ワールドトライアスロンシリーズ横浜2022 Race Report

5/14(土)神奈川県横浜市で「ワールドトライアスロンシリーズ横浜2022」(ワールドトライアスロン世界トライアスロンシリーズ横浜大会組織委員会主催)が開催された。

関東では皮切りとなる横浜大会で、土曜日のエリートレース観戦、日曜日のエイジレース参戦と、楽しみ方が2倍となる国内屈指の人気大会だ。まずは関東であること、横浜、山下公園とその周辺を舞台に開催されることなどから、人気は高く、デビュー戦として出場する選手も少なくない。

昨年はコロナ禍ピークの中での開催となったが、観戦自粛への協力体制が高く、無事開催となった。もちろん選手もバブル方式を取り、徹底した感染予防がなされた。今年は、収束方向に向かう中でも、慎重さを期して、理想的な運営が行われていた。

毎年、気になるのが天候だが、やはり横浜は雨だった。昨年は晴れたが、今年は雨予報、取材活動にも支障は出るが、一番はレース中の落車が気になる。過去の事例から勘案し、滑りやすい赤れんが倉庫内をコースから外すなどの対策をとっている。実際は、女子のバイク序盤で雨は上がったが、路面はウェット状態が続き、雨が原因かは不明だが、2件の落車を確認している。

今年も横浜大会が開催された。オリンピックディスタンスの国内最高峰の大会であることは間違いない。世界選手権としてのレベルの高さ、エイジ選手の参加数、関東有数の観光地の真ん中で開催するというロケーションなど、国内では極めてポイントの高い大会と言えるだろう。

いずれにしても、観戦から参戦まで、横浜の5月の定番イベントを楽しんだのではないだろうか。

≪WTS横浜≫

WTS横浜大会は、今年で12回目となるシリーズ最多開催大会だ。国内でトライアスロン大会が始まって40余年。その中でもこの上ないロケーションとなる横浜大会だ。マラソンで言えば東京マラソンだろうか。地方からの参加者も多い、国内屈指の人気大会だ。

≪Race Topix≫

男女ともにイギリス勢が優勝となった。

女子は、イギリスのジョージア・テイラーブラウンが悲願の初優勝となった。常に上位で走って来た選手だったが、優勝には絡んでいなかった。スイムを上位で上がり、ダフィらのパックでバイクを終えると、ランで勝負に出た。やはり、昨年のTOKYO2020ゴールドメダリストでもあるダフィが本命ではあったが、見事にその予想を覆した。表情をあまり変えないテイラーブラウンだが、その力強い走りが印象的だった。

男子は、同じくイギリスのアレックス・イーがやはり悲願の初優勝となっている。スイムでは出遅れ、バイクスタートも第2集団からのスタートだったが、徐々に順位を上げ、得意のラン勝負に持ち込んだ。最後はニュージランドのヘイデン・ワイルドと一騎打ち、サイドバイサイドの走りを最後の花道で決着させた。また、ランの最終ラップでは、ボトルが取れなかったワイルドに手渡しするなど清々しいシーンもファンが増えたのではないだろうか。いずれにしても最後まで目が離せない「名勝負」だったと言えるだろう。

そして、日本勢も健闘を見せてくれた。小田倉真は、スイム、バイクでポジションをキープし、サバイバルとなったランで、粘り強く走り、9位で終えている。

≪Watching the race≫

トライアスロンは「Do Sports」と考えている人が圧倒的に多い。そんなトライアスロンを「観て楽しむ」ということを教えてくれたのがこの大会だ。ショートという短い時間にまとめられ、バイクの集団走行などの迫力あるシーン、そして、一般レースとは全く異なる「スピード感」が最高の醍醐味となっている。簡単に言えば毎年横浜でオリンピックが開催されているようなものなのだ。それを沿道から目の前で観戦ができる絶好の機会と言える。もちろん、「観戦」としての演出を考えて行われている大会であるということだ。

≪YOKOHAMA≫

横浜は、異国情緒の溢れる都市で、歴史的建造物などが多数あり、一つの博物館のようなロケーションとそこを交えたコースとなっているのが特長だ。国際大会として外国人選手に走ってもらう、最高の「おもてなし」コースとも言える。厳密にはエリートとエイジレースではコースは異なるが、スタート、ゴールは同一のため、迫力のエリートレース観戦、翌日の参戦で大いに楽しむことができるだろう。

≪Bike Count≫

2015年、この横浜が初めてGERONIMO COUNTを行った大会でもあるが、その後、毎年カウントしてきた。1週間前に開催されたIRONMAN WORLD CHAMPIONDHIPでは、3000台を超えるエイジ選手を含めたカウントをしているが、ここでは100名前後となるエリートのバイクをチェックしている。

アイアンマンで傾向のあった「ワンバイ」なども、この横浜で昨年確認、そして、今年は更に増えていたり、DHバーの形状やセッティングにこだわる選手も目立っている。そんなトップエリートの傾向やその前段階となる「兆し」などが発見できれば面白いと思っている。

横浜でエリートの使用するバイクは「ロードバイク」だが、ロングの宮古島などでもトライアスロンバイクは50%超える程度となっている。つまり、一般選手が使用するロードバイクとして、参考になる点も多くあり、傾向を活用してもらうことができるということなのだ。

今年はどんな結果となるのか、後日発表したい。

≪Race Report≫

今年も良いレースを見せてもらった。最近感じることは、中々連覇はできないということだ。若手の台頭もひしめく中で、このスピードレースを制することは簡単ではない。経験と衰えないスピードを持つ選手ことが勝てる厳しい世界だ。彼らはエリートであり、多くがプロでもある。最高の走りを見せることは当然かもしれないが、目の当たりにする姿には感動をもらい、そこで頑張る全選手に拍手を送りたい。

以下、レースレポートとなる。

■コース

【Swim】750m × 2周

ポンツーンから一斉スタートで、「氷川丸」が目標物となる。一見フラットだが、チョッピーな海面となることが多い。全景が確認でき、観戦もし易い。

【Bike】4.45km × 9周

今回、雨天予想のため、急遽バイクコースが変更となり、赤れんが倉庫の中にははいらず、前を通過となっている。その分、海岸通りを「横浜人形の家」方面に延長されている。フラットながら、カーブ、コーナーが多いテクニカルコース。スピードの加減速も著しく、スキルやバイク特性も大きく関係するコースとなっている。また、歴史的建造物の間を走る横浜を象徴するロケーション

【Run】2.5km × 4周

ランコースもバイクコース変更に伴い、象の鼻パークまで行かず、神奈川県庁を回ってくるコースとなり、バイクコース同様、「横浜人形の家」で折り返すコースとなった。フラットで、4周回のため、ペースを掴みやすいが、日陰はほとんどない。普段は圧倒的に応援、観戦者の多いコースとなる。

 

■エリート女子

【Swim】

10:16:03 女子のレースが小雨の降る中スタートした。「On Your Mark!」の後、間髪入れずにホーンが鳴り、一斉に飛び込んだ。透かさずトップに躍り出たのはフランスのボーグラン。続いて、キングマ、リンデマン、そして、本命ダフィらが続いている。その後もボーグラン、キングマら積極的に先行している。

スイムは一度ポンツーンに上がって2周回をする。1周目のラップは、ダフィをトップに、ボーグラン、キングマ、リンデマン、クーボーデンらがトップグループとなっているが、僅差で次から次へと選手が2周目に入って行く。テイラーブラウンは8位、昨年優勝のニブは9位だった。多少順位は変わるものの大方の顔ぶれは決まり、氷川丸前の最終ターンをしている。

結果は、ボーグランがトップでスイムフィニッシュ、続いて、キングマ、ロンバルディ、ダフィ、クーボーデンがフィニッシュ。ニブは6位、テイラーブラウンは8位でスイムを終えた。日本人は、高橋がトップから18秒差の21位で続いている。そして、バイクはボーグラン、キングマ、ダフィ、ロンバルディの4名でスタートしている。

【Bike】

ボーグランら4名で先行するもテイラーブラウン、スパイビーらの後続はすぐ迫っている。テイラーブラウンは単独で前を追いかけ、3分後には先頭集団に入り5名体制となったが、後続の勢いがあり、赤れんが前ではリンデマン、スパイビー、ニブを含む14名の集団となっていた。ただ、ニブは最後尾で明らかに調子は上がっていない。18秒差で11名の第2グループが迫っている。この中には日本の高橋が入っている。その後、カップヌードルミュージアム付近で動きがあったが、先頭集団は14名で安定している。スタート後26分が経過し、1Lap終了、第2集団11名との差は18秒、高橋も20位19秒差で健闘している。1周目はダフィが積極的に引き、集団の中の存在感が圧倒的に大きくなっている。まだまだこれから。

2周目に入った。第1集団はダフィが引きつつ、積極的にローテーションを促している。ペースアップで篩にかかる。3名が落ち11名に、ここで今日初めて昨年覇者ニブが先頭を引いている。落車!2周目終盤直線で後方2名離脱。なんとリンデマンとボーグランだった。リンデマンの前に入った選手と接触か。リンデマンは再開するがトップから30秒以上の遅れとなった。先頭集団は9名で3周目に入った。

3周目、後続集団は40秒のビハインドで、高橋も18位で追っている。そして、3周目で動きがあった。ダフィ、キングマ、テイラーブラウン、ニブらでペースを上げ、引き離しにかかるが失敗、再び9名に。ただ、ニブが積極性を見せている。昨年覇者の存在感をアピールできるのか。テイラーブラウンとスパイビーは笑顔で会話をしている。余裕の走りか。

4周目に入ってもニブが引き、続いてカスパーとなるアメリカ勢が前に出ている。後続も4周目に入り、高橋も前方で元気な姿を見せている。ただ、先頭集団との差は1分を超え開いている。これ以上開くと厳しくなってしまう。

先頭グループは5周目に入った。ダフィとテイラーブラウンが会話をしている。この後動きがあるのだろうか。ニブの反応が悪くなっているように感じるが。。。後続も5周目に入ったが、先頭を走るのは高橋だ。ビハインドは1分16秒と更に広がっている。再びニブが先頭を引き始めた。

6周目に入る前には、また、キングマが引いている。バイクの強さが際立っている。先頭を引く時間も長く、ダフィらと共にこの集団でも貢献度は高い。また、ニブが引いている。時間は短いがペースを上げている。前6名後3名、間が空き始めている。後続集団も6周目に入ったが、1分43秒のビハインドとなり、更に広がっているため、かなり厳しい状況となった。後続は15名、協調が上手く行けば追いかけられるのだが。またしてもニブは最後尾を走っているが、一気に先頭に出るなど、負担の大きい走りをしているのが気になる。

バイクも終盤となる7周目に入った。先頭はニブが引いている。この中から優勝者が出る可能性が高い。バイクの強い選手は更に引き離したいところだ。ニブが下がり、ダフィが先頭でペースを上げている。その後、キングマ、テイラーブラウンへリレーするように先頭を後退し、ペースをキープしている。後続は更に離され2分4秒のビハインドとなる。先頭集団でニブが前に出てでペースを上げている。終盤になると一気に前に出て上げる、そんなパターンが続いている。カスパーがトップで7周目を終えると、またキングマが引き始めた。

8周目となった、キングマのペースアップも集団も付いていく。まずはドリンクタイムとなり、各選手補給をしている。その後、後続とすれ違い、あらためてその差を感じることで、先頭集団でのバトルにスイッチが入った。後続との差は2分20秒となっていた。その後続は高橋が引っ張っている。8周目後半の先頭ではキングマが出たが、透かさずニブ、カスパーのアメリカ勢が前に出るなど動きが激しい。最後はダフィが出て8周目を終えている。すでにランのイメージが始まっていた。

いよいよファイナルラップに入った。今日初めてか、ペリオーが先頭に出る。後半に入るとペースが落ち、安定したペースで走っている。神奈川県庁過ぎたあたりからシューズを脱ぎ、トランジットの準備に入っていた。最後は、キングマがトップでバイクフィニッシュしている。

そして、トランジットをいち早く抜け出したのは、クノル、キングマ、テイラーブラウンだった。

【Run】

9名でランスタートとなった。昨年優勝のニブは、トップから5秒遅れの最後尾でスタートしている。クノル、キングマ、テイラーブラウンらがトップを走っているが、これから動きが出るだろう。

すぐ動きはあった。スタートして1分30秒、横浜人形の家前をターンした後、テイラーブラウンがペースアップ、透かさずキングマは反応したが、クノルは付いていけない。そして、ニブは最後尾のまま明かに遅れている。テイラーブラウンのペースが上がっている。キングマも遅れ始め、そこにダフィが上がって来ている。テイラーブラウンの独走状態となったが、このまま行ってしまうのだろか。ただ、後ろを気にしている。余裕はないのかもしれない。キングマがペースを上げている。そのあとをダフィ、ペリオー、ロンバルディが追いかけている。ダフィもペースアップ、4名のチェイサーが猛追している。1周目を終え、その差は7秒。ニブは21秒遅れだ。これ以上は離されたくない。

2周目に入った。ニューグランド前では差が4秒に縮まっている。ダフィのペースが上がっている。その後、更に縮まり、県庁の手前で捕まった。さあ、テイラーブラウンはどうするのか。5名の先頭集団となり、様子を見ている。間も無く、2周目が終わるが、5名のままキープされている。

5名のまま3周目に入った。あと2周、どこで仕掛けるのか。ニブは先頭集団のあと6番手で走っているが19秒の遅れとなっている。先頭はテイラーブラウン、追いつかれたが、先頭集団を積極的に引っ張っている。しばらくするとダフィが前に出て、力強い走りを見せている。県庁までペリオーが前に出るが、テイラーブラウンがすぐ反応している。キングマが少し遅れ始めたが何とか付いている。終盤、テイラーブラウンが先頭に出ている。余裕を感じさせる走りを見せている。

いよいよ勝負が決まる。

フィナルラップに入った。テイラーブラウンとペリオーが先頭をキープする中、ダフィらは反応できていない。先頭の二人も感じているはずだ。テイラーブラウンがペースを上げている。ペリオーは付いていけるのか。更にペースアップ、ペリオーを6秒突き放している。このまま行けるかテイラーブラウン。後ろを振り返る、余裕はない。ただペリオーとの差はキープしている。県庁前に入った。逃げ切れるか。また、後ろを振り返るテイラーブラウン。ペリオーも上げてきた。逃げ切れるか。

テイラーブラウンは花道に入った。最後まで振り返りながら、見事優勝を飾った。2位ペリオーとは6秒、3位ダフィとは11秒、スリリングなラストを勝ち切ったテイラーブラウンのゴール後の安堵を感じる笑顔が印象的だった。

■エリート男子

【Swim】

13:06:00 男子のレースがホーンとともに一斉にスタートした。女子は小雨のスタートとなったが、雨は降っていない。曇り空だが明るく、雨の心配もなくなった。ただ、その分気温も上がっている。水温も上がり、ノーウェットのスイムとなった。

男子のスイムは、例年通り拮抗し、横一直線に並んで泳いでいる。第1コーナーに向け、動きがあるだろう。まずはノルウェーのグンデルセンが体二つ前に出て、アウトからフランスのモルレックも上がっているが、第1コーナーでは団子状態となっている。第2コーナーもグンデルセンをトップに大集団となっている。19年覇者フランスのルイ、グンデルセン、そして、古谷が良い位置をキープしている。程なくしてルイがトップに出る予想通りの展開だろう。その後、ルイは体一つ前に出て、グンデルセンと古谷が続いている。1周目はルイがトップ、そして、古谷が2秒差の2位につけている。

大事な2周目に入った。ルイがトップをキープするのか、古谷もこのまま行けるのか。小田倉8秒差、北條10秒差、日本勢も好位置に付けている。イギリスのイーは20秒遅れの31位通過だ。ルイを頂点に長い隊列となっているが、やはりルイのスイムは別格だ。体二つ前に出ている。そのあとを同じフランスのコナン、古谷が追っている。第1コーナーはルイとコナンが先行し、追う大集団は、古谷が先頭となっている。第2コーナーではルイ、コナンが通過、グンデルセンら数名が上がり、古谷はその後に付いている。いづれにしても好位置は変わらない。残すは、フィニッシュまでのストレートだ。トップは変わらずルイ、続いてコナンで、3位とは体4つ程度は開いているだろうか。ルイは余裕すら感じさせる泳ぎをしている。間もなくスイムフィニッシュとなる。

スイムトップはフランスのルイで、予想通りの泳ぎを見せた。続いて1秒差でコナン、3位はモルレックとなり、フランスの1、2、3となっている。日本人は北条が10秒遅れ、古谷が11秒遅れでフィニッシュしている。

トランジットでは、大集団となり、バイクは一斉スタートの模様。

【Bike】

バイクは、スイム3位のモルレックがスタート切った。続くは日本の北条だ。ルイ、コナンも続いている。先頭は32名の大集団、バイクから仕掛けていくのだろうか。北西側カップヌードルミュージアムで折り返してから、集団の最後尾を走っていたルイが遅れ始めた。その後、後続のイーらのパックで走っている。先頭集団は、ルコーを頭に1周目を終えている。イーは14秒遅れ、ワイルドは24秒遅れとなっている。

2周目に入ったが、先頭集団が長いため、イーら5名の第2集団は、間もなく最後尾に追いつくところまで来ている。ルイも復活できるだろうか。集団はまた36名に膨らんだ。ルイとイーが最後を走っているのが気になるが。実はこの後に先頭集団をたった2名で追いかけている。一人はニュージランドのワイルドだ。追いつくのか。ノルウェーのトーンを先頭に2周目を終えている。古谷、ニナー、北条、小田倉、安松ら日本勢も元気に走っている。ワイルドの13秒遅れは縮まり、先頭の最後尾についた。

3周目はドイツのショームブルクを先頭に動きなく終わっている。4周目で38名となり、パイエ、ウィリアンが少し前を引いているが、やはり動きはない。パイエををトップに4周目終了。5周目に入った。北西側の折り返しでは、古谷が先頭を引き、積極的な走りを見せている。ここでも動きはなく、38名のまま、マクダウェルがトップで5周目を終えている。6周目も38名のまま、ワイルドがトップで終了。あと3周。7周目に入り、動きが出た。ペースが上がっている。ワイルド、ライダー、ベルジェール、そして古谷らが積極的に引き始めた。しかし、再び吸収、ワイルドがトップで終わった。8周目も何事もなく38名、プリースターがトップで終わった。

いよいよファイナルラップに入ったが、結局、動きはないまま、38名のバイクフィニッシュとなった。ショームブルクがランもトップスタートとなり、ベルジェール、ルコー、そして、北条が続いている。さあ、ここからが勝負だ。

【Run】

男子のランが38名でスタートした。概ね「ランレース」状態で、ランパフォーマンの高い選手が抜け出して来る。最後に勝負を決めるのは誰だ。

程なくして、ワイルドが先頭に出ている。続いて、ショームブルク、ルコー、ベルジェール、そして、北条もすぐ後に付いている。今回も厳しいサバイバルレースとなった。今はランの走力と集中力のみが試される。最後に残るのは誰だ。イーが県庁前で上がって来た。そして、先頭ワイルドは変わらず、ルコー、イー、ベルジェールのスイッチが入った。1周目終盤、イーが2位に上がっている。この4名で決まるのだろうか。ワイルドがトップで1周目を終えた。12秒遅れで、北条9位、ニナー11位が健闘している。小田倉は18秒遅れの15位。ここでルイが止まってしまった。

2周目に入ったが、やはりワイルドとイーの勢いがある。3位ベルジェール、4位ルコーとの差が開き始めた。県庁前あたりでは、ワイルドとイーの一騎打ちに入った。ルコーは遅れ始めている。前を走るワイルドか、しっかりと付いて走るイーか、最高の勝負が展開している。そして、そのままの体制で2周目を終えている。北条9位をキープ、ニナー10位に上がった。

あと2周、どこで勝負を決めるのか。先頭ワイルド、ピタッと背後に付くイー、同じ状態が続いている。時折後ろを気にするワイルド。イーはワイルドに合わせているように見える。余裕なのか。イーは前に出ない、並びもしない。ただ、その間隔はキチッと一定で走っている。間もなく3周目が終わってしまう。動きはない。3周が終わった。トランジットエリアではワイルドが左右に降りながら、後続のイーを振り払うかのように走っている。イーの状態を確認したのか。いよいよ決戦のファイナルラップに入った。

やはり、イーの走りには余裕を感じる。いつでもスパートをかけられる、と言った感じだ。横浜人形の家の前をターンした後、イーは斜め後ろに付く。ワイルドが何度も気にしながら走っている。そして、ニューグランド前でついに初めて並んだ。最後の勝負の合図だろうか。

その時だった。歩道寄りを走っていたイーは水のボトルをゲットした後、僅かに口に含み、その後、取れなかったワイルドにまるでバトンのように渡した。そして、ワイルドはイーの右肩に軽く触れた。最後の勝負の前の清々しいワンシーンだった。

この後、初めてイーが前に出たが、すぐさま、ワイルドがまた前に出る。透かさず後に付くイー。そして、再びサイドバイサイドとなった。県庁までイーが前に出る。ワイルドが抜かす。まるで苦しさを隠すかのように。ワイルド先頭、イーも付く。三度並ぶ。見事な勝負を見せてくれている。あと僅か、どちらが勝つのだろうか。イー先行、ワイルドが付く。ワイルドが前に出た。これはスパートだと思われるが、イーを離すことが出来ない。最後の左折、海が見えた。花道に入る。イーが前に出る。ゴールスプリント勝負の様相となった。前はイー、後はワイルド、ピタッとついたまま、最後のストレートに現れた。スプリント勝負だ。

イーが一瞬、右を見た。次の瞬間ラストスパートをかけたのだった。ワイルドは付いて行けず減速。そのままイーが逃げ切った。ゴール後、イーは一礼。その後、ワイルドとハグし、健闘を讃えあっていた。

素晴らしく、爽やかな勝負を見せてもらった。優勝のイーと素晴らしい勝負を見せてくれたワイルドに拍手を送りたい。

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【Result】

■開催地

神奈川県横浜市山下埠頭周辺

■気象

  • 女子:天候 曇り / 気温 21.5℃ / 水温 19.7℃ / 風速 4.0m 南西
  • 男子:天候 曇り / 気温 21.9℃ / 水温 20.4℃ / 風速 2.0m 南東

■参加数

完走/スタート数:女子33/42名、男子45/50名

■公式記録(抜粋)

女子優勝:ジョージア テイラー ブラウン選手( イギリス) 1:51:44

Rank No.  Name Country Time
1 3 ジョージア テイラー ブラウン  イギリス  1:51:44
2 29 レオニー ペリオー フランス 1:51:50
3 2 フローラ ダフィ バミューダ 1:51:55
4 40 エマ ロンバルディ フランス 1:52:03
5 28 マーヤ キングマ オランダ 1:52:12

男子優勝:アレックス イー選手( イギリス )1:43:30

Rank No. Name Country Time
1 29 アレックス イー イギリス 1:43:30
2 14 ヘイデン ワイルド ニュージーランド 1:43:40
3 3 レオ ベルジェール フランス 1:43:59
4 34 マシュー ハウザー オーストラリア 1:44:09
5 7 ピエール ル コー フランス 1:44:17

全公式記録:http://yokohamatriathlon.jp/wts/pdf/2022result_elite.pdf

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その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=39373

 

 

 

「名勝負だった!」

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka