第9回 榛名湖リゾート・トライアスロン in群馬 GERONIMO COUNT

榛名湖トライアスロンでバイクカウントを行った。榛名湖はアップダウンがあり、慎重さも求められるテクニカルコースとなっているが、そこで使用されたバイクに特徴は見えたのだろうか。

GERONIMO COUNTは2015年からスタートし7年目にり、32大会を数えた。バイクカウントは、元々コナで30年以上行われ、その使用率が話題となっていた。サーヴェロが話題となるのはそのことによる。コナという最高の舞台でも実際の「選手層」は幅広い。単なるブランド別台数ではなく、エイジでのハンデはあるが、やはり「SUB10」の本当に速い選手が乗るバイクは何か?サーヴェロのシェアはダントツだが、人気のあるモデルは何か?など、もっと突っ込んだ「本当のこと」が知りたい。また、ワンバイなどトレンド以前の「兆し」も発見したかった。

今回の榛名湖トライアスロンどのようなレースなのだろうか。距離、コースにより、バイクもトレーニングも変わってくる。また関東圏での交通アクセスの良さも選手層に変化が出てくる。榛名湖は、標高1000mを超えるリゾートで「日本一美しい」トライアスロンとしている一方で、アップダウンのあるタフなコースという前評判だった。一部では事前に「試走」をしたという入念に準備を積んでいる選手もいた。試走以上の情報はないが、多くの選手は、大会サイトやリピーターからの情報が最大となるのではないだろうか。リピーターからの情報は、同じ競技レベルの選手目線ではある程度参考になるだろう。ただ主観も入るため、多くの選手はコースマップ、標高、周回数などから「イメージ」によって準備しているのではないだろうか。

榛名湖攻略のためのバイクはどんなバイクだったのだろうか。前述の情報量により、必ずしもバイク機材から全てを占うことはできないが、今後のヒントは見つけたい。

2021 HARU-TORA  Bike ” GERONIMO ” Count

順位 ブランド 使用台数 使用率
1 SPECIALIZED 43 13.0%
1 TREK 43 13.0%
3 cervelo 27 8.1%
4 GIANT/Liv 25 7.5%
5 cannondale 22 6.6%
6 ceepo 20 6.0%
7 PINARELLO 14 4.2%
8 MERIDA 12 3.6%
8 SCOTT 12 3.6%
10 ANCHOR 11 3.3%
11 BIANCHI 7 2.1%
11 FELT 7 2.1%
13 KUOTA 6 1.8%
13 QR 6 1.8%
15 BMC 5 1.5%
15 CANYON 5 1.5%
15 GUSTO 5 1.5%
15 LOOK 5 1.5%
19 ARGON18 4 1.2%
19 COLNAGO 4 1.2%
19 DEROSA 4 1.2%
19 ORBEA 4 1.2%
19 Wilier 4 1.2%
24 BOMA 3 0.9%
24 corratec 3 0.9%
24 FOCUS 3 0.9%
24 RIDLEY 3 0.9%
28 BH 2 0.6%
28 CARRERA 2 0.6%
28 GIOS 2 0.6%
28 lapierre 2 0.6%
28 PANASONIC 2 0.6%
28 TIME 2 0.6%
34 astuto 1 0.3%
34 AVEDIO 1 0.3%
34 CUBE 1 0.3%
34 excella 1 0.3%
34 FUJI 1 0.3%
34 GARNEAU 1 0.3%
34 HARP 1 0.3%
34 NEILPRYDE 1 0.3%
34 NESTO 1 0.3%
34 SIAFEI 1 0.3%
34 3T 1 0.3%
不明 2 0.6%
未確認 0 0.0%
44 合計 332 100.0%

Counted by Triathlon GERONIMO

1位は、スペシャライズドとトレックの2ブランドが群を抜いていた。

スペシャライズドは、トライアスロンでも強く、GERONIMO COUNT上だが、4月の石垣島1位、5月のWTCS横浜エリート、6月の彩の国でも1位のシェアとなっている。同社のトライアスロンバイク比率は34.9%で、やはり人気となっているのは、現行SHIVだった。もう一つの特徴は、ディスクブレーキ比率がダントツに高いことが挙げられ、他社よりも2~3年早い開発ができていただけにその完成度も自ずと高くなっている。

同率1位のトレックは、常に上位に入るブランドだが、ロードバイクに人気があった。同社のロードバイク比率は、88.4%の38台で、特に目立っていたのがエアロロードのMADONEであり、そのディスクブレーキモデルだった。スペシャライズドに対して言えば、「ロードのトレック」と言ったところだろうか。TTとしての新型Speedconceptが既にプロレースでお披露目されているが、「トライアスロン」としての新型リリースを待つ人は極めて多いだろう。

3位はご存知サーヴェロだった。3位ではあるが、今回ブランド別では最もトライアスロンバイクが多かったのはやはりKINGサーヴェロと言う感じだ。サーヴェロは、スタンダードのP系と異形のPX系の2系統を持ち、価格設定も幅広くしているところから、選び易いブランドだ。コナでは、P5を中心にP系が選ばれているが、一般選手では、PX系が扱い易いだろう。奇抜なデザインの異形だが、14500人からのリサーチデータにより完成したバイクは一つの答えでもある。

トライアスロンバイクだけの順位を見た場合、1位はサーヴェロの16台、2位はスペシャライズドの15台、3位はシーポの13台となっている。国内の人気3大ブランドと言えるだろう。逆にロードバイクは、1位はトレックの38台、2位はスペシャライズドの28台、3位はジャイアント/リブの23台となっている。これも選ばれているロードブランドということが言えるだろう。

総台数 TOP10台数 使用率
332 229 69.0%

Counted by Triathlon GERONIMO

このデータは、ブランドが分散傾向にあることを示している。概ね70%が境界線となるが、それを下回っている。やはり、ロードバイク使用率が高いことが原因となるだろう。トライアスロンバイクが多い場合、生産しているメーカーはある程度限られるため集中傾向となるが、ロードバイクは、まず選択肢が多いということが考えられる。扱うショップも多く、メーカーも多い。また、グレードによる価格の幅も広いため、ベテランは元より、ビギナーにとっても良い状況と言えるからだ。

単純に価格がリーズナブルになることで、敷居は下り、始める人も増える流れが生まれる。2019年のコナでは2400名中の77.7%がトップ10ブランドを使用しているが、大会のレベル、コース、海外と国内のバイクへの関わり方の違いなど、理由はいくつもあり、良いとか、悪いとか、言えることではない。

トライアスロンバイクが速いのは確かだ。昨今では、最初からトライアスロンバイクという流れがあることも否定できない。ただ、トライアスロンバイクは「ピンポイント」なポジションとなるため、ある程度(ミドルへの挑戦を始めた頃)の継続的練習や経験がベースとなっていることが重要だ。特に「体幹」への意識は、寝そべってしまったDHポジションでは意識が難しい。上半身が起き、肩、腕に力みを感じ、確認しやすいロードバイクをしっかりと乗りこなすことが先決と言えるだろう。

【ディスクブレーキ率】

今年度注目しているのが、バイクの「新型率」とも言えるディスクブレーキ仕様の使用台数だ。早いメーカーでは2016年頃からリリースしていたが、ディスクブレーキは、概ね「3年以内」のバイクということが言えるだろう。特に1~2年以内が多い。そこからの新型率を見ている。

そもそもディスクブレーキは、イコール高級車ということではない。上位モデルからディスクブレーキ化となったメーカーもあるが、自転車が止まるという当たり前の「安全対策」に対し、現在は、「標準仕様」になったということなのだ。安価なアルミフレームでもディスクブレーキとなり、メーカーによっては、完全移行しているところもある。念のためだが、バイク購入時には、ディスクブレーキになっていることを確認したい。

総数   Disc   比率   Rim   比率
Tri Road 合計 Tri Road 合計
332 19 45 64 19.3% 59 209 268 80.7%

Counted by Triathlon GERONIMO

今回の結果は、19.3%がディスクブレーキ仕様だった。4月の石垣島ではこの数値が18.1%、6月の彩の国では、26.9%だったことから考えると、時期を合わせれば、やや低めという結果と言えるだろう。ただ、2021年もコロナ禍の影響は大きく、大会も多く中止になっている。そのため、新規導入を遅らせていることや、そもそもメーカー側のデリバリーが遅れていることもあり、選手の「想い」も掛け合わせて見る必要があるだろう。ただ、データは事実でもあるため、1年後にその意味が見えてくることになるのではないだろうか。

【トライアスロンバイク使用率】

もともとGERONIMO COUNTは、ブランド別は当然だが、この「車種」については、大きな興味があった。トライアスロンバイクを購入する動機として、やはり見た目からの人気があることは事実。もう一つは、ミドルを目標設定にした選手がそのタイミングとしてケースが多い。距離の長いバイクパートに対し、考え始めたということだろう。ODまでは3種目の一つという位置付けだったことも考えられる。それがミドルでは、3時間から4時間以上となるため、効率よく安定した走りであったり、マイナス面軽減のためのエアロダイナミクスであったり、機材への関心度が大きく高まってくる。いずれにしても完走が簡単ではない、ミドルやロングヘの挑戦は、「本気」でやる必要があるため、トライアスロンバイク比率が増える傾向は、トライアスロン人気のバロメーターと言って良いと考えている。

大会 年度 台数 Tri 比率 Road 比率 距離
木更津 2017 1557 277 17.8% 1280 82.2% OD
石垣島 2021 824 254 30.8% 570 69.2% OD
彩の国 2021 320 143 44.7% 177 55.3% ミドル・ショート・ミニ
榛名湖 2021 332 78 23.5% 254 76.5% OD・ミニ

Counted by Triathlon GERONIMO

そして、今回の結果だが、トライアスロンバイク比率は低い結果となった。この考察としては、やはりコースが挙げられるだろう。普段トライアスロンバイクの選手がこのレースではロードバイクで出場している。また、ビギナーであったり比較的キャリアの浅い選手が多かったことも考えられる。これらは、あくまでも選手層も含めた「その大会」の特徴であリ、推移が重要となる。

では、榛名湖のコースはどちらのバイクが良いのだろうか。個人的見解ではあるが、ロードバイクに分があると思う。コースの高低差などからは、トライアスロンバイクと判断していたが、急な下りや湖畔沿いは道幅が狭く、路面状況も良くない。また木漏れ日のコントラストが強く、路面状況も把握しづらいため、シビアなコントロールができるロードバイクがベターであると思った。安全性が前提でどこまでスピードを上げれるかが、コース攻略のカギとなるのではないだろうか。

【DHバー装着率】

DHバーの装着率は、前述のトライアスロンバイク比率と違って、トライアスロンのキャリアを明確にする物差しとしては、その信憑性が高いと考えている。もちろん、ベテランでも外している可能性はあったり、普段のレースでは、トライアスロンバイクをメインに使用している場合、ロードバイクには装着していない可能性も考えられる。想像の域となってしまうが、ロードがメインバイクだった場合、物理的に脱着は簡単だが、ポジション的には簡単ではない。ドロップハンドルをメインとして、「たまにDHポジション」という選手は外しても特に違和感はないだろう。一方、ロードバイクで、DHポジションをメインにセッティングしている場合、サドルとハンドルの距離、落差が特殊となるため、外した状態では違和感を感じる。

DHバーは、トライアスリートなのか、ローディーなのかを見分ける最もわかり易いパーツだ。ドラフティングのないマラソンのような競技であるため、より良い状況を作り出すために必要不可欠であり、取り付けのタイミングこそ大事だが、やはり、「トライスリートの証」とも言えるだけに基本的には装着は望む人が多いだろう。

総台数 装着 比率 非装着 比率
332 207 62.4% 123 37.0%

※不明2台有り

Counted by Triathlon GERONIMO

今回の結果は、37.0%の選手がDHバーを使用していなかった。ここで注目したいのは、トライアスロンの競技性よりも「初心者率」だ。6月の彩の国では、20.6%の非装着率だったが、比較すると、榛名湖では圧倒的に「DHバー無し」が多かったことになる。ビギナーや普段はローディーの選手が多かったのではないだろうか。いずれにしてもこれからトライアスロンをもっと楽しんで行こう、という選手が多く参加していることは、まだまだ色々な可能性があるということになる。

【最後に】

カバー写真のSHIVは圧倒的に目立つカスタムペイントが施されていた。実はこのペイントは、右サイドが青系、左サイドが茶系のカラーに塗り分けられていた。機材も含め楽しんでいることが良くわかる一台だった。上のシーポは会場で見かけたものだが、鮮やかなカスタムペイントやワンバイなど正に「今」を象徴する仕上がりとなっていた。コナではこういうバイクが続々と集まってくる。

色々楽しめるのが、トライアスロンだ。

 

 

 

その他のレポート:http://triathlon-geronimo.com/?p=35664

「トライアスロンでいくか!ロードでいくか?いずれにしてもコースを想定したトレーニングが必要。」

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Triathlon “ MONO ” Journalist     Nobutaka Otsuka