ついに待望の新型トライアスロンバイク、SPEEDCONCEPTが発表となった。
2016年当時、「ディスクブレーキ化」の流れの中で、モデルチェンジのタイミングも予想されたが、こだわりの「快適性向上」の難題で見送られていた。ディスクブレーキ化は、トライアスロンにとってきっかけに過ぎない。アイアンマンバイクとして、最速を目指すためには、いかに快適性を上げるのか、トレックは大きなテーマに挑戦していた。ロードとは大きく異なる形状とジオメトリーのため、その答えを出すために長い時間を費やしたが、ついにその姿が明らかになった。
トレックは、1976年創業のアメリカン総合ブランドで、周知のビッグメーカーだ。マテリアルからエアロダイナミクスまで世界最高峰のバイクをリリースしている。カーボンロードのパイオニアでもあり、90年台からトライアスロンでの使用率は高い。90年後半には今で言う異形の「Y Foil」、2000年に入り26インチホイールの「Hilo」をリリース、前後ホイール異径サイズの「ファニー」までテストし、トレンドを押さえた開発をしている。その後、2002年のフルカーボンTT時代が始まり、トライアスロンシリーズの「Equinox」など、まだまだ安定しないトライアスロントレンドの中で試行錯誤を繰り返し、その時代のベストバイクを造って来た。
トライアスロンでは、最も注目となる「モノサシ」、コナのアイアンマン世界選手権。前回2019年の使用率は第2位(9年連続)で、常に上位をキープしている。そして、特筆すべくは、速い選手に使用される傾向が高いという結果が出ている。アイアンマンにおいて10時間を切る「SUB10」は、エイジ選手にとって極めてステイタスの高い目標となっているが、SUB10選手が使用していたバイクをモデル別に調べて見ると「 Speedconcept」が第1位だったのだ。台数では2位だが、その中身を調べるとSpeedconceptの本当の凄さが見えて来る。次回のアイアンマン世界選手権での結果が最も気になる一台だ。
そして、新型がローンチされた。これほど待ち望まれていたバイクはないだろう。前述の通り、常にトライアスロンの中心でバイクをリリースして来たが、このSpeedconceptは、トレックトライアスロンの集大成とも言える完成度となっている。トライアスロンバイクの開発において、各社それぞれの特徴を出しているが、今回の新型は、まさに「トレックらしさ」を感じる難しい課題をクリアしている。
2009年コナデビューとなった第1世代の同モデルは、KVFと言うフレーム形状に注目が集まった。その後4年が経ち、第2世代は2013年コナデビュー。より一層のエアロダイナミクスとともにストレージ、ユーザビリティを高めた。そして、8年後の2021年、新型は9月のアイアンマン70.3世界選手権で確認されている。
新型は、各部のアップデートは当然ながら、トレックの専売特許とも言える「快適性」を高めることに成功している。トレックは、2015年のMadoneの開発において快適性について、注力して出来たのが「Iso Speed」だ。その後、他のモデルにも水平展開され、快適性を重んじるトレックのイメージが確立して行った。そのレベルは、あると良いではなく、無ければダメだと言う強いイメージを受けていた。特にエアロ形状かつ、シートアングルの立っているトライアスロンバイクでの快適性は難しかった。
エアロダイナミクスによる速さは、もちろん必要だが、快適性が高まることで、ペースが維持し易くなれば、アベレージスピードは高くなる可能性が高い。あくまでも「競技」における快適性となるが、長時間となるトライアスロンにおいては、重要なキーワードとなることは間違いない。
「トレックのトライアスロンバイクは、変わらずTTと同じものだった。もちろんIsoSpeedの有無で言えば異なるバイクだが、エアロダイナミクスという点では同様になる。昨今、トライアスロン専用をリリースするメーカーがスタンダードとなっている中で、あらためてトレックが出した答えなのだろう。コナにおいてサーヴェロは、PX系ではなく、TTのP5が支持されている。TT系トライアスロンバイクとして、SUB10選手ご用達のバイクとなることが予想される。」