆し」も発見したかった。そんなカウントだ。

Traiathlon GERONIMO「Journal – Race Report」

順位 ブランド 使用台数 使用率
1 SPECIALIZED 118 12.0%
2 TREK 117 11.9%
3 ceepo 101 10.2%
4 cervelo 98 9.9%
5 GIANT/Liv 54 5.5%
6 PINARELLO 40 4.1%
7 ANCHOR/BS 37 3.7%
8 cannondale 34 3.4%
9 FELT 31 3.1%
10 COLNAGO 24 2.4%
その他合計 324 32.8%
不明 8 0.8%
未確認 1 0.1%
81 合計 987 100.0%

※Counted by Triathlon GERONIMO

 

≪概況≫

結果はスペシャライズドが1位だった。ただトップ3は三つ巴で、2018年はシーポ、2017年はトレックが獲っている。スペシャライズドとトレックはやはりビッグメーカーとしての勢いを感じる。また、シーポは関西では強い。意外と思われるのはサーヴェロだろう。トライアスロンと言えば、そして、アイアンマンなどロング系ではKingとも言えるサーヴェロだが、ここ皆生では過去全て4位で終わっている。

皆生はブランド数が多く、80ブランド以上となっている。大会によるが、少ない大会は70ブランドを切っている。昔は100ブランドを超えることもあったが、一極集中が進み、ブランド数は減少傾向となっている。これはトライアスロンバイクへの傾向が微増ながらも増える傾向に関係があり、トライアスロンバイクをリリースするブランド数とも関係性が強い。ロードバイクでも同じブランドで揃えるなどということも良く聞かれる話だ。

◆◆◆

3年ぶりに開催した皆生大会の結果であり、これが全てではない。リリースやデリバリーが戻りつつある中で、また新たな動きも出てくるだろう。MONOとして、メーカーからの動きもあるが、国内でのトライアスリートの動向として、「ロードバイク」のトライアスロンでの使用が進む可能性がある。特にどちらも必要となる「DHポジション」だが、以前は高くなり過ぎてしまうDHポジションが、シートアングルとともにちょうど良くなっている傾向も見受けられる。また首への負担感を訴える選手も少ないのが現実だ。

絶対はない。自身に合ったバイクを見つけることが大切だが、そこには練習量も大きく関係している。

使用率第1位 SPECIALIZED

≪スペシャライズドNo.1≫

今年の1位は、スペシャライズドだった。2022年のカウントでは、石垣島、横浜(エリート)、彩の国でも1位を獲っていて、やはりその強さを感じる。国内では、絶対数、その中でのトライアロンバイク比率などが高い、数少ないメーカーだ。現行のトライアスロンバイクSHIVと共にロードバイクのTarmacなども人気が高い。トライアスロン61台、ロード57台とバランスの取れた総合メーカーとなる。

2位のトレックは、やはり世界のビッグメーカーだ。今年5月のセントジョージアイアンマン世界選手権では2位の使用率、前回2019年のコナでも2位となっている。Speedconceptと共にエアロロードのMadoneなどトライアスロンシーンにおいて、その存在感を大きく放っている。そして、昨年11月にローンチされ、2月頃からデリバリーの始まった新型Speedconceptはビッグメーカーのリリースする新型として注目が集まっている。

3位のシーポは、トライアスロン専門メーカーとして、その立ち位置をキープしている。トライアスロンバイクは85台、ロードバイクは16台であり、85%近くをトライアスロンが占めている。もちろん舞台は国内のみならず、5月のアイアンマン世界選手権においても18台の使用が確認されている。そして、やはりメインイベントと言える10月のコナでは更に多く使用されているはずだ。直近となる2019年では惜しくも11位の使用率だ。

 

≪TOP10シェア≫

年度 総台数 TOP10台数 使用率
2022 986 654 66.3%
2018 952 600 63.0%
2017 983 587 59.7%

※未確認1台除く

Counted by Triathlon GERONIMO

概況でも触れたが、Top10ブランドへの集中傾向が見て取れる。各ブランドはTop10下位は変化するが、概ね Top10の使用台数が増えている。大手メーカー、トライアスロンバイク専門、ロードバイク人気メーカー、イタリアン、そして、モデル数の多いメーカーなどとなっている。ちなみにコナでのこの傾向は、2019年で78%近い選手がTOP10ブランドを使用している。平均70%程度が多いため、全体から見ればその傾向はやや低めとなる。

 

【トライアスロンとロードの比率】

トライアスロンバイク比率No.1 ceepo

 

GERONIMO COUNTでは当初、トライアスロンバイクの増え方をチェックする意味で定点観測していたが、昨今では必ずしもトライアスロンバイクが正解とは言えないと考えている。価格などの点もあるが、やはり大切なことは、フィッティングであり、結果として、どちらのバイクを使用するか考えるべきだからだ。ただ、一方で「憧れのトライアスロンバイク」と考える人が多いのも現実だ。トライアスロンバイクを使用する場合、是非フィッティングとセットで考えて欲しい。ピンポイントとなるトライアスロンのポジションは極めて難しい。

いずれにしても納得行くポジション出しとなるよう、ショップとの長いお付き合いが重要となるだろう。

順位 ブランド 総台数 Triathlon 比率
1 ceepo 101 85 84.2%
2 cervelo 98 71 72.4%
3 SPECIALIZED 118 61 51.7%
4 TREK 117 42 35.9%
5 FELT 31 17 54.8%
6 cannondale 34 14 41.2%
7 GIANT/Liv 54 11 20.4%
7 CANYON 21 11 52.4%
9 BMC 15 9 60.0%
10 ARGON18 9 8 88.9%
598 329 55.0%

Counted by Triathlon GERONIMO

堂々の1位はシーポだった。同ブランド内でのトライアスロンバイク比率は極めて高い。ちなみに16台をロードバイクとしているが、その多くがMambaやStingerとなる。設定としては、ロードバイクだが、そこはトライアスロン専門メーカーだけに、トライアスロンに近いロードバイクとして作られている。

所謂「トライアスロン適正」の高いロードとして、Triathlon GERONIMOでは「トライロード」と呼んでいる。シートアングル、ヘッドレングスなどのジオメトリー、エアロダイナミクス、走行感の快適性など、カテゴライズが明確に出来ないロードバイクがある。他社にもその適正のポイントが高めなロードバイクがある。そんなトライアスロン寄りのロードバイクのラインナップの拡充が各メーカーから積極的なリリースになることを期待したい。

 

≪バイク比率≫

年度 使用台数 Triathlon 比率 Road 比率
2022 986※ 382 38.7% 608 61.7%
2018 943 331 35.1% 612 64.9%
2017 947 316 33.4% 631 66.6%

※未確認1台除く

Counted by Triathlon GERONIMO

結果はトライアスロンバイク比率が少しずつ増えている。前述の通りだが、憧れのバイクだけに「正しいフィッティング」が出来ているのであれば、トライアスロンの「盛り上がり」を示す数値と言っても良いだろう。

トライアスロンバイクをいつ買うのか、昔はロングを目指す時が多かったが、ここ10年ではミドルを目指す時に購入する傾向が強い。ミドルはODのようなわけにはいかない。ある程度の練習は必要になるだろう。

逆説的だが、トライアスロンバイクが増えることは、ミドル以上に出場する選手も多くなり、練習するトライアスリートが増えることになる。やはり、プロセスこそ価値のあるトライアスロンだけに「ロング/ミドル志向」は、トライアスロンのスポーツ文化を守る上で大きな役割を果たすことになる。

ちなみにこのトライアスロンバイク比率は低い。宮古島は50%を超えている。ここで「コース論」にはなると思うが、冒頭で述べた通り、普段どうしているのか、ということになるだろう。

 

【新型率】

TREK新型Speedconcept6台確認

 

昨年から特に注目しているのが「新型率」だった。コロナ禍があり、その数値の比較は単純には出来ないが、推移を確認している。その手段として「ディスクブレーキ仕様」のバイクをチェックしている。

ディスクブレーキは概ね早いメーカーで2016年モデルから始まり、2018年から2020年でそのフェーズに入った。2020年以降では「遅い」と言えるのだが、昨今の事情も相まって、遅れたメーカーも少なくない。大会の中止とともに、生産の優先順位、材料、パーツ調達の困難など、向かい風が厳しくなってしまった。

そんな状況はまだ完全に打破できてはいないが、以前よりは戻りつつある。「2023年モデル」と言われるこの時期では、カウントデータの信憑性も高まってくるだろう。トライアスロンバイクでは、単なるディスク化ではなく、全体からの見直しが必要なため、ディスク化というよりは新しいコンセプトのもとに新型がリリースされているため、時間はかかったが、ほぼ出揃った感となっている。

台数   Disc   比率   Rim   比率
Tri Road 合計 Tri Road 合計
986※ 71 98 169 17.1% 311 506 817 82.9%

※未確認1台除く

Counted by Triathlon GERONIMO

結果は上表の通りの結果となった。この数値をどう見るかだが、4月の石垣島では、23.8%、6月の彩の国では32.5%だっただ家に、低い結果であったと感じてしまう。やはり、パーツ交換やDi2化と違い、「バイクの買い替え」となることは簡単ではない。元祖であり、老舗の皆生大会ではベテラン選手が多く、旧型のバイクもしっかりとメンテナンスされ大切に使用されている。絶対値ではなく、徐々に伸びることを期待したい。

そもそも「ディスクブレーキ」は必要なのか、数年までに議論されたことだ。全ては安全性と考えている。ブレーキだけでなく、その前に行なわれていたのが「ホイールの強化」だった。路面と接しているのはホイールであり、制動力はブレーキだけではなし得ない。その意味では、より安全性の高まったバイクが増える傾向にもあるということはとても大切なことなのだ。

 

【最後に】

皆生大会、バイクも歴史を感じるさせるものがあった。最新機材が良いのは確かだが、安全性の問題なければ使う、きっとそんな選手が多いのだろう。まさに古き良き、現在に残る発祥の大会らしさを感じた。

来年はどんなバイクが並ぶのだろう。

 

 

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

「皆生のコースはトライアスロンorロードどちらでしたか?」

BOSS-N1-S
Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

第40回全日本トライアスロン皆生大会 Race ” Photo ” Report

7/17(日)鳥取県米子市他で「第40回全日本トライアスロン皆生大会」(皆生トライアスロン協会主催、スポーツ振興くじ助成事業)が開催された。

★Recap 大会トピックス http://triathlon-geronimo.com/?p=41656

国内トライアスロン発祥の大会皆生。3年ぶりの開催となった。昨年も8月に順延し、開催に挑んだが、叶わなかった。今年こそはと期待が高まっていた。そんな中で無事開催となった皆生大会は、「ロングの再開」でもあった。2020年4月の宮古島が中止となり、それ以降、長崎、佐渡も含め、国内ロング四大会は止まっていた。

ロングとなれば時間がかかる。ボランティアや医療班の体制を整えるのことが極めて大きな負担となってくる。国内トライアスロンにおいてロング再開は希望の光でもあった。2022年こそ復活の年と期待していたが、中止や定員割れなど少なくない。そんな情報が入って来る中で、皆生大会は変わらずの人気を誇っていた。

「発祥」と言うだけで長く続けることはできない。やはり、鳥取の宝として、地元の人に守られ続けて来た大会だった。KONAのアイアンマンは2018年に40周年とっているが、皆生もさほど変わらない歴史を持っている元祖「日本の鉄人レース」なのだ。

 

■KAIKE Triathlon

≪皆生の歴史は、日本の歴史≫

再開の皆生大会は節目となる40回目の開催だった。第1回は1981年、ホノルルで開催されたアイアンマンのマニュアルを取り寄せ、国内初のトライアスロンが53名の勇者によって開催されたのだった。当時の距離は短く、スイム2.5km、バイク63.2km、ラン36.5kmで開催されている。現在では、ミドルに近いものではあったが、当時は、3種目連続で行うだけでも鉄人だったのだ。現在に近い距離となったのは、1986年第6回大会以降となる。40回目の夏を迎えたのだった。

≪地元に支えられた大会≫

ボランティアに支えられた大会で、その数は4000名を超えていることも皆生の特長であり、名物でもある。私設エイドもあり、「休んでいけ、食べていけ」と皆生流のおもてなしをしてくれる。ただ、今年は叶わなかった。選手はもちろん残念だが、地元の人々も選手との交流を楽しみにしている。発祥の誇りと優しさで、全国から集まる「鉄人」たちを迎えてくれる。そんな地元のボランティアもいつも通りとは行かない中だったが、最善のサポートと応援をしてくれていた。

 

■Course

【Bike】115km

アップダウンの難コース。序盤はフラットもあるが、中盤からのアップダウンのイメージが強く、終わってみれば、そのイメージしか残らない。そんなタフなコースとなっている。例年であれば大山を含めた140kmとなっているため、今年は少し楽となるはずなのだが、やはりそのハードなコースはベテランも唸らせる。

【1st Run】6.9km

本来はスイム3kmだが、高波のため、ファーストランとして開催された。目的はバイクスタートでバラけさせることだ。スイムスタート地点から東側に移動したところから一斉スタートとなる。最後のランと同様に海沿いを走り、折り返し戻って来る。折り返し地点は、選手の走り易い設定で往復し6.9kmとなった。

【Run】32km

今回注目となるのが、新コースだ。弓ヶ浜サイクリングコースを利用し海沿いを走る。以前のコースは、信号でのストップ&ゴーがあり、ペースが掴みにくいとされていた。またロードコンディションは極めて良くなり、段差や傾斜がなくなり、走り易くなっている。そのため、地元選手は、スピードレースの想定をしていた。

 

■Good Morning

長い一日が始まる。

笑顔の中にも緊張感を感じる。

当然だろう。

皆生のためにトレーニングを積んで来た。だからこそ、良い緊張感を感じる。

積み上げたものを出し切って欲しい。

 

■Race

【1st Run】

≪フラットで距離も短い1stランコース≫

やはり想定外だった1stラン。当日は、天候も良く、風もない。ベストなコンディションが予想されたからだ。朝5:00スイムを中止、1stランになったことがアナウンスされた。会場で初めて知る選手も少なくなく、一様の落胆となった。やはり、得意、不得意は別にして、「トライアスロン」としての開催を望まない選手はいないだろう。

スイムを得意とする選手にとっては明暗を分けることとなったが、こればかりは仕方がない。3時間半後のスタートまで会場で待機となった。芝生などに座って静かに待つ選手たち。口々に「嫌な時間ですね。」と。拍子抜けと言ったところだろうか。

8:30 ついにスタートなった。ショートのデュアスロン並に、猛ダッシュとなる選手からマイペースでゆっくりと後方からスタートする選手など、トップの23分台から1時間以上の選手までとなった。いきなり、スプリントとなった選手たちは、「上げ過ぎた、きつかった」など、変則的なスタートに惑わされた。

1stラン6.9kmを23分台で走る選手(キロ3分20秒)

 

【Bike】

≪皆生の象徴、変わらずのタフなバイクコース≫

皆生だけではないが、皆生と言えば、バイクコースが話題となるだろう。鳥取県の象徴の一つでもある大山の上り、その後もテクニカルなアップダウンが続くタフなコースだ。バイクもロードバイクが良いか、トライアスロンバイクが良いか、なども良く聞こえて来る。

今回は、バイクも25km短縮され、115kmとなった。象徴の大山は上らないが十分過ぎるアップダウンが待っている。コースは極めて複雑となっているが、案内はしっかりとしているため、迷うことはない。ここにも多くのボランティアが活躍している。

序盤はフラットコースもあるが、中盤からはアップダウンが続く、また道幅は広いとは言えない箇所も多く、慎重な走りが求められる。上りはきついが、下りも気が抜けない。スピードを活かしたいところだが、安全にも配慮したいところだ。言い方を変えれば、コースを知っていると強い。テクニカルのアップダウンはパワーだけでは走れない。下りをどこまで活かせるか、重要なテクニックとなることは言うまでもないだろう。

 

【Run】

≪待望のシーサイド、ノンストップランコース≫

今回から大きく変更となったのがランコースだ。ランコースのエリアとしてはほぼ同じなのだが、以前は、狭い歩道であったり、すぐ渡れてしまいそうな交差点も信号が赤であれば交通規制がないため止まらなければいけなかった。歩道は段差もあり、傾斜もあり、走りづらく、ロングのラストとなるランではきつい。信号が変わりそうになればペースダウンや歩き始める選手。今までは思ったようにマイペースで走れなかったのだが今回は違う。

やはり、シーサイドランはトライアスロンらしさを感じさせるシーンだ。一部防砂林内側を走る部分もあったり、終盤は街中を走るため全てではないが、大部分がシーサイドコースとなる。路面のコンディションは新設のため極めて良好で走り易い。

一方で、選手によっては感じ方も様々なようだった。ノンストップにより単調さが強調されるのか、精神的な辛さも感じていたようだ。レベルにもよるが、信号で止まることもかえって良しとしていた選手もいる。折り返しの夢みなと公園が遠くにずっと見えていることも、良し悪しあったようだ。比較すると個人個人の意見があると思うが、コースとしては、間違いなく「改善」となっている。

 

【Finish Line】

これも皆生らしさが溢れたシーンとなる。

皆生ならではということはいくつもあるが、特にゴールシーンは清々しいものを感じさせてくれる。選手同士、仲間、そして、家族との同伴ゴール。トライアスロンの原点とも言える光景が広がっている。

今回は、コロナ禍ということもあり、同伴の人数制限とゴールテープは無しとなっているが、いつもと変わらない空気感に包まれたゴールエリアだった。まずは頑張った選手に拍手を送りたい。今回距離は短くなっているが、「灼熱皆生」は変わっていない。その中で走り切った選手たちは最高の達成感と安堵感でゴールしている。

そして、この感動は選手だけではなし得ない。大会スタッフ、ボランティア、多くの人々に支えられてみんなで作り上げた最高の瞬間なのだろう。

Congratulations !

 

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

■Data

《参加選手》※個人の部

総エントリー数 / 最終出走者数 940/925名

完走者数 / 率 835名 / 90.3%

《総合男子》

1位 井邊 弘貴  No.005    6:05:34(R23:47/B3:18:12/R2:23:35)※連覇
2位 久山 司      No511     6:16:45(R24:09/B3:20:30/R2:32:06)
3位 森 信弥      No.912    6:22:13(R27:00/B3:19:29/R2:35:44)

《総合女子》

1位 髙橋 真紀      No.007    7:20:11(R28:01/B3:54:21/R2:57:49)※連覇
2位 宇治 公子      No.008    7:22:46(R30:07/B4:00:58/R2:51:41)
3位 寺木 佐和子  No.012    7:27:52(R29:54/B4:01:36/R2:56:22)

全ての記録:http://www.kaike-triathlon.com/record/record40.htm

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

 

 

 

「皆生は、2023年に向けスタートしている!」

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka