第40回全日本トライアスロン皆生大会 GERONIMO COUNT

皆生大会は、3年ぶり4回目のバイクカウントとなった。

この3年間では、コロナ禍の影響により、新型リリースの減少とリリースの場合もデリバリーの遅れなど「MONO」としては活性化している状況とな言えない。そして、大会中止、順延などで選手自身のモチベーションアップの追い風は弱かった。

まず前提となる大会はどのような大会なのか。距離はロングだが、今回は短縮開催となっているため、バイクは25km短い115km、ランは10km短い32kmとなっている。「この距離だから出場した」という声を何人か聞いている。ロングを得意とする選手よりはミドルを得意とする選手に有利な距離設定で、最後のランも10km短縮されたことでバイクの走りも変わったはずだ。また、バイクコースは全てではないが、終わってみればアップダウンの事しか頭に残らないハードなコースだ。トライアスロンバイクにするのか、ロードバイクにするのかなど良く聞こえてくる大会でもある。

ちなみにバイク車種の適性はコースだけで決まるものでない。それぞれのポテンシャル、メリットとデメリットなど基本性能はあるが、フィッティングがベターで乗りこなせていることが前提であることは言うまでもないだろう。例えば、普段トライアスロンバイクをメインに使用している選手が、ほとんど使用していないロードバイクで出場するということはナンセンスであるということだ。極論かもしれないが、より「人車一体」であることが望ましい。

そして、出場においては厳しい書類選考がある。そのため、ベテラン選手も多く、宮古島のように初ロングという選手は少ないイメージだ。実際は計り知れないが、走り込みは十分出来ている選手が多いように感じる。また、時期としては、7月開催のため、それまでの練習量も稼げているだろう。そして、鳥取県ということもあり、「関西色」が強い選手層でもある。

そんな皆生大会で使用されたバイクはどんなバイクなのだろうか。またそこか見えてくるものはあるのだろうか。

2022 KAIKE  Bike “ GERONIMO ” Count

GERONIMO COUNTは2015年からスタートし8年目に入った。バイクカウントは、元々コナで30年以上行われ、その使用率が話題となっていた。同様のカウントではあるが、「その先」が知りたかった。例えば、コナという最高の舞台でも実際の「選手層」は幅広い。エイジでのハンデはあるが、やはり「SUB10」で使用されるバイク、本当に速い選手が乗るバイクは何か?サーヴェロのシェアはダントツトップだが、人気のあるモデルは何か?など、もっと突っ込んだ「本当のこと」が知りたい。また、ワンバイやハイハンズなどトレンド以前の「兆し」も発見したかった。そんなカウントだ。

Traiathlon GERONIMO「Journal – Race Report」

順位 ブランド 使用台数 使用率
1 SPECIALIZED 118 12.0%
2 TREK 117 11.9%
3 ceepo 101 10.2%
4 cervelo 98 9.9%
5 GIANT/Liv 54 5.5%
6 PINARELLO 40 4.1%
7 ANCHOR/BS 37 3.7%
8 cannondale 34 3.4%
9 FELT 31 3.1%
10 COLNAGO 24 2.4%
その他合計 324 32.8%
不明 8 0.8%
未確認 1 0.1%
81 合計 987 100.0%

※Counted by Triathlon GERONIMO

 

≪概況≫

結果はスペシャライズドが1位だった。ただトップ3は三つ巴で、2018年はシーポ、2017年はトレックが獲っている。スペシャライズドとトレックはやはりビッグメーカーとしての勢いを感じる。また、シーポは関西では強い。意外と思われるのはサーヴェロだろう。トライアスロンと言えば、そして、アイアンマンなどロング系ではKingとも言えるサーヴェロだが、ここ皆生では過去全て4位で終わっている。

皆生はブランド数が多く、80ブランド以上となっている。大会によるが、少ない大会は70ブランドを切っている。昔は100ブランドを超えることもあったが、一極集中が進み、ブランド数は減少傾向となっている。これはトライアスロンバイクへの傾向が微増ながらも増える傾向に関係があり、トライアスロンバイクをリリースするブランド数とも関係性が強い。ロードバイクでも同じブランドで揃えるなどということも良く聞かれる話だ。

◆◆◆

3年ぶりに開催した皆生大会の結果であり、これが全てではない。リリースやデリバリーが戻りつつある中で、また新たな動きも出てくるだろう。MONOとして、メーカーからの動きもあるが、国内でのトライアスリートの動向として、「ロードバイク」のトライアスロンでの使用が進む可能性がある。特にどちらも必要となる「DHポジション」だが、以前は高くなり過ぎてしまうDHポジションが、シートアングルとともにちょうど良くなっている傾向も見受けられる。また首への負担感を訴える選手も少ないのが現実だ。

絶対はない。自身に合ったバイクを見つけることが大切だが、そこには練習量も大きく関係している。

使用率第1位 SPECIALIZED

≪スペシャライズドNo.1≫

今年の1位は、スペシャライズドだった。2022年のカウントでは、石垣島、横浜(エリート)、彩の国でも1位を獲っていて、やはりその強さを感じる。国内では、絶対数、その中でのトライアロンバイク比率などが高い、数少ないメーカーだ。現行のトライアスロンバイクSHIVと共にロードバイクのTarmacなども人気が高い。トライアスロン61台、ロード57台とバランスの取れた総合メーカーとなる。

2位のトレックは、やはり世界のビッグメーカーだ。今年5月のセントジョージアイアンマン世界選手権では2位の使用率、前回2019年のコナでも2位となっている。Speedconceptと共にエアロロードのMadoneなどトライアスロンシーンにおいて、その存在感を大きく放っている。そして、昨年11月にローンチされ、2月頃からデリバリーの始まった新型Speedconceptはビッグメーカーのリリースする新型として注目が集まっている。

3位のシーポは、トライアスロン専門メーカーとして、その立ち位置をキープしている。トライアスロンバイクは85台、ロードバイクは16台であり、85%近くをトライアスロンが占めている。もちろん舞台は国内のみならず、5月のアイアンマン世界選手権においても18台の使用が確認されている。そして、やはりメインイベントと言える10月のコナでは更に多く使用されているはずだ。直近となる2019年では惜しくも11位の使用率だ。

 

≪TOP10シェア≫

年度 総台数 TOP10台数 使用率
2022 986 654 66.3%
2018 952 600 63.0%
2017 983 587 59.7%

※未確認1台除く

Counted by Triathlon GERONIMO

概況でも触れたが、Top10ブランドへの集中傾向が見て取れる。各ブランドはTop10下位は変化するが、概ね Top10の使用台数が増えている。大手メーカー、トライアスロンバイク専門、ロードバイク人気メーカー、イタリアン、そして、モデル数の多いメーカーなどとなっている。ちなみにコナでのこの傾向は、2019年で78%近い選手がTOP10ブランドを使用している。平均70%程度が多いため、全体から見ればその傾向はやや低めとなる。

 

【トライアスロンとロードの比率】

トライアスロンバイク比率No.1 ceepo

 

GERONIMO COUNTでは当初、トライアスロンバイクの増え方をチェックする意味で定点観測していたが、昨今では必ずしもトライアスロンバイクが正解とは言えないと考えている。価格などの点もあるが、やはり大切なことは、フィッティングであり、結果として、どちらのバイクを使用するか考えるべきだからだ。ただ、一方で「憧れのトライアスロンバイク」と考える人が多いのも現実だ。トライアスロンバイクを使用する場合、是非フィッティングとセットで考えて欲しい。ピンポイントとなるトライアスロンのポジションは極めて難しい。

いずれにしても納得行くポジション出しとなるよう、ショップとの長いお付き合いが重要となるだろう。

順位 ブランド 総台数 Triathlon 比率
1 ceepo 101 85 84.2%
2 cervelo 98 71 72.4%
3 SPECIALIZED 118 61 51.7%
4 TREK 117 42 35.9%
5 FELT 31 17 54.8%
6 cannondale 34 14 41.2%
7 GIANT/Liv 54 11 20.4%
7 CANYON 21 11 52.4%
9 BMC 15 9 60.0%
10 ARGON18 9 8 88.9%
598 329 55.0%

Counted by Triathlon GERONIMO

堂々の1位はシーポだった。同ブランド内でのトライアスロンバイク比率は極めて高い。ちなみに16台をロードバイクとしているが、その多くがMambaやStingerとなる。設定としては、ロードバイクだが、そこはトライアスロン専門メーカーだけに、トライアスロンに近いロードバイクとして作られている。

所謂「トライアスロン適正」の高いロードとして、Triathlon GERONIMOでは「トライロード」と呼んでいる。シートアングル、ヘッドレングスなどのジオメトリー、エアロダイナミクス、走行感の快適性など、カテゴライズが明確に出来ないロードバイクがある。他社にもその適正のポイントが高めなロードバイクがある。そんなトライアスロン寄りのロードバイクのラインナップの拡充が各メーカーから積極的なリリースになることを期待したい。

 

≪バイク比率≫

年度 使用台数 Triathlon 比率 Road 比率
2022 986※ 382 38.7% 608 61.7%
2018 943 331 35.1% 612 64.9%
2017 947 316 33.4% 631 66.6%

※未確認1台除く

Counted by Triathlon GERONIMO

結果はトライアスロンバイク比率が少しずつ増えている。前述の通りだが、憧れのバイクだけに「正しいフィッティング」が出来ているのであれば、トライアスロンの「盛り上がり」を示す数値と言っても良いだろう。

トライアスロンバイクをいつ買うのか、昔はロングを目指す時が多かったが、ここ10年ではミドルを目指す時に購入する傾向が強い。ミドルはODのようなわけにはいかない。ある程度の練習は必要になるだろう。

逆説的だが、トライアスロンバイクが増えることは、ミドル以上に出場する選手も多くなり、練習するトライアスリートが増えることになる。やはり、プロセスこそ価値のあるトライアスロンだけに「ロング/ミドル志向」は、トライアスロンのスポーツ文化を守る上で大きな役割を果たすことになる。

ちなみにこのトライアスロンバイク比率は低い。宮古島は50%を超えている。ここで「コース論」にはなると思うが、冒頭で述べた通り、普段どうしているのか、ということになるだろう。

 

【新型率】

TREK新型Speedconcept6台確認

 

昨年から特に注目しているのが「新型率」だった。コロナ禍があり、その数値の比較は単純には出来ないが、推移を確認している。その手段として「ディスクブレーキ仕様」のバイクをチェックしている。

ディスクブレーキは概ね早いメーカーで2016年モデルから始まり、2018年から2020年でそのフェーズに入った。2020年以降では「遅い」と言えるのだが、昨今の事情も相まって、遅れたメーカーも少なくない。大会の中止とともに、生産の優先順位、材料、パーツ調達の困難など、向かい風が厳しくなってしまった。

そんな状況はまだ完全に打破できてはいないが、以前よりは戻りつつある。「2023年モデル」と言われるこの時期では、カウントデータの信憑性も高まってくるだろう。トライアスロンバイクでは、単なるディスク化ではなく、全体からの見直しが必要なため、ディスク化というよりは新しいコンセプトのもとに新型がリリースされているため、時間はかかったが、ほぼ出揃った感となっている。

台数   Disc   比率   Rim   比率
Tri Road 合計 Tri Road 合計
986※ 71 98 169 17.1% 311 506 817 82.9%

※未確認1台除く

Counted by Triathlon GERONIMO

結果は上表の通りの結果となった。この数値をどう見るかだが、4月の石垣島では、23.8%、6月の彩の国では32.5%だっただ家に、低い結果であったと感じてしまう。やはり、パーツ交換やDi2化と違い、「バイクの買い替え」となることは簡単ではない。元祖であり、老舗の皆生大会ではベテラン選手が多く、旧型のバイクもしっかりとメンテナンスされ大切に使用されている。絶対値ではなく、徐々に伸びることを期待したい。

そもそも「ディスクブレーキ」は必要なのか、数年までに議論されたことだ。全ては安全性と考えている。ブレーキだけでなく、その前に行なわれていたのが「ホイールの強化」だった。路面と接しているのはホイールであり、制動力はブレーキだけではなし得ない。その意味では、より安全性の高まったバイクが増える傾向にもあるということはとても大切なことなのだ。

 

【最後に】

皆生大会、バイクも歴史を感じるさせるものがあった。最新機材が良いのは確かだが、安全性の問題なければ使う、きっとそんな選手が多いのだろう。まさに古き良き、現在に残る発祥の大会らしさを感じた。

来年はどんなバイクが並ぶのだろう。

 

 

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=41470

「皆生のコースはトライアスロンorロードどちらでしたか?」

BOSS-N1-S
Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka