Launched New IA

7/13フェルトの新型IAの国内展示会が開催された。実戦投入されてから丸2年、昨年のKONAでの世界同時発表、そして、ようやく国内での実車確認となった。

■フェルト

1991年創業のフェルト。現在ドイツブランドとされているが、元はアメリカ人でもあるジムフェルトがイーストン、アンサーを経て立ち上げたアメリカンブランドだ。90年代前半には、アメリカンブランド時代のアルミフレームで、コナ8勝のポーラニュービーフレージャーやショートのITU世界選手権、ロングのコナで優勝しているグレッグウェルチにより一気にメジャーブランドとなっている。当時のアルミフレームとしては破格の30万近い最高級フレームだったが、仕上げも超逸品。

現在もコナでは常にトップ5に入る人気のフェルト。特にSub10の強豪エイジ選手での使用率が高い、選ばれしバイク。また、コナでは女子6勝のフェルト、そして、ダニエラリフのアイアンマン世界選手権5勝目を飾ったのが、この新型IAとなる。

■New IA

お披露目から最も長かったバイクかもしれない。2021年メジャーデビューとなったコリンズカップ。その前にも確認されていたが、ダニエラリフ、ブレーデンカリーの使用によって、話題のバイクとなった。当時の世界情勢からリリースが遅れたメーカーも少なくなかったが、「最後の大物」となったのが、このIA2.0となる。

フェルトは前述の通り、長い歴史を持っているが、初代IAがデビューしたのは2013年コナでミリンダカーフレーが使用。それまでのトライアスロンモデルとは、一線を画す、スペシャルバイクのイメージを感じさせた。フレームの断面形状が「カムテール」系が増えつつある中で、極めてボリューミーなデザインはセンセーショナルそのものだった。理屈抜きにその姿に魅力を感じた人は多かったことだろう。

そして、課題であり、宿題でもあったかもしれないが、統合されたフューエルシステムが配備された。すでに他社では、古くはキャットのCheetahなどあるが、近年では2011年第2世代のスペシャライズドSHIV以降、「統合度」の差はあるが、フューエルに注力するメーカーが増えてきた。現在は後発と言うことになってしまうが、後発なりの完成度を高めている。補給が大事なことは言う間でもないが、エアロダイナミクスやユーザビリティーが重要だ。

■今回のモデルチェンジ概要

外観上が最大の変化と言えるだろう。誰が見ても、今までにない斬新なデザインが目に飛び込んで来るのだ。トップチューブが盛り上がり、後方に向けて大きくスローピングしている極めて特徴的な形状となっている。トップチューブにはストレージとフューエルを備え、エアロダイナミクスと融合させると言うことがこのモデルの設計において大きなファクターとなっている。また、シマノ、スラムなど、各ドライブトレインのマッチングも考慮され、作業性も高い。ワンバイ用のフロントディレーラープレートなど僅かなエアロダイナミクスと見た目の仕上げも十分だ。

Frame Grade

今回リリースされたのは「FRD」のみで、フェルトの最上位グレードとなる。FRDとは、「FELT RACING DEVELOPMENT」の略称であり、フェルトのテクノロジーを総じて限られたモデルに命名されたものだ。カーボン素材のグレードは当然最上位となる「UHC Ultimate + Textreme」を使用し、製法に特徴がある。より均一化されたカーボン成型により、無駄な材料を削ぎ落とし、軽量化に繋がる型を使用している。また、カーボンを成型する上で重要となるカーボンピースは400個以上を使用し、下位グレードの倍以上を使用することで、より狙ったライドフィールをコントロールしている。

Aerodynamics

フェルト史上最速のバイクとなっている。IAは「Integrated Aero」の頭文字を取ったもの。エアロダイナミクスの高さを併せ持つことを意味してのIAだけにこだわりは強い。フェルトの結論は、初代に対し、ヨー角±12.5°でのエアロダイナミクスが4%向上としている。つまり、ほぼ前面からのエアロダイナミクスが高く、その現実性は、走行90%にあたるものとして、その有効性の高さを述べている。

Comfort

ロングライドとなるトライアスロンバイクでは「競技性の中の快適性」が求められる。翼断面率が高くなれば、剛性は高くなる。上位モデルとなれば反応性を高めるためにやはり剛性は上がる。そんな相反する特性のバランスをとるために、カーボンピース数とレイアップにより、振動を軽減、調整している。結果は、これまでのフェルトのトライアスロンバイク史上、最高の快適性となっている。

Storage & Fuel

ストレージなどは今やトライアスロンバイクの定義ともなる仕様で必須であることは言うまでもない。このモデルのストレージは、トップチューブ内とシートチューブ内の2箇所、ボトルマウントが2箇所となる。トップチューブのストレージは200mlあり、上部の切り込みにより、サプリメントなどの出し入れがしやすくなっている。また、シートチューブ内はツールスペースとなる。ソフトバッグが付属し、その中にコンパクトツール、チューブ、タイヤレバー、CO2ボンベやそのアダプターなどを入れ、フレーム内に収納する。フレームはシートピラーが干渉する可能性があるため、サドル高決定後、確認、調整が必要となる。

そして、待望のフューエルシステムが搭載されている。2013年の初代IAリリース直前まで検討されていたフューエルが新しいカタチとなって統合された。予てより構想の早かったフェルトだが、満を持してのリリースとなった。トップチューブの下にタンクが配置され、容量は900mlの大型で有効的、後付けの汎用型は概ね700~800ml程度なので、十分でありながら、フレーム統合のため、ボトルが大き過ぎるという問題もない。そして、水分の補充はフィルポートが設けられ、クイックにできることもレースシーンにおいて極めて重要なポイントとなる。ストレスフリーかつ安全性が高いと言うことだ。

Fit & Usability

DHバーの調整自由度が高いと言えるだろう。

まずは、オリジナルの調整範囲だが、幅、角度、長さなどが可能であり、他の市販品との汎用性も高い。アイアンマン世界選手権5勝のダニエラリフやブレーデンカリーなどもオリジナルをアッセンブルしている。

そして、特筆すべく、重要なポイントとして、ベースバーのグリップ高調整ができることだ。一般的な一体型やベースの角度が可変できるものなどはあったが、このベースバーは、グリップ部のみ高くすることができる。これは極めて画期的であり、昔から誰もが無意識のうちに使いづらさを感じていた部分なのだ。フラットコースでのDHポジションはより低く、ベースバーなどを持つ上りでは、より高くが理想だ。特にエアロダイナミクスの理論だけで、エイジ選手は楽に走れない。体重を後輪にしっかりと載せるためにもよりアップライトポジションが必要になる。そこへの意識を高めてくれた「提案」とも言えるだろう。

Geometry

これは日本人体系の場合、チェックが重要となる。51cmサイズでスタンディングオーバーハイトが755m、シートアングル79°でトップチューブレングスは486mmとなっている。これは手脚の長さが大きく関わると言うことを示している。十分なフィッティングで確認したい。この傾向はフェルトに限ったことではないのだが、このフレーム特有の形状のため、慎重にチェックしたい。

■今後への期待

まずは、下位グレードへの展開だろう。同形状の下位展開は十分予想される。ただ、根強い人気の初代IAもアップデートも含み、継続として発表されているため、先にはなると思うが、期待が掛かるところだろう。そして、アイアンマン世界選手権におけるSub10選手での使用率が高まることが予想される。

以上。

 

 

BOSS-N1-S

Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka