第41回全日本トライアスロン皆生大会(皆生トライアスロン協会主催「スポーツ振興くじ助成事業)が開催された。
昨年3年ぶりの開催となったが、今年は距離もほぼ戻り、フルディスタンスとして本来の皆生大会が戻って来た。皆生トライアスロンは日本の原点、そのステイタスを高める厳しいコースと優しいボランティアたちに支えられてゴールを目指す大会。
昨年の荒れた海は、今年はベタナギで泳ぎやすく、水温も冷たいということはなかったようだ。そして、皆生の名物はまず「灼熱」となるが、これは変わらず厳しかった。気温は37℃近くを記録し、選手たちは「サバイバル」の様相となった。まさに「自分自身」との戦いそのものだったのではないだろうか。
また、「アップダウンしかない」と言うイメージしか残らないバイクコースも皆生そのものの魅力となっている。実際にはフラットコースもあるのだが、アップダウンやテクニカルのイメージが強烈に残る。この暑さと坂のことが、レース後、最も話題になっていたのではないだろうか。厳しいレースだからこそ、ゴール後の感動が大きい。
そして、「もう一つの皆生」。ボランティアの多さも売りの皆生だが、今回は集まりが悪く運営も大変だったようだ。これは皆生だけに限ったことではなく、長崎は距離を短くしたり、これから開催の佐渡も追われているようだ。国内トライアスロン全体の問題にもなっている。それでも熱き選手、熱きスタッフ、そして、それを見守る地元の人々によって開催ができている。
皆生は、本州唯一のロングトライアスロン。道路使用など新規開催は極めて難しいロングであり、島以外での開催を継続している。レース開催時間は14時間30分、当然その前後に準備時間も必要だ。会場周辺の人々にとって必ずしも100%のウェルカムではないのかもしれない。それでも「発祥の地」を守り続けている。
PS.エイドステーションには「OS-1」があった。当初、非常時としての対応だったようで、10年ほど前からやっているそうだ。以前はランだけだったが、今回はバイクからは出されていた。それだけの暑さが予想された。熱中症対策としてありがたい。
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以下、リキャップとなる。今年も暑く、熱い大会となった。Photoレポートは後日あらためて。
■第2の復活
昨年、コロナ禍も落ち着き、3年ぶりに再開されたがコースは短くなった。理由はボランティアが集まらず、短縮となってしまったのだ。更に、波が高くスイムは中止、第1ランに変更しデュアスロンとして開催された。距離にしても、波にしても仕方ない。誰のせいでもないのだが、残念に思う選手は多かっただろう。
そんな昨年からついに今年は、本来のフルディスタンスとして「完全復活」となった。毎年開催していても当たり前のことではなく、継続は大変なこと。特に不測の世界情勢となり、トライアスロンどころではなかっただろう。そんな中でも早い完全復活は、関係者すべての希望であり、皆生、鳥取の元気でもあった。選手は待望のフルディスタンスに沸き、昨年の「ミドル感覚」とは違う意識で準備をして来たはずだ。
皆生のルーツはアイアンマン。40回以上開催されていてもまだ周知されていないかもしれないが、当時ホノルルで開催されていたアイアンマンがモデルであり、そのマニュアルによって開催された。アイアンマンは、スイム3.9km、バイク180.2km、ラン42.2kmの226.3kmで開催されていたため、皆生としても「ロングが基本」と言うことだった。皆生の第1回は、スイム2.5km、バイク63.2km、ラン36.5kmで開催、徐々に距離が長くなり、バイクが130kmとなった1986年第6回大会以降からが本格的なロングとなった。
■Distance
今回前述の通り、距離設定は、ほぼコロナ禍前に戻り、スイム3km、バイク140km、ラン40kmでの開催となった。昨年に比べるとバイク25km、ラン8km、合計33km延びたことは、バイクコースと暑さから「全くの別物」と捉える選手が多い。
あと距離を「ほぼ」としているのは、ランが42.195kmではなかったということだ。選手の捉え方はそれぞれで、「少しでも短い方が良い」「どうせならフルマラソンが良い」など賛否の意見はあった。
ランコースが短くなったことは、昨年からの「弓ヶ浜」コースに関係している。以前は国道431号線を渡らなかったが、昨年から景色の良い弓ヶ浜サイクリングコースを使用しているため、ラン序盤で国道を地下道で渡し、一度海側へ出てしまう。そのためコース取りのエリアが限られてくるからだ。昨年より8km伸びたランコースは、サイクリングコースの先にある竹内団地まで延長するカタチで距離を稼ぐ設定となっているが、そこもレイアウトはいっぱいということなのだ。
実際に走ったデータでは、40.8~40.9km程度になっている選手が多かったようだ。
■Course
スイムコースは、2019年同様に皆生温泉海岸をワンループで泳ぐ3km。海岸に沿って泳ぎ、中間地点で一度上陸、スタート地点に戻るコース。今回スタートを2組に分けたウェーブスタートで5分間の時差としてる。組分けは都道府県別とし、招待選手は第1ウェーブでスタートとなる。コースは分かりやすい単純な設定だが、沖から上陸する中間地点、再び沖に戻るあたりのコースブイなどが見ずらく泳ぎづらかったとの声もあった。
バイクコースは、ほぼ従来通りの名物コース「大山&ジェットコースター」となっている。ここでの「ほぼ」は新しい道路などの関係から距離は140kmをキープしつつ、僅かに変更が入っている。140kmという距離は、他のロングと比べると短いことを感じるが、アップダウンを考えるとそれ以上の距離に匹敵すると言っても良いだろう。
ランコースは、序盤、終盤は街中を走り、中盤で海岸エリアを走るコースで、全体的には、概ねフラットのスピードコースでもある。途中には序盤で歩道橋や地下道、終盤で跨線橋もあるが、それよりも「暑さ」が最大の敵となる時間だ。前述の通り、昨年からの新コースを8km延したため、最も離れた地点の竹内団地を「あみだくじ」のように走り稼いでいる。
■Weather
まずは、ご覧の通り、最高の「夏空」でキラキラしていた。皆生の象徴の「大山」が鮮明に見え、地元の人々さえも「今日は大山が綺麗に見えるな」と口々にしていたくらいだった。夏のトライアスロン、最高の絵になる始まりだった。
スイム会場の波はベタナギで、波高は0~0.4m、「気持ち良く泳げた」「楽しかった」など、昨年とは打って変わってのコンディションだった。朝から風はあったが、波にあまり影響がなく、無事に終えている。
バイクをスタートする頃には、陽射しも厳しくなり、予報通りの厳しい暑さが予想された。そして、ここで風が影響し始めていた。序盤の日野川沿いでは向かい風となった。8:00時点では平均5.3m/s、最大瞬間8.5m/sも記録されているが、その後のコースでは、時間帯にもよるが、概ね大きな影響はなかったと感じている選手が多かった。逆に帰りの川沿いは追い風になり、帳消しと言ったところだろうか。
ランは「灼熱」だった。35℃を超えたのは10:50、その後、35℃を切ったのは6時間後の16:50だった。最高気温は、36.7℃で12:40と14:40に記録している。トップ選手のランスタートに合わせるように最高気温となった。日陰はなく、37℃近い気温の中を淡々と走り続ける選手たち。ただただ感服だった。そして、朝から吹いていた風は、最後に味方をしてくれた。
今回、「気温37℃、リタイヤ者過去最高か」などが話題となっているが、この過去5回の取材の中では最も暑かった。ただ湿度が低かったことが幸いした。12:00の時点で38%と低く、息苦しさは少し抑えられたのではないだろうか。過去を調べると概ね50~70%あり、2019年では、11時頃まで小雨となり、湿度は80%を超えていた。風がなかったら更に厳しいレースとなったはずだ。
※気象情報:鳥取地方気象台米子地区 2023年7月16日10分毎
■原点回帰
皆生は国内発祥だけではない。古き良きトライアスロンの象徴的な「同伴ゴール」が許されている数少ない大会でもある。更にゴールテープを切る、最後まで一緒にゴールができる。家族、仲間とともにゴールしてくる選手の姿は「原点」そのものだ。厳しいコースと暑さに抗いながら、険しい表情で走ってきた選手たちも、ゴール前では満面の笑みとなる。自身も頑張り、それを長い時間待っていてくれた人たちとのゴールはやった人しか分からない感動が待っている。
そして、ゴール後は、選手も同伴者も興奮しているのだろう。「選手はこちらへ、同伴の方はこちらへ」とボランティアの人たちも大変なのだ。ただただ、選手に喜んでもらうためにやっている。
■Race Result
皆生が終わった。
井邊選手、高橋選手、男女ともに3連覇となった。全体的には厳しいレースとなった。完走率が7割を切るという結果だった。暑さも影響しただろう。また、今回バイクでのリタイヤ者が多い。バイクフィニッシュは8割を切っていた。やはり、暑さとともに「バイク強化」が完走への大きなカギとなるだろう。
【第41回全日本トライアスロン皆生大会】
《日時》2023年7月16日(日)7:00~21:35
《参加選手》※個人の部
応募総数 1097名(競争率1.12倍)
総エントリー数 / 最終出走者数 982/932名
完走者数 / 率 633名 / 67.9%
《総合男子》
1位 井邊 弘貴 No.005 8:12:36(S46:07/B4:13:59/R3:12:30)※3連覇
2位 荒瀬 壮兵 No184 8:24:32(S54:43/B4:12:16/R3:17:33)
3位 福田 宰 No.508 8:48:02(S53:58/B4:28:36/R3:25:28)
《総合女子》
1位 髙橋 真紀 No.008 8:53:21(S46:11/B4:40:35/R3:26:35)※3連覇
2位 寺木 佐和子 No.010 9:55:41(S53:30/B5:01:29/R4:00:42)
3位 伊藤 あすみ No.014 10:30:12(S57:20/B5:25:05/R4:07:47)
全ての記録:https://systemway.jp/23kaike
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「暑く、熱い皆生の夏が終わった。」
Triathlon “ MONO ” Journalist Nobutaka Otsuka