フェルトの新型エアロロード「AR」が発表となった。
トライアスロンでは人気のフェルトだ。昨年のアイアンマンワールドチャンピオンシップでは、2011年以来となる8年ぶりに使用率第3位に返り咲いている。SUB10のエリート選手にも多く使用されるリアルレーシングモデル「IA」が人気となっている。フェルトは、90年前半「ANSWER FELT」時代のアルミモデルからエアロダイナミクスにこだわる美しいトライアスロンバイクをリリースしていた。そんな長年、トライアスロンやエアロダイナミクスにこだわったメーカーとして、エアロロードの新型をリリースすることになった。
今回のエアロロードARは三代目のモデルで、2008年に発表、2009年モデルの初代、2014年モデルの二代目からのモデルチェンジとなる。単なるディスクロードではなく、新たなモデルとして、ゼロベースから5年の歳月をかけて開発されている。エアロダイナミクスについては、前方方向からの対策を主としている。新たな定義を実践したモデルであり、このバイクだけではなく、「今後のプロジェクト」にも活かされるキーワードが出て来ている。
エアロロードと言えば、トライアスロンでの使用が注目となるだろう。すでに各社の「エアロロード」は、トライアスロンシーンにおいても多く使用されている。「エアロ形状をしているロード」ということでトライアスロンバイクに近いものを感じるのだが、少し違うのだ。それは、「快適性の融合」に尽きるだろう。エアロダイナミクスを求めたロードは、少なからず剛性が高くなるため、快適性の維持に各社鎬を削っている。メーカーによっては、ダイレクトに動き、振動吸収性を高めたり、素材や形状により、同じように乗り心地を高めるなど、様々な工夫が凝らされている。いずれにしても「エアロと快適性」、この相反するテーマをいかに高次元に融合させるのかは、現時点でも完全な解決は難しい。
そして、今回のARだが、その「得点」は極めて高いモデルとして仕上がっている。後述に出てくるシートピラーとその周辺のシステムにより、前作と比較し、2倍以上の柔軟性を実現している。つまり、「乗り心地が良い」ということなのだ。トライアスロンキーワードに対しては朗報とも言えるデータだ。またポジションにおいては、シートレールクランプの前後反転により、トライアスロンでの「前乗り傾向」にも対応可能だ。(※目標レース、タイム、及び身体的制限などを加味した上で車種を決めてからの「微調整」の話となる。)また、ユーザビリティにおいても遠征の多いトライアスリートには極めて重要となるが、ハンドル周りの調整が簡易的に可能であったり、輪行バッグなどへの収納も同様となっている点も大きいだろう。
一昨年の宮古島では、40代前半、40代後半、50代前半の3エイジカテゴリーで60%近くを占める中で、身体的制限からよるフォームに対し、ロードバイクの有効性を再認識する必要があるだろう。先にも述べたが、「骨格、フォーム、身体的制限」のチェック(フィッティング)が必要となるが、エアロロードを含むロードバイクという選択は今後の注目点となると言っても良い。
≪IMPRESSION≫
ロングライドのトライアスロンにおいて重要となる「乗り心地」には驚くばかりだった。今回、ゼロベースで新たに開発されたリーフスプリングシートポストとダンピングスリーブにより見事に突き上げが抑えられている。また、「ロードバイク性」として、加速性も良く、ダンシング時の安定感など、フレーム剛性は十分なものがあった。そして、エアロダイナミクスにおいては、2~3m程度の向かい風の中においても直進安定性を感じる心地良い走りができている。これは、ロー・ヨーアングルセオリーによるのだろう。
トライアスロンに使用するエアロロードとして、乗り心地やユーザビリティなど最適な一台と言えるだろう。
以下、メーカー情報となる。
※説明文、イラストはメーカー提供による。
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■AERODYNAMICS
【ロー・ヨーアングルセオリー】
フェルトはロードレースのリサーチにおいて、正面方向からの風に対しての抵抗を減らすことが結果的に勝利へ繋がることを導き出した。最新の計測機器を利用してゼロベースから検証を行い、新型ARは進行方向に対し0度から10度未満の空気抵抗に対して最適化を目指して設計が進められた。結果、トータルで前モデル比9%の空気抵抗削減に成功している。
【トランケーテッド・エアロフォイル・シェイプ】
メインチューブには従来の翼断面形状から後端部を切り取った「トランケーテッド・エアロフォイル形状」を採用した。UCIレギュレーションへの適応、ロー・ヨーアングルへの対応・フレームの剛性のすべてを満たす最適解をCFD解析によって追い求めた結果の形状だ。さらにダウンチューブは前方と後方で大胆に形を変えている。前方では左右方向に厚く、前後方向に狭い。後方ではその逆として、ライダーを含めた全体での空気抵抗の最適化を図っている。
【フィッシュリップ・シェイプ・シートチューブ】
シートチューブは革新的な新型ARの中にあって、一層のアイコニックなシルエットを持つ。リアホイールに合わせて大胆に切り取られたその断面は、リアタイヤを包み込むように左右に張り出したパテント取得済みの独自形状。リアセクションのエアーフローを大幅に改善し、30Cのワイドタイヤを飲み込む理想のシートチューブだ。
【シームレススルーアクスル】
エアロロードの開発においては、極僅かな差異が大きな性能差となって現れる。新型ARのフロントフォークエンドとリアエンドには一切の段差が無い。さらにスルーアクスルはフレームと面一になる専用品を開発した。空力的にも視覚的にも一切の抵抗が無い、なめらかなフレームを是非ともその目で確認してほしい。
■PERFORMANCE
【フレーム剛性】
新型ARを語る上で外せないのが、ナチュラルなライドフィールと高い反応性だ。開発においてはフェルトのオールラウンドレーサー、FRに肩を並べる性能を実現するため、FEA解析とテストライドを繰り返し、必要な部分の剛性向上とバランスのチューニングを進めた。新型ARにはエアロロードにありがちな縦に固くてピーキーな癖は皆無だ。ナチュラルで踏みやすく軽い反応性、左右にリズミカルに振れる動きは新型ARの真骨頂だ。
– BBペダリング剛性 +14%
– ヘッドチューブ横剛性 +11%
– フォーク横剛性 +21%
– フォークねじれ剛性 +15%
【スクエアードBBシェイプ】
空力性能を重視し、BB周りにはあえてボリュームを出さず、チェーンステイが水平方向に張り出した形状を採用した。ライダーの足・クランク・さらにタイヤと状況に応じて目まぐるしく動きを変える部分で抵抗の削減を追い求めることはもちろん、オールラウンドレーサー、FRシリーズと比較しても遜色のないペダリング剛性を実現している。
■RIDE QUALITY
【リーフスプリングシートポスト】
いかに空気抵抗の少ないバイクに乗ろうとも、ゴールスプリントまでに疲労がたまっていては勝利はおぼつかない。シートポストは一見すると前作ARと変わらないように見えるが、この新しいシステムではポスト下端が前後に分割されている。力が加わった時にリーフスプリングのように前後にしなることで、大きな衝撃を吸収する。シートレールクランプは反転することで0mmと20mmを選択できるため、サドルセッティングにも不安は無い。
【ダンピング・シートポストスリーブ】
フレームとシートポストの間にはスリーブを挟むことで、より確実でガタの無い固定を実現した。このスリーブはプラスチックとラバーを一体成型したハイブリッド素材で、微細な振動を吸収する。「リーフスプリングシートポスト」と、この「ダンピング・シートポスト」によって前作AR比で、トータル+112%、つまり2倍以上の柔軟性向上を達成した。
■COCKPIT
【セミインテグレーテッド・コックピット】
ケーブルのフル内装システムは最新のエアロロードに不可欠だ。しかし、ハンドルセッティングはライダーにとって最も重要だ。もちろん新型ARのフロントビューにもケーブルは存在しない。その「セミインテグレーテッド」システムはステム下からケーブルを内蔵する。つまりすべての31.8mmハンドルが使用可能。角度調整に制限無し。最大40mmの専用スペーサーにより高さも自由だ。
【フルカーボン製専用エアロステム】
専用エアロステムは現代エアロロードの証と言える。新型ARのそれは、エアロ形状を高剛性で実現するフルカーボン製だ。交換用ステムは90-140mmを用意。さらに専用のヘッドトップカバーに交換することでケーブルを内装したままノーマルステムを使用できる。フェイスプレートに至っては市販のコンピューターマウント(バーフライ)が直付け可能だ。
【イージーメンテナンス】
ポジション設定の自由度は大切だが、そのためには調整の容易さも肝要だ。新型ARの専用ステムはケーブルを切断することなくステムを脱着することができる。つまり、一般的なバイクと同じようにものの数分でステム交換が可能だ。さらに輪行においてもステムを外すことでコンパクトなパッキングを実現する。
■その他
【TeXtremeカーボン】
ARのすべてのモデルには、航空宇宙産業や世界最高峰の自動車レースなど、最先端のフィールドでしか使われないテクストリームカーボンを使用。フェルトでは重量がかさむベース部分にUDカーボンに代わりテクストリームを使用。これによってカーボンシートの積層数を大幅に削減し、より軽く、高剛性で、スムーズなバイクが完成した。
【ディスクブレーキ】
ARにディスクブレーキを求める声は大きかった。ディスクブレーキはあらゆるコンディションで変わらないブレーキ性能だけでなく、ケーブル内装やワイドリム&タイヤを含めたトータルパッケージでより速いバイクを実現する。コーナーリングにおいては、短い時間で減速を終えること可能のなため、大きなアドバンテージがある。より「速い」ARを完成させるための選択がディスクブレーキだ。
【タイヤクリアランス】
スピードを追求したエアロロードにワイドタイヤは不要だろうか?フェルトの答えはノーだ。新型ARは、ISO規格で求められるタイヤクリアランスに則ると、なんと最大30mm幅のタイヤに対応する。ホイールのワイド化の流れによって、タイヤもワイド化の流れが著しい。さらにレースによっては路面へのコンタクトを最大化するワイドタイヤがより選択となるだろう。新型ARであれば、機材と環境に合わせてその時の最速の選択をすることが可能だ。
【チェーンキャッチャー】
大事なカーボンフレームを忌まわしいチェーン落ちによって傷付けたことはないだろうか。新型ARのシートチューブには直付けの専用チェーンキャッチャーが装備されている。後付のチェーンキャッチャーと比べてはるかに信頼性の高いこのチェーンキャッチャーがあれば、フレームの傷付きを防ぐだけでなく、チェーン落ちによるタイムロスを回避して、目標とするレースでパフォーマンスを余すことなく発揮できるだろう。
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□メーカーサイト https://www.riteway-jp.com/bicycle/felt/ar/
□ラインナップ
AR FRD Ultimate DuraAce Di2完成車 ¥1,580,000 + tax
AR FRD Ultimate フレームセット ¥598,000 + tax
AR Advanced Ultegra Di2完成車(8.26kg)※ ¥798,000 + tax
AR Advanced Ultegra完成車(8.33kg)※ ¥598,000 + tax
AR Advanced フレームセット ¥298,000 + tax
※重量のサイズは不明
フレーム重量(56サイズ/塗装前)
AR FRD フレーム999g、フォーク399g
AR Advanced フレーム1190g、フォーク450g
□発売時期(予定)
AR Advanced:3月上旬ごろより開始
AR FRD Ultimate:入荷次期現在未定
※正確な時期は、ショップを通して確認のこと。
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フェルトも言っている通り「スピードのためのディスクブレーキ」であると。
これは、単純に「ディスクブレーキ化」のことではなく、むしろ、その他の新しい技術が注ぎ込まれた「新世代のバイク」を意味している。したがって、同じディスクブレーキのバイクでも、18年モデルよりは19年モデル、そして、19年モデルよりは今年のモデル、と常に進化している。現在、ディスクブレーキ化という「タイミング」において各社の開発にも大きく期待がかかるということなのだ。
「そして、KONA20では、NewIAがローンチされるのか!?」
Triathlon “ MONO ” Journalist Nobutaka Otsuka