PI Style 2020 ❝ Simple, Lighter & Faster ❞

パールイズミSPRING/SUMMER 2020が発表となった。

日本人のための日本のブランド、パールイズミ。海外ブランドも多い中、日本の匠として独自路線で安心感と人気がある。見た目のデザインは重要だが、まずは「着心地」が求められる。バイク本体と違って、ウエアやシューズは試着をすれば直感的にその良さや違和感を感じてしまうからだ。もちろん、万人に合うものはないが、その可能性が高いブランドに期待はかかる。その意味では、昨今のジャパンブランドへの期待は大きい。そして、もちろん見た目のデザインを無視する人はいないが、そのデザインや質感への取り組みは海外ブランドだけではない。パールイズミの進化は著しい。

今回のSPRING/SUMMERのテーマは、「着やすく、選びやすい。」「着る人を引き立てるシンプルウエアは新たなステージへ。」としている。今求められている作りとは。また、コーディネートのし易さとは何だろうか。

■TOPIC 1:メンズ/レディーストップスラインナップが大幅リニューアル。新たなデザインテーマ「ネイチャーモチーフ」プリントが充実。

■TOPIC 2:ロード競技に特化した空気抵抗を軽減する新素材「スピードセンサー2」誕生。

■TOPIC 3:売れ筋グローブがモデルチェンジ。アクセサリーもリニューアル。コーディネートしやすく、長く使えるデザインがウエアとセットで選べる。

主なトピックスは上記の3つとなる。その中でも「スピードセンサー2」の開発は、トライアスロンにも関係してくる。より速く走るためにウエアも進化を続ける。

 

***************************  【TOPIC 2】  ****************************

バイクのエアロダイナミクスは定番の話題となるが、各社エアロダイナミクスを高めるウエアの開発には鎬を削っている。理由は、圧倒的に空気抵抗が発生するのは、ライダーだからだ。その大きな抵抗に対し、フォームも大きく関係してくるが、MONOとして、その開発は重要となるのだ。同様に面積の大きなヘルメットの開発が話題になることは周知の通りだろう。

ただ、「ウエア」でのエアロダイナミクス向上は簡単ではない。バイクと違いライダーが着用することで、「一定条件」をキープすることが難しいからだ。そのライダーのフォームから始まり、最大の動きとなるペダリングなど、極めて厳しい条件の中での開発となる。そこで、ポイントとなるのが素材の開発だ。風を受けた素材がどのようにして空気抵抗を低減させるのか、素材自体に整流効果があり、乱気流を発生させない、そんな素材が求められる。

まずは、そのための新素材開発から始まった。大学の研究室、大手繊維メーカーの協力のもと、2年半の歳月をかけて作られた「スピードセンサー2」だ。様々な試行錯誤と競合メーカーの分析などがなされ、たどり着いたのがこの「菱型」パターンだった。気流の剥がれを抑え、競技のおいて有効的な速度域で、その効力が発揮されるようになっている。

トップスは肩から腕にかけて新素材が配されている。ウエアとしては最前部であり、最も外側に位置する部位となる。ショーツはサイドから後部にかけて配されている。先述の通り、動きが無ければその配置も違ってくる。エアロダイナミクスとともに、ライディング、特にペダリングなど、その動きを妨げるものであってはならない。

2020年のSPRING/SUMMERでラインナップされるビブショーツだ。今回、通常ラインナップとなるはビブショーツのみだが、「オーダーウエア」としてトップスにも採用される。パールイズミがビブショーツからスタートするには理由がある。パールイズミの「真骨頂」は何と言ってもパッドを主としたバイクショーツと言えるだろう。その自信作に先行投入しているということなのだ。

サイドに配されるスピードセンサー2は、大きく目を引くパターンとなっている。

前部、後部の「面」は縫い目を無くし、フィット時の快適性を向上させている。

ショルダーは、伸び過ぎず、適度な収縮に抑えられ、フィット感を挙げている。

昨今、人気となっている「オーダーウエア」。その中でこの素材を選ぶことができる。バイクでは、「エアロロード」などと括られてはいるが、「エアロダイナミクス」を追求することは、当たり前のように求められ、エアロロードではなく、それが「標準化」となりつつある。エアロダイナミクスを高めないロードバイクはあり得ないということなのだ。同様にウエアもその観点で機能を高めてくることは必至だろう。より楽に、より速く、メーカーの開発は続くことになる。

 

***************************  【TOPIC 1】  ****************************

レースフィットのトップスがリニューアルとなった。今回メーカーがTOPIC 1として挙げているのがこのイグナイトジャージのリニューアルだ。パールイズミの「今」を象徴するモデルと言っても良いだろう。

「ネイチャーモチーフ」としたデザインは洗練された仕上がりと言って良い。ライダー、バイク、そして、ウエアが絶妙にバランス良く、マッチするのではないだろうか。バイクショーツは、「黒しかないのか」、様々なリクエストも開発の原点となる。同系のデザインで上下を合わせるのも良いだろう。また、上下を変えた時の組み合わせの場合は、どのようなデザインが良いのだろう。こだわりが見事に具現化されている。

そして、特筆すべくは、その機能にある。パールイズミはナショナルチームもサポートするメーカーだ。そのトップ選手からのフィードバックで作られている。特に吸汗速乾性と軽量性に注目したい。吸汗速乾性は、ライダーにとってウエアのコンディショニングとなる。常にベターな状態をキープすることは、ストレスを軽減してくれる。そして、軽量性は持った瞬間に感じることができるろう。具体的には、170gから108gまで軽量が施されているのだ。

このようなコーディネートにセンスが光る。

低めの衿も特長で、ライダーの首の動かしやすさを考慮したものだ。

「スティープ」というカラー。サイクルキャップのもコーディネートできる。

 

***************************  【TOPIC 3】  ****************************

定番のロングライド用指切りグローブもモデルチェンジとなっている。ウエアとコーディネートさせやすいカラーでラインナップされている。手のひら、親指股を厚めのパッドで保護するロングライド用だ。そして、随所にこだわりのアップデートも忘れてはいない。より完成度を高めて来ている。

指の方向が真っ直ぐではなく、紅葉のように広がるようにすることで、ライド時のフィーリングを向上させている。

固定のテープの先を長くして、指で摘まみ易くしている。

 

***************************  【VISION】  ****************************

ビジョンは、文字通り、これからのパールイズミを提案するモデルだ。ビジョンシリーズの特徴は、イタリア製の機能素材を採用し、着心地の良さを追求していることにある。そのためにカットオフ仕様により、自然な着用感を実現している。更にメッシュ加工や縫い目の少ないパターンもより気持ち良く着ることができる。

また、このビジョンシリーズでは「黒一色」の設定が目を引くが、イタリア素材の使用により、同じ黒でも微妙に異なる黒が選ばれている。イタリアならではの「色」へのこだわりがあり、黒でも多くのバリエーションが用意されている。質感とともに、そのあたりが正にイタリアの洗練された部分なのだろう。

写真は、このタイミングで追加となったウィンドブレーカーだが、レースフィットでジャージのようにも見える。ストレッチ性が高く、動きやすく作られている。また、ストレッチ性を生かし、ジャージのように3バックポケットが付いている。

下部のテープは薄く、しなやかにフィットする。また、ずれ上がり防止のシリコングリッパー仕様になっている。

袖口も自然なフィットが心地よい。

後部内側にはポケットがあり、小さく畳める便利なポケッタブル仕様となっている。

黒一色でもハイセンスにまとめられたデザイン。

首の動かしやすさを考えた低い衿仕様。

 

***************************  【OTHER】  ****************************

定番のベーシックフィットは、パールイズミならではのラインナップだろう。

これも要望の多い「太ももポケット付き」だ。斜めカットが落下防止となっている。

練習量を稼ぐ、通勤バイクに重宝するレインオーバーパンツだ。

日焼け防止とストレッチ性の高さが特長。また、装着時に太もも側の切り口が食い込みラインが出るのが一般的だが、滑り止めを改良し、ラインが出にくくしている。

フリージーのタウンジャージは、どこでも着れるカジュアルデザインとなっている。

ポケットタブルのオーバーパンツも輪行時に便利なアイテムだ。

イグナイトロングソックスは、ウエアとのコーディネートとして作られている。

レディースもネイチャーモチーフで洗練されたデザインとなっている。もちろんUV対策も最高レベルの仕様だ。

 

***********************  【2021 Triathlon】  ************************

今後トライアスロンへの展開はあるのだろうか。

「3種目とスピードと暑さ」に対応するウエアへの取り組みは簡単ではない。スピードセンサー2のように素材の進化、ビジョンのようにより着心地を高める素材や設計など、その機能向上のための要素は揃いつつある。それが高次元に融合できれば、理想的なトライアスロンウエアができるのかもしれない。

ただ、「超レースフィット」であり、より繊細な作りが求められるトライアスロンウエアへの課題は少なくない。

分かってはいるが、大いに期待したい。

 

 

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka