
7/19(日)第44回全日本トライアスロン皆生大会(皆生トライアスロン協会主催、スポーツ振興くじ助成事業)が開催された。
今回で8回目の取材となった。皆生大会は、1981年に始まった国内発祥の大会。山陰地方最大級の皆生温泉活性化の一環として、「IRONMAN」のマニュアルと取り寄せ開催された正真正銘の「元祖鉄人レース」なのだ。第1回はスイム2.5km、バイク63.2km、ラン36.5kmで開催され、49名が完走し、その歴史をスタートさせている。
レースの距離は、スイムは1.5km往復の宮古島と同じ3km。例年片方向からの潮流が強く往復ではタイムが大きく変わる選手もいる。今回は往路後半から逆流の影響を受けている。その分復路は速くなる。次のバイクは、佐渡やアイアンマンより40~50km短い140km。そのイメージは「アップダウンしかない」と感じる人が少なくない。実際との感覚のズレはあるのだが、理屈よりもそう言いたくなる「皆生らしさ」と言えるコース。そして、ランは大方フラットとなる35km。ハードなバイク後のランはさらに、「灼熱皆生」となり、「ランは35kmで十分」という声も聞こえてくる。
今回の最終出走選手は989名(個人の部)がエントリー、内82名が女性選手となっている。また、Aタイプの最年少は20歳、最年長は77歳と幅広い選手層となっていることも特徴と言える。ちなみに20歳の選手も77歳の選手も見事完走している。
そして、更なる「安全対策」が施されている。まず、最も大きな変更点として、Aタイプのランを5km短くしている。コロナ禍再開後の2022年は32km、3年前に40kmに戻った皆生だったが、暑さ≒完走率(危険)として大事を取った。次にスイムはウェーブスタートとなっている。3ウェーブに分け、蜜を避け、バトルなどの接触リスク軽減対策としている。また、「監視の目」を増やすべくカヌーを10艇ほど増やしている。そして、熱中症対策として3年目となるアイスバスは6ヶ所に増設された。
レース結果は、Aタイプ完走率77.8%、男子は丸尾公貞選手(愛媛県・40歳)の連覇、女子は高橋真紀選手(和歌山県・32歳)4度目の優勝、Bタイプ完走率75.3%、男子優勝は高濱邦章選手(福岡県・47歳)、女子は甲斐いずみ選手(佐賀県・26歳)だった。また、ABタイプともに女子の優勝者は総合でも5位という快挙だった。
尚、昨年よりTriathlon Japanの2026NTTトライアスロンエイジグループ・ナショナルチャンピオンシップシリーズロング第8戦としてポイント対象レースとなっている。
///////////////////////////////////////////////////
以下、リキャップとなる。来年以降出場予定の参考に要点をまとめている。
■Course & Distance


【Swim】
スイムはウェーブスタートとなっている。3ウェーブで、Aタイプをゼッケン前半と後半で2つに分け、Bタイプとリレーで1つとする3グループにに分けた。皆生温泉のホテル群に沿って泳ぐため、コース取りもしやすいレイアウトとなっている。ウェーブスタートはコロナ禍でも実施されていたため、リピーターの多い皆生ではスムースに受け入れられていたようだ。
今回は、ほぼベタ凪で、安心して泳げる状況だった。潮流は往路が逆流、復路が順流となった。特に、往路で折り返し近くになり潮流を感じ、少しタイムロスとなった選手もいたようだが、復路はその逆となるためペースが上がっている。



【Bike】
バイクこそが皆生の名物であり、醍醐味と言っても良いだろう。アップダウンとテクニカルな140kmとなっている。ただ、フラットもあり、比較的速い選手は大山の橋あたりでもDHポジションで上って行く選手が多い。アップダウンのイメージは強いが、最終的には「トライアスロンバイク」が功を奏している。
コースは大きく3つの目標がある。まず、最初の50kmは皆生の象徴とも言える「大山」を目指すが徐々に上っているため、意外とキツく感じる。40kmを過ぎると大山の上りが本格化する。次の40kmは最も遠いポイントとなる折り返し地点までで、そこまでのアップダウンが通称「ジェットコースター」と言われている。選手はそのイメージが強く残ることになる。そこからゴールを目指す復路となる。ジェットコースターをこなし、川沿いの向かい風に耐え、灼熱も厳しくなる頃だ。
今回は、昨年同様、天候に恵まれた。もちろん、暑さはあるが、雨よりは良い。過去には大雨だったこともある。テクニカルコースも多いだけに晴天はありがたい。終盤の日野川沿いでは昨年は運良く追い風となった選手もいたが、概ね例年通りの向かい風となっていた。
気になったのが交通量の多さだった。ここ3年で徐々に増えているように感じた。大山の橋では一瞬だが車が渋滞したこともあった。応援の並走は禁止されているが、そうではなく、観光客のように見えた。観光地なので当然ではあるのだが。その後、折り返し方面の「ジェットコースター」でも車が多かった。



【Run】
ランは、フラットとなる5km短縮された35kmの概ねシーサイドイメージのコース。スタート後、序盤は市街地を約8km走り、中盤で海を見ながら「弓ヶ浜サイクリングコース」を走るが、この往復で約20kmある。この20kmが正念場と言えるだろう。終盤のゴールまでの市街地は約7kmで、体力的に一番苦しいところだが、沿道の人も増え「帰って来た」という感覚にもなるだろう。
海沿いの弓ヶ浜サイクリングコースは2022年40周年記念大会から採用されているコースで、35kmの場合、約6割弱を占める。遠くには大山も望める美しいコースで、米子鬼太郎空港が近いため、時折見かける飛行機が大きい。海沿いも含め、全体的に日陰はなく、灼熱に阻まれる。大方の選手が一番熱い時に単調なランをしなければいけない。まさに自身との闘いとなるランに辿り着いてから、皆生の本当の過酷さを感じることになる。
今回は、アイスバスを使っている選手が多かったようだ。とにかく少しでも身体を冷やしたいと思う暑さで、16時を過ぎると涼しい風が吹いているのだが、選手はあまり感じていないようだった。
■Weather

8回目の取材となったが、ご覧の通りの天候だった。
東京から行った場合、とにかく暑さが違う、と感じた。4月の宮古島大会の時も一気に春から夏の様相とはなるのだが、レベルが違っている。完全に「夏本番」となるのが、7月の皆生だ。東京の7月前半の気温は30℃以下が多く、直前の14~16日の3日間だけ34℃を記録していた。(東京の猛暑日は7/20以降に集中)皆生の暑さが厳しいことは分かり切っていることではあるのだが、いつも驚かされる。
ただ、開催という点では心配していた選手は少なかったのではないだろうか。その基準は、まず最初の関門となる運用3年目の「熱中症特別警戒アラート」が前日14時に発表されるか否かで決まるのだが、前日の皆生は例年に比べれば暑くなかった。(前日14時で31℃)前日15時の開会式で米子市長がその結果とともに開催を宣言したのだが、会場が響めくことはなかった。リピーターの多い皆生大会に出る選手たちは「この暑さなら大丈夫だろう」と思っていたようだ。
そして、当日だが、競技開催決定が発表される5時の気温は27.2℃。トップがバイクスタートする頃に30℃を超えている。当日の最高気温は11時過ぎに33.9℃だったが、昨年はお昼前に36℃を記録している。そして、多くの選手がランに入る14時以降、33℃を超えることはなかった。もちろん、涼しいわけでもなく、楽でもない。
あと、今年の風の切り替わりは早く、9:30には北寄りの風となっている。特に12時から13時の間が強く、最大瞬間風速は8.5mを記録している。その時間帯の日野川沿いは厳しい向かい風だったことになる。その後もバイクの関門となる15:30まで概ね7~8mの風となり、バイクラスト10kmの最後まで選手を苦しめた。
※気象情報:鳥取地方気象台米子地区 2026年7月19日10分毎
■変更点・取組

Aタイプのランが35kmとなった。
1981年第1回大会は36.5km、翌年から40kmとなり、第4回ではフルマラソンの42.195kmとなった。その後コロナ禍前の2019年まで36年間フルマラソンで開催されていた。22年コロナ禍で一旦短くなり32km、2023年から40kmに戻っていた。本来ならば更に2.195km伸ばし、フルに戻ったらと思う選手もいたと思う。
ただ、現在は、45年前、30年前、20年前と気温が違う。今回を含め8回の取材時の気温を見ると23年と昨年は最高気温が36℃を超えている。特に23年は13時前から15時前に36.7℃を記録し、選手によってはランの往路が極めて厳しい暑さとなった。低い時もあった。19年と24年は雨天のため低く、ともに12時の時点で24.5℃、24年の最高気温は26.9℃となっていた。「皆生らしくないなぁ」などのジョークも飛んでいた。
今回も厳しい暑さが予想される中での「完走率」は低くなるため、「全員が勝利者(完走者)を目指す」大会として、距離を短くしている。完走に関しては個人のレベルや体調も大きく関係してくるが、大会側の対応としては「皆生流」のこだわりを感じる。
次にスイムはウェーブスタートとなった。まずは、スタート時の混雑を緩和し、選手のバトルによる接触リスクを軽減、監視員が選手の状況をより把握しやすい環境を整えている。また、「監視の目」を増やすべく、カヌーを昨年より10艇ほど増し、異変の早期発見と迅速な初動対応につながる監視・救助体制とっている。
元々スイムスタート地点は広いとは言えないため、グループ分けし、密度を下げることは有効的となる。かつ第1コーナーまでの距離が短いため、バトル回避にも功を奏し、より「安心感」は高まったと言えるだろう。
そして、熱中症対策だが、まずは前日14時の「熱中症特別警戒アラート」が発表された場合は中止となる。その1時間後に開会式があり、米子市長から正式に発表される。これは選手はもちろんだが、ボランティアや関係者の安全が最優先となる。また、アイスバイクを1ヶ所増やしているが、相当数の選手が利用していたようだ。
その他、インスタによる情報発信の開始や公式HPに競技説明会動画などをアップ、より発信、周知を向上させている。
■皆生らしさ

同伴ゴールができる大会。国内ロング唯一の家族や仲間と一緒にゴールテープが切れるのだ。その微笑ましいゴールシーンは選手のみならず、周りも嬉しい気持ちにさせてくれる。
特に皆生はグループが多く、競技性が高く、速い選手も最後の最後をしっかりと楽しんでいる。他の大会でも事情はあると思うが、それが許されている皆生のゴールは魅力であり、「皆生らしさ」でもある。
選手一人ひとりにとっては一瞬で終わってしまうことなのだが、原点の光景として今後も続けて行ってほしい。
あと、ゴール後、選手は右へ、応援者は左へ、誘導されるのだが、歓喜の興奮状態もあり、中々スムースにそれぞれの方向に進んでもらえない。そんな状況を毎回長時間見ていると、最後の最後は冷静でなくていいんだな、と思えて来た。
■物語がある
選手一人ひとりにあるここまでの想い。
全てを上手く伝えきれないが、ゴール時にゴールアナが伝える選手のPRコメントをあらためて、現地でその光景とともに耳を澄ませてみた。
「仕事は定年で終わりになったけど、トライアスロンは続けるよ」
「遅い自分にいつも練習付き合ってくれてありがとうね」
など、様々な状況、環境の中で頑張って来たはず。走馬灯のように思い出し、いろいろな場面が駆け巡ったかもしれない。
その他、以下は、選手PRコメントの一部抜粋となる。タイミングにもよると思うが、ゴール時に読み上げられるものだ。(大会事務局提供)
①『今回で34回目の出場になります。1年間、皆生大会の完走を目標に頑張ってきました。今年も、スタッフの皆様に感謝しつつ孫と一緒にゴール出来るよう、最後まで諦めずに頑張りたいと思います。』
②『23回日です。皆生に挑戦できるから人生頑張れてますもありがとう皆生大会。感謝、大感謝、熱烈感謝ですも明るく、熱く、元気良く、今年もサマータイムドリーム見させてもらいます。』
③『2回目の出場です。前回はBタイプに出場しました。今日は一人で完走しましたが、子供が水泳と陸上をやっており、8年後には家族でリレーで皆生トライアスロンに出場するのが夢です。それまでオヤジは走り続けます!』
④『昨年Bタイプを初完走し、今年はついに初ロングヘ挑みます。絶望、怪我、病気。ボロボロだった日々を越え、地元・皆生の地で再び前を向くことができました。諦めなければ道は開ける。どん底から再生した今の姿を、ぜひ実況してください!感謝と共に全力でゴールします!』
ちなみにこの「想い」は、地元フリーアナ中岡みずえさんによって伝えられている。その取組は、36年間の職人芸とも言えるアドリブを交えたパフォーマンスで選手の偉業を祝福をしている。
■Volunteer

今年も約2900名のボランティアに支えられ開催している。
これも「皆生流」であり、最大の特長の一つとなる。多くのボランティアは、大会とともに「伝統化」していることも選手にとってはありがたいこと。やはり、慣れているということは、選手の安心ともなる。また、子供や学生のボランティアも多く、動きが機敏で、物理的に助かるのだが、更に「元気」がもらえる。
皆生のボランティアは長年の経験からそのサービスの完成度が高い。スイカやメロン、おにぎりなど、選手を楽しませながらサポートしてくれる。補給食は様々な「科学的」に性能の高いものもあるが、理屈ではなく、楽しみたいのが一般選手。氷もしっかりと確保され安心度が高く、水分はOS-1も用意されている慣れようだ。選手からの高い評価となっている。流石の一言。
そんなボランティアを見ていると、あらためて「全員が主役」と思える。選手だけではなく、多くの関係者で作り上げられていることを認識させられる大会でもあるのだ。その点でも暑さなどの「厳しい気象」からボランティアを守り、安全に開催し続ける必要がある。
■Race Operation

長い歴史がある分、完成度の高さを誇る大会だが、昨年の改善要望、選手の高齢化や地元の情勢、交通量の変化、100%の賛同はあり得ない中での運営が毎年常に求められている。一部ではあるが、選手の声を要約してみた。
【良かった点】
《エントリー》
『今回から、書類が手書きではなく、ネット上で書き、送る方法になった。時間が短縮された。どこでも、いつでも提出できる。ただし、「例年通り」と思っていたら、提出忘れになるので、ホームページの確認が必要。昨年の大会から写真の添付は不要になったが、これも本当にありがたい。』
『エントリーからその後の手続きがすべてオンラインで完結出来るようになり楽になりました。』
《競技》
《運営》
■Race Result

日本の歴史、今年の鉄人皆生が終わった。
来年は45回の節目、日本発祥の大会だが、それだけで続けることはできない。昨今は気象などによる安全面の判断も容易ではない。コロナ禍後、厳しくなったボランティア確保、選手の中断、そして高齢化による引退なども考えられる。それでも続いて来たのはなぜだろうか。
一つの理由と言えるかもしれないが、熱き選手たちがいる。特に「関西勢」だ。2府4県中でも大阪、兵庫で200名を超え、隣接する岡山、広島、そして地元鳥取で半数近くを占めている。関西は皆生の他に琵琶湖アイアンマン(1985~1997)があったため、「ロングの関西、ショートの関東」などと言われていた時期もあった。
そんな土壌もあり、チームやクラブによる活動も活発だ。同伴ゴールを見ているとその盛り上がりを肌で感じることが出来る。また家族や友人などとのゴールを見ているとトライアスロンをやっていなくても「理解」があるのだろうと思える。
トライアスロンは1000名の参加を超えれば「大きな大会」と位置付けられる。もちろん皆生もその一つであり、ロングのAタイプは佐渡を上回るほぼ同数だ。昨年新設のBタイプはまだ1/3以下だが、伸び代とも言える。45回、そして、50回が見えて来た皆生のより一層の発展策としてのBタイプにも大きな期待がかかっている。
来年も暑く、熱い皆生となることだろう。
【第44回全日本トライアスロン皆生大会】
《日時》2026年7月19日(日)7:00~21:40
《個人の部AB応募及び招待総数》
総数 / エントリー / 最終出走 / 率 1146名 / 1020名 / 989名 / 86.3%
《総参加選手》
最終出走者数 / 完走者数 / 率 989名 /765名 / 77.4%
《参加選手(Aタイプ)》
最終出走者数 / 完走者数 / 率 794名 / 618名 / 77.8%

《Aタイプ男子》
1位 丸尾 公貞(40)No.5 7:36:24 (S0:46:51/B3:59:42/R2:49:51)
2位 大倉 拓也(32)No.440 7:45:56 (S0:45:33/B4:14:12/R2:46:11)
3位 石関 玲於(28)No.778 8:09:24(S0:44:28/B4:29:48/R2:55:08)

《Aタイプ女子》
1位 高橋 真紀(34)No.4 8:23:50(S0:44:54/B4:39:51/R2:59:05)
2位 宇治 公子(44)No.8 8:49:27(S0:50:37/B4:54:32/R3:04:18)
3位 高橋 佳那(34)No.10 9:02:29(S0:57:48/B5:00:34/R3:04:07)
《参加選手(Bタイプ)》
最終出走者数 / 完走者数 / 率 195名 / 147名 / 75.3%
(non photo)
《Bタイプ男子》
1位 高濱 邦章(47) No.2176 6:24:05(S0:44:11/B3:41:28/R1:58:26)
2位 大山 輝向(22) No.2187 6:34:23(S0:41:59/B3:40:53/R2:11:31)
3位 原田 和範(34) No.2075 6:43:15(S0:50:52/B3:38:19/R:14:04)

《Bタイプ女子》
1位 甲斐いずみ(26)No.2161 7:26:55(S0:44:29/B4:11:19/R2:31:07)
2位 松井安希子(46)No.2167 8:13:38(S0:54:38/B4:37:04/R2:41:56)
3位 根本あさひ(21)No.2002 8:15:16(S0:56:29/B4:40:17/R2:38:30)

全ての記録:https://www.kaike-triathlon.com/?p=6710
◾️Triathlon GERONIMO
- KAIKE 2026:http://triathlon-geronimo.com/?p=54570
- Facebook:https://www.facebook.com/TriathlonGERONIMO/
- Instagram:https://www.instagram.com/triathlon_geronimo/
- Threads:https://www.threads.net/@triathlon_geronimo
「安全第一はまず十分な練習が必要。来年の皆生大会まで一年を切った。練習、機材、補給、全てに入念なご準備を。」

Triathlon Journalist Nobutaka Otsuka