今年のアイアンマンが終わった。
やはり、アイアンマンは最高の舞台だった。プロ選手にとっても、エイジ選手にとっても、この上ないレースだ。選手、環境など最高の雰囲気の中で聖地ハワイを楽しんで走る。今年の気候は比較的良かったように感じた。近年異常気象もあり、湿度が高く、地元の人も日に二度はシャワーを浴びると言っていた。レース当日は、そんな蒸し暑さが少し和らぎ、沿道では、心地良い風が吹いていた。ただ、選手にとっては、ほぼ往復向かい風だったが。そして、照りつける太陽だけは変わらない。
ハワイのタイムは、中々自己ベストにならない。風、気温、湿度、そして、強豪なライバルたちにより、思ったレースができる選手は多くない。そんな難しいハワイだからこそ、クウォリファイの大事さは過去のこと、このハワイそのものをどのようにして走り切るのか、それこそが大きく立ちはだかるのだ。そして、ハワイに対し、様々な価値観があり、選手一人一人のレースがあるが、最高の舞台を走り切った喜びは全員同じだと思う。
ハワイアイアンマンが与えてくれる大きなものは選手だけにわかるのだろう。だから、また目指ししてしまうのかもしれない。今年のアイアンマンの終わりは、来年のアイアンマンの始まりでもある。
レースは全体的にハイペースとなった。10位でも8時間21分という好タイムであり、現在のアイアンマンは、スピードレース化となり、少しの落ち度も許されない厳しいプロのレースとなっている。スイムトップ10では、7名が48分台で上がっている。バイクもキーンルとスタインの4時間23分台を含め、4時間30分を切る選手が6名も犇めき合っている。そして、ランは、2時間52分台以内が7名いる。3位のラングは、2時間39分のランコースレコードを出している。結果としては、「本命」フロデノの2年連続制覇となったが、気を抜く余裕は全くない。ただ、フロデノは、スイム、バイク、ランのバランスが良く、アイアンマン史上においてもこの上ないだろう、理想的な素晴らしいレース展開をしている。
レースの展開は、先述の通り、ハイペースなスイムから始まった。フロデノがコントロールする第1集団が、30km地点通過時には、すでに向かい風が吹いている中、快調にドラフティングギリギリの走りをしていた。スイムで4分出遅れたキーンルは、大きく遅れ、ほぼ第3集団となっていた。しかし、その後、驚異的な追い上げを見せる。ハヴィで折り返し後は、トップ集団に入り、120kmを過ぎると、集団をコントロールしていた。この時点でも向かい風が吹いていた。ハヴィ付近を除き、終始向かい風だったが、その風は、キーンルにとって、アドバンテージとはならなかったのだ。2014年に優勝した時には、強い向かい風が吹き、バイクの強いキーンルにとっては、「神風」となった。今回は、最後まで集団状態が7名で形成され、キーンルが抜け出すことが出来なかった。その結果、完全にラン勝負となったのだ。この時点で、やはり、大本命のフロデノの連覇が見えたが、キーンルの粘りは本物だった。フロデノは、16km地点までで大きな差を付けると予想されていたが、キーンルは、フロデノにしっかりとついていた。まだ、勝機はあった。しかし、後半、確実にその差を広げ、フロデノのペースは維持され、2時間45分という好タイムで2度目の優勝となったのだ。
女子は、リフの圧勝となったが、フロデノ同様に三種目のバランスが取れた走りが、パーフェクトだった。2位との差が、23分以上となっているのは。この38年の中でも3番目に優れた圧勝記録だ。4度目の優勝を狙っていたミリンダは、スイム、バイク、ラン、全てのパートでリフに負けている。スイムの出遅れ、バイク60km地点でトップのリフから6分遅れ、特にバイクでは、18分半の大差を付けられたことが、致命的だった。そして、ランでは諦めないミリンダらしい走りを見せていたが、バイクの差を埋めることが出来なかった。
リフ&フロデノの3連覇は成るのだろうか。可能性は高い。この二人の凄さは、スイム、バイク、ラン全てにおいて完成度の高い走りができることだ。バイクが得意とか、ランが得意ではない。やはり、トライアスロンとしては、3種目のバランスが重要となる。
エイジレベルは、昨年との比較を見てみると上がっていた。ただ昨年レベルは過去10年で一番低く、微妙な結果だが、総参加者数が2000名オーバーとなって5年目となる中では、2番目のSUB10レベルで厳しい競争率だった。出走者は、2316名でDNF、DNS、DQを除く、完走率は、95.29%となっていた。昨年の完走率は、92.85%だったので、その意味でもレベルが上がっていると言えるだろう。ちなみに、女性比率は、30.14%となっている。(昨年26.34%)
そして、Triathlon GERONIMOのメインとなるのが「トライアスロンMONO」だが、これも十分な情報だった。新型バイクのサーヴェロのP5XやBMCのTT01、そして、ダイアモンドバックのANDEANなど話題のバイクを確認することが出来た。また、キューブのプロトタイプなどにも興奮状態となった。
まず、バイクシェアはサーヴェロがトップは100%想定ながら、驚きは、577台(LAVAカウント)となったことだ。新型が発表される前であり、なぜここまで伸ばしたのか。総台数の中身を検証することで見えてくることもあるだろう。また、アルゴン18、スコット、BMCの3ブランドが揃って100台オーバーとなり「第2勢力」と成り得るのか、今後の注目度が高まる。(後日 GERONIMO カウント発表)
サーヴェロ、BMC、ダイアモンドバックを見ても共通のテーマが「ストレージ」だ。オリンピックディスタンスや短距離TTには必要がない、ロングディスタンスのための、まさに「アイアンマンバイク」の提案だ。アイアンマントライアスリートにとって何が必要なのかを、あらためて検証した結果と言えるだろう。フレーム形状としては、やはり、P5Xのデビューにより、異形、ビーム型、シートチューブ&ステーレスなど、「足らない」フレームがトレンドとなるだろう。その形状の理由はメーカー様々だが、よりアイアンマンを突き詰めるとそのような形状となったようだ。同じ荷物を両手で持つのと、片手で持つのとでは、負担が違う。フレームも同様で、その強度を重量化させず出さなければいけないため各社もその難しい課題に鎬を削っている。そして、ストレージのスペースやエアロダイナミクスを高次元に融合させなければ成立しない製作の難しいフレームなのだ。
ディスクブレーキにも注目していたが、当然エイジ選手はこれからとなるので、プロへに供給が期待されたが、サーヴェロP5X、ダイアモンドバックANDEANに止まった。(詳細データは後日発表)事前情報のあったキャノンデールもその使用はされなかった。ディスクブレーキは原則、フレームそのものが異なるため、乗り換えのタイミングでなければ使用されない。そのため、普及には時間がかかるが、確実に増える方向だろう。その「必要性」が問われるが、例えば、サーヴェロであれば、ヘッド前に付くリムブレーキからホイール中心部周辺に付くディスクブレーキにすることで、ヘッド周辺が簡素化ができるため、エアロダイナミクスやパッキング時の収まりが良くなったりと「総合的」なメリットが大きくなっている。
いずれにせよ、「次世代アイアンマンバイク」が動き出した。今後も大いに注目すべきアイテムなのだ。.
今年も熱かった。実力が拮抗し、スピードレースとなった。たしかにフロデノのレース展開は、バランスの良い総合力ではあったが、アイアンマンは何が起こるかわからない。少しでもペースを崩せば、逆転される状況だ。また、ほとんどは、エイジ選手となるアイアンマンレースでは、その高い「ステイタス」のために頑張る姿に感動する。カッコイイのはプロ選手だけではない。そして、話題中の話題となったP5Xなどの次世代バイクの登場が、来シーズンに向け、更に日本国内でも動きが出てくるだろう。今年のコナは収穫が多かった。
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【大会情報】
■開催日 2016/10/8(土)ハワイ現地時間
■競技 スイム2.4mile / バイク112mile / ラン26.2mile
※詳しくは、HPへ http://ap.ironman.com/triathlon/events/americas/ironman/world-championship.aspx#axzz3eVo5aNf8
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今回のレポート: http://triathlon-geronimo.com/?cat=38