第40回全日本トライアスロン皆生大会 Race ” Photo ” Report

7/17(日)鳥取県米子市他で「第40回全日本トライアスロン皆生大会」(皆生トライアスロン協会主催、スポーツ振興くじ助成事業)が開催された。

★Recap 大会トピックス http://triathlon-geronimo.com/?p=41656

国内トライアスロン発祥の大会皆生。3年ぶりの開催となった。昨年も8月に順延し、開催に挑んだが、叶わなかった。今年こそはと期待が高まっていた。そんな中で無事開催となった皆生大会は、「ロングの再開」でもあった。2020年4月の宮古島が中止となり、それ以降、長崎、佐渡も含め、国内ロング四大会は止まっていた。

ロングとなれば時間がかかる。ボランティアや医療班の体制を整えるのことが極めて大きな負担となってくる。国内トライアスロンにおいてロング再開は希望の光でもあった。2022年こそ復活の年と期待していたが、中止や定員割れなど少なくない。そんな情報が入って来る中で、皆生大会は変わらずの人気を誇っていた。

「発祥」と言うだけで長く続けることはできない。やはり、鳥取の宝として、地元の人に守られ続けて来た大会だった。KONAのアイアンマンは2018年に40周年とっているが、皆生もさほど変わらない歴史を持っている元祖「日本の鉄人レース」なのだ。

 

■KAIKE Triathlon

≪皆生の歴史は、日本の歴史≫

再開の皆生大会は節目となる40回目の開催だった。第1回は1981年、ホノルルで開催されたアイアンマンのマニュアルを取り寄せ、国内初のトライアスロンが53名の勇者によって開催されたのだった。当時の距離は短く、スイム2.5km、バイク63.2km、ラン36.5kmで開催されている。現在では、ミドルに近いものではあったが、当時は、3種目連続で行うだけでも鉄人だったのだ。現在に近い距離となったのは、1986年第6回大会以降となる。40回目の夏を迎えたのだった。

≪地元に支えられた大会≫

ボランティアに支えられた大会で、その数は4000名を超えていることも皆生の特長であり、名物でもある。私設エイドもあり、「休んでいけ、食べていけ」と皆生流のおもてなしをしてくれる。ただ、今年は叶わなかった。選手はもちろん残念だが、地元の人々も選手との交流を楽しみにしている。発祥の誇りと優しさで、全国から集まる「鉄人」たちを迎えてくれる。そんな地元のボランティアもいつも通りとは行かない中だったが、最善のサポートと応援をしてくれていた。

 

■Course

【Bike】115km

アップダウンの難コース。序盤はフラットもあるが、中盤からのアップダウンのイメージが強く、終わってみれば、そのイメージしか残らない。そんなタフなコースとなっている。例年であれば大山を含めた140kmとなっているため、今年は少し楽となるはずなのだが、やはりそのハードなコースはベテランも唸らせる。

【1st Run】6.9km

本来はスイム3kmだが、高波のため、ファーストランとして開催された。目的はバイクスタートでバラけさせることだ。スイムスタート地点から東側に移動したところから一斉スタートとなる。最後のランと同様に海沿いを走り、折り返し戻って来る。折り返し地点は、選手の走り易い設定で往復し6.9kmとなった。

【Run】32km

今回注目となるのが、新コースだ。弓ヶ浜サイクリングコースを利用し海沿いを走る。以前のコースは、信号でのストップ&ゴーがあり、ペースが掴みにくいとされていた。またロードコンディションは極めて良くなり、段差や傾斜がなくなり、走り易くなっている。そのため、地元選手は、スピードレースの想定をしていた。

 

■Good Morning

長い一日が始まる。

笑顔の中にも緊張感を感じる。

当然だろう。

皆生のためにトレーニングを積んで来た。だからこそ、良い緊張感を感じる。

積み上げたものを出し切って欲しい。

 

■Race

【1st Run】

≪フラットで距離も短い1stランコース≫

やはり想定外だった1stラン。当日は、天候も良く、風もない。ベストなコンディションが予想されたからだ。朝5:00スイムを中止、1stランになったことがアナウンスされた。会場で初めて知る選手も少なくなく、一様の落胆となった。やはり、得意、不得意は別にして、「トライアスロン」としての開催を望まない選手はいないだろう。

スイムを得意とする選手にとっては明暗を分けることとなったが、こればかりは仕方がない。3時間半後のスタートまで会場で待機となった。芝生などに座って静かに待つ選手たち。口々に「嫌な時間ですね。」と。拍子抜けと言ったところだろうか。

8:30 ついにスタートなった。ショートのデュアスロン並に、猛ダッシュとなる選手からマイペースでゆっくりと後方からスタートする選手など、トップの23分台から1時間以上の選手までとなった。いきなり、スプリントとなった選手たちは、「上げ過ぎた、きつかった」など、変則的なスタートに惑わされた。

1stラン6.9kmを23分台で走る選手(キロ3分20秒)

 

【Bike】

≪皆生の象徴、変わらずのタフなバイクコース≫

皆生だけではないが、皆生と言えば、バイクコースが話題となるだろう。鳥取県の象徴の一つでもある大山の上り、その後もテクニカルなアップダウンが続くタフなコースだ。バイクもロードバイクが良いか、トライアスロンバイクが良いか、なども良く聞こえて来る。

今回は、バイクも25km短縮され、115kmとなった。象徴の大山は上らないが十分過ぎるアップダウンが待っている。コースは極めて複雑となっているが、案内はしっかりとしているため、迷うことはない。ここにも多くのボランティアが活躍している。

序盤はフラットコースもあるが、中盤からはアップダウンが続く、また道幅は広いとは言えない箇所も多く、慎重な走りが求められる。上りはきついが、下りも気が抜けない。スピードを活かしたいところだが、安全にも配慮したいところだ。言い方を変えれば、コースを知っていると強い。テクニカルのアップダウンはパワーだけでは走れない。下りをどこまで活かせるか、重要なテクニックとなることは言うまでもないだろう。

 

【Run】

≪待望のシーサイド、ノンストップランコース≫

今回から大きく変更となったのがランコースだ。ランコースのエリアとしてはほぼ同じなのだが、以前は、狭い歩道であったり、すぐ渡れてしまいそうな交差点も信号が赤であれば交通規制がないため止まらなければいけなかった。歩道は段差もあり、傾斜もあり、走りづらく、ロングのラストとなるランではきつい。信号が変わりそうになればペースダウンや歩き始める選手。今までは思ったようにマイペースで走れなかったのだが今回は違う。

やはり、シーサイドランはトライアスロンらしさを感じさせるシーンだ。一部防砂林内側を走る部分もあったり、終盤は街中を走るため全てではないが、大部分がシーサイドコースとなる。路面のコンディションは新設のため極めて良好で走り易い。

一方で、選手によっては感じ方も様々なようだった。ノンストップにより単調さが強調されるのか、精神的な辛さも感じていたようだ。レベルにもよるが、信号で止まることもかえって良しとしていた選手もいる。折り返しの夢みなと公園が遠くにずっと見えていることも、良し悪しあったようだ。比較すると個人個人の意見があると思うが、コースとしては、間違いなく「改善」となっている。

 

【Finish Line】

これも皆生らしさが溢れたシーンとなる。

皆生ならではということはいくつもあるが、特にゴールシーンは清々しいものを感じさせてくれる。選手同士、仲間、そして、家族との同伴ゴール。トライアスロンの原点とも言える光景が広がっている。

今回は、コロナ禍ということもあり、同伴の人数制限とゴールテープは無しとなっているが、いつもと変わらない空気感に包まれたゴールエリアだった。まずは頑張った選手に拍手を送りたい。今回距離は短くなっているが、「灼熱皆生」は変わっていない。その中で走り切った選手たちは最高の達成感と安堵感でゴールしている。

そして、この感動は選手だけではなし得ない。大会スタッフ、ボランティア、多くの人々に支えられてみんなで作り上げた最高の瞬間なのだろう。

Congratulations !

 

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■Data

《参加選手》※個人の部

総エントリー数 / 最終出走者数 940/925名

完走者数 / 率 835名 / 90.3%

《総合男子》

1位 井邊 弘貴  No.005    6:05:34(R23:47/B3:18:12/R2:23:35)※連覇
2位 久山 司      No511     6:16:45(R24:09/B3:20:30/R2:32:06)
3位 森 信弥      No.912    6:22:13(R27:00/B3:19:29/R2:35:44)

《総合女子》

1位 髙橋 真紀      No.007    7:20:11(R28:01/B3:54:21/R2:57:49)※連覇
2位 宇治 公子      No.008    7:22:46(R30:07/B4:00:58/R2:51:41)
3位 寺木 佐和子  No.012    7:27:52(R29:54/B4:01:36/R2:56:22)

全ての記録:http://www.kaike-triathlon.com/record/record40.htm

 

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その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

 

 

 

「皆生は、2023年に向けスタートしている!」

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

第40回全日本トライアスロン皆生大会 Athlete Report(Ando)

選手目線でのレポートを書いて頂きました。

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全日本トライアスロン皆生大会参戦記「3年ぶりのロングレースを終えて」

安藤友久

 ついに3年ぶりのロングレースに出場できることになった。この間、ショート2レース、ミドル3レースに出場してきたが、ロングのレースはコロナが始まってからすべて中止。6月に予定していたアイアンマンケアンズも直行便の運航中止により出場断念。ロングレースを主目標にしてきた自分にはレースの予定が立たないので心折れそうになる時もあったが、スイム、バイク、ランそれぞれに練習仲間がいてくれたお陰でなんとか練習が継続できていた。

 ただ、6月のバラモンキングが直前に中止になったので、皆生も直前まで開催できるのだろうか不安がよぎったが、前々日のTETSUJIN皆生通信(皆生トライアスロンのメルマガ)で大会会長の米子市長から「中止という選択肢はない」とのメッセージがあり、皆生スタッフの心意気に俄然やる気がわいてくる。

【レース前】

 前日の開会式と競技説明会にトラ仲間と参加、コロナ以降の競技説明会はWEBで開催が主流になっているが、さすが皆生は参加必須。バイク預託は前日と当日であったが雨がひどいので、当日行うことにする。今回はコロナの影響でバイク25キロ、ラン12キロ短縮されるので、距離的にはミドルとロングの中間ぐらいとなり、いつもよりレースは楽かと余裕があったが、後でその期待はみごとに裏切られ、いつも通りの過酷なレースとなる。

 そして当日朝はピーカンのいい天気、5時起床して駅前ホテルから自走で会場に到着。かつてのスイム仲間がいたので声をかけると衝撃の一言が、「安藤さんスイム中止ですって、代わりにファーストランです」え~、このいい天気にうそでしょ! 少し気が動転して信じられなかったが、海のうねりと波が高くて危険とのこと、スイムは生命にかかわるので主催者判断でやむなく納得。1stランの準備をすることになる。

【1stラン】

 レースでスイム中止になって1stランになるのは初めての経験なので、どのくらいのペース6.9キロ走ればいいのかわからず、とりあえず前のほうでスタート。コロナ対策でスイムは10人づつのローリングスタートの予定だったが、1stランは1000人がかなり密な状態でのスタートとなる。

 とにかく周りのペースが速く、流れに乗ろうと最初の2キロはキロ4分を切るペース、これはまずいとややペースダウンして、抜かれても自分のペース維持に注力、折り返しからは陽射しが強く暑さでだんだんペースも遅くなってきたが、全体83位、キロ4:15平均で1stランを終了。

【バイク】

 1stランから心拍160超えでバイクに突入、いつものスイムからのバイクだと終盤楽に泳いで心拍抑えめでバイクなのが、最初から心拍Maxで始まったので息が切れてなかなかスピードに乗れない。10キロぐらいまではどんどん抜かれて焦るが心拍が落ち着くまでは我慢と自分に言い聞かせて、「お先にどうぞ」と心の中でつぶやいていた。20キロ過ぎたあたりからようやく調子がでてきて抜かれることがなくなって、前方を走る選手と同じぐらいのスピードでアップダウンの連続コースにはいっていく。

 ところがあと50キロの折り返しの中山温泉ASでアクシデント発生。給水して出ようとするとシャカシャカの異音が、チェーンが外れてからまってるではないか、焦って素手でチェーンを鷲掴みして直そうとしたら右手が何か所も切れて出血で手が血だらけになっている。これでは走れないのでASの救護所に駆け込み出血の治療をしてもらう。何分ロスしたかはわからないが、チェーンも直して再出発。結局バイクは4:05:20で終了時109位。26人に抜かれたことになる。

【ラン】

 ランはいつもとコースが違い、途中まで海岸沿いのサイクリングコースを走ることになったので、皆生名物の信号停止がなくなり、25キロまでノンストップで走ることになる。気温も上昇してきて、海岸沿いで何も陽射しを遮るものがないので、暑さでここから過酷なレースが始まった。すべてのエイドでスポンジで頭から水をかけ、氷を帽子の中とトライウエアの中に入れるいつもの暑さ対策を行い、とにかく身体を冷やしてペースを維持。他の選手もかなり苦しそうに見え、一人また一人と地味に抜いていく。

折り返し地点少し前で大塚さんにトラ仲間の土屋さんより5分遅れていると激励され力を振り絞る。ようやく折り返し地点を通過するが、暑さと疲労で大幅にペースダウンし横腹も痛くなってきて歩きたいという気持ちと葛藤、歩いたらそこでレースが終わってしまうので、ゆっくりでもいいから走ろうと決める。サイクリングロードが終了して海岸沿いを離れ一般道に出ると、暑さが和らいだのか疲労困憊してはいるがペースが少し戻ってくる。長いレースもあと4キロぐらいになり、電車の踏切で走行を止められている土屋さんに追いつく。踏切が開いて走り始め、いったんは土屋さんを追い越すがそのあとまた抜かれ、足の爪も痛くなり、もう追いかける脚力が残っていなかった。

苦しかったがランは32キロを3:01:25で走り36人抜いて73位でゴールできた。やっぱりロングは過酷だった、久しぶり過ぎてレース途中で過酷だったことを思い出したほど、しかしゴールして達成感もショートやミドルとは比べようもないことを思い出した。

 このコロナ禍で大会を開催して下さった大会関係者や多くのボランティアの方々に御礼を申し上げます。また日頃いっしょに練習をしてくれるトライアスロン仲間、気持ちよくレースに送り出してくれる家族に感謝です。

 今シーズンはあと9月の佐渡トライアスロンがあります。コロナで開催が危ぶまれますが開催されれば全力で頑張っていきたいですね。

【結果】

距離: 1stラン6.9km  バイク115km  ラン32km

成績: タイム7:35:45  総合73位  年代別5位

  •      1stラン    0:29:00(83)
  •      バイク   4:05:20(122)
  •      ラ ン   3:01:25(60)

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

 

 

「お疲れ様でした。激戦のエイジグループの中で頑張りましたね。」
BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

第40回全日本トライアスロン皆生大会 Athlete Report(Tokizane)

選手目線でのレポートを書いて頂きました。

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初めてロングのトライアスロンに出場したのは2015年宮古島大会でした。

美しい景色、沿道の応援、そしてゴールの感動、以来すっかりトライアスロンの虜になりました。トライアスロンを通して知り合った友人から「皆生はいいよ」と聞き、2度エントリーするも、いずれも落選。縁がないとあきらめていたところ、2021年大会の出場機会をいただくことができました。念願の出場に向けてトレーニングを積んでいましたが、コロナが収束せず大会の1年延期が決定。その後2022年に入り、職場、家族など公私に大きな変化が続き、十分にトレーニングができない日々が続きました。焦る気持ちとはうらはらに、大会まであと6カ月、3カ月、1カ月と近づき、そして不安な気持ちのまま当日を迎えることとなりました。

今回の目標は「完走」。トレーニング不足でしたが、天気予報は曇りとコンディションはまずまず、距離が短縮されたこともあり、合計9時間30分(スイム1時間、バイク4時間30分、ラン3時間30分+α)を目標にゴールを目指すことにしました。

当日朝、FBグルーブに書き込みがありスイム中止を知る。「こんなにいい天気なのに?」半信半疑のまま旅館を出てスイム会場に向かってみると、納得の高波とうねり。そこからスタートまでの2時間あまりをバイクのセッティングや柔軟をしながら過ごす。待つ間にも太陽はジリジリと照り付け、汗が流れる。すでに臨戦態勢の選手もいるが、私は「安全第一で完走」と自分に言い聞かせながら日陰で横になりスタートまで体を休める。

<1stラン>

 海沿いの細い道に選手の長い列ができる。まだ8時過ぎだというのに気温は上昇。今日は暑い一日になると覚悟を決め、マスクを外してランスタート。私のスタート位置はちょうど列の真ん中、それでも周りのペースは思ったより速い。まだまだ先は長いので無理せず、マイペースを心掛けるも汗が止まらない。汗だくになりながらランフィニッシュ。

<バイク>

バイクのスタート準備をしていると「時實さん!」の声。振り向くとクラブジェロニモの吉田さんだった。ここからゴールまで彼女と抜きつ抜かれつの旅となるとはこの時点では予想もしなかった。

今回のバイクコースは一番きついといわれる大山のコースがカットされ、距離も短縮されている。最初の40キロはフラットで風もなく、順調に先行する選手を抜いていく。道を間違えそうな分岐点には必ずボランティアの方が立っているので、コースに迷うこともない。スタートして感じたことは「今時のバイクが少ない」ということ。昔から出ている常連の選手が多いせいか、古いタイプのバイクが多いという印象。それだけ歴史のある大会なのだと改めて実感。そんなことを考えているとアップダウンの区間に突入。

もう何百回も聞いている「上半身リラックス」「回転数優先」を心掛け、ギアを軽めにして足への負担を減らすが、ここで誤算。日ごろ使っているローラー台のパワーメーターとバイクに取り付けているパワーメーターとでは表示されるワット数がずれるのだ。これまで実走はほとんどせず、インドア中心のバイクトレーニングだったことが裏目に出た。表示されるワット数を頭の中で修正しながら、負荷が一定になるようペダルを回す。

 折り返しを過ぎたところでカメラを構えていた大塚さんから「1分前に吉田さんが通ったよ」と教えてもらう。先行していたつもりがいつの間にか抜かれていた。1分差だったら追いつけるかもしれないと、そこからスピードアップ。なかなか姿が見えてこないが、ターゲットが設定できたおかげで後半の集中力を保つことができました。残り20キロ地点の坂を下ったところでようやく発見。「ランで勝負だね」と声をかけて追い抜くもすぐに抜き返され、あっという間に見えなくなってしまう。ずいぶん調子がよさそうだ。結局再び追いつくことが出来ないまま、バイクフィニッシュ。

<ラン>

 バイクラックにはすでに半分くらいのバイクが戻っていた。ここからランで順位を上げれば、上位3分の1くらいに入れるかもと気合を入れなおす。

トランジットでウエア、ソックスを全て着替え、デオドラントシートで全身を拭く。タイムロスだとは分かっているが、ロングのレースでは必ず行うことにしている。気持ちがいったんリセットされるので、トータルではロスにはなっていないと自分では思っている。

ランスタート後、アンクルサポーターをつけ忘れたことに気づく。足がつりやすい私にとってふくらはぎを適度に圧迫してくれるサポーターはレースの必需品だ。引き返すのも面倒だし、今回は32キロなので何とかなるだろうと考え、そのまま前へ進む。スタートして5キロで再び吉田さんに追いつく。「また後で」と声をかけて再び前へ出る。調子が良さそうなので、また抜き返されるだろう。

折り返し地点のタワーがはるか遠くに見えるが、とにかくあそこまでは今のペースで行きたい。足は意外と軽いが、事前に聞いていた通りコースに日陰がなく、とにかく暑い。しばらくして復路の土屋さん、安藤さん、生井さんとすれ違い。3人とも辛そうだ。つらい時間帯に仲間の顔が見れるのはありがたい。速い選手も遅い選手も条件は同じ、みな頑張っているのだからと自分に言い聞かせる。

 折り返しを過ぎたところで急に両足が固まり、つったような状態となり立ち止まってします。アンクルサポーターを忘れたことを後悔する。往路で抜いた選手が次々に追い抜いていく。時間はまだまだ余裕がある。焦っても仕方ないので、足の回復を待ち、歩いては走り、つりそうになるとまた歩くを繰り返す。残り7キロ地点で「ようやく追いついた」と再び吉田さんに声を掛けられ、しばらく並走する。もっと早く追いつかれると思っていたが、彼女も相当苦戦しているようだ。残り3キロのエイドまで抜いたり、抜かれたりを繰り返す。そしてついに競技場が見えてきた。もう最後は歩かないと決めて前に出る。暑くて長い一日がようやく終わった。

<まとめ>

今回のレースは練習不足もあり、課題が多いレースでした。これだけレース中に歩いたのは初めてで、距離短縮がなければ、完走は難しかったかも知れません。レース前は正直「皆生が終わったら、少しトライアスロンを休憩しようか」とも考えていました。しかし、皆生に出て改めて「トライアスロンが好き」ということを実感しました。

トライアスリートは皆、仕事、家族など様々な個々の事情を抱えながら、トレーニング時間を確保し競技を楽しんでいます。私も生活の一部にトライアスロンを取り入れながら、これからも長く競技を楽しんでいきたいと思います。そしてまた皆生に戻り、今度は納得ができるレースをしたいと思います。

最後になりますが、一緒に出場しレース中も励ましあえたクラブジェロニモの仲間、そして何よりも大変な状況下で開催していただいた大会関係者、ボランティアの皆様に感謝します。ありがとうございました。

<結果>

1stRUN 39:47(591位)、BIKE 4:44:38(434位)、RUN 4:18:55(451位)、Total 9:43:20(444位)

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

 

 

「お疲れ様でした。まだまだこれからです!」
BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

第40回全日本トライアスロン皆生大会 Race Recap

第40回全日本トライアスロン皆生大会が開催された。

国内トライアスロン発祥の大会皆生。3年ぶりの開催となった。昨年も8月に順延し、開催に挑んだが、叶わなかった。今年こそはと期待が高まっていた。そんな中で無事開催となった皆生大会は、「ロングの再開」でもあった。2020年4月の宮古島が中止となり、それ以降、長崎、佐渡も含め、国内ロング四大会は止まっていた。

ロングとなれば時間がかかる。ボランティアや医療班の体制を整えるのことが極めて大きな負担となってくる。国内トライアスロンにおいてロング再開は希望の光でもあった。2022年こそ復活の年と期待していたが、中止や定員割れなどの少なくない。そんな情報が入って来る中で、皆生大会は変わらずの人気を誇っていた。

「発祥」と言うだけで長く続けることはできない。やはり、鳥取の宝として、地元の人に守られ続けて来た大会だった。KONAのアイアンマンは2018年に40周年となっているが、皆生もさほど変わらない歴史を持っている元祖「日本の鉄人レース」なのだ。

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以下、リキャップとなる。今年も忘れられない大会となった。Photoレポートは後日あらためて。

■40th Aniversary

再開の皆生大会は節目となる40回目の開催だった。第1回は1981年、ホノルルで開催されたアイアンマンのマニュアルを取り寄せ、国内初のトライアスロンが53名の勇者によって開催されたのだった。当時の距離は短く、スイム2.5km、バイク63.2km、ラン36.5kmで開催されている。現在では、ミドルに近いものではあったが、当時は、3種目連続で行うだけでも鉄人だったのだ。現在に近い距離となったのは、1986年第6回大会以降となる。

そして、第1回の優勝者である「高石ともや」がスペシャルゲストとして、40年前を振り返りながら、楽しいトークと変わらない優しい歌声を披露してくれた。現在、80歳の高石さんは、第1回出場時39歳、長くトライアスロンやマラソンを愛する歌うトライアスリートで、ミスター皆生とも言えるレジェンドだ。

■Distance

今回、距離設定が短くなった。スイム3km、バイク115km、ラン32kmでの開催となった。例年は、バイク140kmにフルマラソンとなる。もちろん、例年通りを希望する選手も声も聞こえてきていたが、昨今の事情の中での止むを得ない判断をしている。

大会は三位一体で成り立つ。選手、スタッフ、そして、ボランティアだ。例年4000名を超えるボランティアが特長の皆生大会で、多い時は4400名程度となっている。選手1名につき4名のボランティアとなる計算だ。そんなボランティアの多さは皆生の名物であり、「優しさ」でもある。

今回のボランティアは半数となったため、コースを短縮を余儀なくされてしまった。エイドステーションの数も減らし、選手との接触も極力避けるように運営されていた。本来の「皆生流」からすれば歯痒いところだろう。地元のホットなサポートこそが、選手へのおもてなしでもあったからだ。

「今」できるカタチでの開催となった。

■Course

今回の大きな変更点となったランコース。信号が無くなったため、走り易くなった。以前は、信号遵守で、ストップが多かったため、信号に合わせたペースダウン、歩きなど「一定走」ができない箇所もあった。また、狭い歩道部分もあり、段差、傾斜面、路面の凹凸などもあったが、ご覧の下り、極めて良好なコースとなっている。大きな見方では以前も海に近かったのだが、今回は完全にシーサイドとなる。全てではなく、防砂林の内側を走る部分もあるが、ノンストップで気持ち良く走ることができる。何よりも最高の景色ではあるが、楽しむ余裕があったかどうか。

バイクコースは、名所「大山」がカットされたコースとなった。大山は鳥取県の富士山で象徴だが、運営上カットの対象となった。ただ、25km短くなったとは言え、そのハードさは変わらない。基本的にアップダウンとなるコースは、今回の「115km」だったので完走できたのではないか、と言うような声も聞いた。

そして、スイムは後述の通りとなる。

■Weater

朝5時スイムの中止が決定した。ご覧の通りだが、ここは日本海であり、冬場は特別な光景ではないとのこと。10分に1回程度このクラスの波がやって来る。選手の安全を考慮し、中止となった。スタートの8時にはやや収まったが、これは管理上致し方ないことだ。ちなみにスイム中止は40年の歴史で、今回6回目となる。

選手は一様に驚いていた。天候は朝から晴れ、風もなく、穏やかだったからだ。海だけが荒れていた。決定は5時、受付は5時半のため、HPを見ずに来た選手も少なく無かった。スタートまで3時間以上あり、「嫌な時間だな」と口を揃える選手たちだった。

当日の天候は、スタート時8時半の気温は25.3℃で、湿度は86%。そして、最高気温を記録したのは16:12の31℃。ランの後半で苦しんでいる時に出ている。やはり皆生の夏は手強かった。

■Duathlon

過去5回スイムが中止になっているが、3回目からは「1stラン」をスイムの代替としている。今回の1stランは、6.9kmとなっている。過去の3回は7.8kmや8.3kmの設定だったので、少し短くなったことになる。この1stランは明暗を分けた。スイム時より30分遅らせ8:30スタートとなったが、トップ選手の折り返し通過が、なんと8:40。キロ3分を切る選手から、マイペースの選手までバイクスタートに40分近くの差があった。

スタートラインが敷かれ、ランの猛者が前を陣取る。スタート前の緊張感で重い空気だったが、スタート直前ではご覧の通り、覚悟を決めて、笑顔も見ることができた。

■Race Result

《参加選手》※個人の部

総エントリー数 / 最終出走者数 940/925名

完走者数 / 率 835名 / 90.3%

《総合男子》

1位 井邊 弘貴  No.005    6:05:34(R23:47/B3:18:12/R2:23:35)※連覇
2位 久山 司      No511     6:16:45(R24:09/B3:20:30/R2:32:06)
3位 森 信弥      No.912    6:22:13(R27:00/B3:19:29/R2:35:44)

《総合女子》

1位 髙橋 真紀      No.007    7:20:11(R28:01/B3:54:21/R2:57:49)※連覇
2位 宇治 公子      No.008    7:22:46(R30:07/B4:00:58/R2:51:41)
3位 寺木 佐和子  No.012    7:27:52(R29:54/B4:01:36/R2:56:22)

全ての記録:http://www.kaike-triathlon.com/record/record40.htm

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

 

 

 

「40回目の夏が終わった。」
BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

【取材予定】第40回全日本トライアスロン皆生大会

ついに3年ぶりの皆生大会が開催される。国内初の「鉄人レース」を開催した大会は今年で40回を迎える。

2020年は、さすがに開催は難しかった。昨年は8月に日程を順延としたが、タイミングが悪かった。そして、10月開催も検討されたが、水温、波など日本海での開催は簡単ではなかった。

皆生は、日本のトライアスロンの歴史を紐解く大会でもある。オアフ島で開催していたアイアンマンの運営マニュアルを取り寄せ、開催された「日本のアイアンマン」でもあるのだ。そんな歴史を感じさせてくれる最古の大会は、レベルが高い。安全第一の中で選手の実力が大きく関係してくるため、抽選ではない。厳正な書類選考の元、出場権を獲得することができる。1980年代の国内創成期の感覚が残る唯一の大会と言っても良いだろう。

今年の変更点は大きく2点。まずは距離が短くなっている。スイムは変更無く3kmだが、従来の一斉スタートではなく、グループ分けのローリングスタートとなる。バイクは大山をカットし、140kmから115kmへ。ランは42.195kmから32kmとなる。そして、ランのコースが変更され、弓ヶ浜サイクリングコースを使って、シーサイドを走るコースとなる。

いづれにしても「灼熱皆生」はサバイバルの様相となるだろう。

前回(2019年)レポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=31049

■開催日 2022/7/17(日)

■競技

スイム3km / バイク115km / ラン32km

※詳しくは、http://www.kaike-triathlon.com/

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「3年ぶりの元祖鉄人レースとなる。」
BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

YOKOHAMA 2022

■Contents

GERONIMO COUNT
ワールドトライアスロンシリーズ2022横浜 Race Report
ワールドトライアスロンシリーズ2022横浜 Result
【取材予定】ワールドトライアスロンチャンピオンシリーズ横浜 2022

ワールドトライアスロンシリーズ横浜2022 GERONIMO COUNT

WTS横浜2022におけるバイクデータとなる。

2015年からの定点観測となる横浜のバイクカウントは8年目となった。トライアスロンバイクではないので、劇的な変化はないのだが、「Sign / Trend / Standard」の3段階では動いている。また、ここでは、「エリート」のカウントとなるため、エイジグループのような「人気ランキング」ではなく、プロ及びプロに準ずる選手、そして、メーカーの動きとなる。

トライアスロンへ注力するメーカーはどこなのか、もちろんバイクメーカーだけではない。各パーツメーカーも特徴が出ている。国内でトライアスロンが始まって42年、オリンピックでの正式種目となって6回、今や自転車系競技としてのメーカー注目度も高く、安定していて、開発にも繋がっている。そんな「メーカー色」はどのように表れていたのだろうか。

いずれにしても限られた「92名」の選手のバイクからの分析であることを前提にしつつも、オリンピックに次ぐWT(ワールドトライアスロン)最高峰のシリーズ戦としての結果でもある。

まずは、ウィナーズバイクをチェック。エリート男子はTREK、エリート女子は今年もSPECIALIZEDとなった。

エリート男子のウィナーズバイクは、アレックス イー選手が使用したトレックEMONDAだった。トレックにはエアロロードMADONEがあるが、チャンプの選んだバイクは、オールラウンドのEMONDAだった。一方で、DHバーは装着し、フロントギアはワンバイ仕様となるなど、こだわりを見せている。リムハイトは47mmを使用し、後述にも出るが、ややトレンドから外れたハイトを使用していた。ランで勝負をするイーのスタイルが随所に出ている仕様だが、エイジ選手にも参考となる仕様だろう。

エリート女子のウィナーズバイクは、ジョージア テイラー ブラウン選手が使用するスペシャライズドS-WORKS TARMACだった。「The WTS横浜」と言えるバイクだ。2015年のGERONIMO COUNT開始からの確認となるが、常にトップシェアとなっている。テイラーブラウンのバイクは、DHバー無し、その他も特徴的な仕様ではない、オーソドックスだが、ホイールはスペシャライズドの新コンセプトであり、ハイトのトレンドでもあるRAPIDEのフロント51mm、リア60mmをセッティングしていた。

【ブランド別使用率】

次にバイクシェアは下記の結果となった。

スペシャライズドの使用率の高さは想定内の結果だった。自転車競技も含め、グローバルにその頂点を極めるメーカーの存在感は大きい。ただし、昨年の22.6%と比較すると「ダントツ感」のイメージは無くなっていた。昨年は女子選手だけで17台使用されていたので、そこが減っているようだ。使用されているモデルは、男子でTarmac7台、Venge3台、女子は全員Tarmacとなっている。昨年まで、女子選手ではAmiraなども使用されていたが、全てTarmacとなった。Tarmacは、今やオールラウンドの代表格とも言える人気モデルで、女子選手にも一本化したことで、幅広く、かつ完成度の高さが、そのイメージとなった。

一方、追随するメーカーも気になるところだ。2位ジャイアント/リブは昨年は別々にカウントしていたが、それでも7台から伸ばしている。横浜の1週間前にアイアンマンチャンピオンとなったブルンメンフェルトやイデンも参戦していれば更に増えていたことだろう。そして、同率2位のトレックも不動のメーカー、昨年と同数をキープしている。スペシャライズドとはコンセプトを画し、「エアロロード」MADONEへの注力度は高いが、ウィナーズバイクはEMONDAなっている。男子は4名がMADONE、2名がEMONDA、女子は半々となっていた。

トップ3ブランドで39.1%を占めている。スペシャライズド、トレックは、 KONAでもメジャーブランドだが、ジャイアントは「二刀流」ブルンメンフェルトの大活躍により、トライアスロンへのイメージが急上昇している。現行トライアスロンバイクのTrinityの新型化が遅れていたかと思えば、グループブランドCADEXであえて異形に取り組み、発表と同時に実績を上げるセンセーショナルな動きも極めて面白い傾向だ。

今後も機材バトルに大いに期待したい。

順位 ブランド 男子 女子 合計 使用率
1 SPECIALIZED 10 6 16 17.4%
2 GIANT/Liv 4 6 10 10.9%
2 TREK 6 4 10 10.9%
4 BMC 3 3 6 6.5%
4 LAPIERRE 2 4 6 6.5%
4 SCOTT 2 4 6 6.5%
7 CANYON 4 1 5 5.4%
7 cervelo 3 2 5 5.4%
7 VENTUM 3 2 5 5.4%
10 FACTOR 2 1 3 3.3%
11 BH 2 0 2 2.2%
11 cannondale 2 0 2 2.2%
11 FELT 1 1 2 2.2%
11 ROSE 0 2 2 2.2%
15 ARGON 18 1 0 1 1.1%
15 Bianchi 1 0 1 1.1%
15 CIPOLLINI 1 0 1 1.1%
15 DOLAN 1 0 1 1.1%
15 FOCUS 1 0 1 1.1%
15 ORBEA 1 0 1 1.1%
15 LEON 0 1 1 1.1%
15 PINARELLO 0 1 1 1.1%
15 STEVENS 0 1 1 1.1%
15 TIME 0 1 1 1.1%
15 VITUS 0 1 1 1.1%
15 RIDLEY 0 1 1 1.1%
26 合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

【詳細分析】

各ポイントについて分析している。つまり「仕様」となるわけだが、言い方を変えれば各選手の「好み」ということも言える。まずは、「トライアスロン」で使用するバイクの主な特性について、その動きを見てみた。

下記の3点は、「エアロダイナミクス」に関わるファクターとなるが、ドラフティングレースとなるWTS横浜では、「ロードレース」に近いため、必ずしも絶対条件ではない。ただ昨今「バイクの重要性」に注目が集まる中で、単なるロードレース化ではないため、選手の対応が機材面のバイクという形となって表れている。

  • ①エアロロード
  • ②ホイールリムハイト
  • ③DHバー

下記の3点は、トレンドからスタンダードへ移行している。電動変速システムは、完全普及となったのだろうか。また、ディスクブレーキは、バイク本体の新型化との関係性が大きいため増えていることが予想される。そして、パワーメーターは、一般的には高価なイメージがあるが、今や「絶対アイテム」だけに、その使用は必須だろう。

  • ④電動変速システム
  • ⑤ディスクブレーキ
  • ⑥パワーメーター

下記の2点は、流行りも含めスペシャルパーツの動きとなる。ビッグプーリーも話題としては久しいが、現在どうなっているのか。そして、18年からスラムのワンバイをきっかけとして、コナでは確実に伸びを見せているフロントシングルは、昨年確認され、今年は増えているのだろうか。

  • ⑦ビッグプーリー
  • ⑧ワンバイ

前提として、WTS横浜2022の92選手の結果であり、全てを計るものではないが、概ね、方向性について大いに参考になると考えている。

【エアロロード】

今や馴染みとなったエアロロードは、2010年のスペシャライズドVENGEがその起点と言っても良いが、10年以上経ち、ややメーカーのスタンスに差が出ている。VENGEもそのエアロダイナミクスをTARMACに託し、統合された。ピナレロのように当初よりエアロロードという位置付けにはしていないが、十分なエアロダイナミクスがあったりと、明確にモデルを分けていないメーカーもある。ここでは、オールラウンド以外に「エアロロード」と明確に設定しているメーカーの使用率であり、エアロダイナミクスの優劣ではない。

フレーム 男子 女子 合計 使用率
エアロ 27 13 40 43.5%
非エアロ 23 29 52 56.5%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

結果は全く同数値となる43.5%だった。昨年もそうだったが、減少傾向が見て取れる。2015年は38.7%、2018年では50.0%だったが、前述の通り、「カテゴリー分け」をしない傾向が伸びれば、今後も減っていくことになるが、むしろより強化されたオールラウンド性の中のエアロダイナミクスとして注目されて行くのかもしれない。

メーカーもカテゴリーを増やすことは簡単ではない。スペシャライズドのTARMACの流れが他社にも影響は少なからずあるだろう。ただ、ここではトライアスロンであり、エリートレースから見る「エイジ」へのフィードバックの期待を探れないのか、ということに尽きる。トライアスロンバイクでもなく、単なるロードでもない、「トライアスロン適正」の高いロードバイクの一環としてこのエアロロードに期待していた。もしそこが減ってしまうのであれば良い流れとは言えなくなるだろう。

トライアスロンバイクとロードバイクは難易度の違いではない。もちろん、ある程度の経験があることが前提となる話だが、ターゲットとしたレースや身体の制限などから総合的に判断、選択するものとなる。そんな中で、トライアスロン特性の象徴でもあるエアロダイナミクスに特化したロードバイクは、やはり期待の大きなカテゴリーとなる。ロードバイクの代用ではなく、「トライアスロン専用ロードバイク」があれば最高ということだ。

究極であり、理想であるトライアスロンバイクで、「最高のデータ」を得ることも必要だと思う。ただ、現実的な次元でのロードバイクの開発に期待したい。簡単なことではないが。

順位 ブランド モデル 男子 女子 合計 使用率
1 TREK MADONE 4 2 6 15.0%
2 CANYON AEROAD CF 3 1 4 10.0%
3 LAPIERRE AIRCODE DRS 2 1 3 7.5%
3 Liv ENVILIV 0 3 3 7.5%
5 BMC Time Machine R 2 0 2 5.0%
5 cannondale SystemSix 2 0 2 5.0%
5 cervelo S5 2 0 2 5.0%
5 FACTOR OSTRO VAM 1 1 2 5.0%
5 FELT AR FRD 1 1 2 5.0%
5 SCOTT FOIL 2 0 2 5.0%
5 SPECIALIZED S-WORKS VENGE 2 0 2 5.0%
12 BH AEROLIGHT 1 0 1 2.5%
12 Bianchi OLTRE XR4 1 0 1 2.5%
12 cervelo S3 0 1 1 2.5%
12 CIPOLLINI NK1K 1 0 1 2.5%
12 DOLAN REBUS 1 0 1 2.5%
12 FACTOR ONE 1 0 1 2.5%
12 GIANT PROPEL 0 1 1 2.5%
12 ORBEA ORCA AERO M11e 1 0 1 2.5%
12 TIME SCYLON AKTIV 0 1 1 2.5%
12 VITUS ZX-1 EVO 0 1 1 2.5%
22 27 13 40 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

エアロロード全40台の中で、最も多く使われているモデルは、今年もトレックMADONEだった。そのMADONEは、7月に第7世代としてフルモデルチェンジしている。ツールドフランスで投入され一躍脚光を浴びることとなった。トレックの「エアロロード」にはトライアスロンの観点からも期待したい。現在のベースとなった2015年ローンチの第5世代から人気の高いモデルで、流れとしてはロングセラーのシリーズと言えるだろう。

KONAで不動のサーヴェロは、WTS横浜では影を潜めてしまっているが、「エアロロード」というカテゴリーができる以前からエアロダイナミクスにこだわるメーカーとしてはパイオニア的な存在でもある。ツールドフランスでも新型が使用され、やはり、期待がかかっている。ちなみに今回確認されている1台は旧モデルとなるS3で、塗装も変えられていて「Cervelo」とは表記されていない。

エアロロードが新規追加されることは朗報だ。ただ、ロングライドとなるトライアスロンでの適正は個々のバイクと乗り手により、向き不向きがあるだろう。エアロロードの剛性の高さがその選手、そのレースに合っているのか、慎重に選ぶ必要があることは言うまでもない。見た目は「トライアスロン風」だが、中身が異なる性格を持つ場合もある。やはり、ロードバイクであることには変わりがないからだ。

※繰り返しになるが、エアロダイナミクスの性能差ではなく、メーカーのカテゴリー分けからカウントしている。

【ホイールリムハイト】

ホイールのイメージは、まず、フレーム形状と同様に、トライアスロン特有の「エアロダイナミクス」が挙げられるが、その目的は前後により異なる。

フロントは、エアロダイナミクスと、横風などの影響からハンドリングを考慮したチョイスとなる。概ね50mmを超えてくると、ハンドルを切った時に重さ(空気抵抗)を感じるくらいとなるが、各社1~3mm程度のハイト差でシビアなコントロールをしている。また、リアは、エアロダイナミクスとともに更に重要となるのは、「高速巡航性」となる。これはホイールの縦剛性と大きく関係してくる。レースコンディションにもよるが、リアにディスクホイールを使用するのはそのためだ。ただ、その反面として、剛性が高過ぎれば、脚への負担も大きくなる。その辺りのバランスを見ながら、選手たちはホイールを決定する。

このハイトだけで述べるのはやや乱暴ではあるが、概ね傾向は出ている。本来ならば、メーカー間の「重量剛性比」など更に掘り下げる中で、カウントの精度は高まるのだろう。また、一般選手において、エアロダイナミクスはある程度走る力が必要だが、剛性による高速巡航性は誰でも体感できる。一定の速度で走り続け易くなるということだ。そんな極めて重要な武器がホイールだ。

男子
リムハイト フロント 使用率 リア 使用率
55mm以上 22 44.0% 30 60.0%
50~54mm 14 28.0% 6 12.0%
40~49mm 12 24.0% 12 24.0%
30~39mm 2 4.0% 2 4.0%
29mm以下 0 0.0% 0 0.0%
合計 50 100.0% 50 100.0%
女子
リムハイト フロント 使用率 リア 使用率
55mm以上 11 26.8% 16 39.0%
50~54mm 8 19.5% 4 9.8%
40~49mm 11 26.8% 12 29.3%
30~39mm 10 24.4% 8 19.5%
29mm以下 1 2.4% 1 2.4%
合計 41 100.0% 41 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

この結果は昨年と明らかに変化があった。結論から言えば、男女ともに高ハイトの傾向が強くなって来ている。フロントは分かれる傾向があるが、データ上は上表の通りだ。昨年は、男女ともに40~49mmが最多だった。そして、女子のリアホイールも40~49mmが最多となっていたが、より高ハイト化していた。尚、ZIPPやPRINSTONなどリムハイトが一定でないものは高い方の数値で分類している。

そして、ホイールメーカーの使用率は、下記の通りの結果だった。

順位 ブランド 男子 女子 合計 使用率
1 DT SWISS 11 8 19 20.7%
2 ROVAL 9 5 14 15.2%
3 BONTAGER 5 3 8 8.7%
4 CADEX/GIANT 4 2 6 6.5%
4 MAVIC 1 5 6 6.5%
6 SHIMANO 3 2 5 5.4%
7 PRINCETON 4 0 4 4.3%
7 ZIPP 3 1 4 4.3%
9 Dedaelementi 1 2 3 3.3%
9 ENVE 1 2 3 3.3%
9 HED 2 1 3 3.3%
12 FFWD 0 2 2 2.2%
12 HUNT 1 1 2 2.2%
12 RESERVE 2 0 2 2.2%
15 BOYD 0 1 1 1.1%
15 campagnolo 0 1 1 1.1%
15 EASTON 0 1 1 1.1%
15 GOKISO 0 1 1 1.1%
15 HOLLOWGRAM 1 0 1 1.1%
15 PRIME 0 1 1 1.1%
15 REYNOLDS 1 0 1 1.1%
15 ROSE 0 1 1 1.1%
15 SCOPE 0 1 1 1.1%
15 VISION 1 0 1 1.1%
不明 0 1 1 1.1%
24 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

ついにDTスイスがトップシェアとなった。昨年は2位で大躍進としたが、今年は更に伸ばし、トップとなった。2018年では、僅か3台の使用だったが、大躍進の結果となった。DTはスイスの老舗ブランドで、現在では、「ハブ」が有名なメーカーだ。他社のホイールにも多く採用され、そのホイールのランク付として「DTハブが使われている」などと表現される不動のメーカー。また、リム高のバリエーションも多くラインナップしている。

ロバール、ボントレガーなどバイク系ブランドは、バイクの台数に左右されるだろう。マビック、シマノ、ジップなどパーツ系ブランドは追随したいところだ。同じくパーツ系のプリンストンは昨年の1台から4台に増えているため、より存在感を感じさせた。イネオスも使用するホイールとして通っているが、アイアンマン世界選手権セントジョージでも増えて来ている。今後の注目ホイールであることは間違いない。

【DHバー】

一般的にはDHバーが付いていればトライアスロンの証。そんなイメージがあるパーツだ。単独走行時に身体を狭め、低く構え、エアロダイナミクスを高めるためのパーツだ。ただ、一般レースやアイアンマンなどドラフティングのないレースで主に使用されているが、WTSのようなレースでも先頭を引く時には有効的な機材となるため、その可能性に対し、装着されている。ドラフティングのないレースでは、このバーを持ったポジションが標準であり、逆にWTCSのドラフティングレースでは、ドロップを持つことが標準となる。つまり、先頭を引いたり、レース展開を変え、勝負を決める時に使用される重要なパーツと言える。

DHバー 男子 女子 合計 使用率
使用 31 14 45 48.9%
不使用 19 28 47 51.1%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

結果は減っていた。昨年53.0%まで伸ばしていたことで、トライアスロンの象徴復活を感じていたのだが、軒並み有力選手も使用していない。当初より雨予報でコースも変更されたこともあるため、外した選手もいたと思われる。当初は、ロードレースで装着しないのと同じようにドラフティングルールで必要性が低いと考えていた選手も少なくないだろう。事実2015年では35.7%だったが、バイクの強い選手も増え、バイクからの駆け引きも出て来ている。バイクがある程度引っ張れる選手こそ、勝機があるということだ。

いずれにしてもペースをコントロールし、レースの展開を変えられる選手にこそ意味のあるパーツだけに、そこへの可能性と自信も伺えることになる。もちろん、遅れて単独走行時にも有効ではあるが、ロングのように長時間のDHポジション走行はないため、各選手での考え方が分かれるようだ。

【電動変速システム】

2012年のシマノULTEGRA Di2のリリースから11年目となる。完成車に設定されたモデルは安価ではないが、購入時には必ず検討する機能の一つであり、絶対条件と言えるかもしれない。電動ゆえに、変速スイッチをハンドルとDHバーに分岐し、2箇所から変速ができる。また、ワイヤー引きのバーコン仕様については、レバーが固かったが、スイッチボタンを押すだけの電動は、DHポジションのブレを抑え、抵抗の少ない理想的なライドも可能にしている。費用対効果としては申し分ない機能が、選ばれている理由だ。また、スラムの「ワイヤレス」も極めて画期的なパーツとして、イージーインストールなどから人気が出て、今や、Di2との選択肢にもなって来ている。

電動変速 男子 女子 合計 使用率
使用 48 39 87 94.6%
不使用 2 3 5 5.4%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

結果は約95%。ほぼ完全普及と言って良いだろう。昨年は90.4%であり、まだ宣言はできなかった。エリートはある程度「時間の問題」として普及率は高まるが、一般選手においては常に一定層の非電動予想されるため、恐らく70%程度がゴールなのだろう。シマノからも三番手105の電動化もリリースされ、より手軽感は高まって来ているが、選択肢としての非電動は続くだろう。

今後のバイクの入り口が電動変速システムだろう。様々なアイテムがスマート化され、使い勝手が良くなっている。各デバイスとの連携が面白くなって来ているが、多少馴染みもあることだろう。難しく取られてしまう可能性もあるが、自転車に限らずの現在の進化が、より良い環境を整えてくれる。

順位 ブランド モデル 男子 女子 使用台数 使用率
1 SHMANO DA Di2 21 17 38 41.3%
2 SHMANO ULTEGRA Di2 11 10 21 22.8%
3 SRAM RED eTap 10 8 18 19.6%
4 SRAM FORCE eTap 5 3 8 8.7%
5 SHMANO DA 1 1 2 2.2%
5 SHMANO ULT 0 2 2 2.2%
7 campagnolo SR EPS 1 0 1 1.1%
7 campagnolo SR 1 0 1 1.1%
7 SRAM Rival etap 0 1 1 1.1%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

これは例年予想通りの結果となる。ブランド見れば68.5%がシマノとなっている。ただ、減っていた。絶対数を多いが、昨年はDi2だけでも74.0%だった。スラム系が26.0から29.3%に上がっているためだ。

世界の圧倒的シェアを持つ「質実剛健」のシマノに対し、古くはDHバー先端変速システムの「グリップシフト」や軽量性など特徴を図り、変速機の電動ワイヤレスや小型バッテリー、肉抜率の高いディスクブレーキローターなどリスキーとも思われる「斬新さ」が特徴のスラムには「面白さ」を感じてしまう。昨今話題となる「ワンバイ」もスラムだ。大きな勢力図が変わることはないが、ライバルメーカーがいることで、更にシマノも進化する。今後の開発が楽しみな機材だ。

【ディスクブレーキ】

電動変速(Di2)普及元年の2012年で言えば、ディスクブレーキモデルが出揃ったのは2020年モデルからと言えだろう。早くはスペシャライズドは、2016年モデルもあるが、2020年でスタートラインに並んだと言って良いだろう。現時点でのディスクブレーキモデルはここ2~3年程度の「新型」となる。一般レースでは、リアルタイムの人気ランキングとも言える目安だ。

ディスクブレーキ普及の背景には、安全性が挙げられる。ディスクブレーキありきではなく、ワイド化されたホイール、チューブレスタイヤなど、足回りが強化され、同時に制動力向上も進められた来た。ある意味、安全面においては、電動変速やその他のパーツなどと比べられないくらいの重要性があった。

Dブレーキ 男子 女子 合計 使用率
 仕様 46 35 81 88.0%
非仕様 4 7 11 12.0%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

結果はデータの通り、昨年より2ポイント伸ばし、高い数値と言えるが、レースの特性上、すでに90%は軽く超えていることを予想していた。2018年の13.0%から昨年は一気に増えていたため、完全普及としたが、電動変速システムから見るともう少しといった感じだ。ツールドフランスなどプロサイクリストを見ていると「あえて」というチームもあったが、理由はそこではないだろう。2023年で完全普及となることを期待したい。

一方、一般選手では、Di2の普及時よりも速いのではないだろうか。安全面もあり、また廉価帯でも選択肢が増えて来ているため、スタンダード化が加速している。

ブランド モデル 台数
1 SPECIALIZED SW TARMAC 7 6 13 16.0%
2 TREK MADONE SLR 4 2 6 7.4%
3 GIANT TCR ADV SL 3 2 5 6.2%
3 VENTUM NS1 3 2 5 6.2%
5 TREK EMONDA 2 2 4 4.9%
6 BMC Team Machine 1 2 3 3.7%
6 CANYON AEROAD CF SLX 3 0 3 3.7%
6 LAPIERRE AIRCODE DRS 2 1 3 3.7%
6 LAPIERRE XELIUS SL 0 3 3 3.7%
6 Liv ENVILIV 0 3 3 3.7%
6 SCOTT ADDICT 0 3 3 3.7%
6 SPECIALIZED VENGE 3 0 3 3.7%
13 BMC Time Machine R 2 0 2 2.5%
13 cannondale SystemSix 2 0 2 2.5%
13 cervelo S5 2 0 2 2.5%
13 FACTOR OSTRO VAM 1 1 2 2.5%
13 FELT AR FRD 1 1 2 2.5%
13 ROSE X-LITE SIX DISC 0 2 2 2.5%
13 SCOTT FOIL 2 0 2 2.5%
20 ARGON18 SUM PRO 1 0 1 1.2%
20 BH AEROLIGHT 1 0 1 1.2%
20 BH ULTRELIGHT 1 0 1 1.2%
20 Bianchi OLTRE XR4 1 0 1 1.2%
20 CANYON Ultimate CF SLX 1 0 1 1.2%
20 cervelo R5 1 0 1 1.2%
20 FOCUS IZALCO MAX 1 0 1 1.2%
20 GIANT PROPEL 0 1 1 1.2%
20 LEON GENUS 0 1 1 1.2%
20 ORBEA ORCA AERO M11e 1 0 1 1.2%
20 PINARELLO DOGMA F12 0 1 1 1.2%
20 STEVENS XENON 0 1 1 1.2%
20 VITUS ZX-1 EVO 0 1 1 1.2%
32 46 35 81 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

ここはやはり、スペシャライズドが獲った。使用台数が多いこともあるが、2016年からいち早く、ディスクブレーキに注力しているメーカーであることが大きい。また、MTBも含めた総合メーカーはディスクブレーキにも強く、シビアなカーボンコントロールが必要なロードバイクのディスクブレーキ化にもフィードバックが活かされている。

今や安全性向上は当然だが、エアロダイナミクスとの融合を期待しているメーカーも少なくない。もちろん、難しい開発とはなるが、ディスクブレーキありきではなく、総合的に進化させて来ている。

【パワーメーター】

ノンドラフティングのトライアスロンの場合、レースでは、ほぼ「一定」のマイペースを刻んで走る。一定にすることが最も効率が良い走りとなるからだ。では、その一定とは「何」を一定にするのだろうか。もちろん、速度ではない。ハートレートが一般的だったが、リアルタイムでペースを一定にできるのが、パワーメーターなのだ。ロードレースでは、タイプによるが、速度の加減速もあり、駆け引きというタイミングもある。それに対し、トライアスロンでは、練習からレースまでフル活用が可能となるだろう。もちろん、距離、コースにも影響はされるが、概ね「コンスタント」な走りがベストパフォーマンスに繋がる。電動変速システムDi2もトライアスロンでの使用は、大きなメリットがあったが、同様にパワーメーターもトライアスリートにこそ、必要なアイテムと言えるだろう。

Pメーター 男子 女子 合計 使用率
使用 43 41 84 91.3%
未確認 7 1 8 8.7%
合計 50 42 92 100.0%

まずは使用率だが、これは恐らく100%と考えている。「未確認」としているのは装着の確認ができなかった台数だが、普段のトレーニング時に使用していないことは考えられないからだ。少なくともスマートトレーナーで確認はしているはずだ。また、レースの特性上、ペースが一定でないため、当日必要ないということも言えだるだろう。クランク型の場合はそのままとなるが、ペダルの場合は簡単に交換ができる。

順位 ブランド タイプ 男子 女子 台数 使用率
1 QUARQ クランク 12 8 20 21.7%
2 GARMIN ペダル 6 7 13 14.1%
3 SHIMANO クランク 7 5 12 13.0%
4 4iiii クランク 5 2 7 7.6%
4 Favero ペダル 3 4 7 7.6%
4 SRM クランク 4 3 7 7.6%
7 PIONEER クランク 2 4 6 6.5%
8 ROTOR クランク 1 3 4 4.3%
9 POWER PRO クランク 1 2 3 3.3%
9 STAGES クランク 1 2 3 3.3%
11 INFOCRANK クランク 0 1 1 1.1%
11 SPECIALIZED クランク 1 0 1 1.1%
未確認 7 1 8 8.7%
12 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

結果は、クウォークがトップシェアとなった。2018年は16.7%で大きく伸ばしている。クウォークはスラムとの関係性が高いため、そのコンポーネントの使用率とも大きく関係してくる。逆に2位のガーミンや4位のファベロは完全後付けのペダル型のため、選ばれた可能性が高い。ペダル型を使用している選手の中にはクランクにも装着されているケースがあった。後からペダルを選択しているのだろう。

【ビッグプーリー】

ビッグプーリーもトレンドと言われ久しいが、その後、動きはあったのだろうか。効果の大きさは、「体感」できる数少ないパーツでもある。回転時の抵抗が大きく軽減されることで、ペダリング効率を向上させている「アイデアパーツ」だ。ビッグプーリーは、チェーン、プーリーのベアリングの摩耗を抑え、最大の体感は、アウターローでの状態で確認できる。各社鎬を削りリリースしているが、プーリーケージ(本体)の剛性が大きなポイントとなるだろう。

Bプーリー 男子 女子 合計 使用率
使用 8 7 15 16.3%
不使用 42 35 77 83.7%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

使用率は、昨年の14.8%から伸ばしていた。ただサンプル数が少ないため、何とも言えない結果であり、使用率が低迷していることは明らかだ。今後も大きく流行ることはないかもしれない。ものが悪いということではなく、コンポーネントメーカーとの契約なども関係しているだろう。また、専属メカニックなどが帯同する場合は良いが、調整がシビアであったり、輸送に気を使うなどから敬遠されていることもあるだろう。使用率が少ないから悪いということではない。むしろ良いパーツと考えている。

順位 ブランド 男子 女子 使用台数 使用率
1 ceramicspeed 5 4 9 60.0%
2 NOVA RIDE 2 2 4 26.7%
3 KOGEL 1 0 1 6.7%
4 RIDEA 0 1 1 6.7%
4 8 7 15 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

数量は少ない中での比較となるが、予想通りのセラミックスピードがシェアを獲っていた。ここで、GERONIMO COUNT上、初登場となったのがアメリカブランドのノバライドだ。ビッグプーリーに注目する中では、大きく目を惹いていた。

【ワンバイ】

スラムの専売特許とも言える「ワンバイ」は2018年のコナで19台確認、翌年2019年では、63台に増えていた。その63台のうち20台はプロ選手の使用となる。このパーツが普及の兆しを見せているのは、スムースで単純な変速動作とそのデメリットが少ないことが挙げられる。ワンバイは単純にフロントをシングルにして、ディレーラーを外しただけではない。それをすればすぐにチェーンが脱落してしまう。スラムだからこそできているシステムとなる。チェーンとチェーンリングの噛み合いをX-syncという構造で極めてマッチングの高い造りとなっている。写真と同じ状態で使用する選手も多いが脱落防止パーツを取り付けることもできる。

現在、アイアンマンの世界ではこのシンプルな構造と見た目が新しいトライアスロンバイクの姿として注目を集めている。

ワンバイ 男子 女子 合計 使用率
使用 3 2 5 5.4%
不使用 47 40 87 94.6%
合計 50 42 92 100.0%

※ Counted by Triathlon GERONIMO

結果は、昨年と同数の5台だったが、この中には男子優勝のイー、昨年のTOKYO2020チャンピオンで今回3位のダフィーも含まれている。KONAでは増加傾向にあるが、昨年初めて確認し驚いた。まだビッグプーリー同様、大きく伸びることはないがこれもスラムらしい面白い考え方であり、一般選手には大いに推奨できるシステムだ。明かにストレスフリーとなる変速動作が最大のメリットだ。

最後に。

やはり、トライアスロンに「近い」ロードバイクの開発に期待したい。エアロダイナミクスだけではなく、シートアングル、ヘッドレングス、剛性など。そして、昨今の定義でもあるストレージやパッキングなどのユーザビリティーも備えたバイクが必要だろう。トライアスロンで使用するロードバイクも次のステップに進めて欲しいものだ。

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=39373

 

 

「自身に合ったバイクとは何だろうか。」

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

2022彩の国トライアスロンin加須大会 SPECIALIZED RACE DAY GERONIMO COUNT

昨年に続き、2回目のカウントとなった彩の国トライアスロン。今年は、昨年からの推移を確認することができる。ただ、コロナ禍の状況も刻々と変化するため、単純な比較はできないが、どこに変化があったのか確認してみたい。

まずは、条件となる大会そのものの特性を確認する必要があるだろう。いつ、どこで、距離は?となるのではないだろうか。関東ではシーズン初旬となる6月1週目で、アクセスの良い渡瀬瀬遊水池。そして、初心者からベテランまでが楽しめる3タイプのレース設定となっている。つまり、関東圏ではかなり高得点の大会と言えるだろう。唯一、規模が小さい。500名以下の小規模となることもカウントの前提として理解しておくことは必要となる。

昨年は、「半コロナ禍」と言った感じの状況だった。軒並み大会が中止となる中、彩の国トライアスロンは無事に開催されたのだった。モチベーションキープの難しさや、機材の新製品リリースなどが遅れている中でのカウントとなった。今年は「より良い」状況であろうと期待していた。ところが、他の大会では「定員割れ」などの情報が入って来た。2022年は完全復活の年を期待していたが、コロナ禍が長過ぎたのだ。練習不足はまだ良い。完全に離れてしまった人もいるようだ。

昨年以上に厳しい条件の中でのカウントとなった。そんな状況の中、選手の使用するバイクから読み解くことはできたのだろうか。

 

2022 SAINOKUNI  Bike “ GERONIMO ” Count

GERONIMO COUNTは2015年からスタートし8年目に入った。バイクカウントは、元々コナで30年以上行われ、その使用率が話題となっていた。同様のカウントではあるが、「その先」が知りたかった。例えば、コナという最高の舞台でも実際の「選手層」は幅広い。エイジでのハンデはあるが、やはり「SUB10」で使用されるバイク、本当に速い選手が乗るバイクは何か?サーヴェロのシェアはダントツトップだが、人気のあるモデルは何か?など、もっと突っ込んだ「本当のこと」が知りたい。また、ワンバイやハイハンズなどトレンド以前の「兆し」も発見したかった。そんなカウントだ。

Traiathlon GERONIMO「Journal – Race Report」

順位 ブランド 使用台数 使用率
1 SPECIALIZED 66 18.5%
2 cervelo 51 14.3%
3 TREK 24 6.7%
4 ceepo 19 5.3%
5 FELT 17 4.8%
5 GIANT / Liv 17 4.8%
7 cannondale 15 4.2%
7 MERIDA 15 4.2%
9 CANYON 13 3.6%
10 PINARELLO 11 3.1%
11 KUOTA 9 2.5%
12 BIANCHI 8 2.2%
12 BS / ANCHOR 8 2.2%
14 BMC 7 2.0%
15 ARGON18 5 1.4%
15 GUSTO 5 1.4%
15 SCOTT 5 1.4%
18 COLNAGO 4 1.1%
18 GIOS 4 1.1%
20 LOOK 3 0.8%
20 QR 3 0.8%
20 RIDLEY 3 0.8%
23 carerra 2 0.6%
23 cinelli 2 0.6%
23 corratec 2 0.6%
23 GARNEAU 2 0.6%
23 ORBEA 2 0.6%
23 Wilier 2 0.6%
29 ANTARES 1 0.3%
29 ARAYA 1 0.3%
29 ASTER 1 0.3%
29 BH 1 0.3%
29 boardman 1 0.3%
29 BOMA 1 0.3%
29 CSK 1 0.3%
29 DEROSA 1 0.3%
29 DIMOND 1 0.3%
29 HARP 1 0.3%
29 HEAD 1 0.3%
29 KESTREL 1 0.3%
29 MEKK 1 0.3%
29 NEILPRYDE 1 0.3%
29 QUARK 1 0.3%
29 TAOKAS 1 0.3%
29 VAN RYSEL 1 0.3%
29 VENTUM 1 0.3%
29 VOTEC 1 0.3%
不明 2 0.6%
未確認 ※ 12 3.4%
47社 合計 357 100.0%

※未確認が3%を超えている。入口以外から入った選手がいたのかもしれない。

Counted by Triathlon GERONIMO

 

≪概況≫

まず、スペシャライズドは、国内であれば「どこの大会でも1位」というイメージが強くなっている。昨年に続き、1位をキープしていた。ただし、台数が85台から66台へと大きく落としている。その分、サーヴェロが戻っているという感じだろうか。ともにトライアスロンのニューモデルが出ているわけではなく、状況に変わりはない。「ワンツー」のライバルメーカーであるということは変わらないだろう。それぞれのメーカーに乗る選手が全てトライアスロンモデルを使用するわけではないが、ニューモデルのリリースは、「トライアスロンの強いイメージ」を抱かせるのだ。

3位トレック、4位シーポもトップ2の予備軍であり、大会によっては2位以上も特別なことではない。そこに次ぐのが5位フェルトとなるだろう。フェルトはニューIAの国内発表を控えていて、コロナ禍で遅れていた最後のメジャーブランドとも言える。すでに、海外ではリフやカリーの実戦投入で露出されていたり、本国サイトではすでに発表されている。そして、先月のセントジョージIRONMAN世界選手権では女子ウィナーズバイクとなっている。ややスタートがぼやけてしまったが、国内での正式リリースが待ち遠しい。

そして、同率5位のジャイアントを始め、それ以降のブランドはキャニオンを除き、ロード色が強いブランドとなっている。その中でも注目となったのが、メリダで、トップ10入りによって勢力図を変えている。8台だったメリダは倍近い使用台数となり、一気に7位となっている。また、国内ではキャニオンの伸びが今ひとつとなっているが、最高峰となるKONAでは確実に伸びて来る最注目株の一つであることは間違いない。

今後注目すべき観点として、「ロードバイク」の充実や伸びに注目したい。ただし、ロードバイクであれば何でも良いわけではない。「トライアスロン適正」の高いロードバイクがリリースされることが必要となる。シートアングル、ヘッドレングス、設定剛性、直進性など、明確なポジションの違いから乗り味まで、いかにトライアスロンに「寄せられているか」ということになる。

◆◆◆

気をつけなければ行けないのが、これからの結果は「今」ということであり、今後は分からない。バイク全体で見れば、最高に人気が出た翌年も同様とは限らない。つまり、不動の地位はないということだ。

トライアスロンの場合、過去その順位が大きく変わることはなかった。それはトライアスロンへ注力するメーカーが限られているからだ。ただ、これまで不動の地位として来たサーヴェロでも分からない。各社凌ぎを削り、更なる高みを目指している最中だ。

使用率第1位 SPECIALIZED

≪スペシャライズド連覇≫

今年の1位も、スペシャライズドだった。このカウントにおいては、KONAではサーヴェロだが、国内ではスペシャライズドのイメージは定着したと言えるだろう。今回の66台中1/3以上の一番人気となる24台は現行SHIV。2018年のローンチから4年目となるが、その魅力とは何だろうか。

競技上で言えば、エアロダイナミクスの高さと軽量性、そして、扱い易さのポイントが高い。その扱い易さとは2点。一つは、フィット性で、DHポジション、そして、もう一つは、べースバーが重要となっている。

DHバーは元よりだが、トライアスロンにおけるベースバーポジションは極めて重要となる。昔であれば、オマケとも言える「ブルホーンバー」だが、長距離となるトライアスロンでは、少なくとも30%程度はテクニカルやアップダウンが含まれているのではないだろうか。つまり、30%はベースバーを持つことになるわけだが、そこに注力しているメーカーはまだまだ少ない。可変型のベースバーは同時に「パッキング」も容易にしてくれた。これはエイジユーザーにとっては理屈抜きにその扱い易いさを感じる。エイジユーザーにとっては優先順位は高いのではないだろうか。

2位のサーヴェロは、昨年同様の2位ではあったが、使用台数は35台から51台へと大きく伸ばしている。サーヴェロの人気は、「トライアスロン色」の強いことになるだろう。それはやはりKONAの実績から来ている。2005年のカーボン製P3、2012年のP5デビュー、2016年のP5Xの衝撃的なローンチなど、時代を先取りして来た。それは他社の開発へ多大な影響を与えたのだった。

3位のトレックは、昨年5位から上がっている。ただ、トライアスロンバイク比率は低いため、今後に期待がかかっている。昨年11月に正式ローンチとなったニューSpeedconceptは、必ず救世主となるはずだ。先月開催のセントジョージIRONMAN世界選手権でもエイジ選手によって多く使用されていた。4月の石垣島でも2台の確認に留まっていたが、今年のコナでもやはり注目モデルの一台となっている。

 

≪TOP10シェア≫

大会 年度 総台数 TOP10台数 使用率
彩の国 2022 345※ 248 71.9%
彩の国 2021 320※ 243 75.9%

※未確認除く

Counted by Triathlon GERONIMO

TOP10ブランドの動きが見られた。昨年より4ポイントも落ちていた。このデータは、トップ10ブランドにどの程度人気が集中しているかを示すものだ。ただ、他の大会と比較すると昨年が極めて高かったため、大きく落ちたように見えている。特に良い悪いではなく、使用されるバイクメーカーの分散傾向を示しているわけだ。これは後述に出てくるトライアスロンバイクとロードバイクの比率も大きく関係していると見られる。トライアスロンバイクをリリースするメーカーは限られているためで、生産するメーカーが多い「ロードバイク」への志向が高まる傾向とそのロードバイクの選択肢が多いことによるだろう。

 

【トライアスロンバイク使用率】

トライアスロンバイク比率No.1 cervelo

GERONIMO COUNT当初より、注目観点としてチェックしていた。これは、トライアスロンバイクが増えることが良いこと、としていたためなのだが、果たして、トライアスロンバイク比率が高まることが良いのか、否か、考えなければ行けない。

トライアスロンバイクはデビュー後1〜2年程度で購入する選手が多いように感じる。これはレース距離との関係性が高く、ミドル出場をターゲットにした頃からそのことが気になって来る。ODよりは遥かに長いミドルではトライアスロンバイクが良いのではないのか。

トライアスロンバイクは簡単な乗り物ではない。前提として、DHバーのパッドがサドルより低くセットされ、先頭的なポジションとなっている場合だが、トライアスロンバイクは、「ピンポイントポジション」であり、「遊び」がない。つまり、練習の賜物として、作り上げたポジションで乗るバイクということが基本となるからだ。

逆に言えば、そこを極めたい。「人車一体」となるべく、徹底したバイクトレーニングの先には最高のライドフィールが待っている。そこにたどり着くことは簡単ではないが、占めるウェイトの大きなバイクパートだけに、体得すれば、絶大な力となり、レースパフォーマンスが高まる。バイクはランへの繋ぎの種目だ。コントロールした走りを持ってランでのパフォーマンスが上がる。つまり、バイクだけ速くても意味がない。そこにはバイクでの「余裕」が必要になる。

そして、トライアスロンバイクは憧れだ。どうであれ、あの美しいフォルムのバイクに乗りたい、そんな風に思う選手は少なくはずだ。であれば極めてみよう。

大会 年度 台数 Tri 比率 Road 比率 距離
彩の国 2022 345 147 42.6% 198 57.4% ミドル・ショート・ミニ
彩の国 2021 320 143 44.7% 177 55.3% ミドル・ショート・ミニ

Counted by Triathlon GERONIMO

結果は2ポイント程ロードバイクが増えていた。ビギナーが増えたのか、ロードバイクで走る傾向が増えたのか、まだ兆しレベルではあるが、前述の通り、トライアスロンバイクが増えることが正しいとは限らない。ポジション的に余裕の出るロードバイクでパフォーマンスが上がっているかが重要だ。ちなみにこの40%を超える結果はどちらと言えばトライアスロンバイク傾向は高め、と言える数値となる。

 

【新型率】

昨年2021年の取材再開後、最大の注目となるのが、「ディスクブレーキ」だった。ただ。ディスクブレーキありきではない。ディスクブレーキ仕様のバイクは、「新型」であり、まさに「今の人気」を示す一つの指標と観ることは否定できないと思う。ディスクブレーキ化は、早いメーカーでは2016年モデルから、遅いメーカーでは2020年モデルとなり、2018年あたりがその元年と言える。そこから数えるとコロナ禍があったものの4年目となるため「新型のカテゴリー」と言えるのはあと1年くらいまでだろう。

ただ、2022年もその前提が難しい。新型を購入するということは、デビューする人か、ある程度(3~7年)使用した人の買い替え、ミドル以上の挑戦(デビュー後、1~2年後)によりロードに加え、トライアスロンバイクの買い足しなどが考えられる。昨年は、コロナ禍、新型リリース待ち、デリバリー遅延などが前提となった状況だった、今年は、不出場の傾向が見られる。出場という最高の「モチベーション」がなければ新規購入はしない。

年度 台数   Disc   比率   Rim   比率
    Tri Rd 合計   Tri Rd 合計  
22 345 60 52 112 32.5% 87 146 233 67.5%
21 320 44 42 86 26.9% 99 135 234 73.1%

Counted by Triathlon GERONIMO

最高の結果だったと思われる。昨年を多く上回り32.5%となった。不出場の傾向とは述べたが、十分モチベーション高く、集まってくる大会もあるということになる。

そもそも「ディスクブレーキ」は必要なのか、数年までに議論されたことだ。全ては安全性と考えている。ブレーキだけでなく、その前に行なわれていたのが「ホイールの強化」だった。路面と接しているのはホイールであり、制動力はブレーキだけではなし得ない。その意味では、より安全性の高まったバイクが増える傾向にもあるということはとても大切なことなのだ。

 

【DHバー装着率】

最後に、DHバーの装着率となるが、これも「トライアスロンバイク比率」のように多いことが良いと考えていたが、DHバー非装着がトライアスロンビギナーと考えた場合、この比率が高まることは将来的に極めて望ましいと言えるだろう。

ただ、懸念事項もある。バイクは危険性が伴うため、走行スキルについて大会側、選手側、双方からの意識を高める必要がある。キープレフト、ドラフティング、コーナー進入時の減速のタイミング、そして、係員やマーシャルの指示に従うなど、選手層の幅が広くなればなるほど、その徹底が難しくなってくる。

大会 年度 台数 装着 比率 非装着 比率
彩の国 2022 345 268 77.7% 77 22.3%
彩の国 2021 320 254 79.4% 66 20.6%

Counted by Triathlon GERONIMO

結果は増えていた。2ポイント近く「DHバーなし」のバイクが使用されていた。必ずしもビギナーとは限らないが、参加者が増え、その比率にビギナーが入っている、ビギナーが選んだ大会という見方をすればこの上ないだろう。

ただ、いつまでもDHバーなしではダメだ。まずはインドアで慣らし、実走で「バランス感覚」を掴む。練習ゼロで、レースでいきなりDHポジションなどあり得ないということだ。選手本人ばかりでなく、周囲にも迷惑をかけてしまう。

そして、上手くその感覚に慣れれば、最高の走りに近づける。更に慣れたらトライアスロンバイクも待っているということだ。

【最後に】

選手層も広く、良い大会だった。トップ選手のパフォーマンスも高く、走り込んだ上でのポジション、セッティングなども多く見られた。一方で、これから楽しむ選手なども多く、簡単ではなかったと思うが、安全な開催となっていた。

バイク機材に絶対はない。ショップと相談し、現在のパフォーマンス(レース結果やTTなど)からベターと思われるバイクをピックアップしてもらうなど、自身を預けるバイク選びは慎重に行きたい。

 

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=40294

「必ずしもトライアスロンバイクではない。」

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka

2022彩の国トライアスロンin加須大会 SPECIALIZED RACE DAY RaceReport

6/5(日)埼玉県加須市で「2022彩の国トライアスロンin加須大会SPECIALIZED RACE DAY」(彩の国トライアスロンin加須大会SPECIALIZED RACE DAY大会実行委員会主催)が開催された。

 

昨年に続き、無事開催となった彩の国トライアスロンは28年目の歴史ある大会だ。毎年6月の第1週に開催され、気温、水温など初心者でも安心して参加できる時期となっている。ただ、梅雨入りが微妙なタイミングのため、唯一気になるのだが、そればかりは仕方がない。

当日の天候は恵まれた。朝5時、雲は厚く、程なくして小雨が時折パラつく状況となった。しかし、開会式の頃には、晴れ間がのぞき、眩しい朝陽に包まれて行った。その後は完全に晴れて、やや風はあったものの最高のコンディションの中で大会は行われたのだった。

そして、特筆すべくはリピーターが多いことだろう。それによって、エントリー数も安定している人気大会と言える。規模としては、500名以下の小規模大会となるが、かかる手間は変わらない、より準備も大変となる中で、行き届いた運営がリピート率を高めているのだと感じる。

この2022年は、定員割れの大会の話も聞こえてくる。やっと再開となった2022年だったが、コロナ禍が長過ぎた。目標大会を見失い、モチベーションも下がってしまったのではないだろうか。そんな中の開催で昨年より参加者も増え、完走率も上がっている。選手たちは、彩の国をターゲットにして、モチベーション高く、トレーニングを積んで来たという証ではないだろうか。

2023年に向けて、国内大会も完全復活するために繋げて行きたい。

 

■Sainokuni Triathlon

≪最短にまとまった動線の会場作り≫

彩の国の良さの一つに会場がコンパクトにまとまっていることが挙げられる。まず競技上で見た場合、スイムアップ後、目の前にバイクトランジットがあることはこの上ない環境と言える。他の大会では数百メートル離れていることも珍しくない。スイム会場とバイクトランジットの位置関係が大会によっては制限があるということなのだ。その点でのポイントは高い。また、駐車場が近いことも選手には嬉しい。観戦上から見ても、1箇所で応援しやすい環境となっている。

≪安心して参加できる老舗≫

彩の国トライアスロンは、国内屈指の老舗大会。1995年に「彩の国トライアスロンin北川辺」として始まっている。北川辺町は現在の加須市だ。創設から28年目を数えた歴史ある大会で、関東のトライスアリートにとってはお馴染みなのだ。タイプ設定、コース設定などを幅広い選手層に対応していることが特長で、交通アクセスの良さも含め、行き届いた大会となっている。それらを長年続けて運営は、大きな安心感を生んでいいる。

 

■Course

【Swim】A: 2.25 / B: 1.5 / C: 0.75 km

10名づつのローリングスタートで、基本的にフラットな遊水池を泳ぐ。レイアウトは、真っ直ぐ泳ぎ、戻る1周750mを周回する。

【Bike】A: 72 / B: 43 / C: 21.6 km

フラットな高速コース。2箇所90度コーナーがあるものの、ほぼDHポジション走行となる。道幅も広く、走り易いコースだが、DHポジション走行がカギとなる。

【Run】A: 15 / B: 10 / C: 5 km

一部土手の登り下りがあるものの、ほぼフラットでペースが掴み易いが、単調なコースとなるため、集中力が問われる。

 

■Race

【Swim】

≪イージーながら、基本動作は必要となるスイムコース≫

レースは距離の短いCタイプからスタートとなり、続いてB、Aの順番で10名ずつ、10秒ごとのローリングスタートとなる。1周750mをそれぞれ1周、2周、3周泳ぐが、BとAは周回時に一度上陸し、次の周回に入る。

コースは、真っ直ぐ泳ぎ、戻ってくる単調なコースなのだが、意外とスムースには泳がせてくれない。コースアウトする選手も少なくないため、ライフセーバーが叫んでいる。ブイ内側を泳いだため、一度戻され、泳ぎ直しとなっている選手もいる。

真っ直ぐ泳ぐことの難しさを痛感した選手も少なくないだろう。折り返しのブイはオレンジ色の四角錐で特大と言うわけではないため、確認は小まめなヘッドアップが必要になる。ただ、頻繁にヘッドアップをするわけにも行かない。コースロープもあるが、僅かに流れがあるのか、湾曲していて、真っ直ぐではない。

「ベタナギで真っ直ぐ泳ぐだけ」とイージーなイメージだけで侮ってはいけない。やはり基本動作となるヘッドアップや左右呼吸など、「オープンウォーター」であることを今一度理解して、対策を講じる必要がある。

10名づつ、10秒ごとのローリングスタート

真っ直ぐ泳げているだろうか

スイムアップ直後の危険箇所。バイクコースを横断するため、スタッフの指示に必ず従う。

【Bike】

≪優しくもあり、厳しくもあるバイクコース≫

コースの特性は、大きく二つの面を持っている。一つは、オールフラットでビギナーも安心して走れるということ。もう一つは、徹底したDHポジション「専用コース」であるということだ。

前者からの安心感は大きいだろう。大会を選ぶ時に、その難易度を測る物差しとして「どんなバイクコース?」と話題になることが一般的だ。もちろん好みもあり、テクニカルでアップダウンのあるコースが面白いと感じるバイク強者もいるだろう。そして、後者だが、実はここに面白さと厳しさがある。

Aタイプの場合、72kmとなるが、90度コーナー2箇所以外はDHポジションが可能であり、その比率は、70km以上、99%以上となる。その特性は、様々な「活用」が期待される。単独走行となるトライアスロンでは、やはりDHポジションが必要不可欠、たまにDHではなく、DHこそが「基本姿勢」となるからだ。そのため、このコースでは「DHポジションの練習」にもなるコースということが言える。

今回の平均タイムを見ると2時間から2時間半という長い時間の走行となっている。インドアのローラー台でもDHポジションは取れるが、その時間を練習するのは簡単ではないだろう。そして、バイク走行は「バランス」と「推進力」の二つの運動を行っているわけだが、固定され過ぎたローラー台では、実走でのリアルなバランス感覚を意識することは難しい。しかしながらロングの大会では、宮古にしても佐渡にしても、軽く100km以上はDHポジションを取ることになる。つまり、必須でありながらリアルに練習できる環境は極めて少ないと言えるのだ。

大会を練習に、と言うのは失礼な言い方となるが、「ロングのための練習」と言う位置付けは、少なからずあるだろう。その点においても極めて有効的なコース設定であると言うこと。

そして、そのDHポジションを取り続けることは簡単ではない。前述からすれば、練習が先か、大会が先か、という話になってしまうが。「ピンポイント」となるDHのフォームで走り続けることは「練習の賜物」と言い換えることができる。DHでの動き(余裕)は精々5~10cm程度の前後動のみだ。(サドルの先端に座っているように見える状態で10cm近いだろうか)悪く言えば「窮屈」なポジションでもある。

そんなDHポジションではあるが「体得」してしまえば、この上ない走りが可能となる。昔の話になるが、琵琶湖(80~90年代のアイアンマンジャパン)の通称てっぺん坂を走るトップ選手の中にはDHで上る選手もいた。エアロダイナミクスではなかった。もちろん基本はエアロなのだが、「出力」しやすいフォームであると言うことなのだ。そのことを無意識のうちに感じ「DHポジションが好きになる」と言う流れは少なくない。気が付いたらDHを取っていると言う「板についた」感じだ。今コースでも橋となるところは坂とは言えない僅かな起伏があるが、当然DHで走るレベルであり、それが無意識のうちにできていることが、それを極める第一歩だろう。

いずれにしてもこの彩の国のコースは「トライアスロンらしい」バイクコースであり、3種目全体も大切だが、DHが何%取れたのか、そして、どんな走りだったのか、バイクの「内容」を分析することで、次への課題も見つかるのではないだろうか。

そして、バイクも大事だが、最終的には、ランが走れるバイクができたかどうかと言うことに尽きる。

【Run】

≪楽しみながら、頑張り、考えながら走るランコース≫

笑顔を見れれば、険しい表情も見ることができる。選手一人一人のレースが展開されている。やはり、最後のランはきつい。いかに集中力を高め、維持できるのか、どういう戦略を立てるのか、ランは難しい。

1周2.5kmを周回する90%以上フラットなコース。序盤は後ろ姿しか見えない一方向、中盤はコースの折り返し前後の800m程度は対面、終盤はまた一方向となる3つのエリアから構成されるコースだ。中盤の対面のエリアでは何を感じながら走っているのだろうか。仲間で参加している選手は声を掛け合っている。また、ライバルとの差を確認している選手もいるだろう。

単調ながらも3つのエリアで気持ちを切り替えることで、集中力の維持に繋げることができるのではないだろうか。序盤は自身のペースに近いパックに入り、中盤で自身のポジションを確認し、終盤で調整をする。その繰り返しとなる。

いずれにしても晴れれば暑い。まだまだシーズン序盤だけのその対策も必要となるだろう。

【Finish Line】

いつでも、どんなレースでもフィニッシュラインはいい。

誰でも最高の表情を見せてくれる瞬間は、選手だけではなく、周りも嬉しい気分にさせてくれる。頑張っている人の姿に理屈はいらないということだろう。

そして、この最高の瞬間は選手だけで作れるものではない。多くの人々、みんなで作り上げた感動なのだろう。

Congratulations !

 

■Award

Aタイプ優勝、星大樹選手

毎回盛り上がる表彰式。

まだ、表彰式を開催していない大会もあるが、彩の国ではしっかりと1時間開催している。表彰式会場は、バイクトランジットのあった広いオープンスペースで、選手間も十分なスペースが確保できる場所で開催している。

まずは、各種目の総合表彰、エイジ表彰が行われ、入賞の楯とスポンサーであるSPECIALIZEDの景品が渡される。ジャンケン大会ではSPECIALIZEDの豪華景品で盛り上がりを見せている。ジャンケン大会も含め表彰式では見慣れている光景なのだが、あらためて見ると、コロナ禍以前に戻りつつある昨今、ほのぼのとした良いひと時であることを再認識させられた。

そして、一番印象的なことは、最後まで残って、仲間と表彰式を楽しむ選手たちが多いことだった。

SPECIALIZED アンバサダーのMihoCはBタイプ準優勝!

同じくアンバサダーのTKはAタイプ6位入賞!
盛り上がるジャンケン大会は、豪華景品!

 

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■SPECIALIZED RACE DAY

今回もメインスポンサーはスペシャライズド、入賞の景品の他にジャンケン大会などでも豪華景品が提供され大いに盛り上がっていた。ツールドフランスからアイアンマン、ワールドトライアスロンシリーズなど、世界の最高峰で活躍しているメーカーで、その開発力は極めて高い。自転車の「F1」とも言えるトライアスロン、TTへの注力を積極的に行う数少ないメーカーでもある。4月の石垣島、そして、今年も彩の国ではトップシェア(※)となっている。※GERONIMO COUNTによる

 

■GERONIMO COUNT

バイクの「使用と仕様」から読み解くカウント。機材から観る選手の動きとなる。新型傾向となる「ディスクブレーキ」は、昨年26.9%だった。どの程度増えているのだろうか。また、参加者が経験者やベテランなのか、ビギナーなのか、選手層を確認する一つの指標となる「DHバー装着率」など、今年の彩の国の特徴、変化はあったのだろうか。機材から全てが分かるわけではないが、兆しや傾向は確認できる。

※GERONIMO COUNT http://triathlon-geronimo.com/?p=41173

 

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■Data

■気象(10:00時点):天候 晴れ / 気温 22.3℃ / 湿度64% / 風速 2.9m 東南東 ※熊谷地方気象台

■参加数

総エントリー数 / 最終出走者数 395/357名

完走者数 / 率 318名 / 89.1%

■レース結果(抜粋)

彩の国A 総合男子
1位 星大樹 No.143  3:14:56(S35:05/B1:43:05/R56:46)
2位 立山宏一 No.150  3:24:28(S32:38/B1:54:36/R57:14)
3位 牧野巧  No.133  3:26:16(S38:04/B1:53:33/R54:39)

彩の国A 総合女子
1位 日引華子 No.102  3:56:27(S34:25/B2:13:00/R1:09:02)
2位 高橋明美 No.117  4:02:07(S38:44/B2:10:16/R1:13:07)
3位 小口愛海 No.101  4:02:58(S38:49/B2:08:46/R1:15:23)

彩の国B 総合男子
1位 芝崎亮平 No.447  2:06:35(S23:55/B1:08:35/R34:05)
2位 渡邊駿 No.424  2:12:59(S25:33/B1:08:08/R39:18)
3位 堀井舜平  No.446  2:13:30(S27:41/B1:39:20/R34:10)

彩の国B 総合女子
1位 小山菫 No.402  2:25:15(S22:07/B1:19:25/R43:43)
2位 MihoC No.408  2:25:25(S23:17/B1:18:10/R43:58)
3位 山本侑果 No.404  2:26:09(S25:27/B1:16:53/R43:49)

彩の国C 総合男子
1位 福島旺 No.616  1:01:16(S9:11/B35:07/R16:58)
2位 高木将嗣 No.618  1:03:50(S10:17/B35:46/R17:47)
3位 柴田大輔  No.621  1:04:03(S11:28/B35:21/R17:14)

彩の国C 総合女子
1位 荻野瑛未 No.605  1:17:14(S12:20/B44:15/R20:39)
2位 沼野藍 No.601  1:24:54(S16:46/B2:45:57/R22:11)
3位 中村百花 No.608  1:25:10(S16:20/B48:12/R20:38)

彩の国C 高校生
1位 定塚利心 No.709  1:01:09(S10:11/B34:54/R16:04)
2位 倉本倫太郎 No.708  1:04:43(S10:35/B37:47/R16:21)
3位 上條琉聖  No.711  1:06:36(S10:01/B37:06/R19:29)

※全てのデータ:https://www.sainokunitri.com/リザルト/(6/5投稿にて)

 

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その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=40294

 

 

 

「今年も変わらず良いレースだった。」

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka