第5回

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Triathlon LUMINA No.49

P81~83 Mare Ingenii Tri BIKE CHRONICLE

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トライバイク完成期(機能、素材、デザイン、そしてDi2完全定着)」

このクロニクルの第5回目は、ほぼ現在のバイクとなる2010~14年を観ている。2000年後半で確立した「カーボン製トライアスロン専用バイク」だったが、更に進化し、一定の「完成域」に到達した。各社から様々なモデルがリリースされ、「選択肢」が増えたということが、「完成期」と言えるのだ。そして、同時に確立したのが、電動変速システム「シマノDi2」だ。「トライアスロンこそ」必要なアイテムとして、標準化となった。

トライアスロンバイクのキーワードとして、真っ先に挙がるのは、「エアロダイナミクス」。レーシングカーのデザイン同様に、突き詰めるとある程度同様なものに近づく中で、各社独自の特徴を出している。これは、自転車の場合、動力は「人力」、エアロダイナミクスオンリーのデザインではなく、他に求める性能として、設計上(直進安定性、高速巡航性など)、製造上(剛性、軽量性など)の課題、そして、その結果として、長時間走行による疲労などを考慮しなければいけないからだ。そのバランスに各社のカラーや特長が出る。フレームの断面形状は、トレックのKVFやスコットのF01など、カムテイルデザインか、それに順ずるものが多くなって来たのだ。エアロダイナミクスと同時に、剛性、軽量性を狙った造りとなっているのだ。フレーム形状で、注目すべき点がもう一つある。それは、「低い」シートステーの位置。リアブレーキはシートステーに取り付けなくて済むようになってきたこともあり、サドル下の乱流発生ポイントに対するエアロダイナミクスが高まったことでもあるのだ。また、ブレーキは、フレームやフォークと「一体型」によるエアロダイナミクス向上を目指している。ヘッド、ハンドル、ステムなどの周辺も同様なデザインでその効果を高めている。また、専用ストレージを付けることで、よりエアロダイナミクスを高めているモデルなど、可能な限りの「エアロ対策」に余念がないと言ったところだ。

代表的な各モデルを観ると。サーベロP5やフェルトIAなど圧倒的ボリュームのモンスターは、「エアロダイナミクス」が優先と言えるデザイン。トレックSpeedConceptやスコットPLASMAは、エアロダイナミクスとともに「軽量性」も重視している。キャノンデールSLICEは、独自に新しいコンセプトで「快適性」を提案している。このあたりは、2010年前半だけではなく、これから強く意識させられる方向性をアピールしている。シーポのラインナップは、モデルによって、乗り味を変えることで、幅広いユーザーをサポートできるトライアスロンブランドの強みを出している。クウォータKaliburは、三代目をリリース、やはり軽量かつ快適性に優れている。BMC TM01は、各所にトレンドを網羅、「軽量性」も人気の理由。そして、スペシャライズドのSHIVは、エアロダイナミクスの他に「ストレージとフューエル」をコンセプトにデザインされている。

ここで当時の注目すべきブランドを紹介しよう。スイスブランドのBMCだ。もちろんモデルは、TM01だ。2016年もモデルチェンジなく、6年目のロングセラーモデルとなる。このモデルは、ハワイアイアンマンで、アンドレアス・ラエラートが長く乗り、注目度の高いバイクだったが、正直ビギナー向けのバイクではなかった。しかし、圧倒的な人気を誇っていた。第一声として、「TM01」が挙がる。そんな人気の理由は、デザイン性とともに、トレンドを網羅した「アイアンマン専用バイク」だったからだ。フレームサイズは、S、M、L、XLとあったが、世界的に一番中心サイズとなるMサイズには、トップチューブ長が2サイズ存在する特異な考え方を持っていた。

そして、2012年秋にリリースされた、アルテグラDi2の「トライアスロン仕様」が、現在のトライアスロンバイクを完成させたのだ。それまで、DHバーのスイッチが未発売だったため、まだ「電動化」が現実的ではなかった。ただ、スイッチの登場とともに、一気に人気が高まり、年が明けて2013年の春にスイッチが付いたブレーキレバーがリリース、アルテグラによる「リーズナブルな電動化」が圧倒的に支持を得たのだった。電動のメリットを活かし、DHバー、ブルホーン、両方で変速ができることが、「Di2化」の最大のメリットだった。そして、もちろん、アルテグラグレードでリリースされたことも大きな理由のひとつになる。今年で「トライアスロンのDi2」は3年目に入り、当り前の「電動時代」となったのだ。

この5年で常に話題となって来ていたのが、「フィッティング」だ。BioRacer、BGFit、RETUL、ShimanoBikeFittingなど、各社のフィッティングシステムだが、特に「トライアスロン」での注目度が高いことが、特徴的でもあった。これは、トライアスロンバイクが全盛となり、「本当のDHポジション」に対する関心が高まり、それが否応なしに、必要になったからだ。昔のように単に「DHバーを握っている状態」を示しているわけではない。サドルとDHバーのパッドの落差とその距離を出すことが、トライアスロンの「ポジション出し」だ。シートアングル、骨盤の角度、上腕の長さ、肩幅、そして、フィジカルなど、特有のポイントが存在する。トライアスロンバイクは、サドルではなく、「DHバーに座る」と言っても過言ではない。DHバーは、サドル以上にシビアと言っていいだろう。そして、算出データ上のポジションを出す中で、重要となるDHバーの選択、調整、加工をし、データが再現できるよう、メカニックは腕を振るうのだ。

最後に、この10年前半を代表する「モンスターバイク」P5について、語りたい。P5のリリースは、2012年。不発に終わったP4の後継モデルとして、そして、サーベロの「救世主」として、鮮烈デビューとなった。2年で終わったP4だったが、実は、P5のための「礎」となっていた。その開発で培ったことが、P5に活かされている。P5が完成するに至るまで、そのP4のフレームデザインは、一見旧型P3に似ているが、随所にP5と共通する設計がされているのだ。現存するバイクの中で、Di2仕様にした場合、P5のみが、すべてのケーブルが内蔵される徹底したエアロダイナミクデザインなのだ。DHバーも専用となり、トライアスロンバイクの設計において、トータル設計は、まだ賛否はあるが、やはりスタンダード化に向かっている。ヘッド周りは、セパレートで造られているため、独自の収まりとなる。また、大きく話題となったのは、マグラ社と共同開発の油圧ブレーキが専用として、フレームにビルトインされていることだ。そして、トレンドとなる「ストレージ」も対応していた。究極なエアロダイナミクスを誇るP5は、速度の伸びが異次元だった。それでも課題箇所は残る、先端のバイクなのだ。新設計で、「走り優先」のため、扱いづらさも残ったが、サーベロは、「F1」だけを造るメーカーであり、速ければ良い、こだわりのメーカーだからだ。

トライアスロンバイクもほぼ完成の域には入ったが、まだ第一章に過ぎない。選手の各レベルへ対応したラインナップが必要となるだろう。最終回は、今後の展望について、2回に分けお伝えしたい。

 
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「是非ご覧下さい。」

BOSS-N1-STriathlon “ MONO ” Journalist   Nobutaka Otsuka