全日本トライアスロン宮古島大会で使用されたバイクのカウントから見えてくるトレンドは、以下の通りだ。
例年ある意味安定したトップ10の勢力図だが、今年は動きがあった。まずは、シーポの大躍進となる。前年より28台プラスという驚異的なな伸びは、ここ数年ではない。シーポは、昨年も21台伸ばしているため、ここ2年で30%以上の伸長率となるのだ。なぜ、ここまでシーポは伸びているのだろうか。ハワイでのランキングとは異なる結果は国内特有でもある。シーポは現在、世界的なブランドとなってはいるが、やはりジャパンブランドとしての安心感や親近感があるのではないだろうか。また、シーポの創設者でもある田中氏カリスマ性も大きいだろう。そして、昨年夏前に発表された「SHADOW-R」は、シーポの「パッション」の象徴でもある。扱い易いバイクとは言えないが、「前面投影面積」に真っ向から挑んだコンセプトは、シーポの開発への熱き想いが伝わってくる。もちろん、メーカーの特徴として、シーポは、「トライアスロンブランド」でもあるため、宿命ではあるのだが。
トライアスロンバイクやエアロダイナミクスに注力することは、そのメーカーの技術レベルを測る一つの指標とも言えるだろう。そのため、「トライアスロン」のイメージがあまり強くないメーカーでも一様にタイムトライアルモデルを造っているわけだ。他の総合メーカーは、トライアスロン、ロードがあり、そのロードの中には、オールラウンドロード、エンデューロ、そして、エアロロードの3タイプがリリースされている。単純にエアロダイナミクスだけで、バイクが成り立つものではないが、まずはそこへの注力とその結果得られるデータから開発される。スピードの順番から言えば、タイムトライアル→トライアスロン→エアロロードとなる。タイムトライアルはロードレース競技に必要だが、より高速域で走行される車種として、それを極めることで、大小様々なデータ収集ができ、それを利用して各車種の設計に活かされる。自動車の世界で言えば「F1」の開発とそこからのフィードバッグなどと同様と言えるだろう。
ただ、トライアスロンだけを開発をする専門メーカー、シーポは、コンセプトモデルで終わるわけには行かない。リアルなレーシングバイクとして、エアロダイナミクスの他にユーザビリティや快適性などを高次元に融合させ、アイアンマンという長距離でその威力を発揮させる必要がある。シーポは、注力をトライアスロンだけに絞れる強みと同時にその深さには大きな期待がかかる分、その開発は簡単ではない。
STRONGMAN’S BIKE TOP10 ※( )内は前年比
第1位 ceepo 202台(+28台)
第2位 SPECIALIZED 183台(+14台)
第3位 cervelo 180台(+4台)
第4位 TREK 164台(+3台)
第5位 cannondale 78台(−3台)
第6位 GIANT 76台(+2台)
第7位 FELT 61台(−22台)
第8位 ANCHOR(BS) 51台(−3台)
第9位 SCOTT 41台(+4台)
第10位 PiNARELLO 35台(−16台)
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全日本トライアスロン宮古島大会 2019 バイク使用台数
順位 | ブランド | 使用台数 | 使用率 |
1 | ceepo | 202 | 13.4% |
2 | SPECIALIZED | 183 | 12.2% |
3 | cervelo | 180 | 12.0% |
4 | TREK | 164 | 10.9% |
5 | cannondale | 78 | 5.2% |
6 | GIANT(Liv) | 76 | 5.1% |
7 | FELT | 61 | 4.1% |
8 | ANCHOR(BS) | 51 | 3.4% |
9 | SCOTT | 41 | 2.7% |
10 | PINARELLO | 35 | 2.3% |
その他合計 | 420 | 28.0% | |
不明 | 7 | 0.5% | |
未確認 | 4 | 0.3% | |
合計 | 1502 | 100.0% |
※ Counted by Triathlon GERONIMO
さて、このシェアはトップ10だけを見ていると全体の動きが分かりずらい。16年からの4年の推移を見ると、トップ10ブランドへの集中が高くなる傾向があり、更に今年は、その伸びが大きいという結果が出ている。
2019 | 2018 | 2017 | 2016 | |
総使用台数 | 1502 | 1572 | 1552 | 1548 |
TOP10合計 | 1071 | 1070 | 1024 | 1017 |
TOP10比率 | 71.3% | 68.1% | 66.0% | 65.7% |
※ Counted by Triathlon GERONIMO
そして、更に大きくシェアを持つトップ4を調べると。
2019 | 2018 | 2017 | 2016 | |
総使用台数 | 1502 | 1572 | 1552 | 1548 |
TOP4合計 | 729 | 680 | 646 | 642 |
TOP4比率 | 48.5% | 43.3% | 41.6% | 41.5% |
※ Counted by Triathlon GERONIMO
シーポ、スペシャライズド、サーヴェロ、トレックが大きく占めている結果となる。トップ10集中に大きく関係しているということなのだ。
では、その4ブランドだけが選ぶべきブランドなのか?
もちろん、「数字」として一つの参考にはなるが、目的、目標、そして、フィッティングによる適正などから判断すれば、必ずしもトップ4ブランドとは限らないのだ。流行っているようだから買う、ということはないということだ。特に「トライアスロンバイク」のポジションはピンポイントだけに、慎重なバイク選びが必要なことは言ううまでもないだろう。そして、40代以降、女性は、バイク選びがより難しくなってくる。40代以降は、身体的な可動範囲などの「制限」があり、女性は小柄な人であれば選択肢が少ない。競技レベルにもよるが、「エアロ形状」よりも、ポジションが重要。身体、目的にあったポジションが出る丸いパイプのロードバイクもあり得るということなのだ。
難しいと思われがちだが、とにかく、ショップ担当者に「自身」を知ってもらうことが大切であるということに尽きるだろう。身体的制限、目標レース、月間練習量、スポーツ実績、経験、環境など、バイクを決めるための情報はいくつもあるはずだ。
最後に、トライアスロンとロード比率に動きはあったのだろうか。
トライアスロン | ロード | 合計 | トライアスロン比率 |
776 | 722 | 1498 | 51.8% |
※ Counted by Triathlon GERONIMO
※未確認4台を除く
昨年は、52.0%だったが、数値上は僅かにその比率が減った。その原因はなんだろうか。前述の通り、トライアスロンバイク比率の高い、トップ10シェアが高くなっていることからも、トライアスロンバイク比率は更に伸びている方が自然だと思われたが、少し予想からずれているようだ。
①トライアスロンバイクは2台目以降の可能性が高いと考えると、比較的キャリアの浅い選手が多かったのか。
②40代前半、後半、50代前半の選手が多い中で、ポジションの自由度は僅かながらも制限が出て来ているのか。
③第2次エアロロードの流れの中で、各ブランドから完成度の高いモデルが多くリリースされたためなのか。
④国内の練習環境から、普段でも扱い易いロードバイクを選択している可能性も否定できない。
年間チェックしている中でも、ハワイを除き「トライアスロンバイク」が最も多い宮古島だが、それでも50%強となる。まだ兆しではあるがトライアスロンバイクの伸びにやや陰りを感じる。トライアスロンバイクの造りとそれに合わせたフォームで走ることは間違いなくメリットは大きい。但し、フィッティングの結果によっては無理は出来ない。使用が可能となった場合にも、実走だけではなく、ローラー台での練習(DHポジションでのリアルフォーム)が必要不可欠となるのが、トライアスロンバイクを乗りこなすための重要なポイントでもある。
その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=29669
「バイク選びもそのパフォーマンスアップのために重要!」