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今年のアイアンマンが終わった。
チャンピオンとなったのはフランスのサム・レイドローだった。
昨年のKONAでは2位、バイクレコードを出すなど注目の選手だった。やはり、全種目でバランスが良いが、バイクは特に速い。ハードな山岳コースを4時間31分で走り切った。若干24歳のフランス人は、これからの期待が大きい。
昨年KONAの前、5月のセントジョージでもバイクまでは先頭集団を走りマークはされていた。ただ、クリスティアン・ブルンメンフェルトのランパフォーマンスで影をひそめてしまったが、KONAでのパフォーマンスの高さで、その名を知らしめた。
そんなレイドローは、今回のメンバーの中では「優勝候補」の一人であり、何と言っても地元フランス開催というアドバテージがあった。地元ということでバイクコースは熟知していた。スピードの出る下りでは、コースをどれだけ知っているかによって、全く走りは異なってしまう。
史上最年少のアイアンマンチャンピオンとなったレイドローへの期待は大きい。経験がものを言うとされていたアイアンマンだが、ブルンメンフェルトより更に若く、女子ではテイラー・ニブ、男子では先日のアイアンマン70.3チャンプとなったリコ・ボーゲンなど、若きアイアンマンたちの新しい時代に入った。
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天候はクリアスカイ。バイクスタート時で気温23℃、湿度57%、風速1.4m/sと絶好のコンディションとなった。
さて、スイムはブレーデン・カリーが飛び出し、その後20名以上の集団となった。波は穏やかで、スピードレースの展開となった。ヤン・フロデノは常に上位につき、後半は12名の選手に絞られた。47:46でアメリカのマシュー・マーカードがトップフィニッシュしている。
その後、マーカードがトップでバイクスタートを切った。やはり、今回ニースの醍醐味となるバイクが勝負の大きな鍵を握っていた。まず、驚かされるのは、トッププロの選んだバイクは、「トライアスロンバイク+ディスクホイール」だった。コースを熟知し、下りでのアドバンテージを最優先に考えられた。
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特にフランス勢の走りが違っていた。レース序盤からフランスの二人、覇者レイドローとクレメン・ミニョンがバイクを引いていた。当初はフロデノ上位に付けていたが、徐々に後退し、戦線離脱となってしまった。これは、遅れたと言うより、トップの二人が速かった。篩にかけられた後続の選手たちは、落ち始め、最終的にはミニョンも耐え切れず落ち、レイドローの独走となった。
レイドローはバイクのスペシャリスト。更に走り慣れたコース。圧倒的な戦略で4:31:28というパーフェクトを見せた。
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そして、5分以上のアドバンテージでランスタートとなった。昨年KONAでのランを見ていると、この時点で決まったと思った。ひと昔であればビハインド10分程度の逆転はあったが、昨今では、トータルバランスの整った選手でなければ勝てない。5分も差が付き、しかもハードなバイクコースからのダメージが大きいため、追いかけられる選手はいないと思われた。
レイドローは3:40/kmのリズムでランを刻み、安定飛行に入った。昨年のKONAでイデンに猛追されたことも、今回はしっかりと逃げ切る良い経験になっていたようだ。ラスト2km地点では反対側のコースを走るフロデノから声をかけられ嬉しそうだった。
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ついに歓喜の優勝となった。このハードなバイクコースでSUB8があるかもしれないという手に汗握る記録もかかったレースだった。ランスタート時で残り2時間35分だったため、実際は厳しかったのだが、どこまでSUB8に近づけられるのか、独走状態でペースを維持できるのか、レイドローのメンタルも試される展開となった。タイムは8:06:22。堂々の優勝を飾った。
ゴール後のレイドローは歓喜の渦の中にいた。
Top 10 Professional Men
1. Sam Laidlow (FRA) – 8:06:22
2. Patrick Lange (DEU) – 8:10:17
3. Magnus Ditlev (DEN) – 8:11:43
4. Rudy von Berg (USA) – 8:12:57
5. Leon Chevalier (FRA) – 8:15:07
6. Arthur Horseau (FRA) – 8:18:36
7. Bradly Weiss (RSA) – 8:20:54
8. Gregory Barnaby (ITA) – 8:21:15
9. Robert Wilkowicki (POL) – 8:21:23
10. Clement Mignon (FRA) – 8:24:10
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もう一つ。昨日のレースの立役者はもう一人いる。「敢闘賞」とも言えるのが、ドイツのパトリックランゲだった。2017年、2018年KONAを制したランのスペシャリストで、その走りは衰えていなかった。むしろパワーアップした走りは圧巻だったのだ。ここ2年振るわなかったが、このランは神がかっていた。ランが周回となるため、エイジ選手と一緒に走ることになるのだが、抜く時のスピードはまるで歩いている人を抜くかのようなスピード感だった。2017年初めてKONAを制した時のような別格のランは、魅せてくれた。大会最速となる2:32:41には脱帽だった。
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最後に。
ヤン・フロデノの “ Last Dance ”となった。2008年の北京五輪金メダリストで、同年にKONAに招待されステージでスピーチしていた時、もう決めていたのだろうか。
その6年後、KONAデビューし、翌年2015年に初優勝している。2016年、2019年、3度のKONA制覇は輝かしい。最も特筆すべくは勝ち方だ。スイム、バイク、ランの総合バランスが高く、「パーフェクトIRONMAN」だった。
フロデノの登場により、「ショートからのアイアンマン」「スピードのアイアンマン」への注目が高まり、アイアンマン70.3はオリンピアンの登竜門となった。そして、現在のブルンメンフェルト、イデンに引き継がれている。
アイアンマン史上最高の選手は、長身で理想的なスタイルで走り、カッコ良さもNo.1だった。もうその姿が見られなくなることは寂しい限りだ。
Triathlon “ MONO ” Journalist Nobutaka Otsuka