2022佐渡国際トライアスロン大会 Race “Photo” Report

9/4(日)2022佐渡国際トライアスロン大会が開催された。(主催:佐渡国際トライアスロン実行委員会・公益社団法人日本トライアスロン連合)

★Recap 大会トピックス http://triathlon-geronimo.com/?p=42536

ついに国内ロングが通常の距離で3年ぶりに開催となった。

コロナ禍により、2020年、2021年が中止になった。ただの中止ではない。ロングは簡単には出場できない。それまでの準備こそがロングに出るということだ。暑い日も、寒い日も、風の強い日も、時には雨に降られた時も、目標に向けて、積み上げて行くのがロングに出るということ。ロングが無くなれば、トレーニング習慣も変わってしまう。そして、大きくモチベーションも落ち、トライアスロンを見失ってしまった人も少なくないだろう。

それだけ、影響力の大きなロング佐渡の再開は、間違いなく、新たなスタートを切るためのきっかけとなっている。今シーズンも終盤に入ったが、来シーズンに向けて、弾みがつくことだろう。来シーズンは、宮古島、長崎、皆生、そして、佐渡の4ロング完全復活を祈念したい。

やはり、ロングの大会は良い。選手それぞれのドラマがある。ベテラン選手でも思ったように走れなかった選手もいただろう。勘が戻っていないのかもしれない。そして、初ロングだった選手もいただろう。きっとモチベーション高く、コツコツと積み上げてきたはず。それぞれのレースがあったと思うが、最後、花道での気持ちは一つだろう。

 

■SADO Triathlon

3年ぶりの晴れの舞台。祝福するかのような朝陽はいつもの佐渡だった。

≪希少なロング、国内最長、そして、再開≫

佐渡大会は国内ロングトライアスロンで、アイアンマンよりもバイクが10km長い国内最長レースとなっている。国内4ロング大会の最終戦となる佐渡は、ロングの他にミドルとそのリレー、ジュニアも併催、ロングのナショナルチャンピオンシップ(日本選手権から名称変更)も開催され、Aタイプのエリートが追加となった。

佐渡は今年で34年目の老舗大会で、参加者数も各カテゴリーを合わせると2000名を超える国内最大のトライアスロンとなる。Aタイプの最高齢は78歳、Bタイプの最高齢は82歳の選手が参加、幅広い選手から、「夏の最終戦」として、目標となっている大会だ。それだけに待望の再開に選手も湧いた。

≪ダイナミックなバイクコース≫

国内トライアスロンにおいて、その地理を活かした、最も美しいバイクコースの大会と言えるだろう。まさに「Trip」とも言える醍醐味が、エリートから完走レベルまで幅広く、飽きさせないコースとなっている。

 

■Course

【Swim】A4.0km / B2.0km

会場は、年穏やかな真野湾の佐和田沖で、前回2019年は荒れたが、今回は「ベタナギ」となり選手を安心させた。コースは、1周2kmの三角コースを時計回りに、Aタイプは2周、Bタイプは1周をする。Aタイプは、一度上陸し、再度泳ぐ設定となる。スタートは、トライアスロンの醍醐味であり、壮観なシーンとなるビーチからの一斉スタートだ。

【Bike】A190km / B108km

大会を象徴するダイナミックなコースで、ほぼ佐渡島をトレースするように終始海岸線を走る。Aタイプは前述の通り、Bタイプは佐渡島南側の「小佐渡」を走る。局面は大きく3つに分かれる。Aの場合だが、序盤鷲崎までのアップダウン約70km、中盤小木までのフラット約90km、そして、終盤佐和田までのアップダウン30kmだろう。

【Run】A42.2km / B21.1km

ランは新コースとなった。メイン会場と沢根漁港を結ぶ1周7kmの海岸線を走るフラットコースで、Aタイプは6周、Bタイプは3周となる。従来コースも日陰は少ないが、新コースはほぼ日陰のない灼熱ランとなる。コースは基本的にフラットで車ではわからない程度だが、緩やかなアップダウンはあり、Aタイプの選手には徐々にダメージが出て来る。マップ上には出ていないが、中間地点にエイドステーションが追加されている。

そして、従来の厳しい関門が変更になっている。16:30までにランスタートし、次の関門は、6周目を20:40までに通過すれば良いのだ。

 

■Good Morning

4:30 開催が決定した。長い一日が始まる。

いよいよ決戦の時となった。

久しぶりのロングとなる選手たちは、笑顔の中にも緊張感を感じる。

暑いレースになりそうだが、大丈夫だろうか。ここまで積み上げたものを出し切れるだろうか。

やって来たからこそ、緊張がある。

 

■Race

【Swim】

絶好のスイムコンディションだった。

≪鏡面のフラットコース≫

コースのコンディションはこの上ない状況だった。特に2019年を経験している選手にとっては、その安堵感は大きかった。また、海もきれいだ。透明度も高く、気持ち良く泳げたことだろう。

今回も海上からの撮影となったが、元々水深が浅く、水面も安定している。沖300mでも水深約6m。今回大型船のため、接近は叶わなかったが、「一斉スタート」は以前と何も変わらない迫力、そして、いつもの光景に「戻った」と感じた。

レースは、もちろん「松田丈志選手」が最初から最後までダントツの一人旅でトップだった。1周目を25分でカバーし、最終53分で笑顔のフィニッシュはさすがの一言。例年1時間前後のイメージがあったが、2017年以降、スイム距離が4kmとなってからは新記録となる。

スイムは2位に2分以上の差をつけ、トップフィニッシュの松田選手。

 

 

【Bike】

長かったバイクも小木を越えれば。但し14:30までに通過したい。

≪国内最長バイクコース、攻略方法はさまざま≫

久保埜一輝選手がクイックトランジットでバイクをトップスタートしている。

佐渡の難易度が象徴されるバイクレグ。長い上にアップダウンや向かい風が立ちはだかるハードなコース。ランに脚を残したいが、そんな余裕がある選手は多くはないだろう。更に、7:00過ぎ、バイクスタート時には、陽射しも強くなり、気温は上がるばかりだ。

冒頭のコース紹介で述べたが、一つの考え方として、コースを三分割で見ることができる。序盤は、鷲崎までの約70km、中盤は、小木までの約90km、そして、ラスト30kmとなるだろう。佐渡バイクコースのイメージは、まずは長いこと、そして、アップダウンが先行すると思うが、中盤となる鷲崎から小木までの最長区間90kmを安定して走ることが出来るかが重要。一部を除き、ほぼフラットコースとなる。つまり「DHポジション」をいかに徹底できるかにかかっている。特に水津から小木まではフラットながら、向かい風が吹くエリアだ。身体を起こせば、大きくペースダウンとなってしまう。DHポジションで低回転、高出力が求められる重要な区間となる。

バイクでトップスタートの久保埜一輝選手

バイクラップは5時間21分のダントツ、”TK”こと竹谷賢二選手。

 

【Run】

単調となった新コース。自身と向き合い、集中力が問われる。

≪オールフラットとなった新コースは6周回≫

1周7kmとなるランコースは、メイン会場周辺の距離調整のループコースもあるが、ほぼ対面のフラットで、真っ直ぐなコースとなる。まさに「単調」とはこのようなコースなのだろう。

バイクを完走、ランにトランジットした選手は900余名。タイム差やBタイプの選手もいるが、最大900名前後の選手が片道3.5kmに犇き合う。フルマラソン大会かと思わせるような多くの選手が道幅いっぱいに走っている。沿道の応援があるところでは、賑やかなのだが、そうでないところでは、選手が多く走っているにも関わらず、異様に静寂な世界の中、黙々と走る選手たち。

カメラを向ければ、笑顔も見られるが、ロングのランはハード。3周終わったところで、やっとレースの「半分」という感じかもしれない。それほど残りの3周は、キツく、サバイバルとなる。

やはり、最後に「フルマラソン」があることが、ロングの証明でもあるだろう。トライアスロンは、スプリント、OD、ミドル、そして、ロングの大きく4つの距離に分けられるが、ロングは、ミドルまでの延長線上とは思えない。全くの別の競技であり、「アドベンチャー」ではないだろうか。つまり、ベテランですら、完走は絶対ではない。長い一日の中ではいろいろなことがある。調子良かった序盤も最後まで続くとは限らない。己の力の把握と、それが思ったように行かなくなった時、気力だけが、脚を前に進めてくれる。

いつも思うがロングで「笑顔」の選手は眩し過ぎる。

しっかりとした足取りの松田丈志選手

苦しいレースも楽しむ河原隼人選手

暗くなってからが佐渡。

 

■Finale

今年の佐渡も終わりを迎えた。

2022年国内のメインイベントとも言える佐渡の終わりは、夏の終わりだ。まだ大会は10月まで続くが、成績はともかく、「大きな仕事」を終えたのだ。

そんな終わりを感じさせてくれるのは、大会ラストを飾る花火だ。レースが21時30分終了すると、会場の照明が落とされる。選手は皆、海側へ目をやる。そして、長かった一日の走りを花火が祝福しながら彩る。

やはり、Aタイプの特権だろうか。特にゴールして間もない選手には、大きく心が揺さぶられる。6時にスタートしたレースが15時間以上かけて走った、いつ終わるか分からないようなレース。でも終わった。

この花火には、毎回BGMが付いている。事務局の担当者が毎年こだわりの選曲をしてくれている。今年のBGMは、[ re: ]プロジェクトの「もう一度」だった。

〜 当たり前にあった世界が壊れそうな今、誰のせいにしようか、僕は考えていた。悲しいニュースに目眩さえして、でも明日を見失っちゃダメだ。〜

そして、「開催してくれてありがとう」、選手から口々に聞こえてきた。

 

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■Data

《参加選手》※ジュニア除く

総エントリー数 / 最終出走者数 2186/1787名

完走者数 / 率 1468名 / 82.1%

《Aタイプ男子》

1位 荒瀬 壮兵     No.1071    10:04:31(R1:11:01/B5:29:02/R3:21:55)
2位 久保埜 一輝    No.1002    10:12:40(R0:55:52/B5:29:11/R3:45:40)
3位 梅田 航平     No.1023    10:21:21(R1:04:54/B6:01:55/R3:11:54)

《Aタイプ女子》

1位 平柳 美月        No.3008    11:39:26(R1:12:32/B6:34:52/R3:48:45)
2位 山下 千春        No.3011    12:02:22(R1:07:00/B6:38:55/R4:11:33)
3位 鈴木 まさみ    No.3033    12:04:05(R1:18:12/B6:44:47/R3:57:27)

《Bタイプ男子》

1位 星 大樹      No.4001     4:48:44(R0:32:14/B2:47:22/R1:27:44)
2位    伊藤 駿            No.4048     5:16:58(R0:39:06/B2:56:28/R1:39:01)
3位 雨宮 大地        No.4068     5:21:07(R0:36:21/B3:02:21/R1:39:45)

《Bタイプ女子》

1位 久保埜 南        No.5006     5:34:10(R0:28:02/B3:19:24/R1:44:53)
2位 林本 花枝        No.5002     5:48:10(R0:30:51/B3:18:46/R1:56:21)
3位 安田 明日香    No.5012     5:57:11(R0:32:11/B3:36:10/R1:47:27)

《Championship男子》

1位 小田倉 真        No.2      4:32:12(R0:26:07/B2:45:24/R1:19:47)
2位 寺澤 光介        No.8      4:45:45(R0:26:08/B2:52:11/R1:26:09)
3位 榊原 佑基        No.5      4:51:37(R0:29:20/B2:52:45/R1:28:24)

《Championship女子》

1位 山内 麻代         No.23    5:25:56(R0:29:20/B3:21:32/R1:34:00)
2位 太田 麻衣子     No.22    5:32:30(R0:31:32/B3:16:53/R1:42:38)
3位 石田 凪帆         No.21    5:37:49(R0:29:19/B3:23:30/R1:44:04)

《AタイプElite》

1位 中西 篤志  No.53    10:52:14(R1:04:59/B5:51:12/R3:53:43)
2位 石橋 健志  No.54    11:27:18(R58:58/B6:41:52/R3:45:08)
3位 宮村 和宏  No.55    11:56:05(R1:07:14/B6:24:56/R4:21:47)

全ての記録:http://www.scsf.jp/triathlon/2022result.html

 

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その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=42444

 

 

 

「この3年間の集大成であり、締め括りだったように思う。夏休みの宿題も終わった。」

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka