6/5(日)埼玉県加須市で「2022彩の国トライアスロンin加須大会SPECIALIZED RACE DAY」(彩の国トライアスロンin加須大会SPECIALIZED RACE DAY大会実行委員会主催)が開催された。
昨年に続き、無事開催となった彩の国トライアスロンは28年目の歴史ある大会だ。毎年6月の第1週に開催され、気温、水温など初心者でも安心して参加できる時期となっている。ただ、梅雨入りが微妙なタイミングのため、唯一気になるのだが、そればかりは仕方がない。
当日の天候は恵まれた。朝5時、雲は厚く、程なくして小雨が時折パラつく状況となった。しかし、開会式の頃には、晴れ間がのぞき、眩しい朝陽に包まれて行った。その後は完全に晴れて、やや風はあったものの最高のコンディションの中で大会は行われたのだった。
そして、特筆すべくはリピーターが多いことだろう。それによって、エントリー数も安定している人気大会と言える。規模としては、500名以下の小規模大会となるが、かかる手間は変わらない、より準備も大変となる中で、行き届いた運営がリピート率を高めているのだと感じる。
この2022年は、定員割れの大会の話も聞こえてくる。やっと再開となった2022年だったが、コロナ禍が長過ぎた。目標大会を見失い、モチベーションも下がってしまったのではないだろうか。そんな中の開催で昨年より参加者も増え、完走率も上がっている。選手たちは、彩の国をターゲットにして、モチベーション高く、トレーニングを積んで来たという証ではないだろうか。
2023年に向けて、国内大会も完全復活するために繋げて行きたい。
■Sainokuni Triathlon
≪最短にまとまった動線の会場作り≫
彩の国の良さの一つに会場がコンパクトにまとまっていることが挙げられる。まず競技上で見た場合、スイムアップ後、目の前にバイクトランジットがあることはこの上ない環境と言える。他の大会では数百メートル離れていることも珍しくない。スイム会場とバイクトランジットの位置関係が大会によっては制限があるということなのだ。その点でのポイントは高い。また、駐車場が近いことも選手には嬉しい。観戦上から見ても、1箇所で応援しやすい環境となっている。
≪安心して参加できる老舗≫
彩の国トライアスロンは、国内屈指の老舗大会。1995年に「彩の国トライアスロンin北川辺」として始まっている。北川辺町は現在の加須市だ。創設から28年目を数えた歴史ある大会で、関東のトライスアリートにとってはお馴染みなのだ。タイプ設定、コース設定などを幅広い選手層に対応していることが特長で、交通アクセスの良さも含め、行き届いた大会となっている。それらを長年続けて運営は、大きな安心感を生んでいいる。
■Course
【Swim】A: 2.25 / B: 1.5 / C: 0.75 km
10名づつのローリングスタートで、基本的にフラットな遊水池を泳ぐ。レイアウトは、真っ直ぐ泳ぎ、戻る1周750mを周回する。
【Bike】A: 72 / B: 43 / C: 21.6 km
フラットな高速コース。2箇所90度コーナーがあるものの、ほぼDHポジション走行となる。道幅も広く、走り易いコースだが、DHポジション走行がカギとなる。
【Run】A: 15 / B: 10 / C: 5 km
一部土手の登り下りがあるものの、ほぼフラットでペースが掴み易いが、単調なコースとなるため、集中力が問われる。
■Race
【Swim】
≪イージーながら、基本動作は必要となるスイムコース≫
レースは距離の短いCタイプからスタートとなり、続いてB、Aの順番で10名ずつ、10秒ごとのローリングスタートとなる。1周750mをそれぞれ1周、2周、3周泳ぐが、BとAは周回時に一度上陸し、次の周回に入る。
コースは、真っ直ぐ泳ぎ、戻ってくる単調なコースなのだが、意外とスムースには泳がせてくれない。コースアウトする選手も少なくないため、ライフセーバーが叫んでいる。ブイ内側を泳いだため、一度戻され、泳ぎ直しとなっている選手もいる。
真っ直ぐ泳ぐことの難しさを痛感した選手も少なくないだろう。折り返しのブイはオレンジ色の四角錐で特大と言うわけではないため、確認は小まめなヘッドアップが必要になる。ただ、頻繁にヘッドアップをするわけにも行かない。コースロープもあるが、僅かに流れがあるのか、湾曲していて、真っ直ぐではない。
「ベタナギで真っ直ぐ泳ぐだけ」とイージーなイメージだけで侮ってはいけない。やはり基本動作となるヘッドアップや左右呼吸など、「オープンウォーター」であることを今一度理解して、対策を講じる必要がある。
【Bike】
≪優しくもあり、厳しくもあるバイクコース≫
コースの特性は、大きく二つの面を持っている。一つは、オールフラットでビギナーも安心して走れるということ。もう一つは、徹底したDHポジション「専用コース」であるということだ。
前者からの安心感は大きいだろう。大会を選ぶ時に、その難易度を測る物差しとして「どんなバイクコース?」と話題になることが一般的だ。もちろん好みもあり、テクニカルでアップダウンのあるコースが面白いと感じるバイク強者もいるだろう。そして、後者だが、実はここに面白さと厳しさがある。
Aタイプの場合、72kmとなるが、90度コーナー2箇所以外はDHポジションが可能であり、その比率は、70km以上、99%以上となる。その特性は、様々な「活用」が期待される。単独走行となるトライアスロンでは、やはりDHポジションが必要不可欠、たまにDHではなく、DHこそが「基本姿勢」となるからだ。そのため、このコースでは「DHポジションの練習」にもなるコースということが言える。
今回の平均タイムを見ると2時間から2時間半という長い時間の走行となっている。インドアのローラー台でもDHポジションは取れるが、その時間を練習するのは簡単ではないだろう。そして、バイク走行は「バランス」と「推進力」の二つの運動を行っているわけだが、固定され過ぎたローラー台では、実走でのリアルなバランス感覚を意識することは難しい。しかしながらロングの大会では、宮古にしても佐渡にしても、軽く100km以上はDHポジションを取ることになる。つまり、必須でありながらリアルに練習できる環境は極めて少ないと言えるのだ。
大会を練習に、と言うのは失礼な言い方となるが、「ロングのための練習」と言う位置付けは、少なからずあるだろう。その点においても極めて有効的なコース設定であると言うこと。
そして、そのDHポジションを取り続けることは簡単ではない。前述からすれば、練習が先か、大会が先か、という話になってしまうが。「ピンポイント」となるDHのフォームで走り続けることは「練習の賜物」と言い換えることができる。DHでの動き(余裕)は精々5~10cm程度の前後動のみだ。(サドルの先端に座っているように見える状態で10cm近いだろうか)悪く言えば「窮屈」なポジションでもある。
そんなDHポジションではあるが「体得」してしまえば、この上ない走りが可能となる。昔の話になるが、琵琶湖(80~90年代のアイアンマンジャパン)の通称てっぺん坂を走るトップ選手の中にはDHで上る選手もいた。エアロダイナミクスではなかった。もちろん基本はエアロなのだが、「出力」しやすいフォームであると言うことなのだ。そのことを無意識のうちに感じ「DHポジションが好きになる」と言う流れは少なくない。気が付いたらDHを取っていると言う「板についた」感じだ。今コースでも橋となるところは坂とは言えない僅かな起伏があるが、当然DHで走るレベルであり、それが無意識のうちにできていることが、それを極める第一歩だろう。
いずれにしてもこの彩の国のコースは「トライアスロンらしい」バイクコースであり、3種目全体も大切だが、DHが何%取れたのか、そして、どんな走りだったのか、バイクの「内容」を分析することで、次への課題も見つかるのではないだろうか。
そして、バイクも大事だが、最終的には、ランが走れるバイクができたかどうかと言うことに尽きる。
【Run】
≪楽しみながら、頑張り、考えながら走るランコース≫
笑顔を見れれば、険しい表情も見ることができる。選手一人一人のレースが展開されている。やはり、最後のランはきつい。いかに集中力を高め、維持できるのか、どういう戦略を立てるのか、ランは難しい。
1周2.5kmを周回する90%以上フラットなコース。序盤は後ろ姿しか見えない一方向、中盤はコースの折り返し前後の800m程度は対面、終盤はまた一方向となる3つのエリアから構成されるコースだ。中盤の対面のエリアでは何を感じながら走っているのだろうか。仲間で参加している選手は声を掛け合っている。また、ライバルとの差を確認している選手もいるだろう。
単調ながらも3つのエリアで気持ちを切り替えることで、集中力の維持に繋げることができるのではないだろうか。序盤は自身のペースに近いパックに入り、中盤で自身のポジションを確認し、終盤で調整をする。その繰り返しとなる。
いずれにしても晴れれば暑い。まだまだシーズン序盤だけのその対策も必要となるだろう。
【Finish Line】
いつでも、どんなレースでもフィニッシュラインはいい。
誰でも最高の表情を見せてくれる瞬間は、選手だけではなく、周りも嬉しい気分にさせてくれる。頑張っている人の姿に理屈はいらないということだろう。
そして、この最高の瞬間は選手だけで作れるものではない。多くの人々、みんなで作り上げた感動なのだろう。
Congratulations !
■Award
毎回盛り上がる表彰式。
まだ、表彰式を開催していない大会もあるが、彩の国ではしっかりと1時間開催している。表彰式会場は、バイクトランジットのあった広いオープンスペースで、選手間も十分なスペースが確保できる場所で開催している。
まずは、各種目の総合表彰、エイジ表彰が行われ、入賞の楯とスポンサーであるSPECIALIZEDの景品が渡される。ジャンケン大会ではSPECIALIZEDの豪華景品で盛り上がりを見せている。ジャンケン大会も含め表彰式では見慣れている光景なのだが、あらためて見ると、コロナ禍以前に戻りつつある昨今、ほのぼのとした良いひと時であることを再認識させられた。
そして、一番印象的なことは、最後まで残って、仲間と表彰式を楽しむ選手たちが多いことだった。
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■SPECIALIZED RACE DAY
今回もメインスポンサーはスペシャライズド、入賞の景品の他にジャンケン大会などでも豪華景品が提供され大いに盛り上がっていた。ツールドフランスからアイアンマン、ワールドトライアスロンシリーズなど、世界の最高峰で活躍しているメーカーで、その開発力は極めて高い。自転車の「F1」とも言えるトライアスロン、TTへの注力を積極的に行う数少ないメーカーでもある。4月の石垣島、そして、今年も彩の国ではトップシェア(※)となっている。※GERONIMO COUNTによる
■GERONIMO COUNT
バイクの「使用と仕様」から読み解くカウント。機材から観る選手の動きとなる。新型傾向となる「ディスクブレーキ」は、昨年26.9%だった。どの程度増えているのだろうか。また、参加者が経験者やベテランなのか、ビギナーなのか、選手層を確認する一つの指標となる「DHバー装着率」など、今年の彩の国の特徴、変化はあったのだろうか。機材から全てが分かるわけではないが、兆しや傾向は確認できる。
※GERONIMO COUNT http://triathlon-geronimo.com/?p=41173
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■Data
■気象(10:00時点):天候 晴れ / 気温 22.3℃ / 湿度64% / 風速 2.9m 東南東 ※熊谷地方気象台
■参加数
総エントリー数 / 最終出走者数 395/357名
完走者数 / 率 318名 / 89.1%
■レース結果(抜粋)
彩の国A 総合男子
1位 星大樹 No.143 3:14:56(S35:05/B1:43:05/R56:46)
2位 立山宏一 No.150 3:24:28(S32:38/B1:54:36/R57:14)
3位 牧野巧 No.133 3:26:16(S38:04/B1:53:33/R54:39)
彩の国A 総合女子
1位 日引華子 No.102 3:56:27(S34:25/B2:13:00/R1:09:02)
2位 高橋明美 No.117 4:02:07(S38:44/B2:10:16/R1:13:07)
3位 小口愛海 No.101 4:02:58(S38:49/B2:08:46/R1:15:23)
彩の国B 総合男子
1位 芝崎亮平 No.447 2:06:35(S23:55/B1:08:35/R34:05)
2位 渡邊駿 No.424 2:12:59(S25:33/B1:08:08/R39:18)
3位 堀井舜平 No.446 2:13:30(S27:41/B1:39:20/R34:10)
彩の国B 総合女子
1位 小山菫 No.402 2:25:15(S22:07/B1:19:25/R43:43)
2位 MihoC No.408 2:25:25(S23:17/B1:18:10/R43:58)
3位 山本侑果 No.404 2:26:09(S25:27/B1:16:53/R43:49)
彩の国C 総合男子
1位 福島旺 No.616 1:01:16(S9:11/B35:07/R16:58)
2位 高木将嗣 No.618 1:03:50(S10:17/B35:46/R17:47)
3位 柴田大輔 No.621 1:04:03(S11:28/B35:21/R17:14)
彩の国C 総合女子
1位 荻野瑛未 No.605 1:17:14(S12:20/B44:15/R20:39)
2位 沼野藍 No.601 1:24:54(S16:46/B2:45:57/R22:11)
3位 中村百花 No.608 1:25:10(S16:20/B48:12/R20:38)
彩の国C 高校生
1位 定塚利心 No.709 1:01:09(S10:11/B34:54/R16:04)
2位 倉本倫太郎 No.708 1:04:43(S10:35/B37:47/R16:21)
3位 上條琉聖 No.711 1:06:36(S10:01/B37:06/R19:29)
※全てのデータ:https://www.sainokunitri.com/リザルト/(6/5投稿にて)
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その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=40294
「今年も変わらず良いレースだった。」