ワールドトライアスロンシリーズ2021横浜 Race Report

5/15(土)神奈川県横浜市で「ワールドトライアスロン2021横浜大会」(世界トライアスロンシリーズ横浜大会組織委員会主催)が開催された。

■気象:天候 晴れ / 気温 26.0℃ / 水温 20.6℃ / 風速 4.0m 南

■スタート数:女子55名、男子60名

2年ぶりの開催は、天候に恵まれた。この時期、雨や雨上がりなどのウェット路面も多い。選手にとっては、バイクでの展開予想が難しく、安全面においても慎重さが求められた。今年は、パラトライアスロンの朝の時間は曇っていたが、エリート女子がスタートする頃には、明るくなっていた。そして、ランスタートの11:30頃には青空となり、強い陽射しの夏日となって行った。

昨年は、コロナ禍により中止となった。もちろん、今年の開催も危ぶまれていたが、無事開催に漕ぎ着けている。15日のエリートレースは、外国勢がメインとなる国際大会のため、オリンピックで話題となっている「バブル方式」をコロナ対策として採用し、外部との遮断を徹底していた。その他、様々な対策を実施している。

さて、当日のレースは、例年通りの最高レベルを確認することができた。選手によっては、調整がベストでなかったかもしれないが、想定内として、ベストな走りで臨んでいた。女子は、アメリカのテイラー・ニブがバイクで先行し、ランの速い選手から逃げ切って勝っている。男子は、ノルウェーのクリスティアン・ブルンメンフェルトが、終始バイクをコントロールし、ランで見事に競り勝っている。いずれにしても「バイク」の重要性を感じるレースだった。

WTCS横浜大会は、今年で11回目となるシリーズ最多開催大会だ。国内でトライアスロン大会が始まって40年。その中でもこの上ないロケーションとなる横浜大会だ。マラソンで言えば東京マラソンだろうか。地方からの参加者も多い、国内屈指の人気大会だ。

横浜は、異国情緒の溢れる都市で、歴史的建造物などが多数あり、一つの博物館のようなロケーションとそこを交えたコースとなっているのが特長だ。国際大会として外国人選手に走ってもらう、最高の「おもてなし」コースとも言える。厳密にはエリートとエイジレースではコースは異なるが、スタート、ゴールは同一のため、迫力のエリートレース観戦(今年は自粛)、翌日の参戦で大いに楽しむことができるだろう。

■コース

【Swim】750m × 2周

ポンツーンから一斉スタートで、「氷川丸」が目標物となる。一見フラットだが、チョッピーな海面となることが多い。全景が確認でき、観戦もし易い。

【Bike】4.45km × 9周

フラットながら、カーブ、コーナーは20か所以上となるテクニカルコース。スピードの加減速も著しく、スキルやバイク特性も大きく関係するコースとなっている。また、歴史的建造物の間を走る横浜を象徴するロケーション。

【Run】2.5km × 4周

バイクコースを短くしたようなフラットコースで、4周回のため、ペースを掴みやすいが、日陰はほとんどない。普段は圧倒的に応援、観戦者の多いコースとなる。

 

■エリート女子

【Swim】

10:16:03 女子のレースがスタートした。スタート時は、時折強めの風が吹くものの、まだ陽射しもさほど強くない中でのスタートだったが、水はやや濁っていた。例年通りチョッピーな海面で、全体的にタイムは悪く、2019年に比べ、トップで40~50秒遅れの19分台半ばとなっていた。

終始レースを引っ張り、安定したスイムを見せていたラパポートとカルバーリョがトップタイムの19:29でアップ、続いて19分台は半数以上の28名でフィニッシュしている。前回優勝のザフィアエスは、トップから30秒遅れのアップだった。

【Bike】

バイクに入ると、そのままニブが先頭でバイクスタートしている。スイムの速い選手10名程度が順にスタート、徐々に先頭集団を形成していく。2ラップ目では13名で先頭をキープ、その後、大きな集団が二つ形成され、周回を重ねて行くかに見えたが、動きがあったのは3ラップ目で、ニブとキングマが仕掛けた。

二人の逃げは最後まで続いた。やはり、ランを得意とする選手を抑えるためにバイクで勝負に出ている。ニブにとっては自国のラパポートやスパイビーの追い上げが脅威となるからだ。結果は、ニブがバイクもトップタイムとなる58:21でフィニッシュしている。バイクの重要性が際立った展開となった。

【Run】

当日は、暑さとも戦うこととなった。ちょうどランスタートの頃から雲が切れ、強い陽射しとなり、最高気温を記録している。選手たちはエイドステーションに用意されたペットボトルの水を頭からかけながら走っている。

レースは、バイクで抜け出しトップフィニッシュしたニブとキングマの二人がサイドバイサイドの展開を見せることになった。そして、バイクで遅れていたラパポート、スパイビー、ハウザーらの猛追が始まった。そのペースは徐々に上がり、まさにサバイバルな展開となって行った。追いかける選手たちのペースの篩にかけられ、周回ごとに徐々に人数が減り、優勝争いが絞られて来た。特にラパポートは、ランラップとなる見事な走りを見せ、最終ラップで2位のキングマを捕らえた。

結果は、1位ニブ、2位ラパポート、3位キングマだった。今回もアメリカ勢が、その強さをアピールする、バイクの強さやそのタイミング、ランのスパートなど、見せ場を作る展開となった。

バイクでのアドバンテージを最後まで守り、見事1位となったニブ。
レースを盛り上げた2位のラパポートは、ランラップ1位。
日本人1位、総合21位の高橋
ランラップ2位(33:37)の上田の走りは圧巻。

 

■エリート男子

【Swim】

13:06:00 男子のレースがスタートした。女子のスタート時より、気温も上り、陽射しも強い。風も出て来ている。水は変わらず、やや濁り、ざわつくコンディションの海面となる。タイムは女子ほどではないが、2019年に比べるとやや遅くなっている。スイムトップのルイで19秒遅れとなっている。

レースをコントロールしているのは、前回大会優勝のルイだ。予想通りの展開ではあるが、圧倒的な速さを見せている。そのまま、トップをキープし、18:00でアップ、続いて18:15までに17名がフィニッシュしている。北條ら日本人選手も2名がトップグループで健闘を見せている。

【Bike】

バイクは、スイム1位のルイがトップでスタート。その後も順次スタートし、多少バラけているものの、第1パックは27名。1周目で最初の篩にかかり、2周目には古谷を含む19名に絞られている。僅かに遅れるが、北條を含めた6名のパックが前を追っている。そして、第2パックも13名で形成、まだまだいつでも展開が変わる状況ではあった。3周目では、北條も戻り、第1パック22名となった。ただ、第2パックは24名の大集団となり、いつでも追い上げは可能となっている。この時点でもまだ、ジーンやイーは、第2パックで走っている。4周目も変わらず先頭は22名だったが、良いポジションで走っていた古谷がパンクに見舞われ、5周目でリタイヤとなっている。5周目は大きな動きはなく、21名で先頭を形成している。ただ、ペースは上り、60名でスタートしたレースは53名に。

そして、6周目で大きな動きとなった。第2パックが先頭を捕らえ、42名の大集団となり、終盤の3周に突入した。もちろん、ジーン、イーも含まれ、日本勢も4名走っている。7周目からの大集団の動きはなく、42名のままラストラップに入った。7周目からブルンメンフェルトが集団の前でペースをコントロールしていた。ラン勝負に持ち込む準備が着々と進められていた。

2位のジーン、バイクスタートは、50番以上遅いポジションからだった。

4周までは先頭集団の中で良いポジションだった古谷、前輪のパンクに見舞われDNF。

【Run】

男子は大集団のままバイクフィニッシュとなっている。完全にラン勝負という展開だ。ここまでレースを引っ張ってきたショームブルクがトップでランスタート、ジーンが続いている。ブルンメンフェルトは5番手でスタート。第2グループでは、ルイを先頭に北條がピタッと付いている。

すぐに優勝争いは、ジーン、ブルンメンフェルト、イー、ショームブルクの4名に絞られた。2周目も4名のサバイバルが続いている。3周目で驚異的な追い上げを見せたのが、ピアソンだった。ショームブルクを捕らえ、更にペースを上げている。最終ラップに入ったところでは、イーに追いつき、3位争いを展開している。一方、優勝争いは、ジーンとブルンメンフェルトの一騎討ちとなり、激しい競り合いとなって行った。ブルンメンフェルトは、ジーンのリズムを読み取るかのように接近、冷静な走りをしていた。

結果は、1位ブルンメンフェルト、2位ジーン、3位ピアソンとなった。ブルンメンフェルトは、見事ランラップ1位で制した。「作戦通り」の展開だったのだろうか。

日本人1位、総合16位の小田倉、ランラップは30:48でカバー。
最終ラップ!

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今回は、バブル方式で選手、関係者を外部と隔離、遮断している。PCR検査は、出国前から始まり、多い選手で7回は実施するとのこと。また、入国後の練習も専用のスペースを確保し、毎日3種目できるよう対応していた。

この横浜大会でもう一つ気になっていたことが「観戦自粛」がどの程度に抑えられているかだった。大都市であり、観光地でもある横浜山下公園周辺で、実際に自粛は可能なのだろうか。大いに気になる点でもあった。毎年の取材時と比較すると大幅に減っていた。あくまでも個人的な感覚だが、1/5程度に抑えられていたのではないだろうか。

当日は、「選手たちのため」ということもあったのだろう。大きな声を出す人もほとんどいなく、拍手を送る姿が見受けられた。大会サイトでは、「Yell at home」ということで、観戦自粛をお願いしていたが、しっかりと受け取られていたと思う。

翌日のエイジレースでは、選手も10倍になっているが、参加者の声を聞くとやはり、観戦者は1/5から1/10程度であったという声を聞いている。実際に参加者の家族も応援を「やめておく」という協力もあったようだ。この日だけは、選手を楽しませてあげようという周りの配慮も感じられた。

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【Result】

総参加者数 / 最終出走者数 女子56/55名 男子60名/60名

完走者数 / 率 女子49/55名 / 89.1% 男子48/60名/ 80.0%

■エリート女子
1位 #8   テイラー・ニブ アメリカ
2位 #3   サマー・ラパポート アメリカ
3位 #19 マーヤ・キングマ オランダ

21位 #10   高橋 侑子
27位 #41   岸本 新菜
37位 #27  上田 藍

■エリート男子
1位 #8   クリスティアン・ブルンメンフェルト ノルウェー
2位 #11 イェール・ジーン ベルギー
3位 #19 モーガン・ピアソン アメリカ

16位 #51   小田倉 真
28位 #54   佐藤 錬
29位 #40   北條 巧

※全てのデータ:http://yokohamatriathlon.jp/wts/pdf/2021Result_elite.pdf

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その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=34696

 

 

 

やはり迫力が違う国際大会だ。

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka