Higashimikawa IM70.3 GERONIMO Analysis

HEDのJET180が装着されていた。KONAのレギュレーションをクリアする究極の「KONA用ディスク」。昨年のKONAでも話題となっていた最新ホイール。

 

3年ぶりの国内アイアンマン70.3バイクカウント6回目となった。

バイクカウント自体はすでに発表した通りだが、ここではその中身を分析している。2015年から2019年までカウントしたセントレアでは、トライアスロンバイク比率が高い特徴的なレースだった。ショートとロングに間に位置するミドルは様々な可能性を持っている。ショートからの挑戦、ロングからの調整レースなど、幅広く「トライアスリート模様」の見える象徴的なレースなのだ。

したがって、このカウントと分析も重要となるミドルディスタンスであることと更に「アイアンマン70.3」の復活など、国内トライアスロンを推し量る上で極めて重要なレースと捉えている。今回のコース設定は、ミドル、フラット、そして、ワンループからバイクへの注力が「DHポジション」への意識とともに高まっていたことも伺える中での結果と見ている。

いずれにしても3年ぶりに開催された世界シリーズであるアイアンマン70.3で使用されたバイクはどんなバイクだったのか。機材は何を語ってくれるのだろうか。

【ブランド別使用率】

詳細:GERONIMO COUNT

順位 ブランド 使用数 使用率
1 SPECIALIZED 101 15.1%
2 cervelo 95 14.2%
3 TREK 86 12.8%
4 ceepo 59 8.8%
5 CANYON 28 4.2%
6 FELT 26 3.9%
cannondale 26 3.9%
8 PINARELLO 23 3.4%
9 GIANT 19 2.8%
BMC 19 2.8%
その他計 185 27.6%
不明 1 0.1%
未確認 3 0.4%
合計 671 100.0%

※Counted by Triathlon GERONIMO

スペシャライズド、サーヴェロ、トレックの「3強」となった。

大手ブランドが占めているが、4位シーポも国内ではトップブランドになる。そして、5位には注目株のキャニオンが入っているが、予想に反して少なかった。世界の動きのイメージでは、4位以内も期待された。6位フェルトは、間もなく「新型IA」のデリバリーなど発表されるのではないだろうか。これも期待のブランドとなる。

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≪TOP10シェア≫

年度 総台数 TOP10台数 使用率
2023 671 482 71.8%
2018セントレア 1591 1109 69.6%

※Counted by Triathlon GERONIMO

トライアスロンバイクをリリースするメーカーは限られているため、Top10ブランドへの集中傾向は強くなる。5年前のセントレアとの単純比較となるが、やはり、そのトレンドが確認される。今年の宮古島では74.3%、そして、昨年のKONAでは一気に伸ばし、83%を超えているため、まだ世界との差はあるが、進む傾向となるだろう。

「トライアスロンバイク」は車で言えば「F1」となる。スピードに対する究極のマシンを造るためための研究、開発が必要になる。昨今では更に、フューエル、ストレージ、そして、パッキング対応も含めたユーザビリティー向上も求められている難しいバイク。大手の総合メーカーではトライアスロンバイクの出荷台数の比率は少ないだろう。それでもそこに注力することは、そのメーカーの技術力のアピールであり、大きな信頼につながってくる。そんな夢を追いかけるバイクでもある。

 

【トライアスロンとロードの比率】

トライアスロンバイクとロードバイクをどちらにするかは、いくつかの理由がある。もちろん、ここでは競技面から考えなければ行けない。まずは、レースに向けて練習して来たバイクで走ることが鉄則だろう。東三河は、概ねフラットコースとなるため、理論的にはトライアスロンバイクが向いていることにはなるが、普段から練習で使っているバイクが基本だ。仮に練習はロードバイク、レースはトライアスロンバイクと変えていては、良いパフォーマンスは見込めない。バイクに限らず、練習とレースの差を極力なくすことが重要となる。

選手の動向としては「ミドル出場」を決めた時にトライアスロンバイクの導入を検討する選手が少なくない。やはり、距離が長くなるため、よりDHポジションに特化した専用バイクを考えるのだろう。ミドルを目指す時点で練習も増えることになり、順当に行けば、問題なくトライアスロンバイクも乗りこなすことができるはずだ。「乗りこなす」としたが、トライアスロンバイクはピンポイントポジションとなるため「遊び」がなく、一定量の練習を積まなければ、デメリットが先行する可能性があるということなのだ。フィッティングによりポジションの見直しなども必要となる。選択理由は一つではなく、選手それぞれだと思うが、結果は以下のようになっている。

年度 使用台数 Triathlon 比率 Road 比率
2023 668※ 364 54.5% 304 45.5%
2018セントレア 1590※ 682 42.9% 908 57.1%

※Counted by Triathlon GERONIMO

※未確認除く

結果は、トライアスロンバイク比率が大幅に伸びていた。この5年間で徐々に伸びていたと思われるが、宮古島並みとなっている。今年は宮古島も57.1%まで伸ばしているためその傾向は東三河においても伺われる。前述の通りだが、乗りこなしは簡単ではないトライアスロンバイクを選んでいることは、競技をより真剣に楽しむ選手、競技志向の強いエリート選手が増えていると言い変えることができ、トライアスロンへの盛り上がりを示す一つの指標とも言えるだろう。

≪TOP10ブランドのトライアスロンバイク比率≫

順位 ブランド 総台数 使用数 使用率
1 cervelo 95 86 90.5%
2 SPECIALIZED 101 62 61.4%
3 ceepo 59 43 72.9%
4 TREK 86 37 43.0%
5 CANYON 28 27 96.4%
6 BMC 19 18 94.7%
7 FELT 26 17 65.4%
8 cannondale 26 10 38.5%
9 ARGON18 7 7 100.0%
10 QR 6 6 100.0%
合計 453 313 69.1%

※Counted by Triathlon GERONIMO

TOP10ブランドのトライアスロンバイク比率は、約70%となっている。そこには上位4ブランドのサーヴェロ、スペシャライズド、シーポ、トレックが大きく貢献している。そして、次世代ブランドのキャニオンもすぐそのグループに入ってくることだろう。

そんな中でもサーヴェロは、やはり「トライアスロンバイク」としての強さが際立っている。ほとんどトライアスロンバイクが使用されていた。そして、キャニオンやBMCも絶対数は少ないものの、比率は極めて高く、「トライアスロン色」が出ている。

 

【ディスクブレーキ率】

2021年から注目しているのが「新型率」だった。コロナ禍があり、その数値の比較は単純には出来ないが、推移を確認している。その手段として「ディスクブレーキ仕様」のバイクをチェックしている。

ディスクブレーキは概ね早いメーカーで2016年モデルから始まり、2018年から2020年でそのフェーズに入った。2020年以降では「遅い」と言えるのだが、昨今の事情も相まって、遅れたメーカーも少なくない。大会の中止とともに、生産の優先順位、材料、パーツ調達の困難など、向かい風が厳しくなってしまった。

そんな状況もかなり落ち着きを見せ、デリバリーの遅れも安定しつつある。「2024年モデル」と言われるこの時期では、カウントデータの信憑性も高まってくるだろう。トライアスロンバイクでは、単なるディスク化ではなく、全体からの見直しが必要なため、ディスク化というよりは新しいコンセプトのもとに新型がリリースされているため、時間はかかったが、ほぼ出揃った感となっている。

そもそもディスクブレーキ化は必要なのか、数年前まで議論されたことだが、全ては安全性と考えている。その前に行なわれていたのが「ホイールの強化」だった。路面と接しているのはホイールであり、制動力はブレーキだけではなし得ない。その意味では、より安全性の高まったバイクが増える傾向にもあるということはとても大切なことなのだ。

大会 Disc 比率 Rim 比率
TA RD TA RD
2023
東三河668台 136 103 239 35.8% 227 202 429 64.2%
宮古島1111台 227 121 348 31.3% 407 356 763 68.7%
2022
佐渡 974台 142 84 226 23.2% 371 377 748 76.8%
皆生 986台 71 98 169 17.1% 311 506 817 82.9%
彩の国345台 60 52 112 32.5% 87 146 233 67.5%
石垣島1010台 240 23.8% 770 76.2%

※Counted by Triathlon GERONIMO

※未確認除く

結果は上表の通り。ディスクブレーキ仕様となったバイクは、35.8%だった。高い数値と感じている。2ヶ月前の宮古島より多く使用され、昨年のKONAでも36.7%だったことからも言えるのだ。もちろん、時間経過により新規参加や買い替えなどから自然増とはなるのだが、「ディスクブレーキ化」そのものは概ね順調と言ったところだろうか。

また、機材をヒントに「選手像」をイメージすると様々な仮説が成り立つ。ディスクブレーキ比率が高まっているということは、比較的新規のトライアスリートが増えている可能性があル。そして、より楽しむために買い替えたりすることで高まっているということが考えられ、良い傾向であるということは言うまでもない。

 

【人気のバロメーター】

ディスクブレーキ率について述べたが、まさに「今」選ばれている人気モデルの一つの指標と言えるだろう。単に台数の多少ではなく、その中身として、最近の新しいバイクがどの程度含まれているのかが重要と言えるだろう。ここでは、具体的にディスクブレーキ仕様のバイクをランキングしている。

ブランド 総台数   ディスク
TA RD 合計 使用率
1 SPECIALIZED 101 31 24 55 54.5%
2 cervelo 95 44 4 48 50.5%
3 TREK 86 10 21 31 36.0%
4 ceepo 59 16 5 21 35.6%
5 CANYON 28 11 1 12 42.9%
6 PINARELLO 23 3 7 10 43.5%
7 FELT 26 5 3 8 30.8%
8 MERIDA 14 0 6 6 42.9%
9 ARGON18 7 5 0 5 71.4%
10 BMC 19 4 0 4 21.1%
その他計 210 7 32 39 18.6%
合計 668 136 103 239 35.8%

※Counted by Triathlon GERONIMO

※未確認除く

結果は、スペシャライズドの1位だった。総台数も多く、早くからディスクブレーキ化を進めて来たブランドだけに当然の圧勝であるが、安定と勢いを感じる。ディスクブレーキのトライアスロンバイクを見るとサーヴェロが1位であることも、さすがのキングサーヴェロとは言えるだろう。ただ、スペシャライズドのロードにはWTCS御用達のTARMACがあり、まさに「二刀流」の強さも見せている。

また、ロードがメインでランクインしているのがピナレロとメリダだ。ピナレロは言うまでもない、ロードのキングであり、トライアスロンのサーヴェロにあたると言っても良いだろう。国内トライアスロンではTOP10のレギュラーブランドで、DOGMAを筆頭に人気が高い。メリダは各レースでも使用率が高くなって来ていたが、予想外のランクインで今後注目が必要なブランドとなった。

 

【最後に】

そして、次に気になるのが、ロードバイクの動きとなるだろう。

宮古島、東三河を見ると「トライアスロンバイクの勢い」を感じ、前述の通り、良い傾向だと思っている。ただ、十分に乗りこなすことは簡単ではなく、ブランクがあればやはり、ベストフィットとは言えなくなってしまう。そして、高齢化が進む国内トライアスロンにおいては「ロードバイク」の見直しも必要ではないだろうか。

ブランド、モデル、そして、価格など選択肢が多く、身体的制限が少ないロードバイクの中に自身に合うものがあるかもしれない。その可能性は常に考えておくことが大切となるだろう。トライアスロンバイクはヘッドを短くし、ハンドルを低くすることが「できる」ことが最大のメリットで、結果として速く走ることが可能となる。ただ、低くすることで「首」への負担を感じている選手も少なくない。

レース会場でも見かけるがSHIVやP5でサドルよりDHバーのアームレストが高くセッティングされているバイクを見ると感じてしまう。安全性を考えると2秒以上は下を向いて走行することはできない。そんなストレスを感じていないだろうか。無理なく、また、そのバイクの本来の美しいセッティングを考える場合、ロードバイクが向いているかもしれない。

 

 

◾️Triathlon GERONIMO

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka