BRAVE & TRUE

7/14(日)鳥取県米子市他で「第39回全日本トライアスロン皆生大会」(皆生トライアスロン協会など主催、スポーツ振興くじ助成事業)が開催された。

今回で3年連続3回目の取材となった。皆生と言えば、灼熱の中のレース、または大雨で途中で中止になったこともある、過酷なレースとして知られている。17年は暑かったが、昨年は過去最高に暑かった。今年も暑いのか、はたまた、雨の中のレースとなるのか、まさに一年間の取材の中で最も「戦々恐々」と身構えてしまう大会でもあるのだ。

過酷な環境の中で行われる皆生は、日本トライアスロンの歴史そのものだ。来年40回目を迎えるが、現在、参加選手は1000名を越えている。但し、厳正な「書類選考」の元、選ばれている1000名であり、基本的には実績のある選手たちだ。そんな選手たちでも完走率は高くない。それほどのチャレンジングなレースでもある。元祖鉄人レースとしては、簡単には完走させてくれないのだ。ただ、だからこそ憧れの「鉄人」を目指すのだろう。

金曜日に現地入りをしてからも不安定な天候が続き、時折晴れ間も出るが、目まぐるしく変わっている。当日もスタート直前まで気になっていた天候だが、今年は「最高」だった。7時の気温は21.3℃、水温は22.5℃だった。昨年は水温も高く28℃あったので、「絶好」のコンディションと言えるだろう。午前中11時頃までは、小雨が降ることはあったが、バイクに大きな影響のない程度だった。そして、その後は曇ながらも空は明るくなってきた。もちろん、暑さも心配されたが、いつのようにはならなかったのだ。14時頃には少し蒸し暑さを感じたが、いつもとは違った。その結果として、優勝タイムは昨年より37分も更新され、100番でも43分の短縮となった。そして、全体の完走率が昨年の83%から、今年は93%となった。「皆生」らしくないという声も聞いたが、ロングはアドベンチャー、その時、その瞬間まで分からない “ 気分屋 ” も皆生らしさかもしれない。

当日朝4時、僅かに小雨が降っている。ランの時なら選手は助かるだろう、これ以上降るとバイクのペースは抑えざるを得ない。当日の朝も不安定な空を見上げながら、間もなく始まるレースに備えた。

スイム会場はいつもと違う様子だった。波打ち際では、大きく波が巻いている。スタート地点や、沖は問題なく見えるが、波打ち際では、脚をすくわれている選手もいる。過去2年は穏やかだったが、この波で止めてしまっている選手もいた。

Team BRAVE八尾監督の「バトルのない優しいスイムを」で一斉スタートとなる。

■スタート、スイム3km

7時、長い一日が始まった。全員無事に完走してほしい。

フローティングスタートとなる。一度沖に向かうがほどなく左折となるため、やはり「バトル」はある。ただ、「それほど厳しくなかったよ」と選手は言う。全てではないかもしれないが、「優しいスイム」だったのかもしれない。その想いが通じているのだろう。

皆生のスイムコースは一度沖に出てから、岸と並行するように左方向に泳ぐ。1.5kmで一度上陸し、戻ってくるコースとなっている。

波打ち際では、波が立ち足が取られる。

■いよいよバイクが始まる

皆生の名物とも言える、アップダウンの多い難コース。

バイクトランジットでは、皆生ならではのボランティアの手厚いサポートと応援で送り出してくれる。皆生のボランティアは4000名を越えている。選手一人当たり4名でサポートしてくれていることになる。世界的にも珍しいだろう。それだけ、「発祥」を大事にして、この大会を守る意識が高いのだ。

ちなみに鳥取県は、スイカの名産地トップ5に入る。「スイカ美味しいよ~」と選手に声をかけてくれる。

■バイク140km

皆生の象徴「大山」を上り、アップダウンを繰り返す、テクニカルコース。

皆生の醍醐味はやはりバイクコースだろう。中盤に控える「大山」やジェットコースターと言われるアップダウンが選手を苦しめる。確かにハードなコースだが、だからこそ選手が集まってくる。このコースをクリアすることが、皆生を楽しむということなのだ。アップダウンとともにテクニカルであり、山の中を駆け巡るこのコースは、本当にバイクのトレーニングを積んできた選手にとっては「楽しいコース」と言えると思う。

皆生名物「ジェットコースター」に入る。皆生のバイクコースで最も楽しめるエリアとなるが、狭い箇所もあるので、慎重に進まなければいけない。

■ラン42.195km

ほぼフラットとなるランコース。単調なコースには「集中力」が重要となる。

ランでも例年の暑さがないため、選手は軒並み「自己ベスト」となっている。歩道橋などを除けば、ほぼフラットなコースとなっている。ただ、極めて短調なため「集中力」がカギとなるだろう。コースはフラットで良いのだが、路面、道幅、また段差などには気をつけなければいけない。

■鉄人になる

このゴールを目指して走って来た。最高の笑顔でゴールだ。

このゴールシーンも皆生大会を最も象徴していると言えるだろう。アットホームで大勢の家族、友人、仲間との同伴ゴールは皆生ならではと言えるだろう。レースの厳しさを忘れてしまうような、笑顔と和やかな空気に癒される瞬間だ。

いつまで見ていても、それぞれのゴールがあるので飽きない。一日戦った「勇者」の喜びとそれを讃える人たちが最高の場を作っている。

競技レベルの高い皆生に出場する選手は、レース以外でも意識は高い。多くのボランティア、スタッフに支えられていることを理解している。このように一礼する選手は少なくない。清々しい光景だ。

今年の皆生が終わった。

天候には恵まれた今年の皆生だった。これ以上のコンディションは今後もないだろう。来年はきっと暑くなる。暑さの中でも十分なパフォーマンスを発揮できるトレーニングが必要となる。来年の「灼熱皆生」に対抗するための時間は長くはない。

来年はついに40回目の大会を迎える。皆生の歴史は、日本トライアスロンの歴史だ。まずは、皆生が「トライアスロン発祥の地」であることをあらためて知ってほしい。

元祖「鉄人レース」となる皆生は、アイアンマン、宮古島ストロングマン、佐渡アストロマンのような「称号」はないのか。皆生は1981年に国内初のトライアスロンとして始まったわけだが、当時はこのレースを開催するため、「IRONMAN」のマニュアルを元に試行錯誤され、53名の選手で始まっている。そのため、和訳され「鉄人レース」と呼ばれ、「日本版アイアンマン」と言うことができる。したがって、皆生の称号は、「鉄人」ということなのだ。その後、20年ほど前に英語のイメージコピーとして「BRAVE & TRUE」が付けられた。その他の案や○○マンももちろん検討されたようだが、元祖としての「皆生らしさ」を象徴するイメージから選ばれた。

 

★皆生大会関連情報(来年のランコースになると良いですね。)

鉄人と野人 トライアスロン発祥の地 全緑プロジェクト実行委員会

「鉄人野人 全緑挑戦 トライアスロン聖地 米子/境港 に芝生広場を」

https://readyfor.jp/projects/tetsujin-yajin

 

 

2019その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=31049

2018レポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=27306

「来年は40回大会、皆生の歴史は、日本の歴史だ。」

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka