絶対完走!

9/1(日)新潟県佐渡市で「第31回佐渡国際トライアスロン大会」(佐渡市など主催)が開催された。

■気象(12:00時点):天候 晴れ / 気温 26.6℃ / 湿度 70% / 風速 3.3m 西北西 / 水温 24℃(7:00時点)

■スタート数:Aタイプ1008名 / Bタイプ760名 / Rタイプ78チーム / 日本選手権22名

まず、今年の佐渡と言えば。。。各種目全体での完走率は、昨年の88.4%から81.7%まで落ちた。そして、佐渡Aタイプにおいては、昨年の80.6%から72.8%という厳しい結果となった。単純な比較は難しいが、優勝タイムで17分、100位で30分落ちている。(全体的には、逆に15~20分程度のタイム落ちとなっていた。)その原因は、スイム時の波と流れ、そしてバイクでの風に見舞われたことだった。

佐渡大会は、昨年30周年を迎えた老舗大会だ。国内で開催されている4つのロングディスタンスの中でも最も長いレースとなる。その長さはバイクが190kmという設定になっていることにある。20年ほど前に一度バイクを180kmに設定したことがあったが、やはり佐渡はその島をトレースするフルコースが醍醐味と言えるのだろう。レースではあるが、その地を走ることの意味を感じながらのバイクライドこそが、佐渡がここまで来た理由ではないだろうか。

また、ロケーションとともに、「ボランティア」のサポートが熱い。約3000人がそのサポートにつき、早朝から遅くまで選手をいろいろなカタチで応援してくれる。そして、佐渡大会は、ロングのAタイプとミドルのBタイプが併催していることも大きな特長と言えるだろう。始めて1年から2年目の選手が「初ミドル」として、時期、コース、制限時間などトータルで人気のレースと言えるだろう。また、選手として参加すると同時に、Aタイプに挑戦している選手を目の当たりにして、感動を受け、「次」に繋がっている。

30年続いた佐渡大会だが、2000年代ではトライアスロン人気も落ち込み、申込者数も大きく減った。それでも続けたきたからこそ、今があるのだろう。2009年頃からの第二次トライアスロンブームで佐渡大会も完全復活となった。2011年のTV放映の影響も大きく関わった。ただ、そこを境に出場の選考が抽選となってしまったために、まず、スタートラインに立つための「運」が必要となったのだ。佐渡大会完走のためには9か月から12か月の練習など準備が必要となる。以前の「先着」に戻ればより集中することもできるのだが。

いずれにしても「覚悟」をもって臨む大会が佐渡だ。

大会当日の天候は、昨年のような不安定さはなく、蒸し暑さはあるものの気温はやや低めで楽観視していた。一つ気になっていたのが、前日の試泳の時から波が立ち、水は濁っていたことだ。その時は、「明日はおさまるだろう」「沖の透明度は大丈夫だろう」と思っていたのだが。。。

ここでは主に「佐渡A」を中心にレポートしている。

午前4時半、ナンバリングに多くの選手が集まってくる。口数は少ない。笑顔の中にも緊張感が伝わってくる。無事に完走したい。そんな想いでいっぱいなのかもしれない。声をかけても気がつかない。間違ったナンバーの列に並んでしまっている選手もいる。落ち着いて行こう。「そんなに冷静にはなれないよ。そんなレースがこれから始まるんだ。」と言わんばかり。やるだけやってきたからこそ、緊張と興奮が高まる。

間もなくスタートとなる。

スタートは6時、制限時間は、21時までの15時間半だ。まず、スイムは、沖に向かい泳ぎ始める。第1ブイを右へ曲がり横へ泳ぐ。200mほど泳ぎ、第2ブイを右へ曲がり、岸へ戻るというコースだ。これを2周回する。コースの特徴として、岸近くは「遠浅」であるということだ。佐渡ならではの光景となるが、スタート後、しばらく、海を歩く選手たちの姿が見られる。例年比較的穏やかな海なのだが。

バイクは、まさに佐渡大会の「醍醐味」と言える、島の外周をトレースするダイナミックなコースとなっている。大きく3つに分けられるかもしれない。序盤は、最北端ASの鷲崎までの72kmで、相川地区、大野亀、二ツ亀などアップダウンの多いコースだ。中盤は、161km地点の小木までで、本州側のフラットコースとなる。そして、終盤として、「小木の坂」を含めた30kmとなる。距離は短いが、それまでの消耗があるため、体力的にも精神的にも厳しい。

そして、ランは、日陰のないコースを2周回する。9km地点では、上りもあるが、全体的には、フラットなコースとなる。

いよいよスタートとなる。積み上げたものを出し切れるだろか。波は収まらなかった。水も濁り、コンディションは良くない。風も吹いている。ただ、ロングはアドベンチャーだ。レース中にも天候などの条件が刻々と変わる。その環境にも対応していかなければいけいない、そんなレースだ。コースエリアが広いため、強い風が吹いたり、風向きも変わる。どこで頑張り、どこで我慢するのか、そんな戦略も重要となる。

6時、Aタイプがスタートした。長い一日の始まりだ。まずは、4kmのスイムを完泳をしなければいけない。

スタート後、遠浅のため、すぐ泳げない。100mは足がつく水深だ。海を歩く選手、走る選手、少しでも早く泳ぎ出したい。

波に見え隠れする選手。

第1ブイをトップで通過する西内選手。

コースは2周回。一度、上陸し、また泳ぎ始める。選手たちは、声援を受け、海に向かう。2周目では更に波が高くなり、選手を苦しめた。

1周目のスイムアップ。歩き、走り、上がってくる。選手から好みは分かれるようだが、一度上がれることに安心感を感じる選手も少なくない。

今回は、波の影響もあり、トップでも1時間を切ることができなかった。

やはり、バイクスタートは、「もう一つのスタート」だ。

ここからが佐渡の本番だ。そんな覚悟でバイクにトランジットする。体調、機材のトラブルなく、190kmを走り切れるか。風も吹くな、そして、できることなコースも楽しみたい。様々な想いの中でスタートする。スイムの遅れがバイクスタートを全体的に遅らせている。スイムで1時間30分以上かかった選手は、特に大きく遅れている。2時間以上かかっている選手も100名近くいた。(昨年は26名)通常、ロングの場合、スイムの遅れは大きく左右はしないが、スイムでの消耗が激しい中でのバイクスタートとなった選手も少なくなった。

前述の通り、コース戦略としてエリアは3つに分けられるが、ポイントは、鷲崎ASから小木ASまでの90kmのアベレージをいかに上げられるかだろう。そこのポイントを絞っていた選手も少なくないだろう。前半の両津までは追い風に乗ってハイペースで走れたのだが、問題は後半の両津から小木までだった。この後半の向かい風がそれまでの「貯金」を使い果たしてしまった。小木ASの関門は、15時15分、坂を上る前にあるが、2段階になっている最初の坂を上ったあたりで14時30分までに通過するペースでないと、ランに影響が出てくるが、全体的に遅くなっていた。スイムの遅れ、向かい風など、厳しい終盤のバイクとなった。ただ、すべてが逆境ではなかった。真野湾に出てからは向かい風になることが多いのだが、今回は、「追い風」だった。それまでの遅れを取り戻すかのようにバイクラスト10kmを飛ばしていた。

今回のバイクでは、概ね30分~60分落ちだったようだ。選手によっては、追い風と向かい風で合わせると大して変わらないと感じている選手もいた。また、完走ギリギリとなる選手においては、向かい風でのロスタイムも大きく、時間とともに、「脚」が売り切れてしまったのだ。

小木の坂まで160km以上を走って来た。このコースで最も標高が高いところでもある。余裕はないはずだが、「笑顔」で応えてくれる選手に感動する。

スイムもバイクも大変だった。そして、最後のランは、ここまでやってきた自分を信じて走るしかない。

気温より湿度が気になる蒸し暑さの中でのランとなった。ランはほぼフラットのコースを2周回となる。周回コースは、ペースを掴みやすいが、集中力をキープするのは簡単ではない。折り返し手前では坂もある。特に2周目の坂はきつい。

ロングのランはバイクの走りと大きく関係している。バイクで無理をすれば、ランで落ちる。逆にバイクでセーブできれば、ランで走れる。そのバランスがロングの「極意」と言えるだろう。理論的には、ハートレート、バイクならパワーを設定し、日々行うトレーニングの中で「仮説と検証」を繰り返し、想定は可能だ。またリアルな検証のために「予備レース」も入れてその「仕上り」を確認する。したがって、上位の選手はある程度結果も見えているはずだ。ただ、それを思ったようにできないのが、アドベンチャーでもあるロングのトライアスロンなのだ。

冒頭から述べているように、天候があり、体調もある。メカトラブルなど「運」も関係してくる。そんな「やってみないと分からない」という面も多分にあるのだが、この最後のランは、今までのトレーニングに加えて「あきらめない」という気持ちが極めて重要となる。フルマラソンとなる長いランの中では、身体は動いても気持ちが上がらない、その逆もある。そんな長旅に耐えた選手のみが完走できる。

1周目は、まだ陽も高く、元気に走っている。応援に応える選手も多いが、2周目からはその表情にも変化が出てくる。徐々に陽も落ち始め、佐渡の「正念場」を迎える。

2周目に入ったからと言っても完走の「保障」は一切ない。走るのを止めたら終わりだ。そして、暗くなってからは、時間との勝負になる。佐渡大会は、細かく関門が設けられているため、その時間との闘いとなる選手も少なくない。ランのペースが安定しない選手にとっては、厳しい関門となり、苦しいレースとなる。

暗闇の中からタスキのリフレクターが時折光る。「走っている」。静まり返った真っ暗なコース上を淡々と走っている。コース上を明るくする投光器の工事現場のような音だけが響き渡る中を走っている。

その走る姿は、「気力」のみだった。今まさに完走のために「必死」に走っている。そんな光景を目の当たりにする。とにかく、前に進んでほしい。あきらめなければ必ずゴールできる。

最後まであきらめない姿に感動する。

今年も夏の終わりを佐渡の花火が彩ってくれた。

21時30分、制限時間を迎えてレースは終了した。と同時に佐渡大会名物の花火が上がる。長い一日を頑張って来た選手たちを讃えているかのように見える。そして、大会の終わりと、夏の終わりを告げた。

今年は大きく完走率を落とした厳しい佐渡だった。完走した選手とともに、来年に向け、気持ちを切り替えている選手も同じく素晴らしい。また来年、必ず挑みたい。佐渡への挑戦は9~12か月はかかるだろう。少し休んだら、また走り始める。

そして、次は絶対完走だ。

今回も松田丈志さんがBタイプに参加していた。

当初、目標を6時間15分、100番以内と公言していたが、結果は、6時間14分05秒で堂々の74位だった。見事に達成した。さすがの身体能力だ。Bタイプでは、6時間がショートの2時間半程度ではないだろうか。多忙な中でそれに近いタイムを出している。もう立派な「トライアスリート」だった。昨年のタイム6時間45分30秒に対し、30分以上の短縮であり、波や風を考えるとそれ以上のパワーアップと言える。その中味を見ると、バイク、ランの短縮が大きいのだが、得意のスイムは昨年より、1分28秒遅れている。松田さんにとっても楽なスイムではなかった。

最後のセレモニーでも「来年こそはAタイプに出るんだろうと言われていますが。。。もう少し考えさせて下さい。(笑)」あとはご本人次第だ。

Aタイプを完走するためには、Bタイプを目安にすると7時間から7時間半程度の完走が必要だろう。松田さんなら十分に完走できる。是非、来年Aタイプに出場し、「真のトライアスロン」の魅力を伝えてほしい。

日本のロングディスタンスは険しい。

宮古島は、少し距離は短いが制限時間が厳しい。長崎は、アイアンマンディスタンスで15時間、皆生のバイクは、半分以上アップダウンで、灼熱のラン、そして、佐渡は、アイアンマン以上の距離で15時間30分だ。海外ではフラットコースで17時間のアイアンマンがある。ランで半分歩いても「完走」となるが、国内のロングはどの大会も厳しい。それだけにステイタスがあり、特に佐渡の距離と制限時間は、とても険しいのだ。簡単には完走させてくれない。そんなチャレンジングなレースだからこそ、そのゴール目指したくなる。

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【Result】

総参加者数 2127組(2285名)※A,B,Rタイプ、日本選手権、ジュニア

最終出走者 1868組(Aタイプ1008名/ Bタイプ760名/ Rタイプ78組/ 日本選手権22名)※ジュニア除く

完走率 Aタイプ:72.8% / Bタイプ:91.8% / Rタイプ:91.0% / 日本選手権:95.5%

Aタイプ優勝 男子:西内 洋行 / 女子:安曇 樹香

Bタイプ優勝 男子:久保埜 一輝 / 女子:小川 純子

Rタイプ優勝 Team Watson

日本選手権 男子:北條 巧 / 女子:西岡 真紀

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「長い一日お疲れ様でした」

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka